まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『ワインズバーグ・オハイオ』若者は都会を夢見る

2008-12-27 07:36:46 | アメリカの作家
WINESBURG,OHIO 
1919年 シャーウッド・アンダスン

スタインベックを続けて読んだら、アンダスンを思い出してしまって
『ワインズバーグ・オハイオ』を再読してみました。
訳者(橋本福夫氏)も一緒だったせいか、同じ本を読んでるのかと思ってしまいましたが
どちらかというとこちらの方が暗いですね・・・
あたかもワインズバーグという町が
夢破れた人たちの吹きだまりのように思えてしまいます。

25の短い物語には、切実な思いと孤独を抱いた様々な人たちが描かれていますが
全篇通して読むと1冊の物語に思えるのは、ジョージ・ウィラードという
ひとりの若者の存在によるものです。

ジョージ・ウィラードはワインズバーグ・イーグル紙という新聞社で
記者をしている十代の少年です。
老人も、変わり者も、なぜかジョージに打ち明け話をしたくなってしまい
彼は随所に顔を出します。
ジョージ自身も作家になりたいという希望と、思春期なりの悩みを持ち
また、父親と母親も人生に憎しみと不満を抱えています。

物語はジョージ・ウィラードの青春と家庭内の問題に
町の住人の奇異な行動をリンクさせて進んでいくわけですが
大きく分けると2パターンあるようです。

まず、人生の晩年にさしかかった人たちの後悔と絶望があります。
うまくいかなかった自分の人生、取り返しのつかない年月を哀れんで
あきらめとともに日々を送る人たち。

それから若者の焦燥感と満たされない欲望があります。
彼らが辿り着く答えは “ 都会 ” です。
都会へ行きたいという思いが叶わない人、出ていく人、帰って来た人、
などなどが登場します。
都会に行けばどうにか道が開けるだろうという思いに駆られるのは、今も昔も同じですね。
当時の都会と田舎にどれほどのギャップがあったのかは分かりませんが
やはり憧れの都で花開く自分の姿って、若者なら一度は夢見るものですよね。

物語はジョージ・ウィラードが都会に出発するところで幕を閉じます。
彼は作家になるため、都会の新聞社で働こうという目標を持っています。

ジョージの父親は旅立ちにあたって息子に
「 抜け目のない人間になれ 」という言葉を贈ると同時に
「 財布を無くすな 、ぼやぼやするな、世間知らずだと思われるな 」という
簡潔かつ完璧なアドバイスを与えています。
都会って恐ろしそうですものね。
ジョージは都会で成功できたのかしら?
けっこうぼんやりしてる子に見えるんですけど。

この物語がアンダスンの自伝的要素を含んでいるのだとすれば
(アンダスンもオハイオ出身です)
ジョージもひとかどの人物になれたのかもしれないですね。
       
                 
            こちらアメリカでの初版です。やっぱり暗そう・・・
コメント
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