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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

IMF世界経済見通し(2025年4月):トランプ関税で大幅減速の世界経済(4完)

2025-05-05 | その他
(余裕の世界1位米国、息切れする2位中国、3位をうかがうインド!)
4.五大国(米中独印日)のGDP推移
2025年のドル建て名目GDPが世界上位の5カ国(米、中、独、印、日)について2005年以降の順位の変遷を見ると、2005年トップの米国のGDPは13兆ドルであった。これに続くのが日本の4.8兆ドルであり、3位以下はドイツ2.9兆ドル、中国2.3兆ドルであった。この時インドのGDPは8千億ドルで米国の16分の1、日本の6分の1にとどまっていた。

その後、中国のGDPの伸びは目覚ましく、2007年にドイツを追い抜き、さらに2010年には日本も追い越して米国に次ぐ世界2位のGDP大国に成長している。その時点では中国のGDPは米国の2分の1にとどまっていたが、成長率は米国を大幅に上回った結果、2021年には米国の8割弱まで追い上げている。但し2022年以降は成長率が鈍化し、首位米国との格差はむしろ拡大しており、今年の中国のGDPは米国の6割強である。

日本とドイツの過去20年間のGDPは低成長を続けており、特に日本は2011年以降ゼロ成長に近い状態が続き、2023年にはドイツにも追い抜かれ世界4位に転落している。一方、インドは過去20年間安定した高度成長を続けている。2005年には日本の6分の1、ドイツの4分の1の8千億ドルに過ぎなかったインドのGDPは、2007年に1兆ドル、2014年には2兆ドル、2021年に3兆ドルを超え、今年(2025年)はわずかながらも日本を追い抜いて世界第4位のGDP大国に成長している。IMFではこの趨勢が続けば2028年にインドはドイツを追い抜いて世界3位になると予測している。

2005年を基準として2025年の増加率をみると、米国の2.3倍に対し、中国は8.3倍、インドは5.1倍であるが、ドイツは1.6倍にとどまり、日本の場合は0.9倍と20年前の水準を下回っている。ここで取り上げたGDPは名目のドル換算であるため、日本は円高の影響を強く受けていることが背景にある。

以上

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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IMF世界経済見通し(2025年4月):トランプ関税で大幅減速の世界経済(3)

2025-05-04 | その他
(トップは米国、日本は中国、ドイツ、インドに次いで世界5位!)
3.世界の名目GDP 
 2025年の全世界のGDP総額は113兆7,957億ドルと見られている。トップは米国の30兆5,072億ドル、2位は中国の19兆2,317億ドルである。全世界のGDPに占める割合はそれぞれ27%及び17%、両国だけで世界のGDPの4割強を占め、3位のドイツ以下を大きく引き離している。

 GDP世界第3位はドイツ(4兆7,448億ドル)、4位はインド(4兆1,870億ドル)であり、5位に僅差で日本(4兆1,864億ドル)が続いている。上位5カ国の合計GDPは世界全体の55%を占めている。

 6位から10位までは英国、フランス、イタリア、カナダ及びブラジルである。因みに上位10カ国の合計GDPは全世界の67%を占め、世界の富の3分の2は世界200カ国強のわずか5%の国が生み出しているのが現状である。

 11位のロシア以下20位ポーランドまでには韓国(13位)、オーストラリア(14位)の他、中東のトルコ(16位)及びサウジアラビア(19位)が入っており、世界20位までの国々の合計GDPは世界全体の8割強を占めている。

 上記トルコ、サウジアラビア以外の中東各国を見ると、イスラエルとUAEがそれぞれ5,830億ドル及び5,490億ドルで世界27位及び29位であり、エジプトは世界43位、イランは同45位である。

 経済圏で見るとG7構成国の合計GDPは51兆ドルで全世界の45%を占め、ユーロ圏は同17兆ドルで中国一国より少ない。また東南アジアASEAN5か国のGDP総額は3兆5千億ドルであり、中東・中央アジア圏のGDP総額は5兆ドル弱である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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IMF世界経済見通し(2025年4月):トランプ関税で大幅減速の世界経済(2)

2025-05-03 | その他
(安定成長を続けるインド、成長率4%に落ちた中国!)
2.主要国の2022-2026年GDP成長率推移 
 日本、米国、中国、インド及びサウジアラビア5カ国に全世界を加えた2022年から2026年まで5年間のGDP成長率の推移を見ると以下のとおりである。

 まず2022年の実績成長率はインドが7.6%と最も高く、これに次ぐのがサウジアラビアの7.5%であった。中国は世界景気回復遅れの影響で全世界平均の成長率(3.6%)を下回る3.1%にとどまり、米国は2.5%、日本は5カ国の中で最も低い0.9%であった。

 この順位はサウジアラビアを除き5か年を通じてほぼ変わらない。インドの成長率は、7.6%(2022年)、9.2%(2023年)と2年続けて高い水準を維持した。2024年以降2026年までは6%台前半にとどまっているが、それでも中国、米国、日本に比べ安定して高い成長率を達成している。

 インドに次いで成長率が高いのは中国である。同国の5か年間の成長率は3.1%→5.4%→5.0%→4.0%→4.0%であり、2022年以外は世界平均を上回る成長率を示している。但しかつてのような高度成長は望めず、現在はほぼ4%を維持している。

 サウジアラビアの成長率は7.5%(2022年)→▲0.8%(2023年)→1.3%(2024年)→3.0%(2025年)→3.7%(2026年)と毎年変動が激しい。同国のGDPは石油が太宗を占めており、世界の石油需要と価格に左右されることが原因と考えられる。

 米国と日本はインド、中国よりもかなり低い成長を余儀なくされており、2022年以降は米国は2%前後、日本は1%前後の成長率にとどまっている。両国の5か年の推移を見ると、米国は2.5%(2022年)→2.9%(2023年)→2.8%(2024年)→1.8%(2025年)→1.7%(2026年)であり、日本は0.9%(2022年)→1.5%(2023年)→0.1%(2024年)→0.6%(2025年)→0.6%(2026年)である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
      前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
                     Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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IMF世界経済見通し(2025年4月):トランプ関税で大幅減速の世界経済(1)

2025-05-02 | その他
IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook、April 2025)」(以下、WEO)を発表した。 また付属資料として世界各国及び地域の主要な経済指標を示した「データベース(World Economic Outlook Database)」も同時に公表した。

本稿では世界、主要経済圏、主要国の今年(2025年)及び来年(2026年)の成長率を比較し、また前回1月の経済見通し(World Economic Outlook Update)に対してGDP成長率がどのように見直されたかを検討する。さらに主要5カ国及び世界平均の2022年以降の5か年の成長率の推移を比較する。また今年の名目GDP(at current price)及び一人当たりGDPについても併せて検証する。

*WEOレポート: 

*同データベース

(今年の世界の成長率は2.8%、1月見通しを▲0.5%下方修正!)
1.2025/26年のGDP成長率 
 今回4月見通しでは今年の世界の成長率は2.8%とされており、前回1月(3.3%)から▲0.5%と大幅に下方修正されている。1月に就任したトランプ大統領が一般の予想を大幅に上回る高関税政策を打ち出され、IMFは世界景気の急減速を懸念している。

米国が最大の標的とみなす中国の今年の成長率は4.6%から4.0%に引き下げられ、来年の成長も今年と同率で停滞が予測されている。日本の成長率も今年、来年共に0.6%にとどまる。トランプ大統領は貿易赤字解消と製造業の回復を目指して関税戦争を仕掛けた訳であるが、直近で見る限り米国自身が返り血を浴びることは避けられない。IMFは米国の成長率低下は免れないと評価し、今年の成長率は1.8%、来年は1.7%と見ている。今年の成長率は1月の予測値から▲0.9%下がっており、中国あるいは日本よりも大きく下方修正されている。

その他の国地域を見ると、EU圏の成長率は今年0.8%、来年1.2%にとどまっている。特に独の今年の成長率は1月見通しのプラス0.3%からマイナス▲0.1%に見直され、独がEU圏の成長の足を引っ張っている状況である。

このような中でインド及びASEAN5カ国は今年、来年とも世界平均を上回る成長が予測されている。インドは今年、来年とも6%を上回る成長を続けると見込まれ、ASEAN5カ国も今年4.0%、来年3.9%と世界平均を上回る成長が見込まれている。

中東の主要国を見ると、今年の成長率はサウジアラビア3.0%、エジプト3.8%、イラン0.3%、UAE 4.0%であり、イランを除き世界平均を上回る成長率である。来年については4カ国はそれぞれ3.7%、4.3%、1.1%及び5.0%であり、イランは停滞するものの、その他3か国は世界平均を上回る成長を続けると予測されている。

(続く)

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G7に格差、格下げ止まらないイスラエル:世界主要国のソブリン格付け(2025年1月現在) (3)

2025-01-19 | その他
2. 2022年1月以降の格付け推移
ここでは2022年1月以降現在までのソブリン格付けの推移を(1)G7、(2)BRICS 5カ国、(3)日中韓台湾4カ国、(4)中東主要国(トルコ、エジプト、イスラエル、レバノン及びGCC4か国)それぞれについて検証する。(いずれも外貨建て長期格付け)

(トリプルAを保持し続ける独とカナダ、かなり低い日本の評価!)
(1) G7各国の格付け推移
                 2022年          2023年           2024年         2025年
                 1月    7月     1月    7月      1月    7月     1月
ドイツ          AAA→   AAA→   AAA→   AAA→   AAA→   AAA→   AAA
カナダ          AAA→   AAA→   AAA→   AAA→   AAA→   AAA→   AAA
米国            AA+→   AA+→   AA+→   AA+→   AA+→   AA+→   AA+
英国            AA→    AA→    AA→    AA→    AA→    AA→    AA
フランス        AA→    AA→    AA→    AA→    AA→    AA-→   AA-
日本            A+→    A+→    A+→    A+→    A+→    A+→    A+
イタリア        BBB→   BBB→   BBB→   BBB→   BBB→   BBB→   BBB

 G7のうちフランスを除く6カ国の格付けは過去3年間変わっていないが、フランスのみは昨年上半期に「AA」から「AA-」に格下げされている。ドイツとカナダは最上位格付けのトリプルAを維持し続けている。米国は1ランク低いAA+に格付けされ、英国は米国より相対的に1ランク低い「AA」に格付けされている。フランスは昨年上期まで英国と同じランクであったが、期中に「AA-」に格下げされた。

 因みにS&Pの格付け定義では、「AAA」(トリプルA)は「債務者がその金融債務を履行する能力は極めて高い。」であり、「AA」は「債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付けAAA」との差は小さい。」とされている。

 日本の格付けは上位5カ国より低い「A+」とされ、G7中で最も低いイタリアの格付けは投資適格の中でも最低ランクの「BBB」である。両国は共に過去3年間格付けが変わっていない。

 なお「A」及び「BBB」の格付け定義は、「A」が「債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい」であり、「BBB」は「債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」と定義されている。

(続く)

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      前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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G7に格差、格下げ止まらないイスラエル:世界主要国のソブリン格付け(2025年1月現在) (2)

2025-01-17 | その他
1.2025年1月現在の主要国の格付け状況(続き)
(ブラジルBB、エジプトB-、ロシアは格付け無し。)
(2)BB以下(投資不適格)に格付けされた主要国
 S&PはBBB以上を投資適格、BB以下を投資不適格としている。因みに同社の格付け定義では、BBBは「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ、BBは、「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされ信用度が低い。
                                                                             
 新興工業国の多くはBBランクに格付けされており、例えばモロッコ、ベトナムはBB+、ブラジルはBB、トルコ、ヨルダン及び南アフリカはBB-である。またエジプト、イラクはB-に格付けされている。BRICSとして知られる諸国を横並びで見ると、中国がA+、インドがBBB-と投資適格に格付けされており、他のブラジル(BB)及び南アフリカ(BB-)は投資不適格とされている。ロシアはウクライナ戦争開戦前まではインドと同じBBB-に格付けされていたが、現在は「NR(Not Rating、格付け無し)」とされている。

(続く)

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G7に格差、格下げ止まらないイスラエル:世界主要国のソブリン格付け(2025年1月現在) (1)

2025-01-15 | その他
 本レポートは著名な格付け会社Standard & Poors (S&P)[1]の世界主要国及びMENA諸国のソブリン格付け[2]を取り上げて各国を横並びに比較するとともに、いくつかの国について過去3年間にわたる半年ごとの格付け変化を検証するものである。

 因みにS&Pの格付けは最上位のAAA(トリプルA)から最下位のCまで9つのカテゴリーに分かれている。このうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」とされている。またAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている。なおC以下でS&Pが債務不履行と判断した場合はSD(Selective Default:選択的債務不履行)格付けが付与され、さらに格付けを行わない場合はN.R.(No Rating)と表示される。

S&P(日本)ホームページ:


1.2025年1月現在の主要国の格付け状況
(G7で格差、トリプルAの独、カナダ、BBBのイタリア、日本はA+)
(1)AAA(トリプルA)、AA及びA
 2025年1月現在、S&Pの最高格付け「AAA(トリプルA)」を得ているのは、G7ではドイツ及びカナダの2か国であり、その他ヨーロッパではスイス、ノルウェー、オランダなどである。またアジア・オセアニア地域ではシンガポール及びオーストラリアがAAAである。中東、アフリカ、南米地域では「AAA」の格付け国は無い。

 「トリプルA」に次ぐ「AA」の格付けを見ると、米国、英国及びフランスが「AA」格付けを得ている。但し「AA」の格付けには「AA+(プラス)」、「AA」、「AA-(マイナス)」の3段階があり、米国は「AA+」、英国「AA」、フランス「AA-」であり、3カ国の間に格差がある。アジア地域では香港、台湾が米国と同じ「AA+」であり、韓国は英国と並ぶ「AA」格付けである。後述するように日本及び中国はこれら3か国より2~3ランク低い「A+(プラス)」の評価であり、極東諸国間にも格付け格差がある。中東地域のアブダビ(UAE)及びカタールは英国、韓国と同じ「AA」に格付けされ、中東諸国の中では最も高い。

 格付け「A」の国は日本及び中国が「A+」であり、上記の通り台湾、韓国と格差がある。中東のクウェイトは同じ「A+」である。ヨーロッパのスペイン、中東のサウジアラビア及びイスラエルなどが「A」格付けである。

(2)BBB(トリプルB)
「BBB」はS&Pが投資適格としている最も低いランクである。この格付けにはタイ、フィリピン及びメキシコなどが「BBB+」に格付けされており、G7国ではイタリアが「BBB」である。またインドネシアもイタリアと同じ「BBB」とされ、「BBB-」にはアジアではインド、西欧ではギリシャがこの格付けである。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
      前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
                     Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
                     E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

[1] 世界的な格付け会社はS&P社のほかにMoody’s及びFitchRatingがあり、三大格付け会社と呼ばれている。

[2] ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

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ホームページ「マイ・ライブラリー」のご案内

2024-10-28 | その他

 これまでにブログおよび各種の雑誌への寄稿等に発表したレポート、エッセイ等を「マイ・ライブラリー(論稿集)」としてまとめました。 日々のニュースをモニタリングしているブログ「石油と中東」及び荒葉一也編集ブログ「OCIN Initiative」及び「Middle East Informant」とあわせてお読みください。

おすすめのコーナー:

・(New)世界ランクシリーズ10 報道の自由度2024年版

・(New)世界ランクシリーズ9 UNCTAD世界投資レポート2024年版

・(New)五大国際石油企業2024年4-6月期業績比較

・(New)ウクライナ紛争で激変したロシアと西欧のエネルギー貿易

・(New)EI世界エネルギー統計2024年版

・(New)世界主要国のソブリン格付け(2024年7月現在)

・世界ランクシリーズ5 男女格差指数(2024年版)

・OPECプラスの協調減産を分析する

・世界ランクシリーズ7 軍事費と武器輸出入(2024年版)

・世界ランクシリーズ1 人口・出生率・平均寿命

・アラブ世界の大企業500社番付

・(再録)サウジアラビア・サウド家

・エッセイ「挽歌・アラビア石油(私の追想録)」

 

 

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ウクライナ紛争で激変したロシアと西欧のエネルギー貿易(3完)

2024-08-02 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0609RussiaEuEnergyTrade2019vs2023.pdf

 

(西欧はガス・石油をどこから調達し、ロシアはどこへ転売したのか?)

 

4.原油・石油製品貿易の変化

(ロシアのシェアは2019年の35%から2023年には11%に激減!)

4-1ヨーロッパの原油・製品国別輸入量(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G21.pdf参照)

 2019年のヨーロッパの原油輸入量は5億2,200万トン、製品は2億9百万トン、合計で7億3,200万トンであった。合計量を国別で見ると最も多かったのはロシアの2億5,900万トンで全体の35%を占めていた。ロシアに次いで輸入が多かったのはロシア以外の旧CIS諸国からが全体の1割強であり、米国、北アフリカ諸国、西アフリカ諸国、イラク、サウジアラビアなどが9%乃至5%で並んでいた。

 

 2023年の原油・製品合計輸入量は6億3,000万トンと2019年に比べて14%減少している。これを国別に見ると2019年と大きく様相が変化している。同年の輸入国トップは米国の1億1,700万トンであり、輸入全体に占める割合は19%、2019年の1.7倍に増加している。米国に次ぐのは旧CIS諸国で、3番目がロシアである。ロシアからの輸入量は6,990万トンであり、2019年の4分の1弱に落ち込み、米国と対照的な結果である。また量は多くないもののUAE、クウェイト、中国、アフリカ諸国からの輸入が増加しており、供給源が多様化している。

 

(インド、中国向け輸出が激増!)

4-1ロシアの原油・製品輸出量(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G22.pdf参照)

 ロシアの原油及び製品の輸出量について2019年と2023年を比較すると総量では2019年の4.5億トンに対して2023年は3.3億トンで▲26%減少している。中でもヨーロッパ向けは2.6億トンから7千万トンと4分の1近くに減少している。一方この減少を補ったのが中国及びインド向けである。中国向け輸出は2019年の8千万トンから50%増加、2023年の輸出量は1.2憶トンに達している。インド向けの増加はさらに顕著であり、2019年の4百万トンから2023年には9千万トンと20倍以上増加している。

 

 ヨーロッパ、中国、インド以外へのロシアの輸出も大幅に減少しており、このことからロシアは欧米の経済制裁によって閉ざされた世界の輸出ルートを中国とインドに振り替えたと言えよう。

 

以上

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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ウクライナ紛争で激変したロシアと西欧のエネルギー貿易(2)

2024-08-01 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0609RussiaEuEnergyTrade2019vs2023.pdf

 

(西欧はガス・石油をどこから調達し、ロシアはどこへ転売したのか?)

 

(4倍に急増した米国産LNG輸入、全輸入量も増加しパイプラインの不足分を補填!)

2.LNG貿易の変化(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G10b.pdf参照)

 天然ガスのもう一つの貿易形態であるLNG(液化天然ガス)についてヨーロッパの輸入量と輸入相手国の変化を見ると、2019年のヨーロッパのLNG輸入量は1,198億㎥であった。これに対し2023年のLNG輸入量は1.4倍の1,691億㎥に達している。前項に述べた通りパイプラインによる生ガスの輸入量は4,713億㎥から3,408億㎥に減少しており、パイプラインによる不足をLNGで補っていることがわかる。この結果、総輸入量に対するLNGの比率は、2019年の20%から2023年には33%に拡大している。

 

 次に輸入相手国の変化を見ると、2019年のLNG輸入国トップはカタールの322億㎥であり、これに次ぐのがロシア205億㎥、米国183億㎥、ナイジェリア158億㎥、アルジェリア152億㎥であった。総輸入量に対する各国のシェアはカタール27%、ロシア17%、米国15%、ナイジェリア13%、アルジェリア13%である。

 

 しかし2023年には様相が一変し、トップの輸入国は米国となり、輸入量は1,144億㎥でシェアは45%に達した。ヨーロッパが輸入するLNGのほぼ半分は米国産が占めていることになる。一方、2019年にトップで27%を占めていたカタールの2023年のシェアは12%に急落、3位であったロシアのシェアも17%から12%に落ちている。

 

3.天然ガス価格の変動(図http://bpdatabase.maeda1.jp/6-G01b.pdf参照)

 ウクライナ紛争を契機とした天然ガス需給の激変は当然のことながら価格にも大きな影響を及ぼしている。天然ガスの価格指標として(1)日本価格(全量LNG)、(2)オランダTTF価格(パイプラインを中心とし一部LNG組み合わせ)及び(3)米国Henry Hub価格(ほぼ全量パイプライン)の3種類がある。従来は日本価格が最も高く、これにオランダTTF(ヨーロッパ)価格が続き、米国価格が3者の中で最安値であった。さらに日本とヨーロッパの価格は原油価格にスライドする部分が大きいのに対して、米国は豊富な資源量と縦横に張り巡らされたパイプライン網により独自の市場価格を形成している。

 

このような構図は2020年まで続き、同年の年間平均原油(Brent)価格が42ドルであったのに対して、天然ガス価格は100万BTU当たり日本価格が7.65ドル、オランダTTFは3.13ドル、米国Henry Hub価格は1.99ドルであった。

 

 しかし21年から22年にかけて原油価格が70ドルから100ドル超に急騰、これに伴い日本のLNG価格は9.93ドルから16.98ドルに上昇、米国価格も連動して3.84ドルから6.38ドルにアップしている。ところがオランダTTF価格は日米をはるかに上回る急騰ぶりで、2021年には日本価格を上回る15.67ドルに急騰、さらに2022年には2020年の10倍を超える37.09ドルに暴騰した。2023年には日本価格とほぼ同等な水準に落ち着いているが、過去3カ年の価格変動は異常であった。ロシアからの天然ガス輸入停止によりヨーロッパ各国で天然ガス(特にLNG)の争奪戦が起きたことを示していると言えよう。

 

(続く)

 

 

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