ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

トヨタが販売し始めたハイブリッドカー「アクア」が意味するものを考えました

2011年12月28日 | イノベーション
 トヨタ自動車は2011年12月26日に、リッターカークラスのハイブリッドカー「アクア」を発売しました。JC08モードの燃費が1リットル当たり35キロメールと国内最高レベルとなるそうです。

 車両価格は、一番安いLグレードが169万円からと、「プリウス」の実売価格に比べて約20万円、低価格です(実際には、装備によってかなり違います。エコカー減税は考慮していません)。



 12月27日発行の日本経済新聞紙によると、「アクアは発売直後に予約受注台数が6万台に上っている。納期は現時点で4カ月かかる」と、売れ行きは好調な滑り出しだそうです。

 「アクア」は単なる廉価版ハイブリッドカーという位置づけではありません。トヨタが国内で生産する乗用車として重要な車になりそうです。タイのバンコック市内の洪水から明らかになったように、本田技研工業(ホンダ)や日産自動車は海外で生産する自動車を増やしています。トヨタも社長の豊田章男(とよだあきお)さんは「国内での生産台数を維持し、雇傭を維持する」と発言していますが、その一方で財務担当の役員は「日本の他の自動車メーカー並みに、海外生産しないと収益が保てない」という趣旨の発言をしています。

 この点で、トヨタが国際的に優位性を持つハイブリッドカーで、事業収益を上げられることが実証できれば、トヨタは国内生産体制を維持する態勢を堅持することになりそうです。



 「アクア」の特徴は以下の通りです。ベースとなるプラットフォーム(車台)はリッターカー「ヴィッツ」と同じである「Bプラットフォーム」をベースにしています。車両寸法は全長3995×全幅1695×全高1445ミリメートルです。排気量1.5リットルの「1NZ-FXE」エンジンに、「プリウス」と同じシリーズパラレル方式のハイブリッドシステムを組み合わせています。

 アクアのハイブリッドシステムは「プリウス」に比べて、エンジンの長さ(車体に横置きした場合の幅)が51ミリメートル短く、質量は16.5キログラム軽い。トランスアクスル(トランスミッションとデファレンシャルギア)の長さは21ミリメートル短く、質量は8.0キログラム軽いものになっています。ニッケル水素2次電池のモジュールの幅は148ミリメートル短く、質量は11.0キログラム軽くなっています。



 プリウスと同様のハイブリッドシステムを基本的に使いながら、車両が小さくなった分だけ、モーター出力や電池容量を減らしています。モーター出力はプリウスの60キロワットから45キロワットに、ニッケル水素2次電池のセル個数は168セルから120セルと、それぞれ減らしています。

 大まかにいえば、モーター出力と電池セル数ともに70%程度に小型・軽量化し、その分廉価にしていることになります。これに伴って2次電池の電圧はプリウスの200ボルトから144Vに下がっています。アクアでは、モーター出力が低くてよい領域では、電圧を細かく制御し、燃費が最もよくなるように電圧を決定するなどの工夫を凝らしています。

 こうした技術の向上・改善によって、トヨタはハイブリッドカーの販売台数を増やし、日本での自動車市場規模を維持するように務めています。

 日本の自動車市場では、依然、軽自動車がやはり好調です。ハイブリッドカー「アクア」が日本の自動車市場にどのように影響を与えるのか、今後しっかりと見守りたいと思います。