徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『ユージニア』(角川文庫)

2017年12月26日 | 書評ー小説:作者ア行

『ユージニア』(角川文庫)は、K市(石川県金沢市)の旧家・青澤家で起きた大量毒殺事件の真相を数十年も経ってから追跡するストーリーで、その追跡者が誰なのかは最後の方にならないと分からない、ちょっと奇妙な構造の小説です。

その事件の実行犯は自殺してしまったため、毒殺を教唆したものの存在が疑われていたものの、結局そのまま事件は捜査打ち切りとなり、後味の悪さと謎を残したままとなりました。

事件の全容がいろんな人の証言からだんだんと明らかになっていくのですが、結局のところ真犯人はグレーのままでお話しは終わってしまいます。そのため、すっきりしない読後感が残ります。

著者本人が「黒だけでも白だけでもない、グレーゾーンを描きたかったんです」とあとがきのような「ユージニアノート」に書いているだけあって、事件の真相もキーパーソンである青澤家唯一の生き残り・緋紗子のキャラもグレーのままですね。それが意図されていることであっても、どちらかというとあまり好きにはなれない感じです。

また、第3章「遠くて深い国からの使者」では同じ事件が、10年後に事件についてのノンフィクションらしきものを書くことになる少女・雑賀満喜子(さいがまきこ)の視点で描写されているのですが、登場人物の名前が(緋沙子が久代に、青澤家が相澤家に)変えられており、このピースが全体のパズルのどこに位置付けられるのか結局最後まで分からずじまいでした。彼女の本の一部なのでしょうか?

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