天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

プルタルコス『英雄伝』カエサル声”妻は疑いかけられてならぬ”でなく”疑いかけらる妻は妻でなし”と得心

2019-12-04 15:00:48 | 日記
今日の日記は、今札幌別宅で読んでいるプルタルコス著・城江良和訳『英雄伝5』(2019年8月初版・京都大学学術出版会刊)で書かれている古代ローマ政治家「カエサル」の妻との離婚騒動の事です。添付した写真は、著書の表紙です。
私は、カエサルの離婚騒動に関して、2013年2月18日付日記『歴史書「カエサル」離婚騒動”カエサルの妻たる者そのような疑いすらかけられてはならぬ”言葉を高嶋政伸に』(私注:俳優・高嶋政伸が離婚調停中だったが現在は再婚)で言及していました。この「カエサル」著者は、現代の歴史家エイドリアン・ゴールズワーシーですが、彼は当時の古文書からその離婚エピソードを引用していました。
その古文書の一つが、この歴史家プルタルコス(西暦46から48年生まれ127年頃没)が書いた『英雄伝』だったのです。作家の塩野七生も自著『ローマ人の物語』で、『英雄伝』を度々引用しています。だから、私はその元となった『英雄伝5』が京都大学から出版されたと知り、その著作(本体価格5,000円税別)を購入しました。
そして、二千年前(日本は弥生時代後期)の歴史学者がこのよう洞察力のある著書を後世に残していたとは、私は強く驚嘆しています。以下に、その「カエサル」離婚騒動のくだりの一部(原文は詳細に長く記載されている)を、少し長くなりますが引用・掲載します。
『カエサルの家庭内にある厄介な事件が生じた。プブリウス・クロディウスという名門家系に生まれた名うてのやくざ者が、カエサルの妻ポンペイヤに横恋慕し、彼女も彼に惹かれていた。・・ローマの「善の女神」の祭礼は、家の主人を含めて男たちは全員が家の外に出ていき、代わりに妻が祭主を務めて、その祭祀を取り仕切る。クロディウスはまだ髭が生えていなかったので(私注:訳者は、彼は当時30歳だから髭を剃ったと注釈)、琴弾き女の身なりと衣装をまとって、カエサル不在のポンペイヤだけの屋敷に向かった。・・カエサルの母アウレリアの侍女が、鉢合わせたクロディウスの声を聞き、悲鳴を上げて男を見つけたと叫んだ。・・クロディウスは、正体を暴かれて女たちの手で戸口からたたき出された。・・この事の顛末は、すぐに噂になった。そこで、護民官の一人がクロディウスを瀆神罪で告発した。しかしこの厳しい糾弾に抗して、民衆はクロディウスの擁護した。・・カエサルは即座にポンペイヤを離縁したけれども、裁判では「自分は何も知らない」と言い張った。告発者がそれでは筋が通らないと思って、「ではなぜ妻を離縁したのか」と問いかけたところ、カエサルは
「疑いをかけられた、それだけで、私の妻は私の妻でいられないのだ」と答えた。
・・紀元前61年に行われた裁判(訳注:キケロはクロディウスに不利な証言をしたが、クラッススによって買収された陪審員が多くいた)では、僅差でクロディウス無罪が決定した。』
現代の歴史家エイドリアン・ゴールズワーシーは、プルタルコスのカエサル言葉「疑いある妻は離縁」を、さらに強く意訳して「カエサルの妻は疑いすらかけられてはならぬ」と読者に紹介しています。でも、私は、カエサルの死後一世紀に登場した歴史家プルタルコスの記述の方が、カエサルの真の肉声だったと、今強く確信しました。
昨日紹介した田中芳樹著『銀河英雄伝説』では、登場する英雄たちの私生活(夫婦関係)は皆円満で、離婚騒動など皆無です。しかし、実際の生身の英雄たちには、このような生々しい離婚話が多く語られています。そして、二千年前の古代ローマでは、現在と同じような人民による裁判があった事に、私は今大いに感嘆しています。
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