白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(426) 佐藤浩史さんのこと

2023-01-19 10:18:52 | 思い出

 佐藤浩史さんのこと

池波正太郎の映画本「味な映画の散歩道」を読んでいたら懐かしい名前を見つけた 少々長いが引用する

○月○日 帝劇の「剣客商売」の舞台稽古の二日目に行く 前日の続きをやる それから全体を「ダメ出し」せず「通し」を演じさせる すでに3日前の「総ざらい」で今度の芝居の成果は私に判ってしまっているから少しも不安を覚えない まだ不安なのは担当プロデューサーや役者たちであろう(中略、かって演った新国劇の稽古の思い出 辰巳VS島田の話) それは新国劇という一つの家族のような劇団だから出来たと思う 今回のようにそれぞれ違う劇団やプロダクションに所属している俳優たちを50人も束ねてする仕事となれば作・演出としての私は一つのトラブルを出さねようにせねばならぬ そして全員の気持を引き立てて仲良く融合させ芝居に乗せてゆかねばならぬ それがためには先ずスタッフと俳優の選択が何より大切だ 今度は全てが上手くいった 東宝には佐藤浩史という有能な演出助手兼舞台監督がいて彼のお陰で私は自分の老体を庇うことが出来た 九時半に終わる 全員を労い帰宅して泥のように眠る

これは1975年の6月帝劇公演の舞台稽古中の日記だ

記録によると 作・演出は池波正太郎 出演は加藤剛、中村又五郎、辰巳柳太郎 真木洋子、香川桂子ら

今この佐藤浩史をウィキペディアで検索すると何と「ブラックペイン」の松田優作の役名として出る さらに「佐藤浩史、東宝、演出」と入れて検索するといきなり彼の死亡記事がでる 

佐藤浩史 演出家 本名洋(ひろし) 2004年7月31日文京区の病院で食道癌のため死去 61歳 東宝演出部所属 「マイ・フェア・レディ」「屋根の上のヴァイオリン弾き」などの日本版を演出

そう彼のことを「ようさん」と呼ぶのは本名が洋さんだからだ それにしても若く死んじゃったものだ

東宝作品には他のジャンル(主にテレビ)から来た有名演出家の演出助手が多かったが1979年桑名正博と組んで作った「ロックミュージカル・ハムレット」が印象に残る

僕は梅田コマの「屋根の〜」の再演でお付き合いしただけだったが森繁に非常に信頼を得ている記憶だけが残る それが故に東宝から重宝されて一本立ちも出来ず最後まで飼い殺しされた感があった

東宝にはこうした「有能」な演出助手が多かったが 今はどうしているのだろうう


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