まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『誠実な詐欺師』“ やさしい嘘 ”も必要かもね

2011-05-10 02:09:17 | その他の国の作家
DEN ARLIGA BEDRAGAREN 
1982年 トーベ・ヤンソン

以前『トーベ・ヤンソン短篇集』を読んで、孤独に支配された世界観が気に入りまして
長編を見つけたので読んでみることにしました。

うーん… 3時間ほどで一気に読んでグッタリしました

フィンランド(たぶん)のヴェスティルビィという町が舞台になっています。
漁業は廃れ、夏の間のボート造りと女性陣の刺繍が入ったみやげ物が主な産業と思われる
厳しい冬が訪れるところです。

登場人物は10人あまり。
短篇集よりは人の交流があって会話も多いのに、やっぱり寂しい…

姉弟二人で暮らしているカトリは、弟のマッツに部屋とボートを与えたくて
一人で暮らしている金持ちの画家アンナ・アエメリンの屋敷に入り込もうと考えました。

ふつう、誰かに取り入ろうとしたら愛想よく、気持よく、丁寧に接するもの。
しかしカトリは違いました。
読んでるこっちがム~っとしちゃうカトリの態度…上手くいくとは思えませんけど。

アンナもカトリといるとなぜか不安を覚えるし怯えてしまうんだけど
なぜかカトリを受け入れてしまうのね。

カトリの最大の武器は正直で誠実であることです。
でも、その誠実さが、人を信じて疑わないお人好しのアンナを変えていきます。

アンナがどんなふうにしてどのように変わっていったかは
イライラしながら読んで頂いた方がいいと思うので詳しくは書きませんけど
正直=善人という観念は捨て去った方がいいかも…
同じく、誠実であることが相手に対して優しいことなのかも疑問になってきます。

この物語の中で、マッツ以外の人々はなにかしらアンナを欺いています。
商品の値段、賃金、手間賃といった小さなごまかしから
印税、契約料など会社ぐるみの搾取
母と父の思い出から友人のありがたい言葉、何から何まで…です。
そしてカトリは誠実でありながら、アンナを最大限に利用しようとしています。

でもね、お金のことはともかく、真実を知らずにいた方が幸せだった…ということも
世の中にはあるはず。

本人に教えてあげなきゃ!と息巻く前に、ちょっと一息入れてもいいかもしれないですね。
コメント
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