今、ここで(Now ,here) by 中村真生子

自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々

あの子

2015-04-29 09:11:08 | 物語
だれもが
深山に遠足に。

だけど
あの子はお留守番。

ひがな1日に
子どもを抱いて。

けれどあの子は
もう泣かない。

涙はとっくに
尽き果てて。

遠い昔のお話か。

いいえ、
そうではありません。

あの子はいます、
おなじいま。


だれもが町へ
お祭りに。

けれど
あの子はお留守番。

ひがな1日
小さな部屋で。

けれどあの子は
もう待たない。

心はすっかり
すり減って。

遠い国のお話か。

いいえ、
そうではありません。

あの子はいます、
すぐそばに。


日がな1日
ぽつんとひとり。

あの子はいます、
おなじいま。

あの子はいます、
すぐそばに。


シャガ〈アヤメ科〉

ならば…

2015-04-28 22:10:34 | 気持ち
私が動けば
なにもかもが止まり
私が止まれば
なにもかもが動き出す。

ならば
動きながら止まれという。

私が動けば
なにもかもが止まり
私が止まれば
なにもかもが動き出す。

ならば
止まりながら動けという。


月と八重桜〈バラ科〉

犬と公園

2015-04-27 09:58:09 | 「かれん」
所在なさげに
塀越しに
公園を見つめる犬よ。

すべり台には
幾人かの子ども。

きみは
子どもが遊んでいる時は
遊べないことを知っている。

心なしか
淋しげなきみの背中。

けれどきみは
現実を受け入れるのを
厭わない。

そして
静かに今を過ごす。
やがて
待ち望んだ今が
やってくるまで。


公園で遊ぶ「かれん」

八重桜

2015-04-26 09:56:38 | 自然・植物
車から降りると
すでにパーティーは
たけなわ。

木という木
梢という梢の
誰もが
ピンク色のドレスをまとって
美しさを競い合う。

深山の
湖のほとりの
八重桜たちの
いちばん美しい瞬間(とき)。


八重桜〈バラ科〉

ハチミツ

2015-04-25 22:14:23 | 食べ物
巣箱に耳を近づけると
聞こえてくるのは
ブーンという
ミツバチたちの羽音。

取ってきた蜜を
口移しで渡し
サラサラだったものが
その過程で
だんだんとろりと
してくるのだという。

働きバチの寿命は
収穫期で1か月ほど。
その間
朝から夕方まで
飛びまわって蜜を集め
一生のうちに集める蜜は
スプーン1杯ほど。

スプーン1杯のハチミツ
それは
働き通しだった
ミツバチの一生。


二ホンミツバチ

『ミモザ館でつかまえて』

2015-04-22 09:44:36 | 気持ち
『ミモザ館でつかまえて』という
大島弓子のマンガの影響で
長じて庭にミモザを植えた人は
少なからずいるのではないかと思う。

私もその一人。
いつかミモザの咲く家に
住みたいと思っていた。

鳥取の袋川沿いにあった
ミモザの巨木が
大雪で根元から折れた数年前。
庭付き戸建ての借家に引っ越し
なにはさておき
ミモザの小さな木を植えた。
これでまた毎春
ミモザの花が見られると。

もちろん
ミモザ館のような
立派な家ではないけれど
ミモザが咲く頃
思い出すのは
あのマンガを読んだ頃の
甘酸っぱい想い。

そして
就職も決まっていないのに
イタリアへ行き
ミモザを持って歩いていた時
「ほ~ほ~、ミモザだね」
って言っていた(たぶん)
イタリアのおじさんのこと。

ミモザはイタリアでは
女性運動の象徴の花であり
今では愛を表す花だという。

ミモザ。
その名前を聞き
その花を目にするとき
いつでも
特別な想いにしてくれる花。

夏の前には
ごま粒のような花芽が生まれ
春の開花の準備が始まる。


影と「かれん」

葉書

2015-04-21 16:52:41 | 
ポストの中に
1枚の葉書。
見れば
懐かしい名前。
転居するたびに
葉書をくれていたが
今回は
大学の先生になった
というお知らせ。

ここを離れて10年近く。
その間、
きっとその前も
一生懸命勉強し
たどり着いた一つの扉。
その扉を開け
さらに先へと
進んでいくのだろう。

おめでとう。
がんばったね。
山を越え
海を越え
エールよ届け!


キジムシロ〈バラ科〉





話の花

2015-04-20 20:21:47 | 
山の向こうから
懐かしい人がやってくる。

数人で食卓をともにし
話に花を咲かせる。

時は流れて
それぞれの状況も
変わったけれど
ともに過ごす気持ちは
少しも変わらず。

否。
時を重ねて
思う気持ちはより深く。

和やかな食卓に
色とりどりの話の花。
懐かしい花ではなく
今と未来に咲く花。


おうちの前の「かれん」


信頼

2015-04-19 10:07:33 | 「かれん」
見つめあう
瞳に映るのは
自らの姿。

私はあなたの瞳に
あなたは私の瞳に。

見つめあう
瞳に映るのは
自らの姿。

あなたを信じるという
偽りのない姿。

見つめあう
瞳に宿るのは
自らの心。

私はあなたの心に
あなたは私の心に。

見つめあう
瞳に宿るのは
自らの心。

あなたを愛するという
偽りのない心。


雨の日の「かれん」

ボタン

2015-04-18 22:10:34 | 
ベッドに座っている母の
パジャマの
かけ忘れている
上から3つ目のボタン。

一度かけて
きちんとかかっていないようで
それが気になり
もう一度かけ直す。

遠い日に
きっと母が
そうしてくれたように。

ベッドに座っている母の
パジャマの
かけ忘れている
上から3つ目のボタン。

過去を覗き見る
万華鏡。


チューリップ〈ユリ科〉

草むら

2015-04-17 14:14:40 | 自然・植物
犬は
クルミを見つけて
立ち止まり
噛み始める。

カリカリカリカリ…。

その音を合図に
私は動きを止め
意識を草むらに
集中させる。

草たちが送る信号に
同調しようと。

イネ科の草たちが
絶え間なく
発するその信号に。

次第に
道が消え
川が消え
海が消え
空が消え
犬も消え
私も消え…。

カリカリカリカリ…。

その音を合図に
再びここに返ってくる。


クルミを見つけてかじる「かれん」

二人の先生

2015-04-16 09:59:23 | 
二人の先生。
一人は高校の先生。
もう一人は塾の先生。

二人とも習ったことはなく
二人とも長じて知り合う。

そして
長い時をともに過ごし
二人より学び続けている。

一人からは生きる喜びを
もう一人からは喜びのある人生を。
そして
学び続けることの大切さを。

学校を卒業してから
出会った二人の先生。

まだまだ卒業は
できていないとばかりに。


ハナニラ〈ユリ科〉