庭の茂みから飛び立ったのは
クロアゲハだった。
別れを惜しむかのように
くるりと回転すると
ふわりと舞い上がり
夏の景色の中に姿を消した。
あれは遠い昔
私鉄の小さな駅でのこと。
別れを惜しむかのように
キミはくるりと振り向き
コートを揺らすと
人混みの中に消えていった。
遠く離れることなど
なんでもないと思っていた。
終わりなど
あるはずがないと思っていた。
けれどもう会えない。
別れたばかりのクロアゲハでさえ・・・。
いつくもの別れを重ねて
やっと気づいた別れを重み・・・。
アベリア〈スイカズラ科〉
copyright Maoko Nakamura〉