石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

Sinopecのイラン・ヤダバラン油田開発―互いのブランドを利用するイランと中国

2006-02-19 | 今週のエネルギー関連新聞発表

  3月にイラン国営石油と中国石油化工(Sinopec)がイランのヤダバラン陸上油田開発の契約を締結すると言うニュースが報じられた(日経2/17他)。3月上旬にはSinopecが代表団をイランに派遣して詳細を協議する。

 これには2年前の2004年10月に中国とイランが結んだMoUの伏線がある。このとき中国は北京を訪問したイランのザンガネ石油相(当時)との間で、25年間にわたり年間1千万トンのLNG(液化石油ガス)を購入する予備的な協定に署名した。契約の総額は1千億ドル、場合によっては1.5-2千万トン、2千億ドルとも言われる。MoUでは同時にヤダバラン油田開発にも言及され、Sinopecはバイ・バック方式で同油田を開発することなっている。当事者は詳細を明らかにしなかったが、予想生産量30万B/Dの半量15万B/Dを獲得するものと見られていた(2004/10/30付Arab Times-Kuwait)。

 2004年のMoU締結当時、イランは米国の経済制裁措置下にあり、また中国がMoUの詳細を明らかにしなかっただけに、中国がどの程度このプロジェクトに本気で取り組むか注目された。現在はイランの核開発疑惑をめぐって米国が国連制裁をちらつかせ、米国とイランは2年前よりも更に緊張した状況にある。これに対して英仏独の西欧3カ国とロシアが仲に割って入る姿勢を打ち出している。

  しかし今回の報道で資源獲得を目指す中国の意図がはっきり見えてきた。イランはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油埋蔵量を有し、生産量は世界第4位である(本ブログ「BP統計に見る石油埋蔵量」参照)。また天然ガスについてもロシアに次いで世界第2位であり、生産量は第5位であり、世界最大級のエネルギー大国である。そして中国は言うまでも無く国連常任理事国5カ国の一角を占める政治大国である。その一方、イランは米国一強支配の世界の構図の中で孤立化の様相を深めている。また中国は経済成長でエネルギーの海外依存が増大し、最近の例でも中国はCNOOCのナイジェリア油田買収、CNPCのペトロカザフスタン買収など石油・天然ガス獲得に血眼になっている(本ブログ「CNOOCのナイジェリア油田買収」参照)。

 このように両国は外交及び経済面で互いを必要とする関係になっており、また両国それぞれが持つブランドには大きな魅力がある。即ちイランにとっては米国、西欧、ロシアを相手の四面楚歌の中で、国連常任理事国と言う外交ブランドを持つ中国を味方に引き入れることは大きな価値がある。そして石油・天然ガスを必要としている中国にとっては、資源大国のブランドを有するイランと強い関係を築くことができれば大きな成果であろう。

 そこには、エネルギーに乏しい西欧の足元を見透かすイランと、米国の中東政策の行き詰まりを見透かす中国のしたたかな打算が見え隠れしている。今回の両国の契約は、まさにこのような国際的な政治・経済力学を利用したものに他ならない。

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量とその問題点(その1:石油篇)(第6回)

2006-02-09 | その他

(注)HP「中東と石油」で最新版の「BP統計レポート:石油篇(2008年版)」全文を一括してご覧いただけます。

(BP統計:BP Statistical Review of World Energy June 2005)

(前回までの内容)

(第1回) 2004年の全世界、地域別および国別石油埋蔵量

(第2回) 2004年の地域別及び国別石油生産量

(第3回) 2004年の国別石油消費量

(第4回) 2004年の地域別石油エネルギーバランス

(第5回) 石油価格と消費量、生産量及び埋蔵量の推移

(第6回)「ピークオイル論」の検証

 最近話題になっている「ピークオイル論」とは、石油の消費量が年々増加するにもかかわらず、ここ数年内に石油の生産がピークに達し以後は減退する、従ってその結果石油価格は今後ますます上昇する、と言うものである。石油生産が減退する最大の理由は、近年油田の新規発見のペースが低下するなど世界の石油可採埋蔵量が増えないことにある。通常の工業製品であれば設備を増強すれば生産能力はアップするが、天然資源の場合は生産(production)設備の増強ではなく資源の探鉱と開発(exploration & development)が生産能力アップの必須条件なのである。

 1978年の第二次オイルショックで石油価格が急騰した時は、産油国或いは国際石油企業(メジャー)は超過利潤を探鉱活動に投資し、また日本などの非産油先進国も積極的な探鉱投資を行った。その後数年を経て80年代後半に埋蔵量が増加したのはその結果であると言えよう。しかし「ピークオイル論」は今後地球上で大規模な油田が発見される可能性に悲観的である。

 本項では最近の石油埋蔵量の純増(又は純減)量を取り上げて、「ピークオイル論」の検証を試みることとする。上図はBP資料’Oil Proved Reserves History’(確認可採埋蔵量推移)の1999~2004年について各年末の埋蔵量と前年末の埋蔵量の差を地域別に表したものである。

 埋蔵量については下記の等式が成立すると考えられる。前年末の埋蔵量 + 当年の新規追加埋蔵量 – 当年の生産量 = 当年末の埋蔵量 従って当年末の埋蔵量と前年末の埋蔵量の差がプラスの場合は、生産量を上回る埋蔵量の追加があったことを示し、逆にマイナスの場合は、追加埋蔵量が生産量以下であったことを示している。なお、1999年以降のデータのみを対象としたのは、世界第二の産油国であるロシアの埋蔵量が1998年以降しか示されていないからである。

 図で明らかな通り1999年から2002年まで世界の石油埋蔵量は毎年200億~400億バレル近く増加していた。しかしながら2003年には増加量は100億バレルに減少し、2004年には増加量はついにゼロ(厳密には2億バレルの増加)に陥っている。即ち2004年には追加埋蔵量と生産量がほぼ等しくなっている。もしこの傾向が2005年以降も続けば、石油の確認可採埋蔵量は年々減少し地球上にある採掘可能な石油資源が枯渇に向かうことになる。

 前項で見たように石油の生産量(=消費量)は年々増加しているため、新規油田の発見或いは既存油田の回収率向上などにより、増加する石油生産量以上の可採埋蔵量を追加しなければ石油枯渇のペースはますます早まるのである。「ピークオイル論」は、このような現状を踏まえて、石油生産がここ数年でピークに達し、今後も年々増加すると思われる石油需要を賄うことができないであろう、と言う悲観的な見通しに立っている。

 因みに当年末の確認可採埋蔵量(R:Reserves)を同年の生産量(Production)で割った数値(R/P)は「可採年数」と呼ばれ、現在の生産ペースを続けた場合、何年で採掘可能な石油が枯渇するかを示す指標とされている。2004年のR/Pは40.5年(埋蔵量1兆2千億バレル÷生産量8,026万バレル/日)である。理論的には世界の石油は今後41年弱で枯渇することになる。

 上図で地域別の増減を見た場合、北米は既に2000年から確認埋蔵量が年々減少する状況に陥っている。アジア大洋州地域も2001年から同じ状況である。それでも1999年から2002年までの世界の確認埋蔵量が増加しているのは、中東、ヨーロッパ・中央アジア、アフリカの三地域で大きな埋蔵量追加があったためである。しかしこの三地域も2003年には大幅に減少し、2004年にはついに増加量がほぼゼロになっている。

 しかも確認埋蔵量増加の主要部分を占めている中東については増加要因に留意しなければならない。即ち中東の2000年の増加量162億バレル及び2002年の336億バレルは、それぞれカタールとイランによるものであるが、これは新規油田の発見ではなく、既存油田の可採埋蔵量を見直したものであり、その技術的根拠が極めて曖昧だからである。

 中東産油国ではこのような埋蔵量の大幅な上方修正は過去にも幾度か見られる(例えば、サウジアラビアは1988年に1,700億バレルから2,600億バレルに見直している)。現在、産油国の国営石油会社或いはエクソン、シェル、BPなどの欧米メジャー石油企業は史上最高の業績であり、利益を油田の探鉱及び開発投資に振り向けている。この投資活動により新規油田が発見され或いは既存油田の回収率が向上すれば、数年後には確認可採埋蔵量が再び増加することが期待される。第二次オイルショック後の1980年代後半と同じような現象の再現である。

 但し「ピークオイル論」はこのような見方を楽観的過ぎるとしており、また石油が世界の一部の地域、特に中東に偏在していることに留意しなければならない。先日の米国一般教書はこのような認識を踏まえたものであり、ブッシュ大統領はその対策として米国の石油浪費体質を戒め、中東への石油依存度を低下させ、同時にバイオマスなど非石油エネルギーの開発促進を掲げているのである。

(石油篇 完)

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量とその問題点(その1:石油篇)(第5回)

2006-02-08 | その他

(注)HP「中東と石油」で最新版の「BP統計レポート:石油篇(2008年版)」全文を一括してご覧いただけます。

(BP統計:BP Statistical Review of World Energy June 2005)

 (前回までの内容)

(第1回) 2004年の全世界、地域別および国別石油埋蔵量

(第2回) 2004年の地域別及び国別石油生産量

(第3回) 2004年の国別石油消費量

(第4回) 2004年の地域別石油エネルギーバランス

第5回 石油価格と消費量、生産量及び埋蔵量の推移

 これまでに2004年現在の埋蔵量、生産量、消費量及びそのバランスを概観したが、ここでは第二次オイルショック(1978年)直前から2004年までの石油の価格、消費量、生産量および埋蔵量の推移を概観する。上図はBP統計による1976年から2004年までの石油価格(WTI原油価格)、各年の年間消費量・生産量及び1980~2004年の各年末の石油埋蔵量の推移をプロットしたものである。上図からは価格、消費量、生産量及び埋蔵量それぞれの推移及び相互の関連性について以下のような特徴を読み取ることができる。 

(1)原油価格が長期低迷傾向にあったこと WTI原油価格(図の右目盛り、ドル/bbl)は1978年の第二次オイルショック直前に10ドル台前半であったが、1980年には40ドル近くまで急上昇した。その後再び下落し1986年(平均15ドル)以降1999年(同19ドル)まで長期にわたり20ドル台前後に低迷している。そして2000年には再度上昇に転じ、2002年(平均26ドル)からは急騰、2004年の年間平均価格は41ドルに達した。この時点ではじめて1980年(38ドル)の水準を24年ぶりに突破したのである。(因みにその後2005年8月には70ドル近くまで上昇しており、現在も60ドル台である。)

(2)生産量及び消費量は1984年以降、価格の上下に関係なく一貫して漸増傾向にあること第二次オイルショック直後の1979年に65百万B/Dであった生産量及び消費量は、1983年には56百万B/Dまで落ち込んだ。しかしその後は一貫して増加傾向にあり、特に1998年から価格が急激に上昇したにもかかわらず、石油の消費量・生産量は増勢を維持している。これは石油に対抗できる有力な代替商品がないためである。一般的な商品では価格が急騰すれば消費の抑制が起こり代替商品の出現により生産が縮小するのが普通であるが、石油はその点、価格が上昇しても生産及び消費に影響しないと言う特異な傾向を示している。

(3)各年の生産量と消費量はほぼ同じであること各年の生産量と消費量はほぼ同じであり、見かけ上の需給ギャップはない。これは価格が下落している時期と、その逆に上昇している時期の双方で言えることであるが両者の性格は異なっている。即ち価格低迷期にはOPECは生産制限の措置をとり、需要に直結した生産調整が行われた。更に石油はその商品の性格上、在庫備蓄に適さず(日米など一部の戦略的備蓄は例外)、機動的な販売体制を取り難く、一方では油井バルブの一時的な閉鎖により生産調整が容易である。これに対して景気の拡大等により石油の消費量が急増しても、油田の生産余力が直ちに増産には結びつかないため供給不足に陥る。2004年以降は短期的な余剰生産能力も限界に達し、供給不足が一層強くなっている。

 このように需要減退期=価格低迷期には生産量が速やかに削減される一方(石油供給の下方弾力性)、需要増加=価格上昇局面でも供給不足に陥る(石油供給の上方硬直性)があるため、常に供給サイドが主導権を握ることになる。これが結果的に生産量と消費量を一致させているのである。

(4)確認可採埋蔵量の増加が拡大期と停滞期の繰り返しの様相を有していること BP統計の1980年~2004年までの25年間の埋蔵量の変化を見ると、80~89年までは埋蔵量が急拡大している。そして90~95年までは停滞し、その後2002年まで増加を続けた後、2003年以降は停滞し、埋蔵量は1兆2千億バレル台で伸び悩んでいる。 

 確認可採埋蔵量の増加は探鉱技術の向上による新規油田発見、或いは掘削技術の向上による既存油田の回収率アップ、深海底油田の開発等、近年の技術革新によるところが大きい。しかしこれらの技術を適用するためには多額の投資が必要であり、従って石油価格が十分に高い水準にあることが必須条件である。このため埋蔵量を増加するための投資活動は石油価格の上昇期に集中(或いは限定)される。

 しかし投資が埋蔵量の増加に結びつくにはかなりのタイムラグがある。1978年の第二次オイルショックにより石油価格が急上昇した時に盛んな投資活動が行われたが、その結果が埋蔵量の増加に反映されるのは図5でわかるとおり80年台後半である。2003年以降に埋蔵量の増加が停滞しているのは、90年代の石油価格が低迷し十分な投資がなされなかったことが最大の要因である。2002年以降は石油価格が急上昇したため探鉱投資は再び活発になっており、数年後に埋蔵量が再度増加する可能性はあろう。

 

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量(その1:石油篇)(第4回)

2006-02-06 | その他

(注)HP「中東と石油」の「BP統計シリーズ」で2008年最新版をご覧いただけます。

(前回までの内容)

(第1回) 2004年の全世界、地域別および国別石油埋蔵量

(第2回) 2004年の地域別及び国別石油生産量

(第3回) 2004年の国別石油消費量

(第4回) 2004年の地域別石油エネルギーバランス

 既述の地域別石油生産量及び消費量に基づき地域別の生産量と消費量のバランスを示したものが上図である。 図の左半分は地域内の生産量よりも消費量が多い地域を示し、一方右半分の地域は地域内の生産量が消費量を上回る地域である。地域内の各国間で石油の融通(輸出入)があるが、マクロ的に見ると、図の左半分の地域、即ちアジア・大洋州、北米及びヨーロッパ・中央アジアの3地域は図の右半分の地域(中南米、アフリカ及び中東3地域)から石油を輸入していると言えよう。

 

このうちヨーロッパ・中央アジア及び中南米地域はほぼ地域内で生産と消費のバランスが取れている。このようにして見ると、アジア・大洋州と北米地域で不足する石油がアフリカ及び中東地域から供給されていると言えよう。特にアジア・大洋州地域については生産量が800万B/Dに対し消費量は2,300万B/Dであり1,500万B/D以上の石油が不足している。この地域には石油を産出しない工業先進国の日本、韓国、台湾のほか、石油を産出するが産業が急速に発展しつつある中国やインドのような石油の大消費国があり、大幅な石油不足の状態にある。また北米地域も石油浪費型社会の米国が石油不足の原因となっている。

 

これに対して中東地域は2,500万B/D弱の生産量を誇りながら消費量は500万B/Dにすぎず、2千万B/D近くの輸出余力を有している。またアフリカ地区も消費量は生産量の3分の1以下であるため700万B/D近い輸出余力がある。地球規模で見た場合、中東及びアフリカ地域の石油がアジア・大洋州と北米地域に供給されていることになる。

 但しここで忘れてはならないのは中東、アフリカ、中南米の各地域の石油が余剰であるとは言え、これは地域内で石油が融通されてバランスされたうえでの結果であることを意味しない。むしろその逆で地域内の少数の産油国が高価格でも購買余力のある地域外の工業国へ石油を輸出して莫大な利潤を得る一方、地域の大多数の非産油国は高価な石油を輸入する余力がないため、ますます窮乏化していると考えられる。アフリカはその典型的な例であり、域内各国の貧富の格差は急速に拡大しているのである。

  

次にいくつかの国について生産量と消費量のバランスを見てみる。ここでは先進国G8のうち自国でかなりの量の石油を産出する米英2カ国を取り上げ、またBRICsと呼ばれる新興国家群のブラジル、ロシア、インド、中国4カ国の計6カ国を取り上げる。下表はこれら6カ国の石油の生産と消費のバランスを示したものである。

(単位:千B/D)

       生産量    消費量     バランス

米国     7,241     20,517     -13,276

中国     3,490      6,684      -3,194

インド           819          2,555           -1,736

ブラジル     1,542          1,830             -288

英国          2,029          1,756              273

ロシア        9,285          2,574            6,711

 米国は生産量724万B/Dに対しその3倍近い2,050万B/Dもの石油を消費している。生産量は世界的に見てトップクラスであるにもかかわらず、世界全体の4分の1の石油を消費する(既述の表3を参照)いわゆる「石油がぶ飲み」体質にあり自給率は4割弱である。

 中国及びインドも自国の石油生産では不足し多量の石油を輸入しなければならない状況にある。自給率で見ると、中国は52%でかろうじて半量を自国産石油で賄っているが、インドの場合は自給率32%であり輸入依存度は米国よりも高い。

 一方、ブラジル及び英国は生産と消費がほぼバランスしている。これに対してロシアは生産量930万B/Dに対して消費量は260万B/Dであり670万B/Dの輸出余力がある。

 

このように地域或いは国単位で石油のバランス見ると現行の生産レベルでも輸出余力があるのは、中東及びアフリカの産油国とロシアである。最近話題になる「オイル・ピーク論」は端的に言えば石油消費量の増加ペースが油田開発投資による新規埋蔵量発見のペースを上回る状況を危惧したものである。しかし油田開発投資が生産量の増加を実現するまでにはかなりの年月を必要とするの。その意味では現在の生産水準で輸出余力を有する中東、アフリカの産油国及びロシアが、当面の石油需給の命運を握っていると言って差し支えないであろう。

 

しかしこれらの国々は、日本、欧米など石油の輸入依存度が高い国々とは宗教、歴史、民族を含めた社会の状況が大きく異なるため、折に触れて様々な政治的リスクが発生しており、これが需給バランスの問題を一層複雑にしていると言えよう。

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エクソンモービル、生産量減少でも未曾有の好決算

2006-02-04 | 今週のエネルギー関連新聞発表

 世界最大の石油企業エクソンモービルは1/30に昨年1-12月の決算を公表した。原油価格の高騰及び米国など世界的な好景気による石油・天然ガス需要の増加を反映して、利益が360億ドル(邦貨約4.3兆円)に達する未曾有の好決算となった。第2位のシェルも2/2の決算発表では利益250億ドル(約3兆円)を記録している。以下はエクソンモービルの2005年1-12月決算の概要である。(単位:百万USドル、1ドル=120円)

      2005年   2004年    増減   前年比

売上   370,998     298,035     72,963   24.5%

利益   36,130      25,330     10,800    42.6%

  2005年の売上は37百億ドル(44兆円)に達し、前年(2004年)に比べ24.5%の増加であった。利益は361億ドル(4兆3千億円)であり前年のほぼ1.5倍であった。

 利益の部門別・地域別内訳

                     地域別内訳:米国内     米国外

上流部門    24,349 (67%)          6,200 (26%)   18,149 (74%)

下流部門     7,992 (22%)          3,911 (49%)   4,081 (51%)

石油化学他   3,789 (11%)

合計       36,130 (100%)

  部門別では上流部門が利益の3分の2を占めており、またそのうちの4分の3の利益は米国外である。エクソンモービルは利益全体の半分を米国外の上流部門で稼いでいることになる。

 原油の生産量(単位:1,000B/D)

           2005年   2004年   増減

米国       477 (19%)    557     -80

カナダ      346 (14%)    355     -9

ヨーロッパ    546 (22%)    583     -37

アフリカ     666 (26%)    572     +94

その他     488 (19%)     504    -16

合計      2,523 (100%)   2,571    -48

  2005年の原油生産量は252万B/Dであったが、そのうち米国内は2割弱の48万B/Dであり、その他8割は海外であった。海外ではアフリカが67万B/Dで最も多い。前年の生産量に比べると5万B/D減少しており、アフリカを除く全ての国・地域の生産量が減少している。エクソンモービルはアフリカ原油が会社利益の源泉であることがわかる。

 天然ガスの生産量(単位:百万立方フィート/日)

          2005年      2004年    増減

米国        1,739 (19%)   1,947      -208

ヨーロッパ    4,315 (47%)    4,614     -299

アジア       1,268 (14%)   1,519     -251

その他       1,929 (20%)   1,784     +145

合計        9,251 (100%)   9,864     -613

  2005年の天然ガス生産は93億立方フィート/日(以下mcfd)であった。そのうち2分の1近くの43億mcfdはヨーロッパであり、米国の生産量は全体の20%に留まっている。生産量は前年の2004年より6億mcfd減少している。

 エクソンモービルは原油、天然ガスともに生産量が減少しているが、価格の高騰は量の落ち込みをカバーして余りあるものがあった訳である。今後生産量をいかに維持するかが同社の売上及び損益を左右するものと思われる。同社も高水準の利益を上流部門に対する積極的な投資に振り向けるものと思われるが、上流部門の投資が売上及び利益に反映されるまでには相当のタイムラグがあるのが普通であり、生産量の回復には暫く時間がかかるのではないだろうか。

決算の詳細はExxonMobilホームページ参照。

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量(石油篇)(第3回)

2006-02-01 | その他

(注)HP「中東と石油」の「BP統計シリーズ」で2008年最新版をご覧いただけます。

(第3回)2004年の地域別および国別石油消費量

 2004年の世界の石油消費量は一日平均8,076万B/Dであった。これを地域別に示したものが上図である。北米地域とアジア・大洋州地域及びヨーロッパ・中央アジア地域が世界における石油の三大消費地域であり、世界全体の消費に占める割合はそれぞれ30%、29%、25%である。これら3地域を合計すると世界全体の84%に達する。一方、中南米、中東及びアフリカの3地域はいずれも世界の消費量に占める割合は一桁台であり、3地域を合計しても世界全体の16%に過ぎない。石油の消費が世界の一部の地域に偏っていることがわかる。

  次に国別の石油消費量をリストしたものが下の表である。これを見ると各地域の中でも一部の国が石油の大消費国であることがわかる。特に米国の石油消費量は2,050万B/Dであり、実に世界の石油の4分の1を消費している。米国に次ぐ石油消費国は中国(670万B/D)、日本(530万B/D)であるが、これに韓国(230万B/D)を加えた極東3カ国で世界全体の18%を消費していることも注目すべきであろう。また本表に掲げた石油消費量100万B/D以上の18カ国だけで世界のほぼ8割の消費を占めているのである。

(表)                   千バレル/日   %

  1. 米国             20,517       25.4
  2. 中国              6,684         8.3
  3. 日本              5,288         6.5
  4. ドイツ             2,625         3.3
  5. ロシア            2,574         3.2
  6. インド             2,555         3.2
  7. 韓国              2,280         2.8
  8. カナダ            2,206         2.7
  9. フランス          1,975         2.4
  10. メキシコ          1,896         2.3
  11. イタリア           1,871        2.3
  12. ブラジル          1,830        2.3
  13. 英国               1,756        2.2
  14. サウジアラビア 1,728         2.1
  15. スペイン          1,593        2.0
  16. イラン             1,551        1.9
  17. インドネシア     1,150        1.4
  18. オランダ         1,003         1.2

   ここ数年で石油価格が高騰し、しかも現在その価格が高止まりしていることを考慮すると、このように石油の消費が一部の国に偏っていることの問題が意味するところは大きいと言えよう。なぜなら高価格の石油に対して消費余力があるのは、米国、日本、ドイツなど一部の先進国及び中国、インド、韓国など石油価格を製品に転嫁できる輸出競争力のある国、或いは国内向けに石油価格を低くおさえているロシア、サウジアラビア、イランなどの産油国に限られているからである。その一方ではアフリカなどの貧しい国々は石油を輸入する経済力がなく、原油価格が上昇すればますます窮乏化するという悪循環に陥っているのである。

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OPEC総会、現行生産枠2,800万B/D維持を決定

2006-02-01 | OPECの動向

OPEC第139回臨時総会(記者発表概要)

 第139回OPEC臨時総会は、Daukoru議長(ナイジェリア石油相)のもと1月31日ウィーンで開催された。会議では、世界経済が回復基調にあるとの認識で一致した。その一方で市場には十分な原油が供給されOECD諸国の在庫レベルが適正な水準であるにもかかわらず、価格が上昇を続けていることに留意した。その原因は精製設備のボトル・ネック及びその他本質的とはいえない理由によるものである。

 従ってOPEC10カ国(注、イラクを除く)は昨年7月に定めた生産上限枠2,800万B/Dを維持することとした。次回の通常総会は3月8日、ウィーンで開催する。

注:プレスリリース全文

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