今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

おめでたいグラジオラス

2019-06-29 13:33:25 | 物語
白いグラジオラスが
紅いグラジオラスに
プロポーズをしたとさ。

ところが
紅いグラジオラスが言うことには
あなたと結婚したら
せっかくの紅い色が
薄くなってしまうから嫌だわ。

そこで
白いグラジオラスが言うことには
なに心配いらないよ、
一部を白くすればいいのさ。
そうすれば紅い色も
ぐっと引き立つというわけさ。

そんなら、いいわと結婚し
紅と白のめでたい花が
生まれたとさ。

めでたし、めでたし。
グラジオラス〈アヤメ科〉

ごあいさつの歌

2017-04-21 11:12:45 | 物語
浜はいつもごあいさつ
寄せ来る波とごあいさつ

昨日は静かにこんにちは
今日は元気にこんにちは

浜はいつもごあいさつ
寄せ来る波とごあいさつ

明日はどんなごあいさつ?


木々はいつもごあいさつ
そよぐ風とごあいさつ

昨日はのんびりごあいさつ
今日ははりきりごあいさつ

木々はいつもごあいさつ
そよぐ風とごあいさつ

明日はどんなごあいさつ?


人はいつもごあいさつ
出会った人とごあいさつ

昨日は花ちゃんとごあいさつ
今日は太郎くんとごあいさつ

人はいつもごあいさつ
出会った人とごあいさつ

明日はだれとごあいさつ?






メタセコイア〈ヒノキ科〉


彼岸花物語ーせつない恋の花

2016-09-23 11:18:46 | 物語
昔々
彼岸花が咲くとき
緑の葉も傍らに寄り添い
仲良く秋の日を楽しんでいた。

けれどある日
花と葉は
些細なことでケンカした。

花がクロアゲハと仲良くし過ぎるのを
葉が怒ったのか
葉がてんとう虫とばかり遊んでいるのを
花が怒ったのかは
もうどちらも忘れてしまったけれど。

そこでふたりは
神様にお願いをした。

「会わなくても
済むようにしてください」と。

「よしわかった」と神様は
ふたりの願いを叶えてやった。

だから彼岸花は
花が先に咲き
すっかり花が枯れてから
葉が出てくるというわけで。

けれど
ふたりがせいせいしたと思ったのは
ほんのつかの間のこと。

どんなにか後悔して
神様にお願いしたが
「二度と戻れない」という約束通り
神様は元には戻してくれなかった。

彼岸花の花が着飾っているのは
愛してやまない葉を想うゆえ
葉があんなに伸びるのは
花を探しているゆえであり。

彼岸花、彼岸花
せつないせつない恋の花。




彼岸花/曼珠沙華〈ヒガンバナ科〉

緑のドレス

2016-07-20 22:09:00 | 物語
グラジオラスの姉妹たち
ひいふうみよ…みんなで7人。

お城のパーティー招かれて
かあさん、ドレスづくりに大忙し。

長女には赤いドレス
次女には黄色いドレス
三女には白いドレス
どんどん仕立てて六女まで
きれいなドレスの出来上がり。

さてさて最後は七女の分。

そこでかあさん
はたと気づいた。

もう布が残っていない。
余りの白と赤で六女のドレス
布はすっかりなくなった。

そこでかあさん
はたと気づいた。

自分の葉っぱを
チョキチョキ切って
緑のドレスこしらえた。

かあさんほっと
胸なでおろし
七人そろってパーティーへ。

色とりどりの娘たち。
目移りしていた王子さまの
目に留まった緑のドレス。

なんだかとっても新鮮で
着ている娘もかわいくて
王子はすっかり気に入って
七女はお城にお嫁入り。


葉の化身 グラジオラスの ライム色

花緑 はっと目を引く 赤よりも


グラジオラス〈アヤメ科〉

ファザーグース

2015-06-13 10:08:51 | 物語
わたしら全部で11羽。
アヒルがガーガー歌ってた。

そこへコンドルやってきて
「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみーよー…。
10羽だ。


わたしら全部で10羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」
再びコンドルつぶやいた。

ひーふーみーよー…。
9羽だ。


わたしら全部で9羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみーよー…。
8羽だ。


わたしら全部で8羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみーよー…。
7羽だ。


わたしら全部で7羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみーよー…。
6羽だ。


わたしら全部で6羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみーよー…。
5羽だ。


わたしら全部で5羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみーよー。
4羽だ。


わたしら全部で4羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふーみー。
3羽だ。


わたしら全部で3羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひーふー。
2羽だ。


わたしら全部で2羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」

ひー。
1羽だ。


わたしら全部で1羽だよ。
アヒルがガーガー歌ってた。

「よーく、数えてみるんだな」


アヒルはガーガーもう歌わない。


そうしてコンドルいっちゃった。
アヒルのところへいっちゃった。


日野川河口の釣り人

あの子

2015-04-29 09:11:08 | 物語
だれもが
深山に遠足に。

だけど
あの子はお留守番。

ひがな1日に
子どもを抱いて。

けれどあの子は
もう泣かない。

涙はとっくに
尽き果てて。

遠い昔のお話か。

いいえ、
そうではありません。

あの子はいます、
おなじいま。


だれもが町へ
お祭りに。

けれど
あの子はお留守番。

ひがな1日
小さな部屋で。

けれどあの子は
もう待たない。

心はすっかり
すり減って。

遠い国のお話か。

いいえ、
そうではありません。

あの子はいます、
すぐそばに。


日がな1日
ぽつんとひとり。

あの子はいます、
おなじいま。

あの子はいます、
すぐそばに。


シャガ〈アヤメ科〉

やよいちゃん

2014-11-23 18:18:16 | 物語
これは一羽のうさぎと少年のお話です。

みなさん、
月でうさぎがお餅をついていることはご存知ですよね。
でも、そのうさぎは同じうさぎでないことはご存知でしたか?
だって、考えてみてください
ずっと同じうさぎだったら疲れちゃいますよね。

そこである期間が過ぎると
他のうさぎに交替するのです。

月の裏側は地球から決して見えませんが
そこにはたくさんのうさぎが住んでいて
お餅つきの練習をしながら
交替の時を待っているのです。

その監督役をしているのが
実はかぐや姫の一族なのです。
竹の中に生まれ
おじいさんとおばあさんに育てられたかぐや姫は
やがて月に帰ってしまいましたが
それはそんな仕事が待っていたからなのでした。

さて、ある期間、一生懸命お餅つきをしたうさぎは
交替すると、どこにでも行ってもよいことになっています。
そのまま月に残って暮らしてもいいし
他の星に行って住んでもよいことになっているのです。

とあるとき、とあるうさぎがお餅つきをしていました。
そのうさぎはお餅つきの期間が終わると
地球に行こうと思いました。
夢のなかに現れた男の子に会いに行こうと思ったのです。

かぐや姫から
「お餅つきをありがとう。
 さあ、好きなところに跳んでいきなさい」
と言われると、うさぎはぴょ~んとひとっ跳び。
地球にやってきました。
気がつくとペットがたくさんいるお店にいました。
そしてうじっと自分を見ている男の子に気がつきました。
その子はうさぎが夢で見た男の子でした。

「ママ、このうさぎがいいよ」
男の子が言いました。
そしてうさぎは車に乗せられ
男の子の家に向かいました。
ダイニングのテーブルのそばが
うさぎの新しいすみかとなりました。
男の子の家は山の方にあり
春が来るのが街よりも少し遅いのですが
三月になり、
窓から温かい日差しが差し込んでいました。

「三月にやってきたら、やよいちゃんだね」
男の子が言いました。
こうしてうさぎの名前はやよいちゃんとなり
男の子の家族と一緒に暮らし始めました。

うさぎは、時々、
月の仲間のことやかぐや姫のことなども
思い出したりするのですが
今の楽しみは男の子と遊ぶことと
お正月前になるとどこからともなく聞こえてくる
ぺったんぺったんという音を
ピンと耳を立てて聞くことでした。


月と山と海と

青虫

2014-10-03 10:25:52 | 物語
なにって、悲しみを食べているのです。
風と一緒に飛んできて
葉にべったりとついた悲しみを。
こうやって食べていれば
世の中から悲しみが少しでもなくなりはしないかと。
いや、もちろん私がこうして食べても
たかだか量はしれていますがね。
ほら、また飛んできた。
こんな具合にひっきりなしに飛んでくるものだからね
悲しみというのは…。
もちろん、雨も洗い流してくれますよ。
でもね、やっぱりまた飛んでくるもんで。
ほら、また飛んできた。

いや、時々、逃げ出したくなりますよ。
因果な役目を引き受けたものだと。
でもね、どこへ行くと言うんですか
ここを離れて。
それにね、ある時期が来ると
コクリと眠くなり
目が覚めるともう前の自分じゃなくなっているんですよね。
背中にはきれいな羽がついていて
もうどこへでも自由に飛んで行けるんですよ。

なにって、悲しみを食べているのですよね。



かんぞう<ユリ科>とやぶらん<ユリ科>

冬の子

2013-04-21 09:37:06 | 物語

「子どもが10人生まれたよ」

冬は嬉しくて

木枯らしピューピュー

吹きまくる。

あまり勢いよく吹いたので

子どもがひとり

ピューと春まで飛ばされたよ。

飛ばされた子どもは

悲しくてピーピー

泣いたものだから

春がなんだか肌寒い。

見かねた春は

冬への道を教えたよ。

冬の子どもは

時々ピーピー泣きながら

夏と秋を通って帰ってきたよ。

冬に帰った冬の子は

途中で体が温まり

小春日和になったとさ。

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フリージア〈アヤメ科〉

copyright Maoko Nakamura


昔、カモメは…

2012-11-14 16:33:20 | 物語

ピアノやヴァイオリンなどの音を聴きながら

音符はいつも思っていた。

自分も音のように

軽やかに空(くう)を舞いたいと。

そこで音符は神様にお願いした。

「私は生まれてこの方

紙にはり付けられたまま

どこへも行くことができません。

どうぞ私も音のように

空を舞えるようにしてください」と。

音符の切なる願いに

神様はそれもよかろうと

音符に灰色の羽をつけてやった。

すると音符は

ゆらゆらと楽譜から飛び立った。

それが全音符だったので

白い体に灰色の羽の鳥になり

その鳥を

人々はカモメと呼んだ。

だからカモメは

ゆらゆらと舞うように空を飛ぶ。

まるで昔暮らした五線譜を懐かしむように…。

Photo

山茶花(さざんか)〈ツバキ科〉

copyright Maoko Nakamura


森の小さな詩

2012-09-09 11:04:56 | 物語

幼木は風が嫌いだった。

風は幼木を揺らし不安な気持ちにさせた。

雨と太陽は友達だった。

けれど雨が長居をすると疎ましく思い

時折、太陽のおせっかいに嫌気がさした。

幼木は少しずつ大きくなった。

春のある日、幼木は

葉を揺らす風にふと安らぎを覚えた。

長居をする雨ともおしゃべりを楽しみ

おせっかいな太陽をもやさしく迎え入れていた。

幼木はすっかり大きくなっていた。

そして友と

春にはいずる幸せを分かち

夏には長ずる楽しさを分かち

秋には実る喜びを分かち

冬には慎む尊さを分かちあった。

やがて幼木は老木となり

ある日、根元から折れてばったり倒れた。

雨は涙で清め

太陽は温もりで包み

風は弔いの歌を歌った。

友に見守られて老木は大地に還った。

生まれたばかりの幼木が

その根元で風に揺れていた。

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欅〈ニレ科〉  大山・大野池

copyright Maoko Nakamura


転がる石

2012-06-29 15:42:19 | 物語

山を離れた石は

勢いよく転がり始めた。

尖った角が山肌にぶつかると

思わぬ方向に転がり

違う角をぶつけた。

そしてまた思わぬ方向に転がり

また違う角をぶつけた。

石は飛び跳ねるように

転がっていった。

「なんて気まぐれなやつなんだ」

見ていた木が言った。

石は痛かった。

石はいろんな角を

何度も何度もぶつけた。

やがて角は角でなくなり

石はころころと

気持ちよさそうに転がった。

もう痛みを感じなかった。

あの夢のような日々が

そうさせてくれていることを

石は知っていた。

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萩〈マメ科〉

copyright Maoko Nakamura


木に伝わる詩

2012-06-25 11:32:04 | 物語

人間が言うところの太古に

父と母は5人の子どもを産んだ。

母はすべてを与え

父はそれぞれを導いた。

人間が言うところの

時が流れている間

木はいつも詩っていた。

父と母のことを…。

けれど木は切り倒されて

詩を忘れた者たちは

きょうだいたちに刃を向けた。

直接的にあるいは間接的に。

残された木は詩う。

「父はひとり、母はひとり」と。

だれもが

母なる海と父なる太陽から

生まれたきょうだいなのだと。

伝え聴いた男は詩う。

東ティモールの森のそばで。

「父はひとり、母はひとり」と。

それ以上はなく

それ以下もないという

澄み切ったまなざしで…。

傍らで子どもたちが

笑ながらその詩を聴く…。

Photo

ホザキナナカマド〈バラ科〉

copyright Maoko Nakamura


小鳥と煙突

2012-03-21 23:13:31 | 物語

野にも森に春がやってきた。

小鳥は嬉しくて旅に出た。

空は青く、風は心地よく

小鳥は春を心行くまで楽しんだ。

すると大きな煙突があり

煙にむせて小鳥は苦しくなった。

小鳥は煙突に聞いた。

「どうして煙を吐いているのですか。

こんなに空が青いのに。

こんなに風が気持ちいいのに。」

煙突は答えた。

「私には灰色の空しか見えません。

私には熱風しか感じることができません。

こらえきれない悲しみを

煙と一緒に吐き出しているのです。

こらえきれない憤りを

煙と一緒に吐き出しているのです。」

小鳥はしばらく煙突に佇んだ。

それから再び旅立った。

小鳥にとって煙は

もうさっきまでの煙ではなくなった。

小鳥はほんの少し

もうさっきまでの小鳥ではなくなった。

Photo

ヒマラヤユキノシタ〈ユキノシタ科〉

copyright Maoko Nakamura


いとこの八之助(はのすけ)

2012-03-19 11:55:33 | 物語

ところで

「葉っぱのフレディ」にはいとこがいました。

(あくまでも自称であるが…)

名前は八之助で森に住んでいました。

黄緑色の春が終わり、深緑の夏も過ぎて

秋になると八之助は黄色くなりました。

ちょうどいとこのフレディが木から離れたころ

八之助も木枯らしに吹かれ

色づいた体を地面の上に横たえました。

八之助が周りを見ると

次郎や三郎や四郎や

たくさんの仲間たちが横たわっていました。

八之助が耳を澄ますと

くすくす笑う声が聞こえてきました。

不思議に思っていると

体がむずむずしてきて

八之助もくすくす笑い出してしまいました。

見ると小さな生き物たちが

ぺろぺろと体をなめているではありませんか。

小さな生き物たちは幸せそうで

八之助はますます愉快になってきました。

気がつくと八之助は小さく小さくなっていました。

そして雨と一緒に土の中へと入り込み

地下水に乗って長い長い旅をしました。

ある日

八之助は広くて明るいところに出ました。

海でした。

八之助はなんだか懐かしい気がしました。

そこに森があったからです。

植物プランクトンたちの海の森でした。

八之助は珪藻と結ばれて森の一部となりました。

つづく。

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やぶ椿〈ツバキ科〉

copyright Maoko Nakamura