花が開いた。
花は大地に感謝した。
ミツバチが花の蜜を吸った。
ミツバチは大地と花に感謝した。
人が蜂蜜を食べた。
人は大地と花とミツバチに感謝した。
プランクトンが生まれた。
プランクトンは海に感謝した。
小さな魚がプランクトンを食べた。
小さな魚は海とプランクトンに感謝した。
大きな魚が小さな魚を食べた。
大きな魚は海とプランクトンと小さな魚に感謝した。
人が大きな魚を食べた。
人は海とプランクトンと小さな魚と大きな魚に感謝した。
しかし人は感謝を忘れた。
大地が病んだ。
人は大地と花とミツバチの病を背負った。
海が病んだ。
人は海とプランクトンと小さな魚と大きな魚の病を背負った。
そして人は思い出した。
どんな生き物より
たくさん感謝しなければならないことを・・・。
紫陽花〈アジサイ科〉
copyright Maoko Nakamura
星のごとく輝く蛍を
笹で捕まえて
蛍草を入れた虫カゴへ。
時々、
カゴごと川に浸けて水を与え
夜ごと
その密やかな灯かりを愉しんだ。
そして
子どもの頃には
別の世界であった
闇にもまた馴染んでいった。
ほ、ほ、ほうたる こい。
こっちのみいずはああまいぞ。
あっちのみいずはにいがいぞ。
ほ、ほ、ほうたる こい。
もう昔ほどいないけれど
とっておきの場所が幾つかある。
光に誘われるように
谷間の川へ向かう。
月灯りは思いのほか明るく
水田からは賑やかなカエルの声。
星のごとき光の中で
垣間見るのは銀河の姿。
ほ、ほ、ほうたる こい。
こっちのみいずはああまいぞ。
あっちのみいずはにいがいぞ。
ほ、ほ、ほうたる こい。
ホタルブクロ〈キキョウ科〉
copyright Maoko Nakamura