今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

金木犀の香り

2011-09-30 12:03:32 | 自然・植物

しとしとと降る雨の中

用事があって街まで出かける。

古い洋館の前で

わたしを呼び止めたのは

甘く優しい香り。

傘をかしげて見上げると

蜜柑色の小さな花。

門柱の側に佇む満開の金木犀。

懐かしい友に出会ったように

しばしその香りを楽しむ。

秋の大切な楽しみを思い出す。

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金木犀〈モクセイ科〉

copyright Maoko Nakamura


和解をした桜の木

2011-09-29 06:44:00 | 自然・植物

台風が過ぎ

風と和解をした桜の木が

秋の調べを奏でている。

小刻みに葉を揺らし

時折

ゆっくり枝をしならせ・・・。

そのたびに葉で光が踊る。

台風が過ぎ

風と和解をした桜の木が

秋の調べを奏でている。

こんなにも互いに愛し合えるのだと。

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ダンギク〈クマツヅラ科〉

copyright Maoko Nakamura


こんなふうに愛は…

2011-09-28 09:33:15 | 自然・植物

大山の南壁を日本海へと下る。

ながらかな山がいくつも重なり

夕暮れの中に

幻想的な風景が広がっていた。

たまたまいつもと違う道を下り

たまたまこの風景に巡り合う。

けれど・・・

たとえ目に触れなくとも

いつもここにある。

こんなふうに愛は

いつもそこにあるのだ。

山のように・・・。

重なり合う山々のいちばん海側

島根半島の山の端で

夕陽が最後の灯りをともしていた。

たまたまこの時間にここを通り

たまたまこの風景に巡り合う。

けれど・・・

たとえ気づかなくとも

いつも営まれている。

こんなふうに愛は

たえまなく営まれているのだ。

太陽のように・・・。

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彼岸花〈ヒガンバナ科〉

copyright Maoko Nakamura


ラ・カンパネラ

2011-09-27 10:23:58 | 

ピアノから紡ぎ出される音が

ホワイエを美しい音の色で満たした。

秋の木洩れ日のような

包み込むような優しい音色。

ピアノの屋根に映し出された指が

ままごと遊びをしているかのように

楽しそうに跳ねていた。

今宵、見る夢は

月の光あふれるススキの野辺か

鐘の音響く異国の町か。

一夜が明けて

無性に旅に出たくなる。

夢の中で響いていたのは

きっとカンパネラ(鐘)に違いない。

*山城裕子さんのコンサートにて

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フレグラントオールドローズ〈バラ科〉

copyright Maoko Nakamura


ありがとう、お米!

2011-09-26 09:43:58 | 食べ物

新米を炊いて食べた。

黙って食べる家族から

「おいしい」という

無言の声が聞こえてきた。

農業は

地域を活性化させ

健康を育み

環境を保全し

食糧を他国に武器にさせない役割も果たす。

稲作は数千年の昔からそれらを培い

私たちのDNAを育んできた。

あらゆる汚染から

水田を大地を守らなければならない。

それが命を守ることだから。

食べ終わった家族が

満足そうに席を立ち

また新しい1週間が始まる。

窓の外には里まで降りてきたススキの穂。

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ヒヨドリバナ〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


世界でいちばん大きな窓

2011-09-25 09:13:59 | 気持ち

天上に広がる青い空。

思い出そう

この空が宇宙に

つながっていることを。

どこまでもどこまでも・・・。

世界でいちばん大きな窓を開けて

さあ、1日が始まる。

天上に広がる星の空。

思い出そう

この空が宇宙に

つながっていることを。

どこまでもどこまでも・・・。

世界でいちばん大きな窓を開けて

さあ、あなたが始まる。

思い出そう、雨の日も。

思い出そう、闇の夜も。

この空が宇宙に

つながっていることを。

どこまでもどこまでも・・・。

開けよう、今日も

世界でいちばん大きな窓を。

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蒜山ハーブガーデン「ハービル」より

copyright Maoko Nakamura


彼岸の夜明け

2011-09-23 09:04:06 | 自然・植物

山の裾野と

その上に架かった雲を

暁が地の底から輝かせ

灰の空を青く塗り替えていく。

爪先のような三日月は

白い紙になって

青い宇宙に溶けていく。

けれどそれはまだ顔を出さない。

待ちわびたトンビが

円を描きながら様子をうかがう。

虫たちがフィナーレとして迎えようと

演奏にいそしむ。

いよいよ。

雲間から光が束になってあふれ出し

それが顔を出す。

すべすべとした赤い燃える火の玉が。

そしてグイグイと空を昇り

川面に金色の道を作る。

此岸から彼岸へと続く道のごとく

ゆらゆらと揺れながらも

ゆるぎない美しい道を・・・。

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バラ〈バラ科)                  日野川河口の夜明け

copyright Maoko Nakamura


台所の秋

2011-09-22 09:24:02 | 食べ物

我が家の台所は

味噌汁を作らなくなって夏となり

味噌汁を作るようになって夏が終わる。

味噌汁が体に良いとわかっていても

夏は暑くて受け付けない。

そこで味噌は炒め物やタレに使う。

けれどある日、味噌汁が食べたくなる。

豆腐の味噌汁を作った。

パジャマは長袖に変わり

夏掛けも毛布になり

秋の花も咲き

あらあら

もうすっかり秋になっていた。

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ダリア〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


台風15号の最中に

2011-09-21 10:14:02 | 自然・植物

視界の中から「青」という色が消えた。

灰色の雲が海に垂れこみ

海は白波でのみ、その存在を主張する。

ここは空ではないのだと。

山にも雲が垂れこみ

その存在を消してしまった。

山は辛抱づく沈黙を守っている。

雨が白い煙のようになって

あらゆるものを叩きながら走り抜けていく。

草木を、電信柱を、窓を・・・。

それを加勢するように

風が、海が低くうなっている。

川土手を一人のランナーが駆けている。

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エキナセア〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


秋の夕げ

2011-09-20 12:04:15 | 自然・植物

つるべ落としの日は沈み

田舎の家の

大人ばかりの静かな夕げ。

ならば

われらの出番とばかりに

庭で鈴虫や松虫が

得意の曲を奏でてくれる。

リーンリーンリーン・・・

チンチロリン・・・。

リィリィ・・・、ジィジィ・・・

コオロギも。

「ああ、賑やかだね」と

静かな夕げを楽しむ。

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ダンギク〈クマツヅラ科〉

copyright Maoko Nakamura


「トンボーイ」

2011-09-19 08:14:02 | 自然・植物

夏から初秋にかけて見られる

「トンボーイ」。

たいがい連れだって自転車で現れ

町を縫うように駆け回る。

スイスイスイスイ・・・トンボのように。

真っ黒な顔にキラキラ光る目。

ハンドルを握りしめる黒い羽のような腕

細い機敏そうな体。

「来た」と思った瞬間に

あらゆるものを巧みにかわして

もう遠くへ行っている。

トンボーイは夏の風物詩。

けれど一部地域では絶滅をしてしまい

今では絶滅危惧種として

『レッドデータブック』ものになっている。

トンボーイは豊かな自然と

住みよい町がなければ現れない。

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ハゼラン/三時草〈ユリ科〉

copyright Maoko Nakamura


白い朝

2011-09-18 10:34:09 | 自然・植物

雨上がりの朝。

雲と海が一つになり

地球が呼吸を

やめてしまったかのように

風はぴたりとやみ

木も草も息をひそめている。

鳥は止まり木で

遠慮がちに辺りをうかがう。

蝶だけが

特権を与えられたもののように

ゆうゆうと羽をはばたかせて天地を横切る。

けれど決して音を立てず。

川土手を散歩する父子が

白い空に溶け込んでいく。

自転車の少年が

白い海に溶け込んでいく。

まだ夢の続きを見ているような

秋の日曜の朝。

雨上がりの白い朝。

遠い夢の続きを見ているような・・・。

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秋明菊〈キンポウゲ科〉

copyright Maoko Nakamura


ガーベラに想う

2011-09-17 16:44:02 | 

「あなたと出会っていなければ

私は今頃、どうしていたのだろう」

とあなたは言う。

「あなたと出会っていなければ

私こそ、どうしていたのだろう」

と私は思う。

気がつけば

10年の月日が流れ

振り返れば

花が咲いていた。

とりどりの思い出の花が・・・。

あなたと出会っていなければ

庭のガーベラの花もまた

咲いていないに違いない。

ガーベラを植えたのは

あなたがいちばん好きな花だから・・・。

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ガーベラ〈キク科〉

copyright Maoko Nakamura


わたしはだれ?

2011-09-16 11:04:02 | 自分

わたしはだれ?

流れる雲に問うてみる。

雲は教えてくれたけど

雲の言葉がわからない。

わたしはだれ?

行き交う風に問うてみる。

風は教えてくれたけど

風の言葉がわからない。

わたしはだれ?

佇む木に問うてみる。

木は教えてくれたけど

木の言葉がわからない。

仕方がないので

自分自身に問うてみる。

わたしはだれ?

言葉はちゃんとわかるのに

わたしはなんにも教えてくれない。

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ヤブラン〈ユリ科〉

copyright Maoko Nakamura