石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

拡大を続けるLNG貿易(3)

2009-04-30 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(第3回) LNGの輸入

 最初のLNG輸入国はフランスであり、1964年のアルジェリアからであった(前回参照)。しかしフランスは当時も現在も天然ガスの輸入はパイプラインが主流であり、当初はオランダから、そして現在では同国のほかノルウェー、ロシアなどから輸入、2007年のパイプラインによる年間輸入量は337億立方メートル(以下、立法米)に達しており、同年のLNG輸入量130億立方米の3倍近い。これは勿論フランスとこれらの国がユーラシア大陸という陸地でつながっており(ノルウェーの場合は一部海底パイプラインになる)、天然ガスをパイプラインで輸送することが経済合理性に適っていたからである。

  これに対しフランス同様国内に天然ガス資源が殆どなく全量を輸入しなければならなかった日本は工業化の進展により恒常的なエネルギー不足に対処するため、世界各地から石油を買い付ける一方、天然ガスを東南アジアから輸入する必要があった。そしてそれは当然のことながらパイプラインではなくLNGとして海上輸送するほかなかったのである。その頃既にサハリン島で石油および天然ガスが発見されていたが、ソ連邦からの輸入は政治的理由で難航を極めた。こうして日本のLNG輸入は急速に発展したのである。

  1997年の国別LNG輸入量を見ると、最も多いのは日本の643億立方米である。同年の全世界の貿易量は1,113億立方米であったから、日本一国だけで実に6割弱を占めていたのである。これに次ぐのが韓国の157億立方米(全世界の14.1%)、第三位はLNG輸入で最も古い歴史を有するフランス(92億立方米、世界シェア8.3%)であった。1997年のLNG輸入国はこれら3カ国のほかスペイン、ベルギー、トルコ、イタリア、米国、台湾を加えた9カ国にすぎなかった。なお米国は輸出国(日本向けアラスカ産LNG)あると同時に輸入国でもある。このとき既に日本のLNG輸入相手国は、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、ブルネイなど7ヶ国に及んでいるが、これはむしろ例外的なケースでありフランス、ベルギー、イタリア、トルコの輸入相手国はアルジェリア一国であった。

  ところが2007年になるとLNGの輸入国は8カ国が加わり、合計17カ国に達している。1997年以降新たにLNG輸入国となった国は、中南米のメキシコ、ドミニカ、プエルトリコ、ヨーロッパのギリシャ、ポルトガル、英国、そしてアジアでは中国、インドである。10年間の間に輸入国の数は2倍近くに増えるとともに、地域も中南米(ドミニカ、プエルトリコ)に広がり、経済躍進著しい中国、インドもLNG輸入国として登場している。

 2007年の全世界の輸入量は2,264億立方米であり1997年に比べて2倍に増えている。輸入量が最も多いのは1997年と同じく日本の888億立方米であるが、10年間の増加率は1.4倍であり、世界平均を下回っている。このため世界に占める日本の割合も58%から39%に低下している。日本についで世界2位のLNG輸入国は韓国の344億立方米であり、10年前にくらべ2.2倍となり世界平均を少し上回る増加率を示し、シェアも15.2%と1ポイント上昇している。3位以下は10年前と順位が変動しており、第3位の輸入国はスペイン(242億立方米、10.7%)、4位米国(218億立方米、9.6%)で、10年前に世界第3位のLNG輸入国であったフランスは第5位(130億立方米、5.7%)である。その他主な国の輸入量と世界シェアは、台湾(109億立方米、4.8%)インド(10億立方米、4.4%)である。なお中国はLNG輸入を始めたばかりでありオーストラリア始め4カ国から39億立方米のLNGを輸入している。

  上図の「1997年と2007年の主要国別LNG輸入量」でわかるとおり、1997年に圧倒的なシェアを占めていた日本は2007年には4割近くに下がり、かわってスペイン米国などのシェアが大きくなっている。また前回の「LNGの輸出」で輸出国の数も9カ国から15カ国に増えたと述べたが、これにより輸入国も複数のLNG生産国から輸入するようになり、輸入ソースが多様化している。例えば日本の場合13カ国からLNGを輸入しており、韓国は11カ国、台湾は9カ国、スペイン、インドも8カ国から輸入しているといった具合である。

(続く)

(これまでの内容)

(第1回)LNG(液化天然ガス)貿易の歴史

(第2回)LNGの輸出

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月30日)

2009-04-30 | 今日のニュース

・シェル1-3月期利益35億ドル、昨年同期比62%減。

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月29日)

2009-04-29 | 今日のニュース

・BP:第一四半期の利益大幅減、油価50ドルを前提にコスト削減

・クウェイトを見限るBP、シェブロン。相次いでトップが離任。

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月27日)

2009-04-27 | 今日のニュース

(アジア産消対話東京会議関連)

・湾岸産油国は油価50ドルを容認。産消双方とも生産能力増強には高値誘導の必要性指摘

・アッティヤ・カタール副首相:天然ガスは供給過剰の懸念無し

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月26日)

2009-04-26 | 今日のニュース

・湾岸産油国の石油相が口を揃えて現在の油価を肯定:東京のアジア産消会議で。

 

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拡大を続けるLNG貿易(2)

2009-04-25 | その他

(第2回)LNGの輸出

 天然ガスを液化しLNGとして最初に輸出したのはアルジェリアであり、1964年のフランス向けであった。その後、LNG輸出はインドネシア、マレーシアなどによる対日輸出を中心に徐々に広がりを見せ、1997年にカタールが日本向け輸出を開始して以降本格化していった。

  1997年当時のLNG輸出国は上に挙げたアルジェリア、インドネシア、マレーシア、カタールのほかオーストラリア、ブルネイ、UAE、リビア及び米国(アラスカ)の9カ国であった。この年の年間輸出量は全世界で1,113億立方メートル(立方米)であり、インドネシアが357億立方米と最も多かった(以下数値はすべてBP統計による)。これに続くのがアルジェリア(243億立方米)及びマレーシア(201億立方米)であり、この3カ国だけで全世界の輸出の72%に達する。残る6カ国の輸出量は、オーストラリア(年間98億立方米、輸出シェア8.8%、以下同じ)、ブルネイ(82, 7.4%)、UAE(75, 6.7%)、カタール(29, 2.6%)、米国(17, 1.5%)、リビア(11, 1.0%)であった。このように当時はインドネシア、アルジェリア、マレーシアの3カ国がLNGの三大輸出国として他を圧倒していたのである(上図参照)。

  10年後の2007年にはLNG輸出量は2,264億立方米に達し、1997年の2倍に増えている。この年の輸出国は1997年当時の上記9カ国に加え、トリニダード・トバゴ、ノルウェー、オマーン、エジプト、エクアトール・ギニアの6カ国が新たにLNG市場に参入しており合計15カ国に増えている。そして輸出国上位の顔ぶれにも大きな変動が見られる。2007年のLNG輸出国トップはカタールであり、同国の輸出量は385億立方米、シェアは17%であった。これに続くのがマレーシアで298億立方米(シェア13.2%)である。1997年にトップであったインドネシアは輸出量277億立方米、シェア12.3%で3位に落ちている。輸出量4位以下は、アルジェリア(247億立方米、シェア10.9%)、ナイジェリア(同212、9.3%)、オーストラリア(同202、8.9%)、トリニダード・トバゴ(同182、8%)、その他(8カ国)となっている。

 上図の1997年と2007年を比較して判るとおり、1997年にはインドネシア、アルジェリア、マレーシアという東南アジアおよび北アフリカの3カ国の寡占状態であったLNG輸出市場が、2007年には首位カタールから7位のトリニダード・トバゴまでのシェアに大きな差がなくなっている。また地域もアジア・大洋州、中東、北アフリカ、中米と広がっている。過去10年間で世界のLNG輸出は量の面でも、国の数でも大きく変容しているのである。

 2008年以降も世界の天然ガス生産国のLNG市場への参入が相次いでいる。前回触れたロシアのサハリンLNGプロジェクトのほか、2013年までにはイエメン、ペルー、アンゴラなどが生産を始める見通しである。さらにイランも仏Total社とLNGプロジェクトを計画中である。天然ガスの液化および出荷設備を建設するためには巨額の資金のほか、日本を含む欧米企業の技術及びLNGの安定引取り先が必要であるが、現在米国主導の経済制裁下にあるイランは技術、資金、顧客が確保できないためLNG計画は進展していない。しかしながらイランは世界最大のLNG輸出国となったペルシャ(アラビア)湾対岸のカタールに強い対抗心を抱いている。米オバマ政権の誕生によりイランを取り巻く国際情勢は変化しつつあり、同国がLNG輸出国に仲間入りする日もそう遠くはないであろう。

 今後天然ガスの需要がさらに伸び、LNGの輸出国が増えれば、OPEC(石油輸出国機構)に擬せられる「ガスOPEC」結成が現実味を帯びてくるが、この問題については別章で改めて触れる予定である。

(続く)

(これまでの内容)

(第1回)LNG(液化天然ガス)貿易の歴史

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前田 高行

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月25日)

2009-04-25 | 今日のニュース

・景気回復には油価40-45ドルが妥当:カタール首長ベオグラードの会議で示唆

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月24日)

2009-04-24 | 今日のニュース

・アブダビ、陸上油田生産増強工事をさらに3件年末までに発注予定

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(4月23日)

2009-04-23 | 今日のニュース

・カタール、ガス田新規開発凍結を継続:アッティヤエネルギー相

 

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拡大を続けるLNG貿易(1)

2009-04-21 | その他

(第1回)LNG(液化天然ガス)貿易の歴史

 去る2月18日、日本の麻生首相及びロシアのメドベージェフ大統領が出席してサハリン南端のプリゴロドノエ港で「サハリン2」LNGプロジェクトの完成式が挙行された。そして3月29日に第一船が同港を出港、4月6日には千葉県袖ヶ浦のLNG受入基地に到着した。ロシア産のLNGは東京電力の火力発電用燃料及び東京ガスの都市ガス原料として今後年間約5百万トンが輸入されるが、これは日本の全輸入量の7%に相当する。ちなみにサハリン2プロジェクトの操業会社「サハリン・エナジー社」はロシアのガスプロム50%(+1株)、英シェル社27.5%(-1株)のほか日本の三井物産(12.5%)及び三菱商事(10%)も株主となっている。

  ロシアは世界最大の天然ガス埋蔵量を誇るとともに、その輸出量も世界一である 。しかしこれまで同国はパイプラインによるヨーロッパ向けの輸出のみであり、LNG(液化天然ガス)として輸出するのは今回が始めてである。しかも輸出先は極東市場の日本である。ロシアにとって今回のプロジェクトは、国産の天然ガスをこれまでのパイプラインによる生ガス輸出からLNGとして輸出すること、さらに輸出先として従来のヨーロッパ一辺倒から極東市場を切り開いたという二つの点で画期的な事業なのである。

  日本にとってもこの事業には二つの重要な意義がある。一つはLNGの調達ルートの多様化である。これまで日本のLNG輸入国は、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、カタールなど13カ国に達している。しかし環境意識の高まりで世界的に天然ガスの需要が伸びる一方、インドネシアのように生産量の頭打ちと国内消費の増大で輸出余力がなくなりつつある国もあり、ロシアが新たな輸入先に加わることはエネルギーの安定供給を確保するうえで大きな意味を持つのである。さらにサハリンから日本までの輸送日数はわずか数日であり、東南アジアのインドネシア或いははるか遠い中東のカタールなどに比べると輸送コストが極めて少なくてすむのである。

 日本でも天然ガスの需要は伸びており、1990年にエネルギー全体に占める天然ガスの割合は10.7%であったが、2006年にはその割合は16.5%に増大している 。国内の天然ガスの生産量は微々たるものであり、増大する天然ガスの需要はLNGの輸入によってまかなわれているのが現状である。

 また世界の天然ガスの貿易動向を見ても、天然ガスの貿易量は近年大きく伸びており、その伸び率は石油を上回っている。英国BP社の統計資料「BP Statistical Review of World Energy」によれば、1997年に4,300億立方米であった天然ガスの貿易量は、2007年には7,800億立方米に達し、10年間で1.8倍に増大している(上図参照)。

 同じBP社の資料で、貿易量に占めるパイプラインとLNGの比率を見ると、1997年にはパイプラインが74.3%に対しLNGは25.7%とほぼ3対1の割合であった。しかし10年後の2007年にはパイプライン70.8%、LNG29.2%と、LNGの比率が4ポイント近く上昇している。

 このように世界及び日本においてLNGの重要性が年々高まっているのである。 (続く)

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