石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇12 消費量(3)

2013-07-31 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

(アジア・大洋州の天然ガス消費量は1970年の40倍強に激増!)
(3)地域別消費量の推移(1970-2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G02.pdf 参照)
 1970年に9,860億㎥であった天然ガスの消費量はその後1991年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えている。2012年の消費量は3.3兆㎥であり、1970年から2012年までの42年間で消費量が前年度を下回ったのは2009年の1回のみで毎年増加し続けており、42年間の増加率は3.4倍に達している。

 石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGのいずれにしろ生産国と消費国が直結しており、また一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。

 欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州をはじめとする6つの地域の消費量の推移を見ると地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス消費量の65%は北米、29%は欧州・ユーラシアであり、両地域だけで世界全体の94%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか6%にすぎなかった。

 その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州・ユーラシア地域は急速に消費が拡大し、1981年には北米を追い越している。そして1980年台半ばから1990年初めまでは世界全体の消費の50%を欧州・ユーラシアが占めていた。同地域の消費量は2001年に1兆㎥を超えた後、2012年は1兆833億㎥と横ばい状態である。このため欧州・ユーラシア地域の世界全体に占める割合は徐々に低下し2012年には33%となっている。

 これに対してアジア・大洋州の場合、1970年の消費量は146億㎥であり中南米(181億㎥)、中東(163億㎥)より少なかったが、その後アジア・大洋州の消費量は急増し、1980年には720億㎥と中南米、中東両地域に2倍以上の差をつけている。この増加傾向はさらに加速し、2000年には2,900億㎥、全世界のシェアの12%を占めるに至った。そして2012年は6,250億㎥でシェアも19%に上昇している。2012年の消費量は1970年の43倍であり、2000年と比べても2倍に増加している。1970年と2012年の増加率では北米が1.4倍、欧州・ユーラシアが3.7倍であることと比較してアジア・大洋州の伸びが如何に大きいかがわかる。

 北米、欧州・ユーラシア地域とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。

 (続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇11 消費量(2)

2013-07-30 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

(日本は前年比10.3%増、世界平均の2.2%増に比べ突出した伸び!)
(2)国別消費量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-T01.pdf 参照)
 次に国別に見ると、最大の天然ガス消費国は米国であり、同国の2012年の消費量は7,221億㎥であった。これは全世界の22%に相当する。米国は石油についても世界全体の21%を消費しており(石油篇国別消費量参照)、世界一のエネルギー消費国である。

 第2位はロシア(4,162億㎥、13%)でこの米露両国が世界の二大天然ガス消費国である。これに続くのがイラン(1,561億㎥)、中国(1,438億㎥)である。5位以下10位までには日本(1,167億㎥)、サウジアラビア(1,028億㎥)、カナダ(1,007億㎥)と続き、これら8カ国が消費量1千億㎥以上の国である。

 2012年の天然ガス消費量を前年の2011年と比較すると、世界全体では2.2%増加している。米国は4.1%増加しているが、ロシアは0.4%減少している。日本の増加率は10.3%と世界平均を大幅に上回っており中国の9.9%、韓国の7.8%よりも高い。ヨーロッパ先進国のフランス3.7%増、ドイツが0.7%増、イタリア-4%減、英国-5.7%減などフランスを除き世界平均を下回るか、或いはマイナス成長であることに比べ、日本の増加率は突出している。日本の場合は2011年の対前年伸び率も11.6%であり、2年続けて二桁台の増加率を示している。福島原発事故による原発の全面停止により火力発電用のLNG輸入が急増したことが増加の要因である。

 (続く)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月30日)

2013-07-30 | 今日のニュース

・アジア諸国の上半期イラン原油輸入、前年比21%減。米国はまだまだ不満

・OPEC加盟国の石油輸出総額1.26兆ドル。前年比急増のリビア、急減のイラン:2013年報公表

 

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇10 消費量(1)

2013-07-29 | その他

 

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

 

3.世界の天然ガスの消費量

(地産地消型の北米、域外輸入型のアジア・大洋州!)
(1)地域別消費量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G01.pdf 参照)
 2012年の世界の天然ガス消費量は3兆3,144億立方メートル(以下㎥)であった。これは日産3,198億立法フィート、石油換算では年産29億8,710万トンである。

 地域別では欧州・ユーラシアが1兆833億㎥と最も多く全体の33%を占めている。これに次ぐのが北米(9,065億㎥、27%)、アジア・大洋州(6,250億㎥、19%)であり、これら3地域で世界の8割を占めている。その他の地域は中東4,118億㎥、中南米1,651億㎥、アフリカ1,228億㎥であった。アフリカの天然ガス消費量は世界全体の4%で、欧州・ユーラシアの10分の1にとどまっている。

 各地域の消費量と生産量(前章参照)を比較すると、欧州・ユーラシアは生産量の世界に占めるシェアは31%に対し消費量のシェアは33%であり、北米の生産量シェアと消費量シェアは同じ27%である。その他の地域は中東(生産量シェア16%、消費量シェア12%)、アジア・大洋州(同15%、19%)、中南米(同5%、5%)、アフリカ(同6%、4%)である。北米及び中南米は生産と消費の比率が等しく地域内で需給がほぼバランスしていることがわかる(域内消費型、地産地消型)。

 これに対して中東及びアフリカは生産が消費を上回っており、一方アジア・大洋州と欧州・ユーラシアは消費が生産を上回っている。このことから天然ガスは中東/アフリカ地域から欧州・ユーラシア/アジア・太平洋地域へと地域を超えた貿易が行われている様子がうかがえる(域外貿易型、なおガス貿易については次章で詳述)。

 (続く)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇9 生産量(4)

2013-07-27 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)
(4)主な国の生産量の推移(2003~2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G03.pdf参照)
 昨年の天然ガス生産量が世界1,2位のロシア、米国、同4位、5位のカタール、カナダに加え、オーストラリア(世界18位)及び英国(同23位)の6か国について過去10年間(2003~2012年)の生産量の推移を追ってみる。

  ロシアの2003年の生産量は5,615億㎥でありその後徐々に6千億㎥台にまで増加した。2009年に一時急減したものの6千億㎥台を前後の生産量で停滞している。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショック後現在も冷え込んでいることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。現在、ロシアは国内ガス田の開発に積極的に取り組んでおり、極東アジアへの輸出に力を入れている。

 米国の場合、天然ガス生産量は2003年の5,408億㎥から2005年には5,111億㎥に減少を続け1位のロシアとの差が拡大する傾向であった。しかし2006年以降は増勢に転じ2009年にはロシアを追い抜いて世界一の生産国になっている。2010年には6千億㎥を突破、2012年の生産量は前年比5%増の6,814億㎥を記録、2003年に比較すると3割近く増加しており、同じ期間のロシアの増加が5%に過ぎなかったことと顕著な差がある。米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由である。天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後もこの2カ国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。

 カナダはかつて米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であったが、2006年以降、生産量の減少に歯止めがかからず2012年の生産量は1,565億㎥となりイラン、カタールに次ぐ世界5位に転落している。同国の生産量の減少は同時期の米国の生産量増加と軌を一にしたものである。即ち同国は生産したガスの多くをパイプライン網により米国に輸出してきたが、上記のとおり米国では天然ガスの生産が急増し自給率が向上した結果カナダからの輸入が減少しているのである。但しカナダは豊富な埋蔵量を有しており十分な生産余力があると考えられる。従って今後はLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。

 カナダと同様生産量が長期下落傾向にあるのが英国である。同国の2003年の生産量は1,029億㎥であったが、2012年には半分以下の410億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためであり、現在ではカタールからLNGを輸入している。

 これに対して最近天然ガスの生産が増加しているのがカタールとオーストラリアである。カタールの2003年の生産量は314億㎥に過ぎなかったが、2012年には1,570億㎥に達しわずかではあるがカナダを追い抜いている。カタールの場合殆どをLNGとして輸出している。LNG輸出には大規模な液化及び出荷設備が必要であるが、同国は積極的な設備投資を展開、年間77百万トンの輸出体制を整えており、これが生産急増の要因である。

 オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2003年の生産量はカタールとほぼ同じ332億㎥であったが、2009年には423億㎥まで拡大し、さらに2012年の生産量は500億㎥に近づいている。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量は順調に増加するものと考えられる。

(天然ガス篇生産量 完)

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月27日)

2013-07-27 | 今日のニュース

・中国当局の景気抑制策で原油価格下落。Brent$107, WTI$104。油種間格差わずか$2.45

・欧州の上半期石油需要引き続き低迷。独除き仏、伊、スペインで下落。  *

 

*「BPレポート解説シリーズ:石油篇」参照。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0271BpOil2013.pdf

 

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今週の各社プレスリリースから(7/21-7/27)

2013-07-27 | 今週のエネルギー関連新聞発表

7/22 経済産業省    新潟県佐渡南西沖における石油・天然ガスの試掘作業を終了しました http://www.meti.go.jp/press/2013/07/20130722002/20130722002.html
7/22 石油連盟    参議院選挙の結果について(会長コメント) http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2013/07/22-000644.html
7/22 Shell    Shell to boost deepwater production in Brazil http://www.shell.com/global/aboutshell/media/news-and-media-releases/2013/shell-to-boost-deepwater-production-in-brazil.html
7/22 三井物産    米国アリゾナ州天然ガスパイプライン事業への参画 http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2013/1200721_4689.html
7/23 JXホールディングス    オーストラリア北西大陸棚WA-49-R鉱区におけるガスの発見について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2013/wa-49-r.html
7/25 経済産業省    米国エネルギー省とエネルギー分野における二国間の取組に関する共同声明を発出しました http://www.meti.go.jp/press/2013/07/20130725002/20130725002.html
7/25 JOGMEC    JOGMECが支援する日本国内初のタイトオイル(シェールオイル)実証実験に関する結果報告 http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_000023.html
7/25 石油資源開発    秋田・女川層タイトオイルに係る取り組みについて http://www.japex.co.jp/newsrelease/pdf/20130725_akitaonnagawa.pdf
7/25 石油連盟    2013年度潤滑油需要見通しについて http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2013/07/25-000646.html
7/26 出光興産/国際石油開発帝石    北海道および秋田県での 地熱発電に向けた構造試錐井の掘削開始ついて  http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2013/130726.pdf

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月26日)

2013-07-26 | 今日のニュース

・イラク、バスラ石油輸出施設増強工事のため9月出荷は40-50万B/D減の見込み

 

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇8 生産量(3)

2013-07-25 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

(40年間で生産量が30倍になったアジア・大洋州!)
(3)地域別生産量の推移(1970~2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G02.pdf参照)
 1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後一貫して上昇を続け、1994年に2兆㎥、そして2008年には3兆㎥を突破し、2012年の生産量は3.4兆㎥弱を記録した。1兆㎥から2兆㎥になるまでは24年かかったが、次の3兆㎥に達するには14年しかかかっていない。このように天然ガスの生産は近年飛躍的に増加しているのである。石油の場合、第二次オイルショック後しばらく需要が前年を下回りオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要していることと比べ(前章石油篇「生産量推移」参照)天然ガスの生産拡大には目を見張るものがある。

 地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の94%を占めており、残る6%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。しかし北米は1970年に6,630億㎥であった生産量がその後は微増にとどまり、世界に占めるシェアも66%(1970年)から27%(2012年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,819億㎥から急速に伸び、1982年に北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2012年の世界シェアは31%にとどまっている。現在も北米と欧州・ユーラシアの二地域が世界の天然ガスの主要生産地であることに変わりは無いが、その合計シェアは58%であり、1970年の94%から大きく後退している。
 
 この二地域に代わりシェアを伸ばしているのがアジア・大洋州と中東である。アジア・大洋州の場合、1970年の生産量は157億㎥でシェアもわずか2%しかなかったが、2012年の生産量は30倍の4,902㎥に増加、シェアも15%に上昇している。また中東も生産量は1970年の199億㎥から2012年には28倍の5,484億㎥、シェアは16%に上がっている。アジア・大洋州或いは中東の生産量は1990年以降急速に増大しているが、特にここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により地域内で発電用或いは家庭用燃料の需要が増加したことに加え、これまで先進外国市場から遠いため困難であった輸出が、液化天然ガス(LNG)として市場を獲得しつつあることをあげることができる。

 世界的にみると天然ガスの年間増加率は3~4%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は福島原発事故問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。その意味で天然ガスは今後世界のエネルギー市場でますます重要な地位を占めるものと考えられる。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇7 生産量(2)

2013-07-24 | その他

 

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

 

2. 世界の天然ガスの生産量(続き)
(米国とロシアが生産量世界一位、二位!)
(2)国別生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-T01.pdf参照)
 次に国別に見ると、天然ガス生産量第1位は米国の6,814億㎥/年(657億立法フィート/日、6.2億トン/年)であり、全世界の生産量に占める割合は20%に達する。第2位はロシア(5,923億㎥、シェア19%)であり、この2カ国の生産量が飛び抜けて多い。米国はここ数年シェールガスの開発及び生産が顕著であり、埋蔵量及び生産量とも大幅に増加していることは注目に値する(前章「天然ガスの埋蔵量」参照)。

 この2カ国に続くのがイラン(1,605億㎥)、カタール(1,570億㎥)、カナダ(1,565億㎥)であり、米国或いはロシアのほぼ1/4である。6位から8位はノルウェー(1,149億㎥)、中国(1,072億㎥)、サウジアラビア(1,028億㎥)であり、以上8か国が生産量1千億㎥を超えている。9位以下はアルジェリア(815億㎥)、インドネシア(711億㎥)、マレーシア(652億㎥)、トルクメニスタン(644億㎥)が名を連ねている。

 なおロシア、イラン、カタールなどはGECF(ガス輸出国フォーラム、前章1-(2)参照)のメンバーであるが、GECFメンバー及びオブザーバー15カ国の合計生産量は1.4兆㎥であり、全世界に占めるシェアは42%に達する。これは石油におけるOPEC(石油輸出国機構)のシェア(43%)と同じ規模である。GECFはOPECのような生産カルテルではないが今後の天然ガス需給の動向を左右する鍵になるものと見られる。

(続く)

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