田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

保坂正康講演会

2015-09-13 22:55:12 | 講演・講義・フォーラム等
 評論家の保坂正康氏は、左寄りと言われたり、あるいはネトウヨと称される人たちからは国賊呼ばわりされたりすることもあると聞くが、果たしてそうなのか? 保坂氏は人一倍日本の国を愛するからこそ、警鐘を鳴らし続けているのではないか、そう思えた講演会だった。 

            

 保坂氏の講演会の感想をブログに投稿するかどうか、ずいぶんと逡巡した。というのも、私は常々公言していることだが、拙ブログにおいては努めて政治的な話題を取り上げたり、発言したりすることは控えようと努めてきたからだ。
 保坂氏の場合は、リード文でも触れたように保坂氏の名前を出しただけで政治的な話題と受け取られかねないと思ったのである。

 そうした逡巡もあり、時間が経ってしまったが、やはり自分が聞いた講演・講座の記録は残すべしとの判断から、本日ようやく投稿する決断をしたのだ。ただし、私の感想などは極力控えて、保坂氏が述べたことを出来るだけ正確に記すことにしたい。
 講演会は9月3日(木)午後、(公財)「秋山記念生命科学振興財団」の特別講演会として開催された。講演題は「戦後70年を考える ~歴史的視点での考察」と題して80分間にわたる講演だった。

 保坂氏はまず、「戦後70年」という意味について、70年という時間は「同時代史」から「歴史」への移行を意味していると説いた。このことは、戦争を肌身で知っている世代が少なくなり、遺された文書や記録から太平洋戦争を語る時代になっていく、ということを指したものと受け止めた。
 
 そうした時代に移行していくからこそ、保坂氏は思想的立場や政治的信条を抜きして、当時の政治、軍事指導者が誤った次の3点については語り継いでいかねばならないとした。
その3点とは、
 (1)軍事が政治をコントロールしたこと。
 (2)特攻作戦、玉砕を国家のシステムとして採用したこと。
 (3)捕虜に関する条約を無視したこと。
と指摘した。この3点は、諸外国は用いなかったことだという。例えばヒトラーにしても、スターリンにしても、基本的には政治家であり、軍人ではなかった。しかし、日本においては軍が政治をコントロールし、ついには形の上でも軍が政治を司る形となったのは周知の事実である。

            

 保坂氏は上記3点を核にして多方面から論じたが、それを再現する力量は私にはない。
 一つだけ印象的な言説があった。
 それは「戦間期の思想」という言葉だった。戦間期とは、いわゆる戦争と戦争の間の期間のことだ。この「戦間期の思想」というのは、負けた側にとっては「復讐」の念に駆られる期間だという。第一次世界大戦に敗戦したドイツ、日露戦争で負けたロシア、いずれもが復讐の念に燃えて、ドイツは再び戦争を起こしたし、ロシアは終戦間際に日本に宣戦布告をして領土を取り返すこととなった。
 ところが、日本はこの70年の間、一度も「戦間期の思想」を持たなかったという。しかし、現在の日本は諸外国から「戦間期の思想」を持ったのではと疑念を抱かれている、と保坂氏は述べた。

 保坂氏の語り口が非常に抑制的であったことが印象的だった。しかし、氏の危機感は大きいようだ…。