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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

サケが生れた川に帰る謎

2015-09-14 23:28:58 | 大学公開講座
 タイトル名は非常に興味深かったのだが…。いかんせん講義内容が私にとっては難しすぎた。講義内容を理解するためには、相当の科学的知識を要する講義のように思えた…。 

 北大公開講座「北海道の野生生物:自然史と環境変化への応答」の第4講が9月9日(水)夜、地球環境科学院にあった。
 この回のテーマはタイトルのように「サケが生れた川に帰る謎」と題して北方生物圏フィールド科学センターの上田宏特任教授が講師を担当した。

                  

 上田氏はテーマについて、三つの観点からの最新の研究成果について論じた。
 その三つの観点とは、(1)動物行動学的研究、(2)神経内分泌学的研究、(3)感覚神経生理学解析、の観点からだった。
 (1)動物行動学的研究についてはまだ付いていけたが、(2)、(3)になるともう上田氏の言っていることがちんぷんかんぷんだった。したがって、ここでは(1)を中心として、概論的な内容になることをお断りしておく。

 まずサケの〔動物行動学的研究〕であるが、研究の世界も日進月歩のようである。シロザケの行動を解明するのにデーターロガー(遊泳速度・水深・水温が記録できる装置)をサケの背に取り付けて大西洋を遊泳させたそうだ。私はまだ登山などに用いるGPSロガーも使えないというのに、サケの方はデーターロガーを背負っているという…。
 その結果、あるシロザケの個体はベーリング海から北海道沿岸まで2,760Kmを67日間かけて泳いだことが分かったそうだ。そして、そのサケは北洋を北海道に向かって迷わずに回帰していることも判明した。

 ただ、大洋上におけるサケの細かな行動を追跡することはまだ難しいため、洞爺湖の中で棲息するヒメマスとサクラマスが母川に回帰する行動を、さまざまな感覚機能を妨害する手法を用いて追跡したそうである。そのことから、サクラマスは視覚と嗅覚を用いて、ヒメマスは視覚を用いて母川へ回帰していると考えられると結論付けたそうだ。
 従来は、サケは磁気感覚が発達しているのではないか、との推論もあったが、どうやらこの実験ではそのことは確かめられなかったようである。

 続いて、〔神経内分泌学的研究〕であるが、サケの稚魚が降河回遊(川から海へ出ていくこと)のとき、母川を記銘するのは、脳から分泌され甲状腺系ホルモン、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが重要な役目をしていると考えられている。このような話を聞いただけで、私の脳は激しく拒否反応を示した。
 この後、上田氏がそうしたホルモンが回遊中にどう作用し、どのような働きをしてサケを母川に導くのかというメカニズムについて細かく説明してくれたが、私にはまったく理解不能な話だった。(う~む無念!)
 とても荒っぽい結論として、上記したようなホルモンの分泌動態が海へ出るとき、回遊して母川に近づいたときに激しく変化することから、そうしたホルモンがさまざまに作用しているらしいということが現在考えられているということだった。

 最後に〔感覚的神経生理学解析〕だが、サケは河川固有のニオイを識別して母川に回帰すると古くから言われてきたが、このことを確かめる研究である。
 これまでの研究で、サケが低濃度から感知できるニオイ成分はアミノ酸だそうである。このアミノ酸の組成や濃度を分析したところ、河川ごとに違う結果が出たということだ。
 このことからアミノ酸が母川回帰に重要な役割を果たしているらしいと結論付けられているようだ。

 まだまだ解明すべき点は多いようだが、「サケが生れた川に帰る謎」についてかなり研究が進んでいることをぼんやりとではあるが理解することができた。