石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュース解説)中国及びサウジの不正介入で見送りとなった今年の世銀ビジネス環境ランク(中)

2021-09-30 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0544WbDoingBusiness.pdf

 

過去5年間 (2016年~2020年) の中国とサウジのランクの推移

 Doing Business Reportの2016年版から2020年版までの過去5年間の中国とサウジアラビアの世界ランクの推移を見ると、中国の場合は2016年が90位であり、その後78位(2017年)→78位(2018年)→46位(2019年)→31位(2020年)と変化している。原案では2018年は2017年より順位が下がることになっていたが、上記で述べた如く中国側の強いクレームで前年通りに据え置いている。中国はその後、2019年、2020年と大幅にランクを上げ、2020年には日本(29位)とほとんど肩を並べるまでにビジネス環境が改善したとされている。

 

 サウジアラビアの場合は2016年が世界82位であり、その後2017年から2019年までは90位台に低迷、2020年には一挙に62位にアップしている。上記に触れた通り、2020年の環境改善度についてサウジアラビアとヨルダンを入れ替えており、そのためのデータの不正操作により同国の順位が大きくアップしている。毎年のランク対象国(地域)数は190前後であり、サウジアラビアは2019年までほぼ世界の中位であったが、2020年には上位3分の1のグループに入っている。

 

 中国もサウジアラビアも問題指摘を受けた年度あるいはそれ以降に大幅にランクアップしていることが特徴である。

 

(続く)

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

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(再掲)SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(9)

2021-09-29 | その他

初出:2010年8月

ナタンズ爆撃(4)

 「作戦成功!」。「エリート」は小さくしかし興奮に震えた声で本部基地に伝えた。基地で司令官以下の幹部が快哉を叫ぶ姿が目に見えるようであった。<親父もきっと喜んでいるに違いない>中東戦争の勇士と称えられはるか遠くにあった父親の背中が少し近くなったような気がした。これで無事に帰還すれば正真正銘の「エリート」になれると彼は確信した。

 

 ナタンズ爆撃作戦は結局バンカーバスター5発を撃ち込んで終了した。「アブダラー」機にはまだ左翼にバンカーバスター1発、そして胴体下部に小型核ミサイル1発を残していた。しかし異変に気付いたイラン戦闘機がイスファハンを緊急発進していることは間違いなく、現場に長くはとどまっていられない。2発のミサイルを抱いた「アブダラー」機を含む3機は急上昇しイラン領空外へと向かった。レーダーはイスファハンの空軍基地を発進したイラン機がすぐ後ろに迫っていることを示していた。

 

イラン機が国籍不明機を発見した時、既にイスラエルの3機はナタンズ爆撃は終わった後だった。イラン空軍にはAWACSのような優秀な早期警戒機もなければ、防空レーダー網も貧弱である。さらに彼らが保有している戦闘機は一時代前のもので性能も劣り俊敏なF16に遠く及ばない。結果的にイラン機は緊急発進したものの、空爆を阻止できなかったばかりでなく、F16に追いつくこともできず、彼らをやすやすと領空外に逃亡させただけであった。

 

 イランからイラク領空に戻った3機は往路のルートを逆にたどり基地に帰還するだけである。燃料計は既に四分の一以下になっており自力での帰還は難しいが、途中まで空中給油機が迎えに来る手はずになっており何も心配することは無い。------はずである。

 

しかし基地の指令は思わぬものであった。3機に対して進路を南に変更しペルシャ湾上空をホルムズ海峡に向かえ、と言うのである。3人のパイロットは我が耳を疑った。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

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石油と中東のニュース(9月29日)

2021-09-29 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・Brent原油価格80ドル超える

・OPEC年次レポート発表:需要回復見通しで石油・ガスの開発投資呼びかけ。*

*OPEC '2020 World Oil Outlook 2045'参照。

(中東関連ニュース)

・イエメン内戦重大局面に。Marib占拠巡り政府・反政府が激しい戦闘

・イエメン首相、サウジから臨時首都アデンに帰国。物価上昇反対デモの最中

・サリバン米安全保障アドバイザー、皇太子と会談のためサウジへ向かう

・イラン、核査察団受け入れの米国要請を拒否

・ヨルダン国営航空、10年ぶりにダマスカス-アンマン便再開

 

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(ニュース解説)中国及びサウジの不正介入で見送りとなった今年の世銀ビジネス環境ランク(上)  

2021-09-28 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0544WbDoingBusiness.pdf

 

 9月16日、世界銀行は毎年恒例の’Doing Business Report‘(「ビジネス環境ランク」)を今年は見送ると発表、関係者を驚かせている[1]。「ビジネス環境ランク」は世界の200近い(2020年版の場合は190)国あるいは地域のビジネス環境をランク付けしたものであり、当該国・地域でビジネス活動を行う場合の難易度を知る目安になるとして世界で広く利用されている。毎年12月に発表され筆者は2008年以来ブログで紹介を続けてきた[2]。しかし2021年版については昨年12月以降半年以上も発表が遅れていたため不審に思っていたところ、今回世界銀行から同年版の発表を見送る旨の発表があった。またこれに合わせて外部の法律事務所WILMERHALEによる内部調査結果が公表された[3]

 

不正の概要

 WILMERHALEの世銀内部聞き取り調査によれば、2018年版の原案では前年よりランクが下がるとされていた中国が世銀上層部にランクの見直しを働きかけ、一部データを改ざんすることで前年と同様のランクを維持させたと言うもので、報告書では当時世銀の最高経営責任者であったゲオルギエワ現IMF専務理事が直接関与したと明言している。

 

 また2020年版では12月の発行に先立つ同年9月の原案で、環境改善度が高い国としてヨルダンをトップ、サウジアラビアを2番目としたことに対してサウジアラビアが強い不満を表明、世銀トップの判断で順位を入れ替えたとされる。その他UAE及びアゼルバイジャンについてもデータに手心が加えられたと断定している。

 

(続く)

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

[1] World Bank to not release 2021’s Doing Business report over alleged irregularities

https://english.ahram.org.eg/NewsContent/3/12/423262/Business/Economy/World-Bank-to-not-release-%E2%80%99s-Doing-Business-report.aspx

2021/9/17 Ahram Online

[2] 最近3か年については下記参照。

2018年版:http://mylibrary.maeda1.jp/0427MenaRank13.pdf 

2019年版:http://mylibrary.maeda1.jp/0457MenaRank13.pdf 

2020年版:http://mylibrary.maeda1.jp/0487WorldRank3.pdf 

[3] World Bank Statement:

World Bank Group to Discontinue Doing Business Report 

https://www.worldbank.org/en/news/statement/2021/09/16/world-bank-group-to-discontinue-doing-business-report

WILMERHALE調査報告書:

Investigation of Data Irregularities in Doing Business 2018 and Doing Business 2020

https://thedocs.worldbank.org/en/doc/84a922cc9273b7b120d49ad3b9e9d3f9-0090012021/original/DB-Investigation-Findings-and-Report-to-the-Board-of-Executive-Directors-September-15-2021.pdf

 

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データベース更新のお知らせ

2021-09-28 | データベース追加・更新

下記データを更新しましたのでご利用ください。

 

・UAE連邦政府閣僚名簿(2021年9月現在)

・ドバイ マクトゥーム家家系図

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石油と中東のニュース(9月27日)

2021-09-27 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・アジアのLNG価格、1週間で10%急騰。$27/mmBtuに

・米経済制裁下のイラン産コンデンセートとベネズエラ産重質油をスワップ取引

・英エンジニアリングPetrofac社、サウジ、UAEでの受注汚職7件を認める

(中東関連ニュース)

・トルコ、反政府軍支援のためシリアIdlibに増派。アサド政権支持のロシアとは協議継続

・UAE:財務相及び気候変動・環境相が交替。*

*UAE連邦政府閣僚名簿:http://menadabase.maeda1.jp/4-5-1.pdf

・アフガニスタン タリバン政府、航空各社に国際便再開を要請。 *

*レポート「トルコ/タリバンとのトライアングル外交で注目されるカタール」参照。

・梶山経産相:今後の水素社会でサウジ、UAEは重要なパートナー

・バハレーン、付加価値税VATを2倍の10%に引き上げか

・バハレーン投資企業Investcorp、今後7年間で1千億ドルの野心的投資を計画

・三井住友銀行、サウジアラムコのガスパイプライン資産売却のアドバイザーに選定

・オマーン航空、JALなどのOneworldアライアンスに加盟申請

 

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石油と中東のニュース(9月25日)

2021-09-25 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・原油価格、3年ぶりの高値に。Brent $77.45, WTI $73.35

(中東関連ニュース)

・イエメン:Maribで政府軍と反政府軍が激戦。1週間で双方に死者140名

 

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今週の各社プレスリリースから(9/19-9/25)

2021-09-25 | 今週のエネルギー関連新聞発表

9/20 Shell

Shell signs agreement to sell Permian interest for $9.5 billion to ConocoPhillips

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2021/shell-signs-agreement-to-sell-permian-business.html

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石油と中東のニュース(9月23日)

2021-09-23 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・スーダンでクーデタ未遂

・パレスチナ人の80%がアッバス大統領の退陣を要求。治安部隊のデモ鎮圧に不満

・サウジ:年末までにNEOMのゼロカーボン都市The Line着工

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トルコ/タリバンとのトライアングル外交で注目されるカタール  

2021-09-22 | 中東諸国の動向

 アフガニスタンでは米国が撤退し、イスラム原理主義組織タリバンが権力を掌握した。米国の撤退はトランプ政権時代の2020年3月に決まったものである[1]。そのタリバンは2013年、カタールの首都ドーハに事務所を開設しており[2]、米国は同事務所と交渉を行った。トランプ政権はタリバンと現行政府が移行政権を結成するのを見とどけ2021年末までに平穏に撤収すると言うシナリオを描いていた。そしてバイデン政権は撤退期限を911テロ事件20周年前の8月末に早めると表明したのであった。

 

ところがタリバンは破竹の勢いで政府勢力を圧倒、米軍撤退前の8月には首都カブール市内に侵攻した。政府軍が総崩れになる中、米国はカブール国際空港を確保し、自国及びNATO駐留兵力の緊急退去に踏み切った。英独など欧米主要国も輸送機を送り込み、自国民の他、日本を含む外国の外交官及び一般民間人も緊急輸送したのであった。この時多くの外国政府は現地職員とその家族も安全に脱出させるとしたが、タリバンのカブール制圧があまりにも迅速であったため出国希望者のほとんどが取り残された。

 

 混乱状況の中で存在感を示したのがトルコとカタールであった。トルコはNATO軍の一翼としてアフガニスタンの治安維持に当たっていたが、NATO諸国の要望を受けカブール空港を引き続き運営することを了承した[3]。さらに米国はカタールに対してもカブール・ドーハ間の民間航空便を継続するよう働きかけたのであった[4]。トルコはNATOの中で唯一のイスラム国であり、タリバンとの意思疎通が容易である。またカタール航空が運航を続ければ、アフガニスタンに残された外国人、あるいは出国を希望するアフガン人(タリバン政府が自国民の出国を認めるかどうか問題はあるが)の脱出ルートが確保できる。

 

 タリバン側もトルコ軍の残留と空港運営及びカタール航空の運航を両国に働きかけている[5]。彼らはアフガニスタンを完全な鎖国状態にするのではなく、外国との窓口を開いておきたいと言う意図がある。前回1996年から2001年までの第一次タリバン政権では極端な鎖国主義が世界を敵に回す結果になったことを反省したのである。こうしてカタール、トルコ、タリバン(アフガニスタン)3カ国が外交関係のトライアングルを形成した。

 

 実はカタールとトルコの間には浅からぬ因縁がある。2017年のサウジアラビア、エジプト、UAE及びバハレーン4カ国の対カタール断交事件である。カタールがイランと非公式ながら外交関係を保っていること、そして4カ国がテロ組織に指定したムスリム同胞団をカタールが支援している、と言うのが断交の理由である。建国以来の苦境に陥ったカタールが頼ったのがトルコである。防衛面ではトルコ軍の増派を求め、経済面ではトルコからの輸入に切り替えた。こうしてカタールとトルコの関係は深まり、今回のアフガニスタン問題でスムーズな連携が可能となったのである。

 

 さらに両国の背後には米国の強いサポートが見え隠れする。米国とトルコは同じNATO同盟国である。アフガニスタンからの撤退を決めた米国としては後事を託することができるのはトルコだけである。ロシアからミサイルシステムを導入するなど米国にとって現在のトルコは全面的に信頼できないが、背に腹は代えられない。一方、米国とカタールの関係を見ると、カタールには中東最大のウデイド米軍基地がある。今回のアフガン撤退でも多数の軍用機がカブールとウデイド基地を往復している。中東撤退後もイランをけん制するためにカタールの米空軍基地はバハレーンの米海軍基地と並んで重要である。

 カブールの大使館を閉鎖した西欧諸国はカタールのドーハに臨時大使館を開設した。日本もカブールからイスタンブールに退避していた大使館をドーハに移し、本省から元駐サウジアラビア大使を派遣している。またブリンケン米国務長官のほかドイツのマース外相、ラーブ英国外相などが相次いでカタールを訪問、マクロン仏大統領もイラク・サミットでタミム首長と会談するなどカタール詣でが相次いでいる。

 

 アフガニスタンの動向についてカタールから目が離せない。

 

 

以上

 

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

[1] US, Taleban sign historic deal to withdraw troops

2020/2/29 Kuwait Times

https://news.kuwaittimes.net/website/us-taleban-sign-historic-deal-to-withdraw-troops/

[2] Gulf Times

http://www.gulf-times.com/qatar/178/details/356681/taliban-%e2%80%98set-to-open-office-in-doha%e2%80%99

Taliban ‘set to open office in Doha’

[3] Turkey offers to guard, run Kabul airport after NATO withdrawal

https://www.dailysabah.com/politics/diplomacy/turkey-offers-to-guard-run-kabul-airport-after-nato-withdrawal

2021/6/8 Daily Sabah

[4] US, Qatar and Turkey discuss operation of Kabul airport

https://www.arabnews.com/node/1924216/middle-east

2021/9/7 Arab News

[5] Qatari FM Al-Thani meets Taliban's Akhund in Afghan capital

https://www.dailysabah.com/world/mid-east/qatari-fm-al-thani-meets-talibans-akhund-in-afghan-capital

2021/9/12 Daily Sabah

 

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