田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 65 エンディングノート

2012-01-12 23:13:40 | 映画観賞・感想

 末期ガンを宣告された主人公の父親が素晴らしい! 最後までユーモアを失わず、人生の終末を自らデザインし後顧のないように整理する姿を描きます。一人の人生の終末を淡々と描くドキュメンタリーは観る者の中にじわっと迫ってきます。 

 “エンディングノート”とは、高齢者が人生の終末期に自身に生じる万一のことに備えて自身の希望を書き留めておくノートと辞典にあった。
 映画は主人公である砂田知昭が長年勤めた会社生活を終えてホッとしたのも束の間、余命半年という末期ガンの告知を受けてしまう。

          
          ※ 砂田の会社人生最後の頃、まだまだ生き生きとしていた砂田の表情です。

 何事にも前向きな砂田は自分の死を前にしても動ずることなく(少なくともカメラの前では)受けとめ、妻や家族に心配かけたくないと自分の最後のときまで自らデザインしていくのである。葬儀の式場の手配、母親や妻との最後の旅行、長男への引き継ぎ、などなど…。
 その最後のときまでカメラを回し続けたのは監督であり、ナレーターも務めた砂田の次女で映像作家の砂田麻美だった。

 1月11日(水)、この映画を上映しているシアターキノ(中央区狸小路6丁目)に向かった。平日であるにもかかわらずかなりの数の観客がいた。やはり私と同年代の人たちが多いようだった。
 自らの死を前にしてもカメラを意識することなく前向きに、ユーモアを忘れることなく振る舞う砂田の姿だけでも映画は十分に成り立っていたが、より効果的だったのは砂田の会社人生の終わりの部分も撮影されていて、それが効果的に織り込まれてきたことだった。
 いかにもモーレツ社員然とした活力ある砂田の姿…。対してガンが進行しすっかり痩せてしまった砂田の姿…。変わらないのはどんなときにも前向きで、ユーモアを忘れない砂田の姿…。

          
          ※ 辛い身体に鞭打って孫たちと海辺で遊ぶ砂田です。

 ガン宣告からおよそ半年後の2009年の年末、病状は一段と進み病院で最後のときを迎えることになった四日間もカメラは回り続けた。
 さすがの砂田も「もう少し生きて孫たちと遊びたかった」と弱々しく語る姿に館内からすすり泣きが聞こえたかと思うと、そうした状況でも茶目っ気たっぷりの砂田の言葉が館内に笑いを誘ったりするのだ。

 こうしたドキュメンタリーは砂田と次女である砂田麻美の間に絶大な信頼関係がったからこそ実現できた映画なのだろう。
 砂田知昭は人生の最後まで自分でデザインし、その通りに生きたカッコイイ男だった…。

          
          ※ 監督であり、カメラマンでもあった次女の砂田麻美です。