自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々
旅に出かけ
旅から帰る。
けれど
同じところには帰らず。
否、帰れず。
そして
思い出は綴らず
未来を紡ぐ。
思い出のかけらを
織り込みながら・・・。
シクラメン
copyright Maoko Nakamura
年が終わることを
空は知っているのか。
大気を洗うがごとく
雨が降りしきる。
気がつけば
雪に変わり・・・。
大地を清めんがごとく
雪が降りしきる。
正月が来ることを
空は知っているのか。
名残の菊
Copyright Maoko Nakamura
餅つきの手伝いに行った。
ついた餅を運ぶ時
「そこ、滑るからね」と言われ
気をつけて運ぶ。
運び終えて
引き返えした時
ツルリ!
尻餅をつく。
「そこ、滑るからね」
こういうことか。
痛みの中で
言葉の重みを実感する。
「滑った!」
「だから言ったでしょ!」
シャコバサボテン
Copyright Maoko Nakamura
部屋の片づけを始める。
音楽が聴きたくなって
「わが祖国」をかける。
喉が渇いて
350ml缶を持ってくる。
なんだか楽しくなってくる。
「T君に会えてよかった」
「こんなところにあったんだ」
「ロシア人はウォッカか」
片づけをしながら
あれこれ思い出したり
思わぬ発見をしたり
ロシア人のことを思ったり。
ひとり忘年会はおもしろい。
山茶花
Copyright Maoko Nakamura
太平洋側から来た人は
「山陰の冬は重苦しい」という。
今も低く雲が垂れこめ
雪がちらついている・・・。
大人になって
長い間、太平洋側で暮らし
山陰に帰って
初めて迎えた冬のこと。
なんだか妙に懐 かしかった。
なんだか妙に落ち着いた。
そうだ、この空こそ、冬の空。
ソリで駆け下り、
雪うさぎと遊んだ冬の空。
見上げると
いつもこんな空だった。
太平洋側から来た人は
「山陰の冬は重苦しい」という。
この空こそ、冬の空。
ワイルドストロベリー
Copyright Maoko Nakamura
「普通がいちばんいいんだよ」
おばさんは私に言った。
中学生のとき
私は学校へ
おばさんは職場へ向かう道すがらだった。
そのとき
何と答えかは覚えていないが
そうは思えない気がした。
というより
「普通」という意味が
わからなかった気もする。
それから数十年経ち
今では
ほんとうにそう思えるようになった。
だってそれは
自分自身を生きることだから。
おばさんは普通に生きて
84歳で旅立った。
デイジー
Copyright Maoko Nakamura
冷たい風がしぶとくし
温かい風がやさしくする。
冷たい風にありがとう
温かい風にありがとう。
そして
咲いた花、一輪。
今日
ここで
出会えたことに
ありがとう。
クリスマスの朝に・・・。
雪化粧のバラ
Copyright Maoko Nakamura
あの日
手を握ってくれたあなたへ。
伝えたいことはたくさんあるのに
うまく言葉にできなくて・・・。
ただ握り返すだけ。
あの日
手を握ってくれたあなたへ。
力になりたと思っているけど
何もできなくて・・・。
ただ手をつないで歩くだけ。
伝えたいことはたくさんあるのに
教えてもらうことのほうが多く
力になりたのに
励まされているのは私自身。
あの日
手を握ってくれたあなたへ。
「本当にありがとう」。
うまく言葉にできないけれど
なかなか力になれないけど
ここにいる。
いつか気持ちを伝えたくて
いつか力になりたくて・・・。
冬知らず
Copyright Maoko Nakamura
愛あるところに深謝あり。
深謝あるところに労苦あり。
労苦あるところに愛あり。
花かんざし
Copyright Maoko Nakamura
冬至 冬中 冬始め。
寒さは
ますます厳しくなるけど
明日から
日は少しずつ長くなる。
冬至-太陽の誕生日。
大地のケーキに
ワイルドストロベリーの
赤い実を添えた。
太陽の誕生日を祝して。
春がまた少し近づいた。
アッサリウム
Copyright Maoko Nakamura
冬空に
満月の光は狂おしく・・・。
その滴るような
光の衣に包まれて
心も狂おしく・・・。
ふと、思う。
「やってみよう」と。
昨日まで
するなんて
ほんの少しも
思っていなかったことを。
冬空に
満月の光は狂おしく・・・。
彷徨う心は吠えてみる・・・。
「やってみよう」と。
ジュリアン
Copyright Maoko Nakamura
梢だけになった欅が
立てかけられたホウキのように
街路にズラリ並んでいる。
残すところ、今年もわずか。
「さあ、大掃除の始まりだ」。
部屋を片づけながら心を整理し
窓を拭きながら心の曇りも落とし
要らないものを出して心もすっきり。
大掃除は気持ちいい。
大掃除はありがたい。
ホウキになった欅がつぶやく。
「さあ、大掃除の始まりだ」。
クリスマスローズ(ニゲル)の蕾
Copyright Maoko Nakamura
桜が咲くのはなぜ?
毎日、桜を生きているから。
向日葵が咲くのはなぜ?
毎日、向日葵を生きているから。
バラが咲くのはなぜ?
毎日、バラを生きているから。
毎日、自分を生きることで
花が咲く。
どこにもない
誰にも咲かせることができない
自分だけの花が・・・。
世界でいちばん愛すべき花が・・・。
デイジー
Copyright Maoko Nakamura
時の流れに杭さして
留まろうとしても
叶わぬこと。
時の小舟に乗ったなら
流れることを愉しめ。
照りつける太陽や冷たい風や
歌う鳥や群れなす魚や
揺れる木々や彩々の草花や・・・
移りゆく景色を愉しめ。
時の流れに杭さして
留まろうとしても
叶わぬこと。
時の小舟に乗ったなら
進むことを恐れるな。
赤ちゃんから子どもへ
子どもから成人へ
成人から老人へ・・・
移ろいゆく心と体を愉しめ。
時の小舟に乗ったなら
今を愉しめ。
公園のパーゴラ
Copyright Maoko Nakamura
焦らなくていい。
あなたがあなたで
わたしがわたしであるなら
いつか出会っていた。
急がなくていい。
それぞれがそれぞれを
生きているなら
どこかで出会っていた。
遅すぎることも
早すぎることもなく
いつかどこかで出会っていた。
そして
今日ここで
あなたに出会い
昨日までは知らなかった
未来を紡いでいく・・・。
ディアスキア
Copyright Maoko Nakamura