石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(10)

2019-10-16 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

荒葉 一也

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

第1章:民族主義と社会主義のうねり

 

4.イスラエル独立(その2):ユダヤ人とは?

 「イスラエルはユダヤ人の国である」と言うことに異議を唱える人はいないであろう。しかし「ユダヤ人」を定義するとなると厄介である。ユダヤ人のルーツは旧約聖書を正しいとすれば、紀元前20世紀頃中東パレスチナのカナン(約束の土地)に定住したアブラハムの一族である。彼らは民族的にはセム系に属し、アラブ民族と同じ系統である。ユダヤ人たちはアラブ人と同一視されることを嫌がるであろうが生物学的あるいは民俗学的にみれば両者は同じ系統である。

 

 古代イスラエル人は部族として一神教のユダヤ教を信じ、信仰のリーダーを預言者として結束して行動してきた。紀元前13世紀にエジプトに抑留されていた一族を引き連れて再びカナンに戻ったモーゼはそのような預言者の一人だった。その後紀元前10世紀頃にダビデとその息子ソロモンがエルサレムに神殿を築きイスラエル王国、さらにはユダ王国として繁栄するのである。しかし紀元前6世紀以降たびたび隣国の新バビロニア王国の侵略を受けユダ王国は滅亡、ユダヤ人はエルサレムからバビロニアに強制移住させられた(バビロニア捕囚)。その後、新バビロニアを滅ぼしたペルシャ王キュロスによって彼らは解放されてエルサレムに帰還、エジプト王朝の支配下でエルサレム神殿を再興、紀元前から紀元後へとローマ帝国の属領ユダヤ王国として生き延びることになる。

 

 紀元100年前後にはローマ帝国に対して度々反乱した結果、135年にハドリアヌス帝によって徹底的に弾圧され、ユダヤ人はエルサレムに住むことを禁止された。この時から長いユダヤ人の「離散(ディアスポラ)」が始まり、彼らはヨーロッパ各地に移り住んだのである。

 

 キリスト教が深く根を下ろし、白人が定住するヨーロッパ各地で、固有の宗教を信奉するセム系のユダヤ人が蔑視され迫害されたことは言うまでもない。キリストを裏切ったユダの汚名がいつまでもユダヤ人について回った。キリスト教徒たちはユダヤ人を「ゲットー(居住区)」に押しこめ、自分たちが忌避する仕事を押し付けた。

 

 そのような職業の一つが金貸し業である。中世キリスト教社会では金融業は汚らわしい職業とみなされていた。人間を金に縛り付け強欲が支配する金融業は宗教の持つ清廉さと相容れないためであろう。実は金融業を忌避するのはキリスト教に限ったことではなく、イスラム教ではさらに厳格に解釈されており、現代でもイスラム社会では金利は「ハラーム(忌避すべきもの)」とされ金利を取ることは禁止されている。当時の金貸し業がユダヤ人の専売特許であったことはシェークスピアの戯曲「ヴェニスの商人」を見てもよくわかる。当時のヨーロッパではシェークスピアのような文化人ですらユダヤ人を毛嫌いしていた。このようなステレオタイプなユダヤ人観は20世紀前半まで残り、その最大の悲劇こそナチスドイツによるホロコーストだったと言えよう。

 

 以上のようなユダヤの歴史を振り返り改めて「ユダヤ人とは何か?」と言う問いに向き合ったとき一言で答えることは極めて難しい。

 

 まずユダヤ人は生物学的な意味での独自の民族と言うことはできない。彼らの起源がセム語族の中の一部族であることは間違いないが、2千年近いディアスポラを経た現在のユダヤ人が「血」の絆を共有しているとは言えないからである。

 

 それではユダヤ教と言う宗教でユダヤ人を定義することができるだろうか。否である。ユダヤ教からキリスト教に改宗した者たちも自らをユダヤ人と称している。米国のユダヤ人は大半がキリスト教徒である。「心(信仰)」の面でもユダヤ人は多義的である。

 

 結局ユダヤ人とは他者が「お前はユダヤ人である」と名指しするか、或いは自らを「私はユダヤ人である」と自称する者がユダヤ人である、と言うことになる。これは同語反復であってとても定義などと言えるものではないのである。

 

 近世までのヨーロッパでは白人たちが「お前たちはユダヤ人である」と決めつけてゲットーに閉じ込めようとした。それを嫌ったユダヤ人たちはユダヤ教を棄教してキリスト教徒として生きるか、或いはユダヤ人であることをひた隠しにして社会の片隅でひっそり生きてきた。

 

 しかしロスチャイルドに代表されるユダヤ人の金融資本家が戦争遂行に一役買うほどの実力をつけ、またアインシュタインなどユダヤ人の優秀な頭脳が見直されると、ユダヤ人たちの間にアイデンティティを鮮明にする動きが起こり、「私はユダヤ人である」と自称する者すべてがユダヤ人とみなされるようになった。ホロコーストを経た第二次大戦後は「ユダヤ人である」と名乗ることで身の安全と将来の繁栄が保証されるようになったのである。その意味でソ連邦崩壊後にロシアからイスラエルに大量に移住したロシア系ユダヤ人の中には本来のユダヤ人とは縁もゆかりもない移民がいるに違いないという疑念はぬぐえない。

 

 ともあれ他称、自称のユダヤ人たちによってイスラエルは建国され、今も版図を拡大し続けているのである。

 

(続く)

 

 

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石油と中東のニュース(10月15日)

2019-10-15 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・ESP(水中電動ポンプ)有力メーカーNovometに露・サウジの両政府系ファンドが31%出資

(中東関連ニュース)

・米軍撤退で三すくみ状態のシリア

・米国防省、シリア北部からの兵員1千名の撤退を表明

・トランプ大統領、トルコのシリア侵攻で幅広い経済制裁を示唆

・ロシア大統領、サウジ訪問。シリア、OPEC+、アラムコIPOなど幅広く意見交換

・オマーン、技術・通信省と芸術省を新設

・カタール、韓国貿易投資機関Kotraとデジタル分野で協力MoU締結

・チュニジア大統領に保守系法学者Kais Saied。得票率73%で対立候補に圧勝

 

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石油と中東のニュース(10月13日)

2019-10-14 | 今日のニュース

 

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・週末原油価格 Brent $60.51, WTI $54.70。EIA、年間Brent平均価格今年$63.37、来年$59.93$と予測

・紅海でイラン籍タンカー炎上、原油流出は止まる。ミサイル攻撃か

・米の原油輸出制裁処置でタンカー300隻近くが運航停止に

・英BP、30億ドル相当の資産売却。CEO交替で戦略転換

(中東関連ニュース)

・米、イランの脅威に対抗しサウジに兵員3千人増派

・トルコ、シリアのクルド支配地域への砲撃継続

・宇宙ステーション滞在のUAE飛行士、故国に凱旋

・サウジ・リヤドの韓流ポップコンサート盛り上がる

・カタールで日本文化の集い。剣道、着物、書道などを披露

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今週の各社プレスリリースから(10/6-10/12)

2019-10-12 | 今週のエネルギー関連新聞発表

10/7 JOGMEC 

2019年10月 海外石油天然ガス動向ブリーフィングの開催 

www.jogmec.go.jp/news/event/event_k_10_000138.html

 

10/7 Total 

Norway: Johan Sverdrup Giant Field Starts Up in the North Sea  

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/norway-johan-sverdrup-giant-field-starts-north-sea

 

10/8 Total 

Total launches construction of its third solar power plant in Japan 

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-launches-construction-its-third-solar-power-plant-japan

 

10/9 経済産業省 

「冬季の省エネルギーの取組について」を決定しました 

https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191009004/20191009004.html

 

10/10 Total 

Brazil: Total Expands Pre-Salt Footprint With New Deep Offshore Exploration License  

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/brazil-total-expands-pre-salt-footprint-new-deep-offshore-exploration-license

 

10/11 国際石油開発帝石 

インドネシア共和国 アバディLNGプロジェクト(マセラ鉱区)における 生産分与契約(PSC)の修正契約および延長契約への調印について(お知らせ)  

https://www.inpex.co.jp/news/pdf/2019/20191011.pdf

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石油と中東のニュース(10月11日)

2019-10-11 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・サウジの9月石油生産量、前月比128万B/D減の856万B/D:OPEC月例レポート

(中東関連ニュース)

・トルコ地上軍、シリア北部のクルド人居住区に侵攻

・日立がUAEから4.4憶ドルの鉄道建設プロジェクト受注

・プーチン露大統領、14日にサウジ訪問

・プーチン露大統領、15日にUAE訪問

・サウジ、女性兵容認を公表

・サウジアラムコ、来週にもIPO(株式公開)発表か

・米、外国人斬首の英国籍兵士「ビートルズ」を含むIS(イスラム国)捕虜をイラクに引渡し予定

・イラン、革命以来40年ぶりに女性のサッカー観戦認める

 

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指導力が問われるサウジ新石油相アブドルアジズ王子(AbS) (下)

2019-10-10 | 中東諸国の動向

3.今後懸念されるいくつかの問題

 アブドルアジズ王子のエネルギー相としての力量はこれからの活躍次第であるが、彼の前には三つの大きな問題が立ちはだかっている。 それは(1)異母弟ムハンマド皇太子との関係、(2)OPEC及びロシアを含めたいわゆるOPEC+(プラス)の舵取り、そして(3)石油と政治が絡みあう国際政治力学の中での米国、ロシアあるいはイランとの駆け引き、の三つである。

 

 アブドルアジズとムハンマドは異母兄弟であり25歳の年齢差がある。異母兄弟の関係は微妙でありサウド家でも第五代ファハド国王の子息の間で遺産相続を巡るお家騒動があり、また北朝鮮の金正恩体制では陰惨な義兄暗殺事件が発生していることで分かるように問題のないほうが珍しい。AbSとMbSの関係がいずれ破綻することはほぼ間違いないと思われる(義兄のAbSが義弟のMbSに完全に服従すれば話は別だが)。父親のサルマン国王はそのような事態を恐れてMbSに権力を集中させようとしている。エネルギー・鉱物資源省をエネルギー省に改編し、AbSの管掌を石油に限定し、さらにこれまで一体運営してきたアラムコをエネルギー省から切り離したのはその一つの表れであろう。

 

サルマンとしてはMbSに次期王位を継がせ、さらにはMbSの息子へと男子直系相続の道を開き、サウド王家(実質的にはサルマン家)の安定的な専制君主体制を維持することが悲願であろう。傲岸不遜、独裁的として内外から警戒されるMbSはむしろemotionalでpedanticと言われるAbSよりも体制維持の目的に適っている。サウド家の権力闘争の中で権謀術策により国王の地位を勝ち取ったサルマンだからこそMbSを皇太子に据えたはずである。そのような見方に立てば、エネルギー相は早晩MbSと気脈を通じる彼と同世代の石油テクノクラートに交替するであろう(あるいはMbSの実弟ハリド・ビン・サルマンの可能性もある)。いずれにしろ異母兄AbSに勝ち目のないことは明らかである。

 

次にOPEC及びロシアを含めたOPEC+(プラス)の舵取り問題を見ると、現在原油価格は60ドル/バレル前後(ブレント)で推移している。一般的にはOPEC+の生産調整が奏功していると考えられているが、OPEC各国の生産量を見ると、実際には米国の禁輸措置によりイランの生産が不振を極め、あるいはベネズエラに対する米国の経済制裁と同国の内政の混乱、そしてリビアの内戦が大きな要因でありOPEC+の協定による生産調整の結果ばかりとは言い切れない。実際、イラクは増産しており、非OPECのロシアもコミットした削減を引き延ばしてきたのが事実である。世界の需給関係を見ると、米国はシェールオイル・ガスの増産を続け、今や世界一の石油・天然ガスの生産国になっている(BPエネルギー統計による[1])。一方需要面では米中貿易摩擦により世界景気に後退の兆しが見え、石油価格は今後下落するとの予測が少なくない。このような環境下でサウジアラビアの真価が問われているが、AbSが強力な指導力を発揮できるのか疑問なしとしない。

 

石油と国際政治はこれまでも密接に絡みあっていたが、今やサウジアラビアは米国、ロシア、イランとの複雑な合従連衡の関係を解きほぐしつつ、唯一の財源である石油収入の最大化を図るという難しい課題を背負っている。米国の軍事支援なしではイエメンをめぐるイランとの代理戦争に勝てないサウジアラビア。ロシアとはOPEC+(プラス)で石油価格維持を目指しながらも、米国に気兼ねしてロシアとの距離感に悩むサウジアラビア。宗教国家イランを最大の脅威と見なし世俗絶対王制の維持に必死のサウジアラビア。産油国家としてロシア、イランと利害を共有する一方、米国の石油産業の動向に神経をとがらせるサウジアラビア。軍事外交面ではサウジアラビアは米国に唯々諾々と従い、イエメンで泥沼に陥っている。地域問題では対イラン制裁の旗振り役を担っているが、シリアではロシアとイランが地歩を固めるなど守勢一方である。このようにサウジアラビアは米国、ロシア及びイラン各国と時に応じて手を結び、一方では各国をけん制する綱渡り外交を強いられている。

 

エネルギー相のAbSもこれらのジレンマ、トリレンマから無関係ではいられない。国際会議の席上でpedanticな言動を弄するだけでは問題は解決せず、遅かれ早かれ馬脚を現す恐れが大きい。AbSがエネルギー相として君臨するのはさほど長期間とは思えないのである。

 

以上

 

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com



[1] レポート「石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2019年版石油+天然ガス篇」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0479BpOilGas2019.pdf

 

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石油と中東のニュース(10月9日)

2019-10-09 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・トルコ:近くシリア国境超えて進駐の見込み。クルド人孤立でシリア情勢不透明化

・トランプ米大統領:シリアのクルド人は見捨てない。米軍撤退問題で揺れる

・トルコの北キプロスガス田開発でエジプト、ギリシャ、キプロス3か国が非難の共同声明

・ロシア国富ファンドRDIFが初の海外事務所をサウジに開設。 *

・サウジ、観光ビザ解禁後10日間で2.4万人来訪。トップは中国、次いで英国、米国

 

*「世界の政府系ファンド(SWF)」参照。RDIFの運用資産は130億ドル。

 

 

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指導力が問われるサウジ新石油相アブドルアジズ王子(AbS) (上)

2019-10-08 | 中東諸国の動向

 

(English Version)

 

(Arabic Version)


1.サウジ新エネルギー相に初の王族

 サウジアラビアのエネルギー相がAl-Falihからアブドルアジズ・ビン・サルマン王子(以下AbS)に交替した[1]。新大臣は59歳(1960年生)、サルマン国王の4男でありムハンマド皇太子(以下MbS)の異母兄である(「サルマン国王家々系図」参照)。1960年のタリキ石油・鉱物資源相を初代とする石油大臣は、その後のヤマニ、ナーゼル、ナイミそして先代のFalihに至るまでいずれもテクノクラートであり、王族大臣は初めてである。世間はこのことに驚いている。

 

 AbS新大臣は1982年に石油鉱物資源大学(KFUPM)を卒業、1987年にナーゼル石油相(当時)付きとしてキャリアをスタートして以来一貫して石油(エネルギー)省に勤務するベテランのオイルマンである。その間には日本との合弁事業であるアラビア石油の取締役、あるいはOPEC本部勤務の経験もあり、2015年以来エネルギー・鉱物資源省副大臣としてAl-Falih前大臣をサポートしてきた(ちなみに王子と前大臣はKFUPMの同期生)。王子の40年近くにわたる経験は申し分なく、また内外にわたり石油業界に広い人脈を有し、彼の今後の活躍に疑問を挟む余地はなさそうである。

 

 但し義弟でありながら今やサウジアラビアの実質的な独裁者であるMbSとの関係は微妙である。また石油問題は今や国際的な政治問題と深く関連している。同じOPEC加盟国であるイラン、あるいは非OPECの雄ロシアとのOPEC+(プラス)協調問題に加え、世界最大の産油・ガス国である[2]と同時に、サウジにとって不可欠の盟友である米国との関係など、アブドルアジズ新エネルギー相は複雑な外交力学に立ち向かわなければならない。

 

2.王子の性格は?

 実質的なデビューとなった9月のアブダビ石油会議におけるアブドルアジズ王子の言動を見る限り彼は見るからに育ちの良さを示す温厚な中年紳士である。OPECのBarkind事務総長も王子は経験と知識に富み決して感情的にならないと高く評価している[3]。但しこれを鵜呑みにはできない。任命の翌日Al Falih前エネルギー相と並んで記者会見を行ったとき、AbSは感極まって声を詰まらせるというemotional(感情的)な一面を見せている[4]

 

 Arab Newsは、王子が大学以来の数十年に及ぶAl Falihとの交友関係を思い起こしたためと好意的に報じているが、少しうがった見方をすれば常にアラムコ出身のテクノクラートに後塵を拝し、さらには父サルマンの寵愛を受けて皇太子に上り詰めた25歳も年下の異母弟ムハンマドに対して、アブドルアジズは自分の出世が遅れた上に、異母弟の下に立つという現状に感情が高ぶったと考えられなくもない。

 

 また石油政策を論じる彼の談話にはしばしば西洋文学あるいは話題のドラマから借用したpedantic(衒学的)な表現が見られる。それは世界のエネルギー情勢を左右するサウジアラビアの石油相に必ずしもふさわしいとは思えない。例えば上記の記者会見で、王子は英国の人気ドラマ”Upstairs, Downstairs”にひっかけて、自分は階下の台所で国と国王のために働きたい、と答えている。またある時はサウジアラビアが2030年にエネルギーの輸入国になるのでは、との質問に、自分はラ・ラ・ランドのシナリオを論じるほど暇では無い、と答えている。さらに最近のドローン攻撃に対する設備復旧見通しに対して「アラムコは不死鳥のごとくよみがえる」といった表現を連発している[5]

 

 もちろん王子が着実に石油政策を実現するならば問題ないが、思惑通り運ばなかった場合に相変わらずpedanticな表現であいまいな取り組みに終始するなら、彼の国内外での信用が色あせると危惧するのである。

 

(続く)

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com



[1] Prince Abdulaziz bin Salman appointed Saudi Minister of Energy

2019/9/8 Saudi Gazette

http://www.saudigazette.com.sa/article/576685/SAUDI-ARABIA/Prince-Abdulaziz-bin-Salman-appointed-Saudi-Minister-of-Energy

[2] レポート「石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2019年版石油+天然ガス篇」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0479BpOilGas2019.pdf

[3] Saudi Prince Abdulaziz bin Salman’s oil diplomacy makes mark at Opec+ meeting debut

2019/9/13 Gulf News

https://gulfnews.com/business/energy/saudi-prince-abdulaziz-bin-salmans-oil-diplomacy-makes-mark-at-opec-meeting-debut-1.66398765

[4] Oil output deal is here to stay, new Saudi minister vows

2019/9/9 Arab News

https://www.arabnews.com/node/1551986/saudi-arabia

[5] Saudi energy minister says oil output to be fully restored by end of the month

2019/9/17 Arab News

 

https://www.arabnews.com/node/1555711/saudi-arabia

 

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(9)

2019-10-08 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 荒葉 一也

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

第1章:民族主義と社会主義のうねり

 

3.イスラエル独立(その1):ユダヤ人の祖国建設運動

 本章のタイトル「民族主義と社会主義のうねり」は、戦後の中東アラブ諸国独立のエネルギーの源を意味しているが、ユダヤ人たちはそれより少し早く祖国建設を始めている。戦後一貫してアラブ諸国の歴史に最も大きな影を落としているユダヤ人の国イスラエルはそれまでの中東二千年の歴史とは全く異質な国家の出現であった。

 

ユダヤ人(と言われる人々が)2千年前にパレスチナを追われ「ディアスポラ(離散)の民」としてヨーロッパ移り住み、各地で迫害を受け辛酸をなめた末、1946年に漸く先祖の地パレスチナにイスラエルを建国した壮大な歴史ドラマはすでに数多の書物で語られてきた。詳細はそちらでお読みいただくとして、ここでは20世紀以降のイスラエル建国史はについて簡単に触れてみたい。

 

 19世紀後半にヨーロッパで「アンティ・セミティズム(反セム民族)」運動がヨーロッパに吹き荒れた。セム民族とはアラビア語、ヘブライ語など中東を起源とするセム系の言語を使用する民族の総称であるが、当時のヨーロッパでは「反セミティズム」は「反ユダヤ主義」そのものであった。ディアスポラの民は各地で「ゲットー」と呼ばれるユダヤ人居住地区に閉じ込められ、差別を受けてひっそりと暮らしていたのであるが、反ユダヤ主義の高まりの中でユダヤ人を狙い撃ちした事件が続発した。

 

政治的な事件として有名なのはフランスの「ドレフュス事件」である。1894年、フランス陸軍のユダヤ人大尉ドレフュスがドイツに対するスパイ容疑で逮捕された。事件は後に冤罪であることが立証され、大尉は1906年に無罪判決を獲得した。12年にわたる裁判闘争は文豪エミール・ゾラの政府弾劾書簡の発表などフランスを揺るがす大事件となったのである。また社会的な出来事としては19世紀末の帝政ロシアに広がった一連のユダヤ人大量虐殺事件「ポグロム」をあげることができる。「ポグロム」は第二次大戦中のドイツの「ホロコースト」と並ぶ悲惨な出来事であり、当時のヨーロッパの庶民が如何にユダヤ人を毛嫌いしていたがわかる。

 

 このような社会環境に置かれたユダヤ人たちがヨーロッパ以外の土地に安住の地を求めるようになったのは無理のないことである。そして多くのユダヤ人が「新世界」アメリカに移住したが、中には自らの祖国「ホームランド」建設を夢見る者たちもいた。ヨーロッパ諸国の白人為政者たちもヨーロッパ以外の土地にユダヤ人のホームランドを与えることが足元の社会不安をなくす妙案であると考え、この構想を後押しした。いわば体の良いユダヤ人追っ払い政策である。

 

 しかし20世紀の地球上に新しい国家を建設できる耕作可能な無人の土地などあるはずがない。そこでイギリス政府は中央アフリカの植民地はどうかと提案した。黒人の原住民がいるがそれは英国の力でどうにでもなるからである。しかし祖国建設運動の指導者ヘルツェルたちはあくまで祖先が2千年前に追放されたパレスチナでの祖国復活を主張した。彼らは「シオンの丘へ帰れ(シオニズム)」と「土地なき民を民なき土地へ」を合言葉とし、祖国建設運動は激しさを増していった。

 

 困ったのは英国政府である。パレスチナはオスマン・トルコの支配下にあり、しかもこれまで2千年にわたりアラブ人が住み慣れた土地であり、決して「民なき土地」などではない。無理に入植させれば先住民のアラブ人と紛争が起きるのは目に見えていた。

 

 その時ユダヤ人に格好の追い風が吹いた。第一次世界大戦の勃発である。戦費調達に苦しむ英国はユダヤ人富豪ロスチャイルドに頼った。その見返りとしてロスチャイルドが要求したのがパレスチナにおけるホームランド建設を英国に約束させることであった。それがバルフォア宣言である(プロローグ第6節「英国の三枚舌外交―バルフォア宣言」参照)。

 

こうして英国はユダヤ人の資金的バックアップを得て首尾よく戦争に勝った。そしてフランスと交わしたサイクス・ピコ協定(プロローグ第5節「英国の三枚舌外交―サイクス・ピコ協定」参照)によりパレスチナを委任統治領とした。これでパレスチナでのユダヤ人のホームランド建設(イスラエル建国)の障害はなくなったのである。

 

(続く)

 

 

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石油と中東のニュース(10月7日)

2019-10-07 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・OPECとガス輸出国フォーラム(GECF)が情報交流のMoU締結

・中国、イランの南パルスガス田開発プロジェクトから撤退

(中東関連ニュース)

・混迷深まるイラク、汚職・失業抗議デモで死者100人以上

・サウジZain、国内20都市に5Gネットワークを展開

 

 

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