天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

映画『十三人の刺客』手足もがれ舌抜かれ暴君性的玩具にされた娘は役所広司の一揆顛末問いに『みなごろし』

2010-10-04 23:10:13 | 日記
今日の日記は、映画『十三人の刺客』(三池崇史監督 役所広司 山田孝之 稲垣吾郎 市村正親主演)の鑑賞記・その2です。
この映画は1963年に東映公開・工藤栄一監督:片岡千恵蔵 里見浩太郎 菅貫太郎 内田良平主演をリメイクした時代劇です。三池崇史監督は、前作とは違った脚本にして、現代風に改作しています。しかし、この脚本の変更でも良い箇所もありました。ただ、最後の詰めの脚本をまったくミスしていまい、江戸時代の武家社会の悲惨さを強く訴えることにならず、安っぽいアクション活劇にしてしまっています。以下に、映画のネタバレにならない程度に、前回分の指摘に追加し、具体的かつ詳細に述べます。
・(5)明石藩で起きた百姓一揆が弾圧され全ての村人が虐殺されます。ただ一人の生き残りの首謀者の娘は、藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)の慰みものになり、手足をもがれ舌を抜かれながら、暴君の性的玩具として弄ばれます。そして、興味が無くなると無残にも、大川端に投げ捨てられてしまいます。
その娘が助けられ老中・土井大炊頭利位(平幹二朗)宅に連れてこられます。その部屋で『一揆を企てた者はどうなったか?』と御目付役・島田新左衛門(役所広司)から問い糾されました。この悲惨な姿の娘は、両脇から支えられ、口に毛筆をくわえさせてもらって、血涙を流しながら『みなごろし』と必死に書きます。この映画シーンは、筆舌に尽くし難い壮絶さです。私も、思わず慟哭の涙を流しました。
そして、木曽落合宿での明石藩との私闘の際、島田新左衛門は娘の悲壮な叫び『みなごろし』を広げて、闘いの目的を明らかにしています。添付した写真は、その映画シーンです。このシーンは、暴君に天誅を加えるのに、説得力あるとても良い演出だと私は思いました。しかし、その後、島田新左衛門はその娘の悲壮な思いの書付を、無造作に投げ捨ててしまいました。私には、その行動がとても残念でした。その書付はただ暴君に見せるだけの役目ではありません。その書付は、その百姓一揆で死んでいた全ての者の思いが篭った卒塔婆みたいなものです。だから、私はその書付を島田新左衛門は最後まで懐にしまい、見事本懐を遂げた時、暴君の亡骸にその書付を刀で串刺ししてほしかったです。
・(6)娘の悲壮な叫び『みなごろし』はこの映画で刺客側にも徹底してほしかったです。生き残った二人は、この映画ではまったく不要です。島田新左衛門は、最初から生き残るつもりはまったくなく、藩主・松平斉韶に刀で自分の腹を突かせています。同志の皆が喜んで死んでいくのに、計画した自分だけ無事に生き残っていては、皆に顔向けができないと思っていたのでしょう。
だから、山の民・木賀小弥太(伊勢谷友介)は、首に刺さった小太刀でその場で絶命させるべきでした。そして、新左衛門の甥・島田新六郎(山田孝之)も、最後に歯向かってきた敗残武士に後ろから不意を突かれ死んでしまう結末が、この娘の悲壮な叫び『みなごろし』にとても相応しいです。
そうすれば、島田新六郎の出かける際に残した『今度の新盆に戻って来る』の言葉が、島田新六郎の芸妓の恋人・お艶(吹石一恵)が木戸を開ける最終ラストシーンに生きてきて、とても印象的な時代劇映画にするのです。
この演出にすれば、理不尽な武家社会は、根底から破壊(『みなごろし』)しなければ、近代社会は生まれないとの映画でのメッセージが生まれ、最後の説明文『二十数年後、江戸幕府は崩壊した』がとても生きてくると私は思います。
ちょっとした脚本の手直しで、とても良い時代劇になった映画だと、今私は思っています。
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1 コメント

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13人の刺客 (小林太朗)
2010-10-11 12:57:49
鑑賞記1・2、全く同感です。
一つ一つのコメントも全く同感です。
あれだけ重みのある「みなごろし」を無造作に捨てる場面には、興醒めでした。そんな場面にするのなら、「みなごろし」を決戦合図にしなければよかったです。
もっと見応えがあるかと期待しただけに、13人が死闘を繰り広げる活劇に過ぎないという印象しか残りませんでした。
オーナーさんのコメントに書かれ工夫がされていれば、もっといい映画になっていたでしょうね。
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