石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス貿易篇3 国別輸入量

2012-08-31 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0238BpGasTrade2012.pdf

 

(世界最大の天然ガス輸入国は日本!)
3.2011年の国別天然ガス輸入量(パイプライン+LNG合計)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-1-T02.pdf 参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-1-G02.pdf 参照)
 2011年に天然ガスを最も多く輸入した国は日本でその輸入量は1,070億㎥であった。日本に次ぐ第2位の天然ガス輸入国はドイツで輸入量は840億㎥である。日本の場合は全量LNGであり、一方ドイツは全量パイプラインによる輸入である。

 輸入量第3位はイタリアで輸入総量は696億㎥(内訳:パイプライン608億㎥、LNG88億㎥)であった。4位以下10位までを列挙すると、米国(554億㎥、内訳:パイプライン474億㎥、LNG80億㎥)、韓国(493億㎥、全量LNG)、フランス(469億㎥、内訳:パイプライン323億㎥、LNG146億㎥)、トルコ(419億㎥、内訳:パイプライン356億㎥、LNG62億㎥)、ウクライナ(405億㎥、全量パイプライン)、英国(371億㎥、内訳:パイプライン118億㎥、LNG253億㎥)、スペイン(359億㎥、内訳:パイプライン億125㎥、LNG234億㎥)となっている。

 全世界の輸入総量は8,735億㎥であるが、全世界の天然ガス輸入国の数は68カ国あり、1位の日本が占めるシェアは12.%、2位ドイツは10%である。これを輸出(前項2参照)と比較した場合、天然ガスの輸出国の数は29カ国に限られており、輸出1位、2位のロシアとカタールの輸出シェアが22%及び14%と高いことと対照的である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス貿易篇2 国別輸出量

2012-08-30 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0238BpGasTrade2012.pdf

 

(輸出量1、2位のロシアとカタールは対照的。パイプラインのロシア、LNGのカタール!)
2.2011年の国別天然ガス輸出量(パイプライン+LNG合計)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-1-T01.pdf参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-1-G01.pdf参照)
 2011年に天然ガスを最も多く輸出した国はロシアであり、輸出総量は1,914億㎥、内訳はパイプラインによる輸出が1,770億㎥、LNGによる輸出は144億㎥であった。ロシアに次ぐ輸出国はカタールの1,218億㎥で、内訳はパイプライン192億㎥、LNG1,026億㎥である。両国は対照的であり、ロシアはパイプラインによる輸出が圧倒的に多く、一方のカタールはLNG輸出が殆どを占めている。ロシアのパイプラインによる輸出量はノルウェーの2倍近くの世界一である。カタールもLNGの輸出量としては2位マレーシアの3倍以上であり、こちらも世界最大のLNG輸出国である。昨年からはロシアがLNGによる輸出(主として日本向け)を開始、一方のカタールもパイプラインによる輸出(UAE向け)を開始しており、両国はお互いにしのぎを削っている。

 天然ガスの輸出量世界3位はノルウェーであり、輸出量は968億㎥(内訳:パイプライン928億㎥、LNG40億㎥)である。これら3カ国の輸出量は世界全体の48%を占めている。4位以下10位まではカナダ(614億㎥、全量パイプライン)、アルジェリア(515億㎥、内訳:パイプライン344億㎥、LNG171億㎥)、インドネシア(379億㎥、内訳:パイプライン87億㎥、LNG292億㎥)、オランダ(367億㎥、全量パイプライン)、トルクメニスタン(346億㎥、全量パイプライン)、マレーシア(336億㎥、内訳:パイプライン3億㎥、LNG333億㎥)、ナイジェリア(267億㎥、内訳:パイプライン8億㎥、LNG259億㎥)の順である。

 これら以外にも19カ国が天然ガスの輸出を行っており輸出の総量は8,551億㎥に達する。なおこの輸出量は前章の貿易量とは異なり例えばカナダと米国のように隣国間で相互に輸出入を行っている場合はそれを相殺した各国のNET輸出量である(次項の輸入も同様にNET輸入量を示す)。

(参考)ガス輸出国フォーラム(GECF)の輸出量と世界に占めるシェアについて
 世界の天然ガス生産国のうちロシア、カタールなど12ヶ国は「ガス輸出国フォーラム」(略称GECF)を結成しており(オブザーバー3カ国を含めると15カ国)、本シリーズの天然ガス篇でも触れたとおり世界に占めるシェアは埋蔵量ベースで59%、生産量ベースで37%である。輸出量ベースで見たGECFのシェアはメンバー国では53%、オブザーバーを含めると69%に達し、これはOPEC(石油輸出国機構)に引けを取らないシェアである。現在のGECFはOPECのような生産カルテルを目指さないと言明しているが日本が原発事故後LNGの調達を増やすなど、当面の天然ガス貿易は売り手市場の様相にあるためGECFの動向は目が離せない。但しGECFの加盟国のうちイランとベネズエラは生産した天然ガスを全量国内消費しており、不足分を周辺国から輸入している実質的な輸入国であることに留意する必要がある。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月29日)

2012-08-29 | 今日のニュース

・仏蔵相:G7から石油増産要請コミュニケ発表の合意取り付け。Brent$112.45, WTI$96.24

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス貿易篇1貿易量

2012-08-29 | その他

 

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0238BpGasTrade2012.pdf

 

 

1.天然ガスの貿易量(パイプライン+LNG合計)
(天然ガス貿易に二つのタイプ:パイプラインとLNG!)
(1)天然ガス貿易の二つの形態
 天然ガスは石油と異なり大気中に拡散することを防ぐため密閉状態で搬送しなければならない。この場合輸送方法によりパイプラインで気体状のまま搬送する方法若しくは液化して特殊な船(LNGタンカー)や運搬車で搬送する二種類がある。パイプライン方式は常温で気体状のガスを生産地と消費地をパイプで直結して搬送するものであり、LNG方式は生産地で極低温で液化したガスを密閉容器で消費地に搬送するタイプである。

 パイプラインによる貿易は古くから行われている。但しパイプラインを敷設するためには生産地と消費地が陸続きであるか比較的浅い海底(又は湖底)であることが条件である。パイプラインによる天然ガス貿易が広く普及しているのが北米大陸の米国・カナダ間の貿易である。ヨーロッパ大陸でもオランダ産の天然ガスを各国に輸出するための天然ガスパイプライン網が発達し、同国の生産量が衰退するに従い新たな供給地としてロシア及び中央アジア諸国とのパイプラインが敷設され、或いは地中海を隔てた北アフリカのアルジェリアとの間で海底パイプラインが敷設され、現在ではこれらのパイプラインが欧州・ユーラシア地区における天然ガス貿易の中心を成している。

 これに対して天然ガスの生産地と消費地が離れており、しかもその間に深海の大洋がある場合は両者を結ぶパイプラインを敷設することは不可能である。そのために開発されたのが天然ガスを極低温で液化し容量を圧縮し効率よく輸出するLNG貿易である。LNGは液化のための高度な技術と高い設備投資コストさらに顧客との長期安定的な販売契約が事業の成立と継続のための必須条件である。このような制約のためLNG貿易の歴史は比較的新しく本格化したのは中東のカタールと日本の間で1997年に始まった事業からである。

(2000年以降の天然ガス貿易の年平均伸び率は6.4%!)
(2)天然ガスの貿易量(2000年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-1-G03.pdf参照)
 2011年の世界の天然ガス貿易の総量は1兆250億立法メートル(以下㎥)であり、内訳はパイプラインによるものが6,950億㎥、LNGとして取引されたものは3,310億㎥であった。前者が全体の3分の2を占めており、LNGは3分の1である。天然ガス貿易に関与している国の数はパイプライン貿易が79カ国、LNGが41カ国、延べ130か国に達している。これらの国の中には日本のようにパイプラインによる輸入がなく全てLNG輸入に依存している国がある一方、カザフスタンのようにパイプラインによるガス輸出のみを行っている国、更には米国とカナダのようにパイプラインで相互に輸出と輸入を行っている国などいろいろな形態がある。今や天然ガス貿易は国際的に広く普及している。

 2000年以降の天然ガスの貿易量を見ると、2000年に5千億㎥を突破した後ほぼ2年毎に1,000億㎥ずつと言う高い伸びを示し、2011年には1兆㎥を超えた。この間の年平均増加率は6.4%という高い数値を示している。貿易に占めるパイプラインとLNGの比率は2000年にはパイプライン74%、LNG26%であったが、その後LNGの比率が徐々に増加、2010年には30%を超え、2011年はパイプライン68%、LNG32%となっている。2000年と2011年を比較するとパイプラインによる貿易量の伸びが1.8倍であったのに対してLNGの伸び率は2.4倍である。特にLNGは最近の伸びが著しく2010年には対前年比24%という高い増加率を示している。天然ガス貿易はパイプライン或いはLNG設備が完成すれば貿易量が飛躍的に伸びるという特性があるが、LNG貿易は2010年のカタールの能力増強やロシア極東の設備新設により供給力が増加したことが貿易量の増大につながっている。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇9 消費量(3)

2012-08-27 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0236BpOil+Gas2012.pdf

 

(石油・天然ガスの消費が急増する中国とインド、日本は11年間で8%減!)
(5)主要5カ国の消費量推移(2000年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G03.pdf参照)
 米国、日本、中国、ロシア及びインドの5カ国について2000年から2011年までの各国の石油と天然ガスの合計消費量を見ると、米国の消費量は他の国を圧倒しており2000年時点で3,109万B/Dとロシア(865万B/D)の3.6倍、日本(679万B/D)の4.6倍、中国(519万B/D)の6倍あり、インド(2.7百万B/D)に対しては10倍以上の差があった。

 米国の消費量はその後横ばい状態が続き2011年は3,073万B/Dである。これに対して中国の消費量は爆発的に増加しており、2004年には日本を超え、さらに2009年にはロシアを追い抜き米国に次ぐ世界第2位の石油・天然ガス消費国となり、2011年の消費量は2000年比2.3倍の1,201万B/Dに達している。かつて6倍であった米国と中国の差は2.6倍にまで縮まっている。

 インドも中国程ではないが年々増加しており2000年に270万B/Dであった消費量は、2004年には300万B/D、そして2009年には400万B/Dを突破、2011年の消費量は2000年比1.7倍の453万B/Dに達している。日本との差は未だ170万B/Dあるが現在の趨勢が続けば近い将来インドの消費量は日本を上回ることになろう。

 日本の石油・天然ガスの消費量は2000年以降ほぼ一貫して減少しており、2011年の消費量624万B/Dは2000年に比べ8%減少している。これは景気低迷によりエネルギー消費が減少し或いは省エネ政策によりエネルギー効率が向上したためと考えられる。しかし2009年を境に石油・天然ガスの消費は増勢に転じている。省エネ政策や再生エネルギー利用は今後も継続的に発展することが見込まれるが、一方では原発の停止により火力発電用石油・天然ガスが増えることは避けられず、当面は石油・天然ガスの消費量が増加することが考えられる。

(自給率が改善しつつある米国。日本は過去・現在・将来とも自給率0%!)
(6)日本と米国、中国、インドのエネルギー自給率(2000年~現在)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G05.pdf 参照)
 2011年の統計で見ると米国、中国、日本及びインドはそれぞれ世界1位、2位、4位及び6位の石油・天然ガスの消費国である。このうち日本を除く3カ国は同時に石油・天然ガスの生産国であり、特に米国はロシアに次ぐ世界2位の生産国、中国は世界6位である(第2章国別生産量参照)。またインドも石油・天然ガスの合計生産量は165万B/Dで世界22位である。これに対して日本は国内で生産する石油・天然ガスは微量であり殆ど全てを輸入に依存している。

 2000年から2011年までのこれら4カ国について消費量を生産量で割ったエネルギー自給率を計算すると、日本は当然ながら自給率0%である(厳密に言えば0.3%程度の自給率ではあるが統計上は無視される数値である)。これに対して米国、中国及びインドの場合、2000年時点では中国は72%の自給率を維持しており、米国及びインドもそれぞれ55%、43%の自給率を示し消費量の1/2前後を国産の石油・天然ガスでまかなっている。但し中国とインドの場合、2000年時点では天然ガスを外国から輸入する手段がなかったため天然ガスは生産=消費(即ち名目上の自給率は100%)の制約があった訳であるが、ともかくも両国の石油・天然ガス合計の自給率はかなりの水準だったのである。

 その後中国とインドでは産業規模の拡大により石油・天然ガスの消費が急拡大し、米国も生産が消費に追いつかず、3カ国とも自給率は低下した。特に中国の自給率は2000年以降急激に下落し2002年は60%台、2004年には50%台となり、2011年にはついに50%を割り込んだ。インドも2000年の43%から2005年には30%台に落ち込み現在は横這い状態を続けている。

 ところが米国は2005年に50%すれすれまで落ち込んだが、その後自給率は上昇傾向を続けており2011年にはついに自給率62%を達成しているのである。このところシェールガス或いはシェールオイルの生産が急上昇しており、将来は自給率100%の達成も夢物語ではなくなっている。現にシェールガスについては数年内に輸出が開始されるとも言われている。

 米国と言う世界最大のエネルギー消費国が世界最大の生産国に変貌し、あまつさえ石油或いは天然ガスの輸出国になろうとしている。そして巨大な人口を抱えた中国及びインドは今後ますます世界中の石油・天然ガスを買い漁るようになる。このような現状を考えると石油・天然ガスの自給率0%を運命づけられている日本がエネルギー問題について重大な岐路に立たされていることは間違いない。

(石油+天然ガス篇 完)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月25日)

2012-08-25 | 今日のニュース

・LNG商戦の主導権争い激化。カタール・ロシアなど既存勢力に豪州・東アフリカが台頭。 *

・オマーン、今後10年で石油・ガス開発に1千億ドル投資

 

*BPエネルギー統計レポート天然ガス篇(埋蔵、生産、消費量)及び天然ガス貿易篇を連載中です。

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今週の各社プレスリリースから(8/19-8/25)

2012-08-25 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/21 国際石油開発帝石/TOTAL    アンゴラ共和国 ブロック14 鉱区(原油生産鉱区)への参加について http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2012/20120821.pdf
8/22 経済産業省    「石油・天然ガス分野における協力に関する日露ワーキング・グループ」の第2回会合を開催しました http://www.meti.go.jp/press/2012/08/20120822001/20120822001.html

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇8 消費量(2)

2012-08-24 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0236BpOil+Gas2012.pdf

 

(ジリジリ上がる天然ガスの比率。2011年は40%弱!)
(3)石油と天然ガスの消費量の推移(1990年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G02.pdf 参照)
 1990年から2011年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1990年の石油と天然ガスの合計消費量は石油が6,665万B/D、天然ガスは1兆9,592億㎥(石油換算3,376万B/D)であった。合計すると石油換算で1億42万B/Dとなり、両者の比率は石油66%、天然ガス34%であった。

 その後消費量は2009年を除き2011年まで毎年増加の一歩をたどり、2011年の消費量は石油換算で1.44億B/D(内訳:石油8,800万B/D、天然ガス3.2兆㎥)であり1990年の1.4倍に達している。石油と天然ガスそれぞれにについて見ると、石油は1.3倍、天然ガスは1.6倍と天然ガスの伸び率は石油より高い。この結果、2011年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は61%:39%であり、天然ガスの比率は過去20年の間に5ポイント上昇している。この間、地球環境問題の高まりにより石油に比べてCO2発生量が少ない天然ガスの導入が進んだことがわかる。特に日本の場合は原発の新設がほぼ不可能になり、既設原発の再稼働にも多くの制約が課されるであろうことを考慮すると、(燃料調達コストの問題はあるにしても)今後天然ガスの比率が増えることは間違いないであろう。

(重みを増すアジア・大洋州!)
(4)地域別の消費量の推移(1990年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G02b.pdf 参照)
 全世界の消費量に占める地域の割合の推移を見ると1990年は欧州・ユーラシアが世界全体の36%を占めて最も多く、次いで北米が31%、アジア・大洋州が20%を占め、その他の地域(中南米、中東及びアフリカ)は14%であった。欧州・ユーラシアと北米を合わせた欧米先進国だけで全世界の3分の2の石油・天然ガスを消費しており、これに新興国家が多いアジア・大洋州を加えると9割近くに達する。

 その後欧州・ユーラシア地域の消費量は緩やかに減退し1990年代半ば以降は21百万B/D前後で推移している。これに対し1990年に14百万B/Dであったアジア・大洋州の消費量は年々上昇しており、2000年には欧州・ユーラシアを抜き去り、更に2007年には北米をも上回って石油・天然ガスを世界で最も多く消費する地域になった。2011年の消費量はアジア・大洋州29百万B/D、北米25百万B/D、欧州・ユーラシア21百万B/D、その他地域19百万B/Dであり、全世界に占めるシェアはアジア・大洋州31%、北米26%、欧州・ユーラシア22%、その他地域20%である。

(続く)
 
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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇7 消費量(1)

2012-08-23 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0236BpOil+Gas2012.pdf

 

BPの「BP Statistical Report of World Energy 2010」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。

3.世界の石油と天然ガスの消費量
(石油+天然ガスの消費量が拮抗する北米、欧州・ユーラシア、アジア・大洋州の3地域!)
(1)2010年の石油と天然ガスの地域別合計消費量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G01.pdf 参照)
 2011年の世界の石油消費量は日量8,803万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの消費量は年間3兆2,229億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの消費量を石油に換算すると5,554万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの消費量は1億4,358万B/Dとなる。両者の比率は石油61%、天然ガス39%でほぼ3:2の割合である。

 消費量を地域別に見ると、アジア・大洋州、北米、欧州・ユーラシアの3地域が3,800万B/D(石油換算)前後で肩を並べている。これらの地域が世界に占める合計シェアは8割に達する。但し各地域の石油と天然ガスの比率にはそれぞれ違いがあり、アジア・大洋州は石油の比率が74%に対して天然ガスは26%でありほぼ3:1の割合である。一方欧州・ユーラシアは石油と天然ガスの比率が1:1と同じ割合である。北米の石油と天然ガスの割合はこれら両地域の中間であり世界全体の比率と同じ61%:39%である。アジア・大洋州は天然ガスの生産地と消費地が離れているためエネルギーを石油に依存しており石油の消費量が天然ガスを上回っている。世界的に見ても上述の通り石油がエネルギーの太宗を占めているが、欧州・ユーラシア地域はロシア・中央アジアなど天然ガスの生産地と西ヨーロッパの消費地が陸続きのためパイプライン網による天然ガス利用が発達したという歴史的経緯がある。ヨーロッパでは天然ガスは家庭用・発電用燃料として使われ、一方石油の用途は輸送用燃料(ガソリン、ディーゼル)或いは石油化学原料が一般的であり、天然ガスと石油の利用が相半ばしている。

 これら以外の3地域(中南米、中東、アフリカ)は全て併せても20%に過ぎず、それぞれの世界消費に占めるシェアは中東10%、中南米6%、アフリカ4%である。石油及び天然ガスの消費が先進国及びアジアの新興工業地帯に集中していることがわかる。

(米国は圧倒的なエネルギー消費国。一国で世界の20%を消費!)
(2)2010年の石油と天然ガスの国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-T01.pdf 参照)
 消費量を国別に見ると、世界で石油と天然ガスの合計消費量が最も多いのは米国である。同国の消費量は石油換算で3,073万B/D、実に世界の5分の1強の石油と天然ガスを消費しているのである。米国は2位中国の2.5倍を消費しており米国が如何にエネルギーを大量消費しているかが解る。

 米国に次いで消費量が多いのは中国の1,201万B/D(石油換算)である。同国は石油の消費量は世界2位(976万B/D)、天然ガスは世界4位(石油換算225万B/D)であり、天然ガスの消費量は石油の4分の1強である。第3位はロシアの1,028万B/D。以上の3カ国が石油と天然ガスの合計消費量が1千万B/Dを超えている。日本は第4位で合計消費量は624万B/D、内訳は石油442万B/D、天然ガス1,055億㎥(石油換算182万B/D)である。日中両国を比較すると、石油消費量は中国が日本の2.2倍、天然ガスは1.2倍であり、それぞれの国における石油と天然ガスの構成比は日本が71%(石油)対29%(天然ガス)、中国は81%対19%となっており、日本は天然ガスの構成比率が高い。

 5位以下10位までは、サウジアラビア(合計消費量457万B/D、石油63%、天然ガス37%)、インド(同453万B/D、77%、23%)、イラン(同447万B/D、41%、59%)、カナダ(同410万B/D、56%、44%)、ドイツ(同361万B/D、65%、35%)、メキシコ(同322万B/D、63%、37%)と続いている。

(続く)
 
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月22日)

2012-08-22 | 今日のニュース

・イラクの南部からの石油輸出はイラク戦争以来最高の225万B/Dに

・中国のシェールガス開発に毎年10億ドル投資:Shell中国法人トップ

 

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