田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 海街 diary №272

2020-03-16 16:52:52 | 映画観賞・感想

 母親違いの姉妹が海の傍の鎌倉で暮らす話である。是枝監督のキャスティングの妙というのだろうか?4人の女優がそれぞれのキャラクターを見事に演じきり、さまざまな問題が生ずるも優しく日常が流れ、観るものを気持ち良くさせてくれる映画である。

          

 「海街 diary(2015年制作)は2016年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した作品である。是枝監督にとっては初めての日本アカデミー賞受賞作品であるが、これ以降「三度目の殺人」、「万引家族」と立て続けに受賞している。(この中の「三度目の殺人」が今のところ手に入らず苦労している)

 映画は、鎌倉で暮らす長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)の香田家三姉妹のもとに、15年前に家を出ていった父の訃報が届き、その葬儀で異母妹となる14歳の浅野すず(広瀬すず)と対面する。三人はすずに「一緒に暮らさないか」と誘うと、すずは快諾し三姉妹と一緒に暮らし始めたのだった。

 長女・幸は家長としてしっかりまとめようとするが、酒と恋に夢中で自由奔放な次女・佳乃と折に触れぶつかり合う、それを横目に三女・千佳はマイペースに生きている。対してすずは、中学生らしい明るく快活な中学生を演じながらも、心の中に悩みを抱えながら学校生活を送る。

   

 そんな4人の背景には、三姉妹を捨て家を出て他の女性と結婚し、そこで浅野すずをもうけた父親。また彼女らの母親も義理の母に彼女たちを押し付け家を出てしまっていた。

 一方、長女・幸も看護師として働きながら病院勤務の医師と不倫の関係に陥っていたり、次女・佳乃は酒癖が悪い上、男運も悪く長女・幸の頭痛の種の一つである。三女・千佳は勤務するスポーツ店の店長にほのかな恋心を抱いているという状況と、複雑な人間関係の中でも画面には不思議な優しさが流れている。このあたりが是枝映画の真骨頂なのか?

     

 撮影時のエピソードとして広瀬すずは、脚本を事前に読まずに撮影に臨み、その時の感性を大切にしたという。以前、テレビで是枝監督の撮影現場を写すフィルムを見たことがあったが、是枝監督は出演者たちと徹底的に話し合いを重ねながら撮影を進めるという。そうした手法を取ることによって、出演者たちは心から納得した上でカメラの前に立っているのではと想像される。そうしたことが出演者たちの自然な演技を産み出しているのだろう。

    

    ※ 出演した4人の女優と、是枝裕和監督。

 穏やかな湘南(鎌倉)の海を背景にして4姉妹の「海街日記(diary)」は優しく流れていた。アカデミー賞受賞作品に相応しい作品だと思った。