石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油と中東のニュース(7月31日)

2022-07-31 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・OPEC+増産の気配薄く原油価格上昇。Brent$110.20, WTI $105.27

・8/3日のOPEC+会議控え、サウジ・エネルギー相とロシア・Novak副首相が会談

・7月の日本原油輸入:80%はサウジとUAE、クウェイト/カタールを加えれば95%の中東依存度

(中東関連ニュース)

・ウクライナ大統領、オデッサ港穀物輸出第一便のトルコ船を視察

・仏大統領-サウジ皇太子会談。エネルギー、レバノン問題等幅広く意見交換

・イラン大統領と中国習主席、1時間の電話会談。米一国主義をけん制

・イラン、ロシアとの貿易決済に互いの自国通貨、ドル離れ促進

・イラン、中東、ベネズエラ等に攻撃型ドローン製造技術を移転:米が警戒

*レポート「中東に広まるドローン(UCAV)の開発と軍事利用」参照。

・マッカ神殿で恒例のカバー取り換え。今年からヒジュラ暦元日に変更

・エジプトのムスリム同胞団、政治権力掌握を断念

・BOO方式のトルコ原発建設でロシアが200億ドル送金

・COVID19鎮静化でトルコの外国人観光客3倍に増加

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ14(自給率2)

2022-07-30 | BP統計

4.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率 (続き)

(4-2) 天然ガスの生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2010~2021年)

(4-2-1)天然ガス

(年々輸出余力が増すロシア、オーストラリア及び米国!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01b.pdf参照)

 2010年におけるロシアの天然ガス生産量は5,980億㎥、消費量は4,240億㎥で、生産が消費を1,750億㎥万B/D上回っていた。カナダ、オーストラリアはロシアほど多くはないがやはり生産量が消費量を580億㎥及び210億㎥上回っていた。

 

 これに対して米国は生産量5,750億㎥、消費量6,480億㎥で、差引▲730億㎥を隣国カナダから輸入していた。中国及びインドも天然ガスの純輸入国であり、共に▲120億㎥前後消費が生産を上回っていた。

 

 その後2021年までロシア、カナダ、オーストラリアは引き続き生産が消費を上回った。このうちオーストラリアは生産が急拡大し、2021年の生産量は2010年の2.8倍、1,470億㎥に達した。オーストラリアの生産余力は2010年の5.2倍に拡大しており伸びが著しい。

 

2010年当時純輸入国であった米国、中国及びインドのその後の推移は対照的である。米国の改善が顕著であるのに対して、中国とインドは11年間で生産・消費ギャップが拡大している。米国は2010年に▲730億㎥であったギャップが年々縮小し2012年には中国、2014年にはインドをしのいだ。そして2017年にはついに生産が消費を上回り純輸出国に変わっている。さらに2019年にはカナダを上回る生産余力のある国になり、2021年の生産・消費ギャップはプラス1,080億㎥に達している。一方の中国とインドは逆にギャップが年々拡大し、2021年は中国が▲1,700億㎥(生産2,090億㎥、消費3,790億㎥)、インドが▲340億㎥(生産290億㎥、消費620億㎥)であり、中国の生産・消費ギャップ拡大のスピードが速い。

 

(2010年に自給率89%だった米国と中国が2021年には113%と53%に二極化!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02b.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2010年以降の推移を見ると、まず2010年の自給率は中国と米国が89%で並んでおり、インドは80%であった。即ち米国と中国は1割を、インドは2割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2021年には中国は55%、インドは46%に下がり、両国とも必要量の半分前後を輸入に頼っている。

 

これに対して米国は劇的に改善し、2017年には自給率100%を達成した。その後も生産の増加が消費の増加ペースを上回り、2021年には113%となり、天然ガスの輸出国に変身している。前項の石油で触れた通り、米国の2020年の石油自給率は89%である。かつて米国は不足する石油と天然ガスを中東産油国とカナダ、ベネズエラに依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(2005年の自給率50%が2021年は99%に!)

(iii)米国の石油と天然ガスの自給率(1970~2021年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G03.pdf参照)

 1970年以降2021年までの半世紀にわたる米国の石油・天然ガス自給率の推移を見ると、50年前の自給率は石油が77%、天然ガスは99%であり、石油と天然ガスを併せた自給率は86%であった。この当時米国では天然ガスはほぼ自給体制であり、石油の2割強を輸入に依存していた。

 

 天然ガスについては1980年代後半まで自給率100%であったが、1990年以降消費の拡大に生産が追い付かず自給率は徐々に低下し、2005年には82%まで下がった。しかしその後はシェールガス開発が急発展して生産量が劇的に増加、2015年には自給率が100%を超え、2021年には113%に達している。天然ガスについて米国はすでに輸出国の仲間入りを果たしているのである。

 

 同様に石油の自給率の推移を見ると1970年代後半には50%台後半に落ちている。その後1980年代半ばに67%まで回復したが、その後再び自給率は年々低下し、1994年に50%を割り2005年にはついに34%まで落ち込んでいる。即ち国内需要の3分の1しか賄えなかったことになる。しかし2010年以降はシェールガスと並びシェールオイルの生産が本格化し、自給率は急回復し、2010年は89%になっている。

 

石油と天然ガスを併せた自給率で見ると、1970年は86%であった。最近まで消費の主流は石油であったため自給率は石油に近く、例えば2005年の自給率は石油34%、天然ガス82%、合計ベースの自給率は50%であった。しかし、最近では石油と天然ガスの自給率の差が無くなり2021年の自給率は石油89%、天然ガス113%、合計ベースでは99%となっている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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今週の各社プレスリリースから(7/24-7/30)

2022-07-30 | 今週のエネルギー関連新聞発表

7/25 出光興産

革新的なアンモニア合成技術を有する東工大発ベンチャー企業「つばめBHB株式会社」へ出資

https://www.idemitsu.com/jp/news/2022/220725_2.html

 

7/25 Shell

Shell invests in the Jackdaw gas field in the UK North Sea

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/shell-invests-in-the-jackdaw-gas-field-in-the-uk-north-sea.html

 

7/26 ExxonMobil

ExxonMobil makes two more discoveries offshore Guyana

https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0726_ExxonMobil-makes-two-more-discoveries-offshore-Guyana

 

7/27 TotalEnergies

TotalEnergies and Veolia partner to Build the Largest Solar System for a Desalination Plant in Oman

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-and-veolia-partner-build-largest-solar-system-desalination

 

7/28 コスモ石油/三井物産

Alcohol to Jet (ATJ) 技術を活用した国産SAF製造事業の共同検討を開始

https://coc.cosmo-oil.co.jp/press/p_220728_01/index.html

 

7/28 Shell

SECOND QUARTER 2022 RESULTS – JULY 28, 2022

https://www.shell.com/investors/results-and-reporting/quarterly-results/2022/q2-2022.html

 

7/28 TotalEnergies

TotalEnergies' Second Quarter and First Half 2022 Results

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-second-quarter-and-first-half-2022-results

 

7/29 ExxonMobil

ExxonMobil announces second-quarter 2022 results

https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0729_ExxonMobil-announces-second-quarter-2022-results

 

7/29 TotalEnergies

TotalEnergies and ADNOC partner in fuel distribution in Egypt

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-and-adnoc-partner-fuel-distribution-egypt

 

7/29 Chevron

chevron announces second quarter 2022 results

https://www.chevron.com/newsroom/2022/q3/chevron-announces-2q-2022-results

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石油と中東のニュース(7月29日)

2022-07-29 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・Shell4-6月期決算発表。2期連続で過去最高利益更新

(中東関連ニュース)

・仏大統領、批判の中でサウジ皇太子と会談。エネルギー問題など協議

・イラン外相、わずか半日でアラブ4か国と電話会談。UAE、クウェイトとは近く大使派遣再開

・トルコイスタンブールでウクライナ産小麦輸出協議進展。29日にも第一船

・GCC各国、米連銀に追随して公定歩合引き上げ

・ヨルダン国王、イスラエル首相と会談

・イラク:親サドル派民衆が国会乱入

・レバノンで食糧暴動、インフレで価格暴騰

・チュニジア:憲法改正国民投票95%で承認。投票率は30%にとどまる

・イラン:有名女優がセクハラ反対署名で逮捕

・米ダウケミカル、サウジでMDEA合弁事業。25年製造開始予定

 

 

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ13(自給率1)

2022-07-28 | BP統計

4.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率

(1) 石油の生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2010~2021年)

(4-1-1)石油

 世界の石油生産国と消費国を並べると(生産篇2-1-1、表2-T01a及び消費篇3-1-1、表3-T01a参照)、米国が生産、消費量で共に世界一であり、中国(生産6位、消費2位)、サウジアラビア(生産2位、消費4位)、ロシア(生産3位、消費5位)など生産・消費の両面で世界のトップクラスの国が少なくない(日本やドイツのように消費が多く、生産がゼロの国はむしろ例外)。

 

 このような国について生産量と消費量のギャップを比較すると、生産量が消費量を上回る国とその逆のケースがある。生産量が消費量を上回る場合はその差が輸出され、逆に消費量が生産量を上回る場合はその差が輸入で埋め合わされることになる。また、生産量を消費量で割った数値をパーセントで表すと、100%を境にその国の石油自給率を示すことになる。

 

 ここではサウジアラビア、ロシア、米国、中国など7カ国について2010年から2021年までの各国の生産量と消費量のギャップを点検し、また米国、中国及びインド3か国について同期間中の自給率の推移を見てみる。

 

(ギャップが急速に改善する米国、輸出余力を維持する露・サウジ!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01a.pdf参照)

 2010年における米国の石油生産量は760万B/D、消費量は1,830万B/Dで両者の差は▲1,080万B/Dであった。同様に中国は▲520万B/D(生産410万B/D、消費930万B/D、以下同じ)、インドは▲240万B/D(90万B/D、330万B/D)で共に石油の純輸入国であった。

 

 これに対してロシアは生産量1,040万B/D、消費量290万B/Dで差引750万B/Dの輸出余力があった。サウジアラビアの生産量と消費量はほぼロシアに並び、差引670万B/Dの輸出余力を有していた。イランはこれら2国よりは低いものの生産量が消費量を270万B/D上回り、ブラジルは生産と消費がほぼバランスしていた。

 

 その後、中国とインドは消費が生産を大きく上回り、2021年には生産と消費のギャップは中国が▲1,150万B/D(生産400万B/D、消費1,540万B/D)、インドが▲410万B/D(同70万B/D、490万B/D)に拡大している。これに対して米国は生産が消費の伸びを上回り、2021年には▲210万B/Dに縮小、10年前より870万B/D改善されている。

 

 ロシアとサウジアラビアの輸出余力は2011年以降も大きな変化は無く、2021年はロシアが750万B/D、サウジアラビアは740万B/Dである。イランも引き続き生産量が消費量を上回っているが、そのギャップは小さくなる傾向にあり、2021年の輸出余力は190万B/Dと、2010年に比べ80万B/D減少している。ブラジルは2010年代の消費の増加を深海油田の開発等による生産量の増強で補い需給バランスが平衡状態を維持している。

 

(10年間で大きく明暗を分けた米中の石油自給率!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02a.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2010年以降の推移を見ると、まず2010年の自給率は中国と米国がそれぞれ44%と41%で中国が若干高く、インドのそれは27%にとどまっていた。即ち米国と中国は6割弱を、インドは7割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2021年には中国は26%、インドは15%に下がり、両国とも石油の輸入大国になっている。

 

これに対して米国は過去10年間で急激に自給率が改善し、2021年には89%に達し、米国は石油の完全自給まであと一歩に迫っている。かつて米国は不足する石油を主として不安定な中東産油国に依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(7月27日)

2022-07-27 | 今日のニュース

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・ロシア、Nordstreamの送ガス量をさらに半減。EUは加盟国に15%節減要請

(中東関連ニュース)

・イスタンブールにウクライナ産小麦輸出共同センター開設

・トルコ大統領、8/5に黒海ソチでプーチン大統領と会談

・サウジ皇太子、ギリシャ、仏両国訪問へ。カショギ事件以来初の西欧外遊

・レバノン:待望の銀行秘密保持法改正。IMF資金援助に道開く

・IMF、4月に続き世界のGDP成長率を0.4%再引き下げ。MENAも5%から4.8%に。 *

*「IMF 世界経済見通し:コロナ禍継続とウクライナ危機で大きく下方修正された今年の成長率」参照。

・サウジ:油価高騰で5月の貿易黒字2017年以来の高水準。原油輸出は2倍

・トルコの軍事用ドローンに引く手あまた。露とUAEが提携申し入れ

*「中東に広まるドローン(UCAV)の開発と軍事利用 」参照。

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SF小説:「新・ナクバの東」(30)

2022-07-26 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

2022年7月

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

30. バーチャル管制:砂漠に消えた二番機()

殆ど地上すれすれになった時わずかに視界が開けた。しかし「マフィア」の目の前に立ちはだかったのは大きくうねる砂丘の壁であった。

<進入高度が低すぎたのか?>

彼は反射的に操縦桿を引き機首を立て直そうとし、車輪が滑走路に触れると同時に再び離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を試みた。これまで訓練で何度となく経験してきたことである。

 

しかし堅いコンクリートで固められた滑走路と砂漠の柔らかい砂とでは全く違う。「マフィア」の意識があったのはそこまでであった。戦闘機は砂丘をこすると砂にめり込み、主翼と胴体そして尾翼は一瞬にしてバラバラに飛び散った。胴体部分はパイロットを収容したまま砂漠の中に転がった。

 

砂嵐は相変わらず激しく吹き荒れ、砂が風防ガラスを叩きつけると周りに少しずつ積り始めた。胴体に描かれた「ダビデの星」が次第に砂に埋もれ、コックピットの中のパイロットもいつしか砂の中に消えて行った。

 

数時間後、砂嵐が止んだ時、砂漠は何事もなかったかのような表情を取り戻した。ジェット機の墜落したあたりは渺渺とした砂丘が連なり、もはやだれも墜落場所を特定することができない。これが何万年も前から繰り返されてきたルブ・アルハリの自然というものだ。砂丘の下には砂漠に迷い込んだまま生きて帰ることのなかったラクダや羊、さらにはベドウィンの骨があちらこちらに埋まっているはずだ。イスラエル機とそのパイロットも誰にも発見されることなく砂漠の中に眠り続けるのであろうか。「ルブ・アルハリ」は大昔から「空白の四分の一」なのだ。

 

ウデイド空軍基地の薄暗い作戦室のレーダー画面から一つの点が消えた。ベテラン管制官の最初の仕事は終わった。彼は次に備え無線を新しい周波数に切り替え、もう一度レーダーを見つめ直した。そして数分以内に現れると聞かされていた新しい点が画面の隅から現れるのを待った。しかしそれはいつまで経っても現れなかった。

 

その時、上官が部屋に飛び込んでくるなり大声で「作戦は中止だ」と叫んだ。回転椅子を回して振り返った管制官に上官の引きつった顔が覆いかぶさるように飛び込んできた。理由を聞いても上官は黙ったままである。管制官は訳も解らず無線のスイッチを切り、立ち上がると室外へ向かった。

 

部屋の扉を開けながら彼は独り言をつぶやいていた。

 

「ありもしない滑走路の管制塔で戦闘機の着陸を誘導するなんて仕事は初めてだ。バーチャルな管制は見習い士官の時にシミュレーターを使って訓練させられて以来だな。」

「やはり仕事は滑走路の横の高い管制塔でやるのが一番だ。あそこで周りの広い景色をながめながら戦闘機の離着陸をコントロールしていると、小さいながらも世界を支配しているような気分になれるからな------」

 

 何となく物足りず納得できない気分を抱きながら廊下に出た彼の耳に若い兵士の会話が飛び込んできた。

 

「さっき東の空でとてつもない閃光が走ったぜ。あれは何なんだ。」

「俺も見たさ。まるで太陽がもう一つ生まれたみたいだったな。」

 

管制官は廊下の窓から空を眺めたが、そこにはいつも通り雲一つない抜けるような青空とギラギラと光り輝く太陽が一つあるだけだった。」

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ12(消費篇4)

2022-07-26 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(3-2) 米国、中国、日本、インド4カ国の2010~2021年消費量の推移

(首位交代が近い米国と中国!)

(3-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03a.pdf参照)

 2021年の石油消費量が世界1位から3位までの米国、中国、インド及び世界6位の日本について2010年から2021年までの消費量の推移を追う。

 

 2010年の米国の消費量は1,830万B/Dであり、中国930万B/D、日本440万B/D及びインド330万B/Dであった。米国と中国はほぼ2倍の格差があった。米国は2011年、12年と2年連続で1,800万B/Dを割ったが、2013年以降再び増加し2019年には1,940万B/Dに達した。2020年はコロナ禍のため1,720万B/D強に急減したが、2021年には1,870万B/Dまで回復している。

 

 これに対し中国の消費量は一本調子で増加、2012年に1千万B/Dを突破、その後も増加の勢いは止まらず、2020年のコロナ禍でも消費量が落ちることは無く、2021年は1,540万B/Dであった。首位米国との格差は20%に縮まる一方、インドの3倍、日本の4倍に達している。

 

 日本の消費量は長期減少傾向にあり、2010年に米国、中国に次ぐ世界3位であったが、2015年にはインドを下回り、その後サウジアラビア及びロシアにも追い抜かれ、昨年の消費量は世界6位の334万B/Dであった。

 

(アジアの天然ガス消費をけん引する中国!)

(3-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03b.pdf参照)

 米国(2021年の天然ガス消費量世界1位)、中国(同3位)、日本(同7位)及びインド(同14位)の2010年から2021年までの消費量の推移を見ると、2010年は米国が6,480億立方メートル(㎥)、次いで中国が1, 090億㎥、日本1,000億㎥、インド590億㎥であった。 米国とその他3カ国の格差は6倍以上であった。その後中国の消費量は急ピッチで増加、2016年には2千億㎥、2019年には3千億㎥を突破、2021年の消費量は3,790億㎥を記録し、米国との格差は2倍に縮まっている。

 

 一方この間日本の消費量は2014年の1,250億㎥を天井にその後は年々減少し、2021年には1,040億㎥となり中国の4分の1に縮小している。インドは2010年の消費量590億㎥に対し2021年は620億㎥であり過去10年間にほとんど増加していない。

 

(まだまだ格差が大きい1位米国と2位中国!)

(3-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03c.pdf参照)

 石油と天然ガスを合計した消費量を米国、中国、インド及び日本の4カ国で比較すると、まず2010年の消費量は米国が2,950万B/D(石油換算、以下同じ)であり、中国も1千万B/Dを超えており(1,120万B/D)、日本とインドは610万B/D及び430万B/Dであった。米国は2019年に3,410万B/Dまで伸びたが、2021年は3,290万B/Dに減少している。

 

 中国は過去10年間一度も減少することなく2021年の消費量は2010年の2倍、2,200万B/Dに増加している。日本は石油、天然ガス共に過去10年間消費が減少しており2021年の消費量は510万B/Dで2010年を100万B/D下回っている。インドは天然ガス消費は停滞したが、石油消費は増加している。この結果合計生産量では2018年に日本を超えて現在に至っている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ11(消費篇3)

2022-07-25 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(2) 1970~2021年の消費量の推移(続き)

(1970年以降の半世紀で消費量4倍に急成長!)

(3-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02b.pdf参照)

 1970年に9,600億㎥であった天然ガスの消費量はその後1992年に2兆㎥、2008年には3兆㎥の大台を超え、2021年の消費量は4兆㎥を突破している。1970年から2021年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年と2020年の2回のみであり、半世紀の増加率は4.2倍に達している。

 

石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプラインであれば生産国と消費国が直結しており、またLNGの場合もこれまでのところ長期契約の直売方式が主流である。そして天然ガスは一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガス消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。

 

 地域別の消費量の推移を見ると1970年の世界の天然ガス消費量の64%は北米、20%はロシア・中央アジア、11%が欧州と、三地域だけで世界全体の95%を占めており、アジア・大洋州などその他の地域は全て合わせてもわずか5%にすぎなかった。

 

その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州及びロシア・中央アジア地域は1980年代から90年代にかけて急速に消費が拡大、1990年の世界シェアは北米が31%に半減したのに対して、ロシア・中央アジアと欧州の合計シェアは51%に達している。しかし1990年以降はこれら3地域に替わってアジア・大洋州の市場が大きく拡大し、世界に占めるシェアは1970年の1%から2000年には12%に増え、消費量は3千億㎥に達している。アジア・大洋州地域の消費量はその後も大きく増加し、2021年には1970年の65倍、9,200億㎥に激増し、シェアも北米の26%に次いで23%を占めるようになった。

 

北米、ロシア・中央アジア地域及び欧州とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1970年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。

 

(天然ガスの比率が27%から43%に!)

(3-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02c.pdf参照)

 1970年から2021年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1970年の石油と天然ガスの消費量は石油が4,540万B/D、天然ガスは9,620億㎥(石油換算1,660万B/D)であった。合計すると石油換算で6,200万B/Dとなり、両者の比率は石油73%、天然ガス27%で石油の消費量は天然ガスの2.7倍であった。

 

 その後、半世紀の間天然ガスの消費量はほぼ右肩上がりに増加しており、2021年の合計消費量は石油換算で1億6,400万B/D(内訳:石油9,400万B/D、天然ガス4兆㎥)であり1970年の2.6倍に達している。石油と天然ガスそれぞれについて見ると、石油は2.1倍、天然ガスは4.2倍と天然ガスの伸び率は石油の2倍であった。この結果、2021年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は57%対43%であり、天然ガスの比率は半世紀の間に16ポイント上昇している。地球環境問題の高まりにより石油に比べてCO2発生量が少ない天然ガスの利用が進んでいることがわかる。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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