今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

密かに夏は…

2011-07-31 10:24:03 | 自然・植物

カナカナカナカナ・・・。

ヒグラシ鳴く夕暮れの庭で過ごす。

辺りはまだ明るい。

子どもたちのはしゃぐ声が

海風に乗ってやってくる。

すると辺りはストンと暗くなる。

夏至から1月以上経ち

日は確実に短くなっている。

盛りの夏の中で

密かに夏は去る準備をしているのだ。

そして準備が終わって

人は気づくのだ。

去りゆく夏の愛しさに・・・。

けれどつなぎとめる岸辺のないことに・・・。

明日別れる恋人たちのように。

ヒグラシの声がやんだ。

Photo_2 Photo_3

チェリーセージ〈シソ科〉

copyright Maoko Nakamura


クマゼミの詰問

2011-07-30 09:34:02 | 自分

UVカットのプラスチックの

サンバイザーをして出かける。

白い雲も青い空も緑の木々も

すべて薄い茶色を帯びる。

横断歩道の白線も車も建物も

すべて薄い茶色を帯びる。

世界の色がすっかり変わる。

最初は違和感を覚えた色も

慣れると本当の色のように思えてくる。

サンバイザーを取ると世界は返り

それがフィルターの色であったことを

今更ながら思い出す。

しかし返ったその色は

果たして本当の色なのか。

早々とやってきた赤トンボが

グルグル疑問の目を投げかける。

近くの木で見ていたクマゼミが

サアサアうるさく問い詰める。

ジリジリと焼けつく暑さにも耐えかねて

つい白状してしまう。

「実はよくわからないのです」。

色とりどりのポーチュラカが

ケラケラ笑いながらそれを眺めていた。

Photo Photo_2

ヘチマとゴーヤ〈ともにウリ科〉

copyright Maoko Nakamura


答えはいつもそこに

2011-07-29 17:04:01 | 気持ち

2年前の夏

この窓から見えた海が

あまりにも碧く美しく

恋に落ちてここにいる。

今日の海も

あの時のように碧く美しく

ふとあの瞬間を思い出す。

ここに住もうと思った瞬間を。

忘れてはいけないのだ

あの時のことを。

雨が碧さを失わせても。

雪が輝きを失わせても。

忘れてはいけないのだ

始まりの時を。

迷ったらそこへ還れ。

心を動かした永遠の瞬間へ。

答えはいつもそこにある。

Photo_3

ダリア〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


夏の甘酒

2011-07-29 12:43:59 | 食べ物

連日、30℃を超える暑さ。

江戸の人に習って

夏バテ防止に甘酒を飲む。

米と麹を発酵させたとろとろの液は

砂糖など加えていなのに驚くほど甘い。

しかも白砂糖と異なり

複雑な作りの糖で

ゆっくりと身体に吸収されていく。

すりおろした生姜汁を入れると

ピリリとしてさらにおいしく。

ラベルの栄養素を見ると

ビタミンB2や各種アミノ酸・・・。

その効能を

昔の人は身体で知っていたのだ。

江戸の人に習って

夏バテ防止に甘酒を飲む。

もう随分と暑い思いをした気がするが

夏はこれからが本番!

なんとか元気で過ごせますようにと。

Photo Photo_2

向日葵〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


海と大地と人と

2011-07-28 15:04:00 | 

海から生まれた人間は

海より深くなれないだろう。

大地で育った人間は

大地より大きくなれないだろう。

けれども

何も持たずに佇む時

海はやさしく迎えるだろう。

何も持たずに歩む時

大地は一緒に歩むだろう。

海から生まれた人間は

海より深くなれないだろう。

大地で育った人間は

大地より大きくなれないだろう。

けれども

愛を抱いて翔ける時

海より深く

大地より大きくなれるのだろう。

Photo Photo_2

アブチロン チロリアンランプ〈アオイ科〉

copyright Maoko Nakamura


増殖する部屋~草間彌生

2011-07-27 11:33:59 | 

彼女はドット(水玉)の部屋を作った。

闇の中で

ブラックライトに照らされて

無数の赤や黄色や青のドットが

浮かび上がる部屋を・・・。

宇宙の中にいるような

身体の中にいるような

明らかにいつもと違う空間。

しかし

その部屋の中で

人々は思い出すのだろう。

空の下で

いつも七色の美しい光に

祝福されて暮らしていることを・・・。

Photo Photo_2 Photo_3

ペチュニア〈ナス科〉

copyright Maoko Nakamura


なでしこ咲く!

2011-07-26 10:24:01 | 

山を越え、谷を越え

たどり着いた頂きで咲く、なでしこの花。

美しく逞しく・・・。

嵐を超え、雪を超え

たどり着いた野で輝く、なでしこの花。

優しく強く・・・。

敵を超え、己を超え

たどり着いた地で謳う、なでしこの花。

笑顔と涙で・・・。

苦しみの中で

何かが変わり、何かを変えた

なでしこの花。

この夏

それぞれの胸に咲いたなでしこの花。

Photo

撫子〈ナデシコ科〉

copyright Maoko Nakamura


エトランゼの朝

2011-07-25 09:34:00 | 自分

見慣れた部屋が

エトランゼのように佇む朝。

旅人であることを思い出す。

昔、リュックを背負って

旅していた時の朝のように。

ここは私の家ではなく・・・。

見慣れた自分が

エトランゼのように佇む朝。

旅人であることを思い出す。

昔、町から町へ

旅していた時の日々のように。

ここは私の故郷ではなく・・・。

なにもかもが

エトランゼのように佇む朝。

旅人であることを思い出す。

いつの時代も

誰もがそうであったように。

ここは私の家でなく・・・

ここは私の故郷ではなく・・・。

いずこも私の家であり・・・

いずこも私の故郷であり・・・。

*エトランゼ=見知らぬ人、外国人(フランス語)

Photo Photo_2

カサブランカ〈ユリ科〉

copyright Maoko Nakamura


夏ツバキの森

2011-07-24 14:14:01 | 

大山(だいせん)の森を歩く。

地面にたくさんの白い花。

あちらにもこちらにも・・・。

「夏ツバキ」。

見上げれば

やさしい緑の葉陰に

透き通るような白い花。

「夏ツバキ」。

義父が好きだった花。

義父は義母と一緒に

見ているのだろうか。

高い空の上から。

涙のように咲いては落ちる

夏ツバキ咲く森を・・・。

Photo Photo_2

芙蓉〈アオイ科〉

copyright Maoko Nakamura


「りんご園」の庭~マンザナール強制収容所~

2011-07-23 11:54:02 | 

砂漠で過酷な生活を強いられる中

「ここに庭があったらステキだ」と

彼は思った。

そして仲間と庭を造り始めた。

有刺鉄線に囲まれた

乾いたカリフォルニアの大地に。

完成した庭は緑にあふれ

石組の池を地下水が潤した。

そして何より人々の心を潤した。

庭造りは広がり

有刺鉄線の中にたくさんの庭が紡がれた。

庭は何を植えても

どこに石を置いてもよかった。

しかし彼らには

植えるべき木があり

石は置くべき場所があった。

記すべき言葉があり

句点に置くべき場所があるように。

そして

乾いた大地は水と緑のオアシスになった。

過酷な生活に変わりはなかったが

庭は美しい音楽のように

佇むものに癒しの時を奏でた。

それから60余年。

あの時、あの場所で

彼らと庭を造った男を記者が訪ねた。

封印していた過去が蘇る。

懐かしい庭の風景とともに

強制労働と、その後の過酷な生活の・・・。

男は記者に言った。

「おまえは、もう二度と来るな」。

男は繰り返した。

「おまえは、もう二度と来るな」。

あの闘いの日々に向かって。

再び封印し、

二度と開かれることがないことを願うかのように。

*「マンザナール」とはスペイン語で「りんご園」の意味。

Photo Photo_2

芙蓉〈アオイ科〉

copyright Maoko Nakamura


遠い午睡

2011-07-22 09:54:05 | 気持ち

目が覚めたら独りだった。

一緒に寝ていたはずの祖母の姿はなく

家は呼吸を忘れたように静まり返っていた。

独り。

世界に独り。

置き去りにされた不安。

そうだ、夏だった。

開け放たれていた窓の外は眩く

家の中はほの暗かった。

感情を表す言葉も

祖母を探す力も持たず

すべての思いが

「泣く」という行動に集約された。

破られた沈黙の向こうで呼ぶ声がした。

祖母はすぐ近くにいたのだ。

台所かどこかに。

世界は息を吹き返し

いつもの家に返る。

けれど

胸に巣くった「独り」は

もうそれまでの夏に返してくれなかった。

Photo

芙蓉〈アオイ科〉

copyright Maoko Nakamura


彼女を手折るな。

2011-07-21 11:03:59 | 自然・植物

葉ばかりになった桜並木を歩く。

木々の間に1本の夾竹桃。

呼びとめられた気がして、ふと見上げる。

愛くるしい桃色の花は

少女と大人とのはざまで

揺れる可憐なまなざしにも似て・・・。

十年この道を通っているのに

あなたに気づいたことはあったのだろうか。

話しかけられた気がして、耳を澄ます。

聞こえてきたのは裏腹に

その内部に波打つ激しい力。

黒い宿命を背負いながら

白い天命を探し求める人の

苦しみにも似た・・・。

十年(ととせ)この道を通って

やっと姿を見せてくれた桃色の花。

灼熱の中で、蝉時雨の中で

凛と咲く彼女を決して手折るな。

Photo Photo_2

夾竹桃〈キョウチクトウ科〉

copyright Maoko Nakamura


台風のあとで

2011-07-20 23:34:01 | 自然・植物

台風が去って庭に出てみる。

大風に叩かれた

庭の花々はみな疲れ

残った力を振り絞って

やっとの思いで自らを保っていた。

かわいそうだったのは

風の通り道にいた朝顔だった。

葉は無残にもチリチリになり

無邪気に遊ぶ子どものように

楽しげに戯れていたネットは

今やベッドのごとく

瀕死の体をそこに横たえていた。

やがて夜になり

降り出したこぬか雨が

労るようにチリチリの

朝顔の葉を包む。

願わくば

今日、傷ついたものたちが

すべて癒されますように・・・。

Photo_3 Photo_4

アパガンサス〈ユリ科〉

copyright Maoko Nakamura


それを「花」という。

2011-07-19 12:04:00 | 自然・植物

パンジーやアネモネや桜草や・・・

春の花がいって

生まれた空間に

黄色い夏の花を植えた。

眩い黄色が

夏服の少女のように

茶色い地面と緑の茂みに

微笑みかける。

さっきまで

むっつりしていたバラも

居眠りしかけていた紫陽花も

楽しげにおしゃべりを始める。

つられて

ベリーやハーブたちは

陽気な歌いを歌い出す。

暑さに沈んでいた庭が

饒舌に自らを語り始める。

一輪あるだけで世界を変える。

それを「花」という。

Photo Photo_2

ルドベキア〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


それでも雲は…

2011-07-18 10:44:01 | 自然・植物

雲はどこへ行こうと旅をしているのか。

ある時はポツンと独りで。

ある時は仲間と連れだって。

またある時は空を占領しながら。

雲は何を探して旅をしているのか。

ある時は孤高の頂きか。

ある時は幾つも連なる湖沼か。

ある時は悲しみに満ちた町か。

雲は旅をして

何が愉しいというのだ。

それでも雲は旅をする。

旅することでしか

旅することの愉しみを見つけることができないかのように。

人が歩むことでしか

歩むことの意味を見つけることができないように。

雲は旅をして

何が愉しいというのだ。

それでも雲は旅をする。

Photo

グラジオラス〈アヤメ科〉

copyright Maoko Nakakura