田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

池の中は過激な世界

2015-09-17 21:30:35 | 大学公開講座
 山間の水たまりのような池の中では壮絶な生存競争が繰り広げられているという。まさに食うか、食われるかの過激な世界だそうだ。エゾサンショウウオやエゾアカガエルなどの両生類の壮絶だが、聴く者にとっては興味深い話を聞いた。 

 北大公開講座「北海道の野生生物:自然史と環境変化への応答」の第5講が9月16日(水)夜、地球環境科学院にあった。
 この回のテーマはタイトルのように「池の中は過激な世界 ~両生類のドラマチックな生き様を知る~ 」と題して北方生物圏フィールド科学センターの岸田治准教授が講師を担当した。
 今回の講座は提示される写真も、図解もとても分かりやすく、本シリーズでも最も楽しく受講することができた。

            
            ※ 講師が講義室に持ち込んだエゾサンショウウオの成体です。

 まずエゾサンショウウオだが、産卵した卵が高密度の環境の場合、孵化してから猛烈な共食いが始まるという。他より成長の早い幼生は、他の幼生を餌として非常に大きく成長することが実験で確かめられたそうだ。
 さらに、大きく成長できなかった餌となり得るようなサンショウウオは頭部にコブのようなものが発達し、飲みこまれないように形質が変化することも確かめられたそうだ。

 さらに実験では、エゾサンショウウオの幼生を、単独で飼育した場合と、複数で飼育した場合を比較したという。すると、単独の場合より、複数で飼育した方が早く成長するという結果が出たそうだ。このことは、複数で飼育される場合は、共食いのときの勝者となるためにもいち早く成長しようとするホルモンが働くためではないか、と講師の岸田氏は推測した。

            
            ※ こちらはエゾサンショウウオの幼生です。

 次にエゾアカガエルについてだが、エゾアカガエルもエゾサンショウウオと同じ池で産卵されるが、通常エゾアカガエルの方が1~4週間早く孵化するという。孵化が早ければ、それだけ成長も早く、エゾサンショウウオの餌ともなりにくいということだ。
 これが孵化する時期にそれほどの違いがない場合は、エゾアカガエルの幼生はエゾサンショウウオに丸呑みされるということだ。それを阻止しようと、エゾアカガエルの頭部が
呑みこまれないようにと、通常より丸く大きく成長することも確かめられているという。

            
            ※ エゾアカガエルの成体です。意外に小型のカエルでした。

 この他にもさまざまな実験から確かめられたことをお聞きしたが、ここでは割愛する。
 上記の中で、エゾサンショウウオの餌となる小さなエゾサンショウウオやエゾアカガエルがただ手をこまねいているだけではなく、環境に逞しく対応して、頭にコブを作ったり、頭部を大きく成長させたりと形質を変化させることで生き残りを図っているという面白い事実をお聞きすることができた。

 このお話を聞きながら、エゾサンショウウオやエゾアカガエルだけではなく、自然界の生き物は、種が生き残るために環境に逞しく適応しながら種の保存を図っているのだということを再確認した思いである。