石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月30日)

2010-09-30 | 今日のニュース

・BP、開発責任者を更迭

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(18)

2010-09-29 | 中東諸国の動向

「国境の南」作戦(6)

 一方、客人であるイスラエル給油機を取り囲んだサウジアラビア戦闘機は給油機のパイロットに向かって自分たちのテントに立ち寄ること、即ちハフル・アル・バテン基地に着陸するように話しかけた。それは話しかけたと言うより命令したと言った方がいいのかもしれない。それに対して給油機は何も答えず、機体を左右に振っては囲いから逃れようと身をよじった。しかし給油機と戦闘機では運動性能に天と地の差があり、包囲網を脱出することが不可能であることは明らかであった。3羽の鷹に囲まれたのろまなアホウドリはその進退が極まりつつあった。

 次第にハフル・アル・バテン基地が近づいて来る。アホウドリはついに横を並走する鷹に体をぶつけて活路を見出そうとした。さすがの鷹もその時だけは身を横に逸らす他なかった。

 そのようなことが何度か繰り返された後、後尾につけていた攻撃隊長が断を下した。
 「給油機を撃墜する。」
その声を受け並走する2機の僚機は左右に分かれて行った。隊長はミサイル発射ボタンをぐいと押した。標的は目の前にある大型機。目をつぶってでも撃墜できる確かな標的だ。次の瞬間、ミサイルは狙い違わず給油機に命中した。燃料を腹一杯に蓄えた給油機は大きな炎に包まれた。ばらばらになった機体の破片が陽光を受けきらきら光りながら落下して行く。

 隊長の視線の先、地上には細い一本の線が東西に延びている。トランス・アラビア・パイプライン、通称TAPラインである。今は使われていないが、かつてサウジアラビア東部の豊かな原油を地中海に運ぶパイプラインであり、サウジアラビア領内の砂漠の中をイラクとの国境に沿って延々と続いている。

 隊長は給油機の破片がTAPラインに向かって落下していくのを見て、サウジアラビア領空内で撃墜したことを再確認した。
 「客人は我々のテントに立ち寄るようにとの申し出を断り領空外に逃走しようとした。従って領空侵犯で撃墜した。」
 隊長は基地に報告すると部下の僚機2機を引き連れ、基地に向かってゆっくり高度を下げ始めた。

(続く)

(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月28日)

2010-09-28 | 今日のニュース

・石油価格、77ドル以下で停滞

・10月OPEC総会では現行枠の順守に焦点:クウェイト石油相

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これからが正念場のBP(1)

2010-09-27 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」に一括掲載されています。

1.5か月ぶりの暴墳事故終息宣言

 9月19日、BPはプレスリリースでメキシコ湾MC252号井を完全に封印したと宣言した 。MC252号井はメキシコ湾1,500メートルの海底から更に地下4千メートルの深海油田に向けて掘られた総延長5,500メートルの試掘井である。4月20日、海上の試掘用台船でガス漏れによる火災と爆発が発生、作業員11人が死亡した。そしてその2日後、2回目の爆発で台船が沈没、1,500メートルの海底のパイプが折れ石油とガスが海中に墳出した。

  試掘に暴墳(Blow Out)はつきものである。地下の油田は超高圧であり、掘削中の井戸が油田に達するやいなや、油層の石油とガスは圧力の低い油井パイプの中を急上昇し、そのまま放置すればパイプの先端から暴墳し大事故となる。筆者がかつて働いていたアラビア石油もアラビア湾のカフジで第一号井を掘削中に暴墳し、結局暴墳を制御し井戸を埋め殺したことがある(筆者の入社前のことである)。

  暴墳さえ防ぐことができれば、実はこれは石油企業にとっては最高の吉兆なのである。つまり試掘で油田を掘り当てたことを意味するからである。暴墳を防止するためあらかじめ想定された油田の深度近くに達すると掘削は極めて慎重に行われる。暴墳対策として地表の掘削リグには暴墳防止装置のバルブ(Blow Out Preventer, BOP)が設置される。また試掘作業中は先端の掘削ドリル(ビットと呼ばれる)が破砕した岩石の屑を地上に取りだすため掘削パイプの中に泥水(Mud)を循環させる。油層に達すると先端の圧力が急激に上昇するので、ドリル先端部の圧力が油田の圧力より多少低くなるように地上から供給する泥水の比重を上げ、或いはバルブを絞って圧力のバランスを取る。こうすることによって地下の石油とガスがパイプの中を安全な速度で上昇すると言う訳である。

  単純に言えば(筆者は石油開発工学に全くの素人なのでかなり乱暴な説明になることを御承知願いたい)、水圧は10メートルで1気圧であるから、5千メートルの深さの井戸に水を充満させれば、その先端は500気圧になる。逆に言えば油層圧力が500気圧以上であれば地下の石油はパイプの中の水を押し上げて地上に達する。油層圧は数千気圧に達することが珍しくなく、この場合石油とガスは一気にパイプの中を上昇するため非常に危険である。このように石油の掘削は常に危険と隣り合わせなのである。

  今回のBPの場合最初に火災が発生したのは地下五千メートルの油層からのガスが漏れて台船上のモーターの静電気の火花に引火したと考えられる。その時直ちに海底に設置された暴墳装置が作動していれば大事に至らなかった可能性が高い。しかし2日後に台船が沈没し海中部分の油井管が大きく曲がったため暴墳装置の根元部分が破断し、高圧のガスと石油が噴き出したのである。

  BPは想定される事故の原因と当時台船上でとられた措置について9月8日に最初の報告書を公表した 。報告書は責任の所在がBPにあるのか、掘削業者にあるのかは明瞭にしていない。報告書は今後第三者を交え技術的な問題の解明を含めて検証されなければならないであろう。しかし事故の原因が特定されたとしても長期間にわたって流出した石油は環境問題、漁業問題を含めメキシコ湾とその沿岸で生活する人々に取り返しのつかない被害をもたらしたのである。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月25日)

2010-09-25 | 今日のニュース

・韓国石油、英Dana石油の敵対的買収に成功

・ブラジルのペトロブラス、増資で700億ドル調達

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(9/19-9/25)

2010-09-25 | 今週のエネルギー関連新聞発表
5/19 BP       Statement by BP America on Completion of MC252 Relief Well http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7065080
5/19 BP       BP Confirms Successful Completion of Well Kill Operations in Gulf of Mexico http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7065079
9/22 三井物産       当社子会社保有米国メキシコ湾探鉱鉱区における原油流出事故のこと(3) http://www.mitsui.co.jp/release/2010/1190653_3893.html
9/24 三菱商事       カナダPenn West Energy Trustシェールガス開発プロジェクトの権益取得完了 http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2010/html/0000011120.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(17)

2010-09-24 | 中東諸国の動向

「国境の南」作戦(5)

羊を放牧していたベドウィンの少年は西から東に向かう飛行機雲に見とれていた。最初は3本の筋であった。まもなく西の空に編隊飛行のジェット雲が現れた。先頭が2機、その後に3機、さらに最後尾4機の見事な編隊飛行である。少年にはそれがサッカーの攻撃の布陣そのもののように見えた。9機は最初の3機に追いつき、合計12機の大編隊となり、次には4機ずつの3編隊に分かれた。その後、左右の2編隊はジグザグ飛行を続けながらも次第に遠ざかり、残る中央の1編隊は真っ直ぐに飛び続け砂漠の地平線に消え去った。それはまさに見事なページェントを見る思いであった。少年はあんぐりと口を開けたまま空を仰ぎ興奮気味につぶやいた。<テントに戻ったら両親や友達に話さなくっちゃ>。

3機に取り囲まれたイスラエルの護衛機は時には速度をあげ、時には急上昇、急降下、旋回を繰り返し、敵機を振り切って給油機に合流しようとした。しかしサウジアラビア機はぴったりとそして執拗に寄り添ったままである。両方の戦闘機は全く同じ米国ゼネラル・ダイナミック(現ロッキード・マーティン)社製のF16である。飛行性能が同じであるためイスラエル機が如何にアクロバット技能を駆使しても結局サウジアラビア機を引き離すことはできない。

イスラエルのパイロットはミサイルで相手を攻撃することもできない。当たり前の話だが空対空ミサイルは真っ直ぐ前方にしか飛ばないから真横や真後ろにいる敵機は撃ち落とせない。むしろ後尾につけたサウジアラビア機ならいつでも自機を撃墜できるはずだが、攻撃する気配は見せない。サウジアラビアの3機はただ無言でイスラエル機と編隊飛行を続けるばかりであった。

イスラエル機のパイロットは言い知れぬ恐怖感と威圧感の中で次第に焦りを覚え始めた。追尾を振り切ろうとアクロバット飛行を繰り返したおかげで燃料を予想以上に使い果たしたようである。給油機と引き離され、砂漠の上空をあてどなく飛び続け、最早帰投のために残された燃料はぎりぎりである。ここはアラビア半島上空の敵地の真っただ中、砂漠に不時着する訳にはいかない。イスラエルの護衛機2機は基地に帰投する選択肢しか残されていなかった。

護衛の2機が踵を返すのを確認したサウジアラビア機のパイロットは基地の作戦本部に作戦終了を報告して帰途についた。
「客人の従者はお帰り願いました。」

(続く)

(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月22日)

2010-09-22 | 今日のニュース

・ガス輸出国機構(GECF)、第1回Working Group会議開催。来年には首脳会議も。

*拙稿「ガスOPECh生まれるのか?」(2007年3-5月)参照

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月21日)

2010-09-21 | 今日のニュース
・カタール、12月13日にLNG年産7,700トン体制樹立の記念式典挙行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(16)

2010-09-21 | 中東諸国の動向

「国境の南」作戦(4)

 サウジアラビア空軍のF16戦闘機9機はアラビア半島付け根のほぼ中間地点でイスラエルの給油機と護衛の2機に遭遇した。と言っても正面から対峙した訳ではなく、かなり手前から高度を下げて上空のイスラエルの3機をやり過ごすや直ちに反転し後方に回り込んだのである。

勿論イスラエル機のレーダーはサウジアラビア方面からこちらに向かってくる機影を捉えている。それがレーダーの端に現れた時はまだ機種も機数も確認できなかったが、双方の距離が次第に狭まり漸く9機の編隊であることがわかった。

レーダーは9機の編隊が彼らよりはるかに低い高度を飛行していると教えている。真正面から直接攻撃してくる気配はなさそうだ。イスラエルのパイロット達は編隊が自分たちの眼下を通り過ぎるのを目にした。一瞬サウジアラビア空軍の飛行訓練かと思ったほどである。

しかし上下ですれ違うと同時に9機は急上昇に転じ、イスラエル機の高度に達するや猛烈な追撃を開始した。トップスピードにあげると9機はたちまち給油機と護衛の2機に追いついた。イスラエル側もサウジアラビア側も戦闘機は全く同じF16である。しかし一方は足の遅い給油機と一緒のため追い付くのにさほど時間はかからなかった。

レーダーは9機が刻々と猛追してくる状況を示しているが、イスラエル側にはなすすべがない。後方からの接近のため自らの目で確認することは困難だ。戦闘機のコックピットは前方の視界に対しては上下左右ともかなり広い。しかし後方となると自らの機体に遮られほとんど視界が利かない。ましてヘルメットと酸素マスクが邪魔をしてわずかに首を真横に振ることができるだけである。イスラエル機のパイロット達はただ相手の出方を見る他なかった。

9機はイスラエル機の背後に接近すると、そのうち2機が左右の護衛機の頭上に張り付き護衛機と給油機の間に強引に割り込み始めた。小鳥たちは必死になって割り込みを防ごうとしたが、ついにイスラエルの3機とサウジアラビアの2機はほぼ横一直線に並んだ。そしてサウジアラビア機は機体を小刻みに振り護衛機を給油機から遠ざけようとした。それはまるで親鳥とそれにぴったり寄り添う2匹の小鳥の仲良し親子を引き裂こうとするようであった。

給油機と護衛機の間隔が次第に広がるのを見て後方の7機も前方に移動し、結局イスラエルの3機それぞれをサウジアラビアの戦闘機3機ずつが左右と後方から取り囲む形となった。

(続く)

(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする