自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々
温泉の湯船の中。
「じゃあ、10数えよう」
と母親が言った。
「1.2.3.4.5…」
子どもは大きな声で
数を数える。
「6.7.8.9…」
「10!」
と同時に
勢いよく湯船から上がる。
数を学びながら
約束事や我慢を学び
心の通い合いも学ぶ。
しっかり温まることで
風邪なども遠ざける。
日本の暮らしには
野の花のような
さりげない知恵がいっぱい。
来年も
そんな知恵が元気に咲く
良い年になりますように…。
山茶花〈ツバキ科〉
copyright Maoko Nakamura
誘われてカレーを食べに行く。
年配の女性が二人で切り盛りしている
カウンターだけの小さな店だ。
ハンバーグカレーのハンバーグなど
その場で玉ねぎを切ってこねて焼く。
どんどんやって来る客の
どしどし出されるオーダーに
女性たちは休む暇なく動き
カウンターに手早くオーダー品が並んでいく。
その間、もちろんレジもこなす。
インドカレーは450円
手作りハンバーグカレーは650円。
時折り、常連客の「良いお年を」
という声が店内に響き渡る。
年納めの大事な行事が
また一つ終わったかのような
満足した声で…。
スパイスでポカポカした体で
入ってきたガラスの扉を
開けて外に出れば
冷たい風に混じって
新しい年の足音がひたひたと…。
アリッサム〈アブラナ科〉
copyright Maoko Nakamura
いつもなにげなく
見送ってしまう行く年。
いつもなんとなく
迎えしまう来る年。
今年は
一つ決心をした。
笑いながら行く年見送り
笑ながら来る年迎えようと。
何も長く笑っている
必要はなく
カウントダウンが
始まったら笑えばいいのだ。
ほんの10秒ほど
何もかも忘れて。
終わりよければすべてよし。
笑う門に福来たる。
やってみない手はないと思う。
ジュリアン・プリムラ〈サクラソウ科〉
copyright Maoko Nakamura
気づきは一粒の種。
気づきの種を
育てることで
自分ならでは
花が咲き
実が実る。
気づきは一粒の種。
それぞれの中に
尽きることなく
存在している
一粒ずつの種。
気づきは一粒の種。
気づくことで
自らを咲かせ
実らせてくれる
幸せの種。
金魚草〈ゴマノハグサ科〉
copyright Maoko Nakamura
新年まで
あと4日とちょっと。
それでも
そんな気分にならないのは
きっとまだ大掃除を
していないからだろう。
掃除をしながら
いろんなことを思い出し
捨てるものを捨て
残すべきものを残し
一緒に気持ちも整理する。
きっとそんなことを
まだしていないからだろう。
立ち止まって
まんべんなく周りを見渡し
しみじみと過去を振り返り
さあ、大掃除。
そして
すっきりした部屋と心で
新しい年を迎えるのだ。
さて、何から始めようか。
葉牡丹〈アブラナ科〉
copyright Maoko Nakamura
クリスマス会に
およばれに行く。
バイキング形式のランチで
お腹が満たされ
子どもたちの笑い声で
胸が満たされる。
子どもたちの
楽しそうな笑い声は
星のようにきらめき
会場を輝させる。
昼間の室内を
満天の星空に変えて…。
ここを訪れるようになって15年。
ともにこの時を過ごす
幸せに感謝する。
時が紡いでくれた
特別なクリスマスのプレゼント。
ガーデンシクラメン〈サクラソウ科〉
copyright Maoko Nakamura
人は
歌に包まれて育っていく。
光の歌
風の歌…。
人は
歌をこだましながら育っていく。
花の歌
鳥の歌…。
やがて人は
自らの歌を口づさむ。
眼差しの中に
微笑みの中に
生き様の中に…。
人は
歌いながらともに生きる。
光と風と花と鳥と人とともに…。
すべてのものの一部となって
すべてのもののすべてとなって…。
野イバラの実〈バラ科〉
copyright Maoko Nakamura
いつもの場所に座って
いつもの風景を見ながら
細胞たちを整える。
いつもの気持ちで
いつものようにいられるようにと。
パーティーは終わった。
出会い語り合い
互いの想いを確かめ合って…。
またもう少し深く
互いの想いを感じ合って…。
いつも場所に座って
いつもの風景を見ながら
細胞たちを整える。
昨日生まれた
大切な気持ちが
いつものようにいられるようにと。
今日の気持ちの
自然な一部となって…。
ジュリアン〈サクラソウ科〉
copyright Maoko Nakamura
餅つきの手伝いに行く。
20㎏以上もの
ふかれた餅米を
杵や餅つき器でつき
ちぎって丸めて餅にする。
餅をつくのは近所のおじさん。
おばさんがタイミングよくひっくり返す。
私はつきあがった餅をちぎる役。
杵つきのものは
温度もほどよくなっており
腰がある。
餅つき器のものは
熱く腰もあまりない。
ひたすら餅をちぎり
出来上がったお餅を
豚汁と一緒に
お裾分けでいただく。
また一つ
年末の行事が終わり
また少し
お正月に近づく。
ストック〈アブラナ科〉
copyright Maoko Nakamura
ごめん。
キミの気持ちを
受け取ることができなくて。
断った後
小さな後悔が生まれた
その時すぐに
追いかけて
受け取ればよかったと
悔やんでいる。
ごめん。
キミの気持ちを
受け取ることができなくて。
しようと思えば
できなくはなかったのに。
でも
ありがとう。
相変わらず未熟な
自分自身に気づかせてくれて…。
大切なことを教えてくれて…。
無駄にはしないよ。
ストック〈アブラナ科〉
copyright Maoko Nakamura
レストランの窓側の席。
その向こうには滑走路。
動き始めた飛行機を見て
幼い少女が言った。
「見て、飛行機が動き始めたよ」。
大人たちのしゃべり声に
かき消されながらも
少女は再び言葉を発した。
「見て、飛行機が動き始めたよ」
まるで何か大発見したように。
少女に発見され
大人たちがほんの一瞬だけ
気に留めた飛行機は
滑走路を走り
青い空に消えていく。
小さな胸に生まれた
大きな感動に見送られて…。
少女に発見された
特別な飛行機として…。
ジュリアン〈サクラソウ科〉
copyright Maoko Nakamura
旅から帰ってきて
いつもの道を歩いて家へと向かう。
すると
街路樹の根元に咲いている
ツワブキたちが
「キミがいなくても
寂しくなんかなかったよ」と。
しばらく行くと
今度は信号のそばで
電線の2羽のカラスが
「ボクたちも
寂しくなんかなかったよ」と。
いよいよ家に近づき
庭のガーベラが言った。
「ワタシも
寂しくなんかなかったよ」と。
旅から帰ってきて
いつもの道を歩いて家へと向かう。
それでも
「帰ってきたよ」と言いながら
いつもの道と解けていく…。
パンジー〈スミレ科〉
copyrigt Maoko Nakamura
与えられた選択肢の中で
今まで
もっとも選ばなかった
だろうものを選んでみる。
運ばれてきた声に
素直に従って。
新しい自分と出会う
旅の証なればこそ。
金魚草〈ゴマノハグサ科〉
copyright Maoko Nakamura
いのちあるものとして
自らを労(いた)わり
他を労(ねぎら)い
いのちあるものとして
いのちあるものを
慈しみ讃えあう。
いのちあるものとして
いのちのことをふと想う。
瑠璃柳(るりやなぎ)の実〈ナス科〉
copyright Maoko Nakamura
久しぶりの友との
電話での会話。
切る時の挨拶は
「よいお年を」。
まだまだ
実感がわかないけれど
これからは
別れる時ごとに
その言葉を口づさみ
年の瀬を感じていくのだろう。
今年も今日を入れて
あと15日。
残りの日々を大切に迎えて
「よいお年を!」
唐辛子〈ナス科〉
copyright Maoko Nakamura