III. 2019年と2020年の5社業績比較 (続き)
(業績悪化で設備投資は抑制!)
3.設備投資
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-15.pdf 参照)
2020年の5社の設備投資は業績悪化の影響を受けていずれも前年を下回っている。設備投資額が最も多いのはExxonMobilであるが、同社の2020年の設備投資は214億ドルであり、2019年の311億ドルを3割以上下回っている。またExxonMobilについで設備投資額が大きいShellは前年比28%減の166億ドルである。Chevronは減少率が前年比36%と最も高く210億ドル→135億ドルであった。Totalは26%減(174億ドル→130億ドル)。設備投資が最も少ないのはBPであるが、同社も前年比2割減の123億ドルであった。
4.キャッシュフロー
(営業キャッシュフローが半減したChevron、BP及びExxonMobil!)
(1)営業キャッシュフロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-16.pdf 参照)
2020年は前年に比べ営業キャッシュフローが大幅に減少している。特にChevron、BP及びExxonMobilはそれぞれ273億ドル(‘19年)→106億ドル(’20年)、BP258億ドル(‘19年)→122億ドル(’20年)、ExxonMobil297億ドル(‘19年)→147億ドル(’20年)に半減している。Totalも247億ドル(‘19年)→148億ドル(’20年)と4割減であり、Shellは2割減にとどまっている。この結果Shellの2020年営業キャッシュフローは他社の2~3倍に達している。
(ShellとTotalが高い水準を維持!)
(2)投資キャッシュフロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-17.pdf 参照)
投資キャッシュフローも営業キャッシュフローと同様、各社とも(注、ExxonMobilはデータなし)2019年比で大きく減っている。2019年に160~170億ドルで並んでいたTotal、BP及びShellのうちBPは半減し、Shell及びTotalは2割前後の減少にとどめている。Chevronはこれら3社に比べ2019年、20年ともすくない。
(2020年はプラス勘定のBP、Chevron及びTotal!)
(3)財務キャッシュフロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-18.pdf 参照)
財務キャッシュフローは2019年と2020年で大きな違いが見られる。即ち2020年は各社とも大規模な借入を行った結果、財務面で一時的にマイナスからプラスに転じたことである。これはコロナ禍による売り上げの減少、操業率の低下等に対応するため一時的に多額の運転資金を調達したためである。
各社の財務キャッシュフローの変化は、Shell(▲352億ドル→▲72億ドル)、BP(▲88億ドル→40億ドル)、Total(▲77億ドル→14億ドル)、Chevron(▲198億ドル→37億ドル)であり、BP、Total、Chevronはプラス勘定に転じている。(注、ExxonMobilはデータなし)
(4)キャッシュフロー期末残高
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-19.pdf 参照)
上記のキャッシュフローを差引した残高を見ると、Shell、BP、Totalの2020年末残高はいずれも2019年末を上回っている(注、ExxonMobil及びChevronはデータなし)。これら3社の2020年末残高は310億ドル台で並んでおり、各社とも手元資金に余裕を持たせている。
(続く)
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前田 高行
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