石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇10

2015-06-30 | その他

石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇10

(半世紀で世界の石油消費量は3倍に!)
(3)1965年~2014年の地域別消費量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G02.pdf参照)
 1965年の全世界の石油消費量は3,081万B/Dであったが、5年後の1970年には1.5倍の4,535万B/Dに増え、さらに1980年には2倍の6千万B/D強になった。1980年代は横ばいであったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、1995年には7千万B/Dを超えた。そして2000年代前半には8千万B/D、2013年に9千万B/Dを突破して2014年の消費量はついに9,209万B/Dに達している。過去半世紀足らずの間に全世界の石油消費量は3倍に増えているのである。

 これを地域別にみると、1965年には北米及び欧州・ユーラシア地域の消費量はそれぞれ1,293万B/D、1,155万B/Dとこの2つの地域だけで世界の石油消費の8割を占めていた。その他の地域はアジア・大洋州は世界全体の11%(325万B/D)に過ぎず、中東、中南米、アフリカは合わせて300万B/Dに留まっていた。しかしその後、アジア・大洋州の消費の伸びが著しく、1980年には1千万B/Dを突破、1990年代に欧州・ユーラシア地域の消費が伸び悩む中で、1997年にはついに同地域を追い抜き、2000年には2,123万B/Dに達した。さらに2007年には北米をも上回る世界最大の石油消費地域となり、2014年の消費量は世界全体の3分の1を占める3,086万B/Dとなっている。

 欧州・ユーラシア地域は1965年に1,155万B/Dであった消費量が1980年には2,396万B/Dまで増加している。しかしその後消費量は減少傾向をたどり1990年代後半以降は2,000万B/Dを切った。2010年以後も地域の経済不振のため減少し続けており2014年の石油の消費量は1,825万B/Dで世界全体に占める割合はかつての40%から20%にまで低下している。

 北米地域については1965年の1,293万B/Dから1980年には2千万B/Dまで伸び、1980年代は需要が停滞した後1990年代に再び増勢を続け2005年には2,512万B/Dに達した。その後は減少を続け2012年には2,300万B/Dを下回ったが、2014年は再び持ち直し2,335万B/Dとなっている。これはシェールオイルの生産が軌道に乗ったことにより石油の天然ガスに対する競争力が回復し、またシェール革命によりエネルギー価格全体が安くなり国内産業が活気を帯びたことが原因の一端であろう。 (天然ガスの生産・消費については後述)。

 その他の中東、中南米、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、消費量は着実に増加している。特に中東地域は1965年の89万B/Dが2014年には871万B/Dと半世紀で約10倍に膨張している。中東には石油の輸出国が多いが各国の国内消費の伸びが生産のそれを上回れば、その分輸出余力が減少することになる。この事実は将来の石油需給問題に影を投げかけていると言えよう。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp


 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇9

2015-06-29 | その他

3.世界の石油消費量(続き)
(石油を爆食する米国と中国、両国だけで世界の石油の3分の1を消費!)
(2) 国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-T01.pdf 参照)
 国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2014年の消費量は1,904万B/D、世界全体の21%を占めている。第二位は中国の1,106万B/D(シェア12%)である。米国と中国を合わせたシェアは33%であり両国だけで世界の3分の1の石油を爆食していることになる。

 3位の日本の消費量は430万B/Dで前年より5%減少している。消費量の多い上位10カ国の中で前年より減少したのは日本の他は第9位のドイツ(1.5%減)と第10位カナダ(0.5%減)の3カ国だけであるが、その中でも日本の減少幅が突出して高い。日本の消費量は米国の4分の1、中国の4割弱である。4位以下はインド(385万B/D)、ブラジル(323万B/D)、ロシア(320万B/D)、サウジアラビア(319万B/D)と続いている。この中でブラジルおよびサウジアラビアの2か国は対前年増加率が各々5.9%、6.2%と高く、大幅に減少している日本と対照的である。

 石油は米、日の先進2カ国及びBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア、ブラジルの新興4カ国に大産油国でもあるサウジアラビアを加えた7カ国で世界の半分を消費している。この他ベストテンに入っているのは第8位韓国(246万B/D)、第9位ドイツ(237万B/D)、第10位カナダ(237万B/D)である。2013年と比較すると、国別順位ではブラジルがロシアを追い抜いて5位に浮上している。

 国別消費量を前章の国別生産量(第2章(2))と比較すると興味ある事実が浮かび上がる。米国と中国は消費量世界一位と二位であるが、生産量についても米国は世界1位、中国は世界5位である。両国は石油の消費大国であると同時に生産大国でもある。そしてサウジアラビア及びロシアは生産量で世界2位、3位であり、消費量では7位と6位でいずれもベストテンに入っている。その他消費量10位のカナダは生産量世界4位であり、消費量5位のブラジルも生産量世界13位である。このように石油消費量上位10カ国のうち6カ国は石油の生産量も多い国々であるが、消費量ベストテンに入っていても生産量が皆無もしくは非常に少ない国は日本、インド、韓国及びドイツの4カ国である。このように石油を大量に消費する国といえどもその状況は各国によって大きく異なる。従って「消費国」と言うだけで結束して産油国(例えばOPECなど)に対峙することは容易ではないのである。

(続く)

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇8

2015-06-28 | その他

3.世界の石油消費量
(世界の石油消費の3分の1はアジア・大洋州!)
(1) 地域別消費量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-3-G01.pdf 参照)
 2014年の世界の年間石油消費量は日量9,209万バレル(以下B/D)であった。地域別でみるとアジア・大洋州が3,086万B/Dと最も多く全体の34%を占め、次に多いのが北米の2,335万B/D(25%)であった。2007年以降はアジア・大洋州が北米を上回る最大の消費地域となっており、この傾向は今後定着するものと思われる。これら二つの地域に続くのが欧州・ユーラシア1,825万B/D(20%)であり、これら3地域で世界の石油の8割を消費している。残りの中東(9%)、中南米(8%)及びアフリカ(4%)の3地域を合計しても2割に過ぎず、石油の消費は先進地域(北米、欧州・ユーラシア)及び新興工業国が多いアジア・大洋州に偏っている。

 各地域の消費量と生産量(前回参照)を比較すると、生産量では世界全体の32%を占めている中東が消費量ではわずか9%であり、アフリカも生産量シェア9%に対して消費量シェアは4%に過ぎない。これに対してアジア・大洋州は生産量シェア9%に対して消費量シェアは34%といずれも大幅な消費超過となっている。欧州・ユーラシアは生産量も消費量も20%で均衡している。また北米は21%(生産量)、25%(消費量)でありアジア・大洋州と同様消費量が生産量を上回っているがその差は年々縮小している。このことからマクロ的に見て、世界の石油は中東及びアフリカ地域からその他の地域特にアジア・大洋州に流れており、欧州・ユーラシアは地産地消型を維持、北米は近年域外からの輸入が減少、地産地消型に変化しつつあると言えよう。

(続く)

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今週の各社プレスリリースから(6/21-6/27)

2015-06-27 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/22 国際石油開発帝石    新潟県 南桑山油田における新規油層の発見について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2015/20150622.pdf
6/22 三菱商事    国内石油製品販売事業の統合 (会社分割による当社事業の移管及び子会社の統合) http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2015/html/0000027844.html
6/25 JOGMEC    平成27年度産油国技術者研修等事業(UAE特別研修)「石油・ガスプラントの計装制御システムコース」実施~人材育成により、両国間の関係強化に貢献~ http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_000220.html
6/25 JOGMEC    平成27年度産油国技術者研修等事業(特別研修事業)「モザンビークLNG技術に係る実践的講義」実施~モザンビークの人材育成に貢献~ http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_000219.html

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇7

2015-06-25 | その他

(米国、サウジ、ロシア3か国が鎬を削る時代に突入!)
(4)主要産油国の生産量の推移(1990年、 2000年、2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G03.pdf 参照)
 産油国の中には長期的に見て生産量が増加している国がある一方、年々減少している国もある。ここではサウジアラビア、ロシア、米国、中国、UAE、イラン、イラク、ベネズエラ及びブラジルの9カ国について生産量の推移を見てみる。

 サウジアラビアの生産量は1990年の711万B/Dが2000年には947万B/Dに増加、2014年は1,151万B/Dに達している。これは1990年比1.6倍という顕著な増加である。ロシアの石油生産は1990年に1千万B/Dを超えていたが、ソ連崩壊の影響で90年代は急減、2000年の生産量は658万B/Dに落ち込んだ。しかし同国はその後再び生産能力を回復し2014年は革命前を超える1,084万B/Dを記録している。

 米国は1980年代半ばまで1千万B/Dの生産量を維持していたが、その後は年を追う毎に減り1990年には891万B/D、さらに2000年には773万B/Dに減少している。そして2008年にはついに678万B/Dまで落ち込んだが、同年以降石油生産は上向きに転じ2014年には1,164万B/Dとサウジアラビア、ロシアを抑えて世界一の産油国になっている。米国の2014年の生産量は2000年の1.5倍である。

 中国、イラン及びUAE各国の1990年、2000年、2014年の生産量を比べると1990年から2000年の間は3カ国とも同じような増産傾向を示している。即ちイランの場合は327万B/D(1990年)→385万B/D(2000年)で、中国は278万B/D→326万B/D、UAEは228万B/D→266万B/Dであった。しかし2014年の生産量は中国が425万B/D、UAEが371万B/Dで共に2000年を超えているにもかかわらず、イランは361万B/Dにとどまり、中国及びUAEに追い抜かれている。これは欧米諸国による石油禁輸政策の影響である。

 イラクは1979年には350万B/Dの生産量を誇っていたが、1980年代はイラン・イラク戦争のため生産が減少、1990年の生産量は215万B/Dに落ち込んだ。更に1991年の生産量は湾岸戦争のため134万B/Dになり、経済制裁の影響で100万B/D以下に激減した年もあった。2000年には261万B/Dまで回復したものの、2003年のイラク戦争により再び低迷した。近年漸く生産は上向き2014年の生産量は329万B/Dと往時の生産量に迫りつつある。

 ベネズエラは1990年の224万B/Dから2000年には1.4倍の310万B/Dに増加した後、2014年には逆に272万B/Dに落ち込んでいる。これと対照的に1990年以降の20年間で生産量を急激に伸ばしたのがブラジルである。同国の1990年の生産量は65万B/Dでベネズエラの3割程度に過ぎなかったが、2000年には1990年の2倍の127万B/D、さらに2014年には235万B/Dに急増、1990年の3.6倍に達している。

(石油篇生産量完)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月24日)

2015-06-24 | 今日のニュース

・イラン原油復帰の時期を伺う市場関係者。WTI8月もの$60.15、Brent$63.42

 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇6

2015-06-24 | その他

(OPECは生産シェア40%を維持できるのか!)
(3)石油生産量の推移とOPECシェア(1965~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G02.pdf 参照。)
1965年の世界の石油生産量は3,180万B/Dであったが、その後生産は急速に増加し、1980年には6,296万B/Dとほぼ倍増した。その後価格の高騰により石油の消費は減少した結果、1985年の生産量は5,746万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。

 1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,799万B/D)以降急激に伸び2000年に7,493万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,196万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は一時的に鈍化したが、2010年代は再び増勢に転じ2014年の生産量は8,867万B/Dに達している。

 地域毎のシェアの変化を見ると、1965年は北米の生産量が32%でもっとも多く、中東26%、欧州・ユーラシア18%、中南米14%、アフリカ7%と続き、アジア・大洋州は3%とシェアが最も小さかった。しかしその後北米の生産が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)が急成長したため、現在(2014年)では中東のシェアが31%と最も高い。北米は1980年代には欧州・ユーラシア地区にも追い抜かれ2000年代半ばまでその状態が続いたが2014年のシェアは21%となり再び欧州・ユーラシア(19%)を上回っている。これはシェール・オイルの生産が急増したためである

 石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は44%であり、第一次オイルショック(1973年)前には50%近くに達した。しかし80年代前半にシェアは急落し85年には30%を切った。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大して40%台のシェアを維持している。但し2005年のシェア(43%)をピークにその後漸減傾向にあり2014年は41%となり、今後も40%台を維持できるかは予断を許さない。

 OPECのシェアが1980年代前半に急落したのは、第二次オイルショック(1979年)の価格暴騰を引き金として世界の景気が後退、石油需要が下落した時、OPECが大幅な減産を行ったためである。

 今後の石油生産の推移について需要と供給の両面で見ると、石油と他のエネルギーとの競合の面では、地球温暖化問題に対処するため太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用促進が叫ばれている。さらに石油、天然ガス、石炭の炭化水素エネルギーの中でもCO2排出量の少ない天然ガスの人気が高い。このように石油の需要を取り巻く環境は厳しいものがある。その一方、中国、インドなどのエネルギー需要は今後も拡大するとする見方が一般的である。基幹エネルギーである石油の需要は底堅く、今後も増えていくものと予測される。

 供給面ではブラジル、メキシコ湾における深海油田或いは自然環境の厳しい北極圏などのフロンティア地域において開発生産されるようになった。さらに特筆すべきはシェール・オイル、サンド・オイルなど「非在来型」と呼ばれる石油が商業ベースで生産されるようになり、特に米国におけるシェール・オイルの生産には目を見張るものがある。このような技術的要因に対して政治的な要因については対イラン経済制裁に緩和の気配が見られる一方でリビア、イラク等の有力産油国の治安悪化など相反する要因があり、供給面における不確定要素は少なくない。

(続く)

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇5

2015-06-23 | その他

2.2014年の世界の石油生産量
(世界の石油生産量の3分の1を占める中東地域!)
(1) 地域別生産量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G01.pdf 参照)
 2014年の世界の石油生産量は日量8,867万バレル(以下B/D)であった。これを地域別でみると中東が2,856万B/Dと最も多く全体の32%を占めている。その他の地域については北米1,872万B/D(21%)、欧州・ユーラシア1,720万B/D(20%)、アフリカ826万B/D(9%)、アジア・大洋州832万B/D(9%)、中南米761万B/D(9%)である。2013年までは欧州・ユーラシアの生産量が北米を上回っていたが、昨年は北米が中東に次ぐ世界第二位の石油生産地域になっている。

 各地域の生産量と埋蔵量(石油篇1参照)を比較すると、埋蔵量のシェアが生産量のシェアより高い地域は中東及び中南米であり、その他の地域(北米、欧州・ユーラシア、アフリカ、アジア・大洋州)は生産量のシェアが埋蔵量のシェアよりも高い。例えば中東は埋蔵量では世界の48%を占めているが生産量は32%に過ぎない。中南米も埋蔵量シェア19%に対し生産量シェアは9%である。一方、北米及び欧州・ユーラシアの場合、埋蔵量シェアがそれぞれ14%、9%に対して生産量のシェアは21%及び20%である。またアジア・大洋州も生産量シェアが埋蔵量シェアを7ポイント上回っている。このことから地域別に見て将来の石油生産を維持又は拡大できるポテンシャルを持っているのは中東及び中南米であることが読み取れる。

(ついに生産量世界一に躍り出た米国、サウジアラビアとロシアの3か国でトップを競う!)
(2) 国別生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-T01.pdf 参照)
 次に国別に見ると、最大の石油生産国は米国である。同国の2014年の生産量は1,164万B/Dであり、第2位はサウジアラビア(1,151万B/D)、これに次いでロシアが1,084万B/Dで第3位である。かつて1980年代の旧ソ連時代にはロシアが世界最大の産油国であり、その後1990年代以降20年近くはサウジアラビアが世界一に君臨し、2010年代に入ると両国が世界トップを争う形であった。しかし2013、14年のわずか2年の間に米国の生産量は急激に増加しロシア、サウジアラビアを追い抜き、ついに世界一の産油国に躍り出たのである。生産量が1千万B/Dを超えるのはこれら3カ国だけであり、3か国が世界に占めるシェアは4割弱の38%に達する。

 4位と5位にはカナダ(429万B/D)と中国カナダ(425万B/D)が並び6位以下はUAE(371万B/D)、イラン(361万B/D)、イラク(329万B/D)およびクウェイト(312万B/D)の中東産油国が300万B/Dで並んでいる。イランは欧米の禁輸措置により輸出量が激減しており、2011年の4位から2012年6位、2013年、2014年は7位と年々順位を落としている。ライバルのイラクの生産量は既にイラク戦争前を上回る生産水準に回復し、イランに次ぐ8位につけている。

 10位以下はメキシコ(278万B/D)、11位ベネズエラ(272万B/D)、12位ナイジェリア(236万B/D)、13位ブラジル(235万B/D)と続き、以上の国々が生産量200万B/D以上の産油国である。

(続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(6月22日)

2015-06-22 | 今日のニュース

・米国の稼働リグ数631基、2010年8月以来の落ち込み、但しバッケンなど主要鉱区では微増

・サウジの4月原油輸出、3月より16万B/D減の774万B/D。生産は史上最高の1,031万B/D:JODIレポート

 

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石油生産量世界一に躍り出た米国:BPエネルギー統計2015年版解説シリーズ:石油篇4

2015-06-22 | その他

(世界の石油の7割はOPECに!)
(5)OPECと非OPECの比率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G04.pdf 参照)
 既に述べた通り2014年末の国別石油埋蔵量ではベネズエラとサウジアラビアが世界1位、2位であるが、両国は共にOPECのメンバーである。また両国の他にイラン、イラク、クウェイト、UAE及びリビアが石油埋蔵量の上位10カ国に名を連ねている(「1.世界の石油の埋蔵量と可採年数」参照)。実にベストテンのうち7カ国がOPEC加盟国であり、非OPECで世界ベストテンに入っているのは3位カナダ、6位ロシア及び9位米国の3カ国だけである。OPEC全加盟国の埋蔵量を合計すると1兆2千億バレルに達し、世界全体(1.7兆バレル)の72%を占めている。
 
 加盟国の中にはベネズエラ、イラン、イラクのように埋蔵量の公表数値に水増しの疑いがある国もあるが(前項参照)、統計上で見る限りOPECの存在感は大きい。OPEC総会は生産目標を3千万B/Dとしており生産量が議論の基準となっており、将来の生産能力を考えた場合、埋蔵量の多寡が決定的な意味を持ってくる。この点からOPEC加盟国の埋蔵量が世界全体の7割以上を占めていることはOPECが将来にわたり石油エネルギーの分野で大きな存在感を維持すると言って間違いないであろう。OPEC加盟国の間でもベネズエラ、イラン、イラクなどが埋蔵量の多寡に拘泥するのはその延長線上だと考えられる。

 OPEC対非OPECの埋蔵量比率を歴史的に見ると、1980年末はOPEC62%に対し非OPECは38%であった。その後この比率は1985年末にOPEC66%、非OPEC34%、さらに1995年末にはOPEC74%に対し非OPEC26%とOPECの比率が上昇している。これは1970年代の二度にわたる石油ショックの結果、1980年代に需要の低迷と価格の下落が同時に発生、非OPEC諸国における石油開発意欲が低下したためである。

 1990年代末から2000年初めにかけて世界景気が回復し、中国・インドを中心に石油需要が急速に伸び価格が上昇した結果、ブラジル、ロシア・中央アジアなどの非OPEC諸国で石油の探鉱開発が活発となり、2000年末にはOPEC65%、非OPEC35%と非OPECの比率が再度上昇している。しかし2005年以降はOPECのシェアが2005年末68%、2014年末72%と増加傾向にあり1990年代前半と同じ水準に達している。これはベネズエラが2008年から2010年にかけて自国の埋蔵量を3倍以上増加させたことが最大の要因である。

 前項(3)で取り上げたようにOPEC3カ国(ベネズエラ、イラン、イラク)と非OPEC2カ国(米国、ブラジル)は2000年以降いずれも埋蔵量が増加している。しかし両グループの性格は全く異なることを理解しなければならない。ベネズエラなどOPEC3カ国の埋蔵量は国威発揚と言う動機が働いて水増しされているものと推測されるが、政府が石油産業を独占しており水増しの有無を検証することは不可能である。

 これに対して石油産業が完全に民間にゆだねられている米国、或いは国際石油企業との共同開発が一般的なブラジルのような国では埋蔵量を水増しすることはタブーである。何故ならもし水増しの事実が露見すれば当該石油企業は株主訴訟の危険に晒されるからである。かつてシェルが埋蔵量を大幅に下方修正して大問題となったが、私企業としては決算時に公表する埋蔵量は細心の注意を払った数値でなければならないのである。

 ただ一般論としては埋蔵量に常にあいまいさがつきまとうのは避けられない。本レポートで取り上げたBPの他にも米国エネルギー省(DOE)やOPECも各国別の埋蔵量を公表している。しかしいずれも少しずつ数値が異なる。埋蔵量そのものを科学的に確定することが困難であると同時にそれぞれの査定に(たとえ米国の政府機関と言えども)政治的判断が加わる。結局「埋蔵量」とは掴みどころの無いものとしか言いようがないのである。

(石油篇埋蔵量完)

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