自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々
早いもので
今日で1年の半分が終わる。
明日から後半の始まり。
「もう半分しか残っていない」。
「まだ半分残っている」。
“半分のグラスの水”に
想いを馳せながら
残りの時に想いを馳せる。
「もう半分…」。
「まだ半分…」。
注ぎ足すことのできない
グラスの時に思いを馳せれば
残りの時がゆらり輝く…。
ロンドン塔のダイヤモンドのように…。
マリーゴールド〈キク科〉
copyright Maoko Nakamura
山を離れた石は
勢いよく転がり始めた。
尖った角が山肌にぶつかると
思わぬ方向に転がり
違う角をぶつけた。
そしてまた思わぬ方向に転がり
また違う角をぶつけた。
石は飛び跳ねるように
転がっていった。
「なんて気まぐれなやつなんだ」
見ていた木が言った。
石は痛かった。
石はいろんな角を
何度も何度もぶつけた。
やがて角は角でなくなり
石はころころと
気持ちよさそうに転がった。
もう痛みを感じなかった。
あの夢のような日々が
そうさせてくれていることを
石は知っていた。
萩〈マメ科〉
copyright Maoko Nakamura
互いが互いのそばに
たた佇む
庭の花たちよ。
心の笑顔を絶やさず
互いが互いのそばに
ただ佇む
人々のように…。
仰ぎ見れば
青い宇宙ときらめく光。
緑の草木も喜びぬ。
今ここにある奇跡を…。
互いが互いのそばに
ただ佇みながら…。
るりやなぎ〈ナス科〉
copyright Maoko Nakamura
それは
一瞬の出来事だった。
彼は笑った。
取り繕う間もなく
気持ちを放って…。
初めて見る彼の笑顔は
完璧な笑顔だった。
どんな厳しい審査員も
10点満点を出すような…。
彼は笑った。
世界でいちばんの
幸せ者のように…。
心のシャッターを切った。
その傍らには
笑顔がもう一つ…。
今こそ言おう。
「おめでとう」と。
心よりの祝福を込めて…。
ネジバナ〈ラン科〉 島根県庁前
copyright Maoko Nakamura
明るい笑顔と元気な声と…。
彼女がやってきて
みんなの心が輝いた。
彼女は
あふれんばかりのエネルギーで
自ら楽しみ
みんなを楽しませた。
通りの花壇の向日葵は
まだ固い蕾だったのに
もう向日葵を見た気がした。
太陽に向かってすくっと立ち
満面の笑みを向ける向日葵を…。
彼女は
確かに向日葵だった。
私の心に
夏の太陽を連れてきた。
ブタナ〈キク科〉
copyright Maoko Nakamura
人間が言うところの太古に
父と母は5人の子どもを産んだ。
母はすべてを与え
父はそれぞれを導いた。
人間が言うところの
時が流れている間
木はいつも詩っていた。
父と母のことを…。
けれど木は切り倒されて
詩を忘れた者たちは
きょうだいたちに刃を向けた。
直接的にあるいは間接的に。
残された木は詩う。
「父はひとり、母はひとり」と。
だれもが
母なる海と父なる太陽から
生まれたきょうだいなのだと。
伝え聴いた男は詩う。
東ティモールの森のそばで。
「父はひとり、母はひとり」と。
それ以上はなく
それ以下もないという
澄み切ったまなざしで…。
傍らで子どもたちが
笑ながらその詩を聴く…。
ホザキナナカマド〈バラ科〉
copyright Maoko Nakamura
彼らの悲しみは
昨日の私たちの悲しみ。
彼らの悲しみは
明日の私たちの悲しみ。
彼は歌う
悲しみが癒されるよう。
彼は歌う
悲しみが喜びに変わるよう。
彼の歌が森に響く
神々の住む森に…。
彼の歌が大地に響く
血と涙に染まった大地に…。
「カンタ(歌え)! ティモール」。
世界に
新しい夜明けを
告げるために…。
カラー〈サトイモ科〉
copyright Maoko Nakamura
静かに目を閉じ
歩いてきた道のりを
振り返れば
道の途中が
陽だまりのように温かく…。
静かに目を閉じて
歩いてきた道のりを
振り返れば
そのありがたさが
少し深いところでありがたく…。
静かに目を閉じ
振り返えれば
薄闇の中で
心の窓が開いていく…。
チョコレートクローバー〈マメ科〉
copyright Maoko Nakamura
待ちぼうけ
待ちぼうけ。
けれど夕焼け空は美しく
この空を
待っていたことを思い出す。
待ちぼうけ
待ちぼうけ。
けれどそよ吹く風は心地よく
この風を待っていたことを
思い出す。
待ちぼうけ
待ちぼうけ。
なんて幸せな待ちぼうけ。
ルドベキア〈キク科〉
copyright Maoko Nakamura
緑の葉陰に
赤い実と黄色い実。
赤い実は
元気のお守り。
黄色い実ば
幸せのお守り。
今年も
垣根に実った
おいしいお守り。
そっともぎ取りほおばれば
梅雨曇りの空の下
夏がにわかに愛おしく。
ラズベリー、イエローラズベリー〈バラ科〉
copyright Maoko Nakamura
その時
とある感情が
心の底から湧き上がる。
その湧き上がった感情が
覆っていた垣根を
一つ取り除く。
その様に
自らがたくさんの垣根を
作っていたことを気づかされる。
画期的な発見!
だからといって
すべて取り除けるはずはなく
再びぐるぐると歩き出す。
けれどほんの少し明るくなって…。
雲の切れた梅雨空のように…。
アスチルベ〈ユキノシタ科〉
copyright Maoko Nakamura
大地に染み込む
雨のごとく
友の優しさが
染み込んでいく。
雨がもたらしてくれた
ありがたい贈り物。
そんなふうに
優しさをもらって
生きていることを
これから時々
思い出すのだろう。
今日のような
降りしきる雨の日には…。
否
忘れまじき。
ラムズイヤー〈シソ科〉
copyright Maoko Nakamura
置きっぱなしの椅子と
咲き始めた白いアジサイの間の
小さな隙間に
こぼれ種で芽吹いた
ゼニアオイが
赤紫色の花をつけていた。
遅れて咲いて
小さな茎に
小さな花一つ。
けれど
なんだか誇らしそうで
なんだかこちらも嬉しくなった。
今日もどんより梅雨曇り。
けれど
パーッと心に陽が差した。
庭が時々見せてくれる
小さなマジック。
ニゲラ〈キンポウゲ科〉
copyright Maoko Nakamura
蛍を初めて見た
あの子は泣いた。
「こんなにきれいなものを
見たことなかった」と。
その涙を見て
大人の目にも涙が光る。
空の上では星がキラリ。
真っ暗な山間に
蛍の光と涙と星と…。
もう空と地の
境もなく…。
金魚草〈ゴマノハグサ科〉
copyright Maoko Nakamura
葛アンがかかった
見た目も爽やかな
茶碗蒸しの具は
黄色い銀杏でもなく
白い百合根でもなく
赤い梅干し。
茶碗蒸しも
夏のしつらえ。
優しさの中の
酸っぱさが心地よく…。
その心遣いも
ありがたく…。
南天〈メギ科〉
copyright Maoko Nakamura