石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

メジャーズに比べ傷の浅かったENEOSと出光興産:2020年4-6月期業績比較(1)

2020-08-31 | 海外・国内石油企業の業績
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。http://mylibrary.maeda1.jp/0513MajorEneosIdemitu2020AprJun.pdfはじめに
 国内1位、2位の石油企業ENEOSホールディングス(6月にJXTGから社名変更、以下ENEOS)と出光興産(以下 出光)の2020年4-6月期決算が相次いで発表された。

以下はENEOS及び出光の決算短信の中から売上高、純利益、売上高利益率、上流部門利益及び下流部門利益を取り上げ、国際石油企業メジャー5社(Shell, ExxonMobil, BP, Total及びChevron、以下メジャーズ)と比較したものである。

通貨については日本企業2社の決算は円建てであるため、各社の決算付属資料に示された為替レートで換算したドル建て表示で比較した。

メジャー五社、ENEOS、出光興産の詳細な決算資料は下記の各社ホームページをご覧ください。

ExxonMobil:
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2020/0731_ExxonMobil-reports-results-for-second-quarter-2020
Shell:
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2020/second-quarter-2020-results-announcement.html
BP:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/second-quarter-2020-results.html
Total:
https://www.total.com/media/news/press-releases/second-quarter-2020-results
Chevron:
https://www.chevron.com/stories/chevron-announces-second-quarter-2020-results
ENEOSホールディングス:
https://www.hd.eneos.co.jp/ir/library/statement/
出光興産:
https://www.idss.co.jp/content/100032125.pdf

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(8月31日)

2020-08-31 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
・レバノン首相に駐独大使Musrapha Adib。マクロン仏大統領が各派を説得

・トランプ大統領娘婿クシュナー上級顧問、イスラエルでネタニヤフ首相と会談

・イスラエル代表団とクシュナー米上級顧問、今日の民間航空開設第一便でUAE訪問
・UAE、1972年以来のイスラエルボイコット法を正式に廃止。民間の投資、貿易が活発化
・サウジ南部Abha空港にイエメンフーシ派がドローン攻撃。サウジ側が撃墜
・カタール:月額275ドル(1,000リアル)の最低賃金制度。ワールドカップ2022に向け労働条件改善
・サウジ証券市場でデリバティブ取引開始
・ドバイ、政府機関の会社設立の新法成立。懸念される純民間企業との競合





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(45)

2020-08-29 | その他
(英語版)
(アラビア語版)

第6章:現代イスラームテロの系譜

2.やすやすと国境を越えるイスラーム・テロ
テロリズム(以下テロと略す)の定義である「政治目的のために、暴力或いはその脅威に訴える傾向」(広辞苑)に従えば、イスラーム・テロという宗教に依拠したテロにも政治目的があることになる。イスラーム・テロの政治目的とは何であろうか。イスラーム・テロの標的の多くは彼らが背教者とみなす世俗政権であり、その政権を転覆することが目的となる。1979年のイラン・イスラーム革命がそれである。典型的な世俗強権政権であったシャー・パハレビー国王体制に歯向かったシーア派のイスラーム革命で多くのテロ活動を経てホメイニ政権が成立した。ホメイニ師は「ベラヤット・ファギー」と呼ばれる法学者による宗教と政治を一体化した体制を樹立した。政権を握ったホメイニ師は次にアラブ世界に住むシーア派ムスリムたちに蜂起を呼びかけた。「ベラヤット・ファギー」とはマフディ(救世主)がこの世に現れるまでは法学者がイスラームの体制を指導するというものである。

イラン革命に呼応してサウジアラビアではマフディ(救世主)を名乗る人物によるマッカ大神殿占拠事件が発生した。サウジアラビアのファハド国王はテロを力づくで抑えつけたが、この事件で宗教の怖さを再認識し政教一致国家のイランを敵視するようになる。その一方でサウド家の宗教的立場を正統化するため、彼は1986年に自らを「マッカ・マディナの二大聖都の守護者」と名乗るようになる。サウド家自身はあくまで世俗権力である。国王のほかに聖都の守護者というもっともらしい称号を付け加えて宗教的な権威づけを行ったのである。

ホメイニ師の呼びかけに応えレバノンではシーア派組織ヒズボラが立ち上がった。ヒズボラはこれまでのイスラエルに対するテロ活動に加え米国人特に軍属に対するテロ活動を活発化させた。彼らにとってはイスラエルも米国も同じ穴の狢(むじな)である。1983年、ベイルート駐留の米軍海兵隊本部に爆弾テロ攻撃を敢行、米兵241名が死傷した。

エジプトでもイスラエルとの単独和平に踏み切ったエジプト・サダト大統領に対する反感が宗教意識に火をつけ、大統領はジハード団に属する身内の将校に暗殺された。さらにスンニ派によるテロ活動はアフガニスタンで名をはせたオサマ・ビン・ラーデン率いるアル・カイダが中東全域で活動を活発化させた。アル・カイダはイエメンのアデンで米兵を狙った爆弾テロを実行、オーストリア人観光客が犠牲になった(1992年)。

アル・カイダのテロの標的は米国であり、それは1993年の米本土ニューヨークにおける世界貿易センタービル爆破事件につながる(2001年の9.11同時多発テロの前兆とも言えるテロ事件)。このようにイスラーム・テロはイラン或いはアフガニスタンを震源地として前者はシーア派テロ、後者はスンニ派テロとして中東から北アフリカに広がり、さらに大西洋を越えて米国に広がっていったのである。

宗教という「心」の問題に絡むイスラーム・テロには人為的な国境、或いは地理的な五大陸といった制約は意味を持たない。そしてインターネットという高度な情報社会の中では「心」が伝播する広がりとスピードは計り知れない。1990年代はイスラーム・テロが世界に拡散する大きな端緒となった時代であった。国や地域を問わず国境をたやすく越えるのが宗教テロの特徴である。

(続く)

荒葉 一也
E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp
ホームページ:OCININITIATIVE 
(目次)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(8月29日)

2020-08-29 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(コロナウィルス関連ニュース)
・エジプト:コロナ禍第二波襲来。27日の感染者237人、死者25人
(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
・米国務長官、中東歴訪終える。オマーンなど各国はイスラエルとの国交回復に慎重な姿勢
・31日にテル・アビブ-アブ・ダビ定期便就航。中東歴訪のクシュナー米大統領顧問が初便に搭乗予定。 *
・サウジ:紅海観光クルーズ船就航。4泊5日、家族4人で4万リアル


*レポート「イスラエルとUAEの和平合意をめぐり右往左往する中東(1)」参照。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(8/23-8/29)

2020-08-29 | 今週のエネルギー関連新聞発表
8/23 Saudi Aramco
Aramco announces Corporate Development organization
https://www.aramco.com/en/news-media/news/2020/aramco-announces-corporate-development-organization


8/24 Total
TOTAL SIGNS AGREEMENT WITH THE GOVERNMENT OF MOZAMBIQUE REGARDING THE SECURITY OF MOZAMBIQUE LNG PROJECT
https://www.total.com/media/news/communiques/total-signs-agreement-with-the-government-of-mozambique-regarding-the


8/26 経済産業省
梶山経済産業大臣は、ジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼産業・先端技術大臣との間でTV会談を行いました
https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200826002/20200826002.html


8/26 Shell
Libra Consortium takes final investment decision on Mero-3 FPSO in Brazil's pre-salt
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2020/libra-consortium-takes-final-investment-decision-on-mero-3-fpso-in-brazils-pre-salt.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍で大幅な減収・減益:五大国際石油企業2020年4-6月期決算速報 (12完)

2020-08-28 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポートはマイ・ライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0512OilMajor2020-2ndQtr.pdf

 

(付) 国際石油企業3社のキャッシュ・フロー(続き)

3-2 投資キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-73.pdf参照)
 2019年1-3月の投資C/FはBPが50億ドル、Shell46億ドル、Totalは31億ドルであった。BPは同年4-6月の55億ドルをピークに毎期減少し、今年4-6月期は18億ドルに下がっている。Shellの投資C/Fは第3四半期に21億ドルまで減少した後、第4四半期には49億ドルに回復したが、続く2020年第1及び第2四半期は連続して減少し今期は23億ドルであった。Totalの投資C/Fは昨年10-12月期に68億ドルに達したが、その後は連続して減少している。3社に共通しているのは昨年10-12月期以降、投資を抑制していることである。

3-3 財務キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-74.pdf参照)
 3社の財務C/Fは昨年1-3月期から今年1-3月期までほぼ横ばいであったが、今期(4-6月期)にそれまでのマイナスから一挙大幅なプラスに転じたことが大きな特徴である。即ち各社とも今期に多額の新規借入を行ったことである。

 Shellの財務C/Fは昨年1-3月期は▲93億ドルであり、その後多少の増減はあったものの、今年1-3月期は▲78億ドルであった。しかし今季は一挙に57億ドルのプラスに転じ前期との差は135億ドルに達している。BPもShellと同様昨年1―3月期から今年1-3月期までは▲20~40億ドルの水準であったが、今期は3社中最も多いプラス147億ドルであり前期との差は170億ドル弱である。Totalも今年1-3月期までBPとほぼ同じ軌跡をたどり、今期はShellを若干上回る75億ドルのプラスであった。

3-3 キャッシュ・フロー期末残高の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-75.pdf参照)
 各四半期の営業C/F、投資C/F及び財務C/Fを差引した期末残高の推移を見ると、昨年3月末の残高が最も多かったのはTotalの254億ドルで、Shell及びBPはそれぞれ215億ドル、213億ドルで並んでいた。その後の各社の期末残高はいずれも大きな変動はなく、今年の3月末残高はShell218億ドル、Total216億ドル、BP181億ドルであった。しかし今年6月末は各社とも大幅に増加しており、BPの残高は2倍近い347億ドルである。Total、Shellの残高もそれぞれ297億ドル、279億ドルと前期末に比べ大きく膨らんでいる。各社ともコロナウィルにより業績が急落しており、手許現金の不足に備えたものとみられる。

以上

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ天然ガス篇 (20完)

2020-08-28 | BP統計

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0511BpGas2020.pdf

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

7.天然ガスの価格(続き)
(再び拡大した日本と米国・EUの価格差!)
(2)日本のLNG価格を1とした場合のヨーロッパ、米国の天然ガス価格
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-5-G02.pdf 参照)
 ここで取り上げた日本とEUと米国の天然ガスの価格は日本がCIF価格であり、米国はパイプラインの受け渡しポイントHenry Hubにおける価格である。従って米国と日本を単純比較することはできないが、その点を含んだ上で日本のLNG価格を1とした場合の2000年から2019年までのヨーロッパ及び米国との格差を比較すると、2000年のヨーロッパ価格は日本の0.57倍、米国は0.89倍であった。つまりヨーロッパ価格は日本より4割安く米国価格は1割程度安かったのである。

その後2002年までは3者の価格差に大きな変化はなかったが、2003年には米国Henry Hub価格が上昇、日本との相対価格は1.18倍に逆転した。原油価格が安定したため原油にリンクした日本のLNG価格が低く抑えられたのである。その後も米国の価格は上昇、2005年には米国価格は日本の1.45倍まで格差が広がった。つまり2003年から2005年までの3年間は米国の天然ガス価格の方が日本のLNG価格より高かったのである。一方この間にヨーロッパの相対価格も徐々に上昇し2005年には日本価格を上回り1.2倍になり、翌年も1.1倍となった。即ち2005年は日本価格が米国価格及びヨーロッパ価格のいずれよりも安かったのである。

しかし2007年には再び日本価格がヨーロッパ及び米国価格を上回るようになり、特に2009年以降は原油価格の急騰に伴い日本の価格が急上昇したのに対しヨーロッパ価格はさほど大きな変動が見られず、米国はシェールガスの開発が本格化し日本とは逆に価格が急速に下落した。その結果、3地域の価格格差は拡大し、2012年には日本の価格は米国の6倍強になっている。2019年は原油価格が下落しているが、日本のLNG価格は原油後追い型であり2016~18年の上昇基調を受けて下げ幅は小幅にとどまった。一方ヨーロッパの天然ガス価格は大きく下がり、米国でも2割程度下落したため、日本、EU、米国の価格差は大きく開き、日本価格=1に対し、EU価格は0.45、米国価格は0.25となっている。即ちEU価格は日本の2分の1、米国価格は日本の4分の1の水準である。

 今後この格差がどうなるか予断を許さないが、豪州、東アフリカ等世界各地で天然ガスの開発が進み、また米国のLNG輸出が開始されるとLNGのスポット価格は下がる可能性がある。またパプアニューギニア、豪州、モザンビーク、米国シェールガスなどのLNGプロジェクトに日本企業が資本参加することで安定的な価格と量の確保が可能となる。

最近ではLNG市場が拡大し、スポット取引が増加している。また日本のLNG長期契約が近く更改時期を迎える。日本のユーザーはこれまでの原油価格にリンクした硬直的な値決め方式から転売条項を含めたより柔軟な契約を目指している。天然ガス貿易の重点がパイプライン方式からLNG方式に移りつつあることも考慮すると今後天然ガスが石油と同じ市況商品の性格を強めるものと考えられる。

(天然ガス篇完)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(8月27日)

2020-08-27 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・ハリケーン襲来でメキシコ湾の製油所閉鎖。石油価格5カ月ぶりの高値
(中東関連ニュース)
・米国務長官、UAE訪問。リビア、イラン問題について意見交換

・米国務長官、バハレーン訪問:イスラエルとの正常化に尽力する
・イラン、IAEAに2か所の各施設査察認める
・東地中海の資源探査巡りギリシャ・トルコの対立深まる。ギリシャは領海拡大を検討。 *
・駐日カタール大使が宮城・女川小中学校の校舎改築式典で祝辞



*レポート「天然ガスに国際政治が絡み大荒れの東地中海」(2020年2月)参照。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍で大幅な減収・減益:五大国際石油企業2020年4-6月期決算速報 (11)

2020-08-27 | 海外・国内石油企業の業績
(注)本レポートはマイ・ライブラリーで一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0512OilMajor2020-2ndQtr.pdf

(付) 国際石油企業3社ののキャッシュ・フロー(続き)
2.2020年第2四半期のキャッシュ・フロー

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-71.pdf参照)
 今期の3社の営業キャッシュ・フロー(以下C/F)はBPが37億ドルで最も多く、次いでTotalが35億ドル、Shellは3社の中では最も少ない26億ドルにとどまっている。今期は販売不振及び価格の低迷により売上、利益が大幅に落ち込み営業活動におけるキャッシュ・ジェネレーションも過去1年間で最低の水準に落ち込んでいる。

 投資C/Fによるキャッシュの流出はTotal29億ドル、Shell23億ドル、BP18億ドルであった。財務C/Fの収支はいずれも収入超過であり、その額はBPが147億ドル、Total75億ドル、Shell57億ドルである。後述するように過去1年間の財務C/Fは今期以外すべて現金(及び現金相当)支出が収入を上回っている。財務C/Fは借入金の支払い金利、借入金の返済あるいは新規借入で構成され、通常、投資が少ない時は既存借入金を返済し、新規借入を控えて財務の健全化を図ろうとすることが多いが、今期は各社とも新たな借入により手許現金を厚くしている。売り上げの激減に直面し、しかも早急な回復が見込めないため、各社とも運転資金の不足に備えている様子がうかがえる。

3.2019年1月以降のキャッシュ・フローの推移
3-1.営業キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-72.pdf参照)
2019年1-3月の各社の営業C/FはShellが86億ドルと最も多く、BPは53億ドル、Total36億ドルであった。その後昨年末までは3社とも増加する傾向にあり、Shellは毎期100億ドル以上、BP及びTotalは60~80億ドルキャッシュを生み出している。今年1-3月期は明暗が分かれ、Shellの営業C/Fは150億ドル近くに達したが、BPとTotalは10億ドル強に急減した。4-6月期には上述のとおり3社のC/Fはいずれも30億ドル前後であり、Shellの急落が顕著である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ天然ガス篇 (19)

2020-08-26 | BP統計
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0511BpGas2020.pdf

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

7.天然ガスの価格
(安定する米国、乱高下する日本!)
(1)2000年~2019年の天然ガス価格の推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-5-G01.pdf 参照)
 天然ガスの取引価格には通常US$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略であり、およそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する 。

 市場の自由取引にゆだねられた商品は一般的には価格が一本化されるが(一物一価の法則)、天然ガスについては歴史的経緯により現在大きく分けて三つの価格帯がある。LNGを輸入する日本では原油価格にスライドして決定されている。巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格も両者間で決定されるが、その指標として原油価格が使われているのである。

 これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は独立した多数の供給者と需要家が市場を介して取引をしており需給バランスにより変動する市況価格として形成される。その指標となる価格が「Henry Hub価格」と呼ばれるものである。

 ここでは日本向けLNG価格(以下日本価格)、英国Heren NBP index価格(以下ヨーロッパ価格)及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2000年から2019年までの推移を比較することとする。なお参考までに百万BTU当たりに換算した原油価格も合わせて比較の対象とした。

 2000年の日本価格は4.7ドル、ヨーロッパ価格2.7ドル、米国価格4.2ドルであり、当時の原油価格は4.8ドルであった(いずれも百万BTU当たり)。ヨーロッパ価格が低く、日本価格及び米国価格及び原油価格は4ドル台で原油が最も高かった。この傾向は2002年まで続き、2003年には米国価格が一時的に原油価格、日本価格、ヨーロッパ価格のいずれをも上回った。

 2004年以降原油価格の上昇に伴い天然ガス価格もアップし、2005年の価格は米国価格8.8ドル、原油価格8.7ドル、ヨーロッパ価格7.4ドル、日本価格6.1ドルとなり、日本向け価格が最も安くなった。2009年から原油価格は再び急上昇したが、この時3地域の天然ガス価格は明暗を分けた。日本価格は原油価格に連動して上昇の一途をたどったのに比べヨーロッパ価格は緩やかな上昇にとどまった。そして米国価格は逆に下落した。この結果2012年は日本価格16.8ドルに対し米国価格は2.8ドルとなり、日本価格は実に米国価格の6倍を超えたのである。

 2014年から2016年にかけては原油価格が暴落したため、2016年のガス価格は3地域とも大幅に下落した。中でも原油価格にリンクした日本向け価格は大きく下がり、2016年は6.94ドルと対前年の3分の2になった。2017年、18年と原油価格は連続して上昇、日本向け価格は10ドル、ヨーロッパ価格も8.1ドルに上昇したが、米国価格はほぼ横ばいの3.1ドルであった。この結果、米国と日本の価格差は3.2倍になっている。

 2019年には原油価格が下落した(百万BTU換算で10.8ドル)。この時ヨーロッパ価格は大幅に下落したが(同4.5ドル)、原油価格を後追いする日本価格はほぼ横ばいに推移し(同9.9ドル)、米国価格は原油価格にスライドして下落している(同2.5ドル)。この結果、2019年は日本価格と米国およびヨーロッパ価格の格差は大きく開いた。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする