まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『草の竪琴』美しい想い出の哀しさ

2010-07-25 00:07:44 | アメリカの作家
THE GRASS HARP 
1951年 トルーマン・カポーティ

この小説をどう表現したらよいかしら? と悩みましたが
結局私の貧しいボキャブラリーでは “ 美しい ” という言葉になってしまいます。

母親に続いて父親も亡くしたコリン少年が、11歳から16歳まで一緒に暮らした
かなり年上の従姉ドリーとの日々を回想する物語です。

ドリーは60歳の未婚女性ですが、純粋で無垢な少女のような女性です。
優しくておとなしくて、とても恥ずかしがりやでした。
薬草で水腫によく効く薬を作って、細々とお得意様に売っています。

ドリーの妹ヴェリーナはいくつもの商店を持っているやり手です。
町でも顔が利くし、家の中でも姉ドリーをさしおいて家長の座にすわっています。

ドリーのたったひとりの友人は、小さな頃ドリーの家に引き取られたキャサリン。
気の弱いドリーをかばい、ヴェリーナのことをボロクソに言う
ちょっと変わった年配の女性です。

コリン少年は、ほとんどの時間をドリーとキャサリンと過ごしました。
キッチンでのお茶、休日の野草摘み、屋根裏でのおしゃべり…
十代の少年にとって良い環境なのかどうかはさておき、コリン少年には心楽しい日々でした。

しかし、コリン少年がドリーと過ごした最後の夏、平穏な日々に終わりが訪れました。
ヴェリーナがドリーの薬に目をつけ、事業を興そうとしたからです。

ものすごくかいつまんで書くと、ドリーは珍しく妹に反抗するのね。
そしてキャサリンとコリンを連れて家出をしてしまいます。
3人はピクニックで見つけた木の上の小屋で暮らすことにします。

このことがヴェリーナのみならず、町の常識派たちを怒らせますが
それまでつき合ったことがないような、新たな友人もできました。

牧師や保安官が説得にきたり、なんとか家に連れ戻そうというおせっかいが押しかける中
3人の生活はどうなっていくのでしょう?

あらすじはともかく、ドリーとコリン少年の毎日は
カポーティの少年時代が下敷きになっているようです。
ドリーは彼が一緒に過ごした従姉のミス・スックがモデルです。

カポーティはその時代があまりにも楽しかったのか
『ティファニーで朝食を』に収められている『クリスマスの思い出』や
『夜の樹』の『感謝祭のお客』のような短篇でも書いていますよね。
読んでいると、本当に幸せだったんだろうな…と思える物語です。

文壇の寵児になり、セレブになった後にすさんでいったカポーティの晩年…
美しい想い出は彼にとってどんなものだったのでしょうか?

いつまでも心の中で光っている宝石だったのか、二度と帰れない過去の墓標だったのか…
コメント (2)
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