石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (20)

2018-08-31 | BP統計

 

(ロシアと日本がそれぞれ輸出入世界一!)

(5) 2017年の天然ガス貿易(パイプライン + LNG合計)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G06.pdf 参照)

 2017年のパイプライン(以下P/L)とLNGを合わせた天然ガスの輸出(入)量は世界全体で1兆1,341億㎥であった。輸出量トップはロシアの2,121億㎥であり、内訳はP/Lによるものが1,966億㎥、LNGが155億㎥であった。世界の輸出全体に占める同国の割合は19%である。これに次ぐのがカタールの1,218億㎥であり、内訳はLNG輸出が1,034億㎥、P/L(ドルフィンP/L)はUAE向けの184億㎥である。第3位はノルウェーの1,149億㎥で、同国の場合は殆どがP/Lによる欧州各国向けの輸出である。上記3カ国が天然ガスの三大輸出国であり、3カ国の合計シェアは世界の4割に達する。その他の主な輸出国はオーストラリア、カナダ、アルジェリア、トルクメニスタンなどである。

 

 一方輸入国としては日本が1,139億㎥と最も多く、次いでドイツの948億㎥が世界第2位である。日本は全量がLNG、ドイツは全量P/Lと両国の特色が分かれている。世界第3位の輸入国は中国(920億㎥)であり、第4位以下にイタリア(622億㎥)、トルコ(536億㎥)、韓国(513億㎥)、メキシコ(487億㎥)と続いている。なお米国は名目上の輸入量は829億㎥であるが、一方834億㎥を輸出している。これを差し引くと同国の天然ガス貿易は5億㎥の輸出超過となる。米国は近年シェールガスの開発生産が急増、国内での自給率が高まっている(第3項消費量(5)「主要国の需給ギャップ」参照)。2016年は差し引き202億㎥の輸入超過であったことと比較すると米国は天然ガスの純輸出国になったことになる。

 

輸入上位2カ国(日本、ドイツ)の世界全体に占める合計シェアは18%であり、輸出上位2カ国(ロシア及びカタール)のシェア29%に比べてかなり低い。輸出は少数の国に握られ、輸入は多くの国が群がっていることが読み取れる。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月31日)

2018-08-31 | 今日のニュース

・OPEC、7月の減産順守率109%

・イラン禁輸懸念と米国原油備蓄減少で油価上昇。Brent $77.64, WTI $69.91

・上海で中東原油先物相場オープン。CNPC、Sinopecなど5社参加

・南スーダン、紛争地域からの石油生産再開

 

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (19)

2018-08-30 | BP統計

(4) パイプラインによる輸出入(2017年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G05.pdf 参照)

2017年のパイプラインによる天然ガスの主な国の輸出入量は概略以下のとおりである。なおパイプライン貿易では米国とカナダのように相互に輸出入を行っている国がある。例えば2017年に米国はカナダから807億㎥の天然ガスを輸入する一方、カナダとメキシコへ合わせて661億㎥を輸出している。国境をまたぐ多数の天然ガスパイプラインがあるためである。この他国境をまたがるパイプラインが発達しているヨーロッパでは輸入した天然ガスを再輸出するケースも少なくない。本項で述べる各国の天然ガス輸出量或いは輸入量は輸出入を相殺したNETの数量である。

 

(世界のパイプライン貿易の3割弱を支配するロシア!)

(4-1)国別輸出量

 パイプラインによる天然ガス輸出が最も多い国はロシアでありその輸出量は1,966億㎥、世界の総輸出量の27%を占めている。ロシアの輸出先は東ヨーロッパ及び西ヨーロッパ諸国である。第2位のノルウェーの輸出量は1,092億㎥(シェア15%)であり、年間輸出量が1千億㎥を超えているのはこの2カ国だけである。両国に次いで輸出量が多いのはカナダ(567億㎥)、トルクメニスタン(364億㎥)、アルジェリア(336億㎥)であり、カナダの輸出先は米国、アルジェリアは地中海の海底パイプラインにより西ヨーロッパ諸国に輸出している。なお冒頭に述べたようにカナダは米国と相互に輸出入を行っており、輸出の総量は807億㎥である。

 

上記5カ国による輸出量は全世界の6割弱を占めている。従来パイプラインによる輸出は北米大陸とヨーロッパ大陸が主流であったが、最近ではトルクメニスタンから中国への輸出、或いはドルフィン・パイプラインによるカタールからUAEへの輸出など北米、ヨーロッパ以外の地域でもパイプラインによる天然ガス貿易が拡大しつつあり、カタールのパイプラインによる輸出量は184億㎥に達し世界第6位である。

 

(パイプラインによる天然ガス輸入量トップはドイツ!)

(4-2)国別輸入量

 2017年にパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多かったのはドイツで948億㎥であった。これに次ぐのがイタリア(538億㎥)、トルコ(428億㎥)、メキシコ(421億㎥)、中国(394億㎥)、フランス(335億㎥)である。ドイツの主たる輸入先はロシア及びノルウェーであり、イタリアはロシア、アルジェリア等から輸入している。英国はかつて天然ガスの輸出国であったが最近では純輸入国に転落しており、パイプラインのほかカタールからのLNG輸入にも踏み切っている。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (18)

2018-08-29 | BP統計

 

(3) LNG貿易(続き)

(3割を切った日本のLNG輸入シェア!)

(3-3) 2008年~2017年の国別輸入量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G04.pdf 参照)

 LNG輸入の全体量は2008年の2,265億㎥から2017年には1.7倍の3,934億㎥に増加している。10年間を通じて国別輸入量が最も多いのは日本であり、2008年の921億㎥が2017年には1.2倍の1,139億㎥に増加している。この間特に2011年、2012年の両年は対前年伸び率が二桁の大幅な伸びを示している。これは原発の運転停止のため火力発電用LNGの輸入が急増したことが主な要因である。その一方、2015年及び2016年は連続して前年より減少しており10年間の平均増加率は2.7%である。この間の世界のLNG輸入平均増加率は6.6%であり日本のそれはかなり低い。この結果日本のLNG輸入が世界全体に占める割合は2008年の41%をピークにほぼ一貫して下がり続けており2017年はついに3割を切って29%になっている。

 

これに対して昨年日本に次ぐ世界第2位のLNG輸入大国になったのが中国である。2008年の中国のLNG輸入量は44億㎥であり日本の20分の1、韓国の10分の1に過ぎずインド、台湾などよりも少なかったがその後急激に増加2010年には100億㎥、2016年には300億㎥、そして2017年にはついに500億㎥の大台を突破、韓国をしのぐ世界2位のLNG輸入大国になったのである。この結果世界に占める割合も2008年の2.0%から2017年には13.4%に達している。

 

日本、中国に次いで輸入量が多いのは韓国であるが日本との差は大きい。同国の輸入量は2008年が366億㎥であり、2017年には513億㎥に増加しているが、それでも日本の輸入量の半分弱である。

 

この他の主なLNG輸入国はインド、台湾、スペイン、トルコであるが、上位5か国は全てアジア諸国であり、特にそのうち4カ国(日本、韓国、中国、台湾)は極東アジアの工業国である。日本、韓国及び台湾は国内にガス資源が殆ど無く、またパイプラインで近隣国から輸入する手段も無いため天然ガスをLNGに依存しているのである。なお2000年には10カ国にとどまっていたLNGの輸入国の数は現在30カ国以上に増加しており、LNG受入設備を建設中の国もある。今後LNG貿易はこれまでの需給直結型に加え、市場での転売を目的とした貿易型も増えると見られ、LNG貿易に参入する国は多様化するものと見込まれる。

 

(続く)

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月29日)

2018-08-29 | 今日のニュース

・中国・振貨石油、米のイラン制裁対策でイラクSOMOと天津に10-11月に原油販売合弁事業設立

 

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (17)

2018-08-28 | BP統計

(3) LNG貿易(続き)

(3割を切ったカタールのLNG輸出シェア!)

(3-2) 2008年~2017年の国別輸出量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G03.pdf 参照)

2008年に2,265億㎥であったLNGの輸出量は毎年伸び、特に2010年及び2011年の2カ年はそれぞれ前年比24%及び10%と言う二桁台の大幅な伸びを示し3,000億㎥を突破した。2012年及び2015年の両年は前年比で減少したものの2017年のLNGの輸出総量は3,934億㎥であった。これは2008年の1.7倍であり、この間の年平均成長率は5.7%を記録している。

 

国別で見ると2008年当時はカタールの輸出量は397億㎥で全世界に占める割合は18%であり、マレーシアが300億㎥弱であった。その後2009年から2011年にかけてカタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが[1]、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況となった。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し2013年の1,056億㎥、シェア33%をピークにカタールの輸出量は足踏み状態となり、その結果市場シェアは下降気味であり、2017年には30%を割り、26%と2010年の水準に逆戻りしている。

 

一方でロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でも輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。特にオーストラリアの伸びが著しく、2017年の輸出量は2008年の4倍弱の759億㎥に達し、世界シェアも19%で、カタールに次ぐ世界第2位の地位を確立している。

 

 インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量は減少に歯止めがかからず2011年の386億㎥をピークに急減、ここ数年は200億㎥をわずかに上回る横ばい状況である。同国は大きな人口を抱えているため今後輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性は否定できない。

 

(続く)

 

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[1] 拙稿「シェールガス、カタールを走らす」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0148ShaleGasQatar.pdf 

 

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"The Peace on The Horizon - 70 Years after The World War 2 in the Middle East"(43)

2018-08-26 | 中東諸国の動向

Home Page: OCIN INITIATIVE

(Japanese Version)

(Arabic Version)

(Table of contents)

 

By Areha Kazuya

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

Chapter 5: Two calendars (Gregorian & Hijri)

 

5-7(43) Two books of prediction: “The End of History and the Last Man” & ”The Clash of Civilization and the Remaking of World Order”

 

In the 1990s, the last decade of the 20th century, two books were published by a political scientist in the United States one after another, and they had the great reputation. One was Francis Fukuyama's "The End of History and the Last Man" in 1992 and another one was Samuel Huntington's "The Clash of Civilization and the Remaking of World Order" in 1996. When the end of the century was approaching, abnormal literatures which predicts the end of the world used to be published such as "Harmagedon" or "The predictions of Nostradamus". But two books were the papers on civilization by renowned scholars. The assertion of the two papers were quite different.

 

The Middle East has been at the mercy of history as a crossover point of East and West civilizations. In that sense, both books suggested important points for the history of the Middle East, although two books covered all over the world.

 

Professor Fukuyama predicted that the world of the 21st century would establish a global society with democracy and market economy and become the era of "the end of history" where there was no longer major conflicts of ideology. On the other hand, Huntington said that the world of the 21st century would not be in a direction of global integration, but rather would divide into units of many civilizations, and the wave of conflicts between each civilization would become the basis of the new world order.

 

Professor Huntington cited the seven civilizations as the main civilization of modern age; Western Europe civilization, Islamic civilization, Confucian civilization, Hindu civilization, Orthodox Church civilization, Latin American civilization and Japanese civilization. It is interesting that Huntington regards Japan as an isolated civilization. In sense of folklore and geopolitics, it should belong within the category of Far East Asia. Among these seven civilizations, the Western European civilization is the newest one starting from the industrial revolution in the 18th century. The Western European civilization focused on the ideology such as liberalism and capitalism. In contrast, the Islamic civilization is a religious one originated by Muhammad in the 14th century. The Orthodox Church civilization is also a civilization rooted in the religion of Christianity.

 

Once there had been four ancient civilizations in and along Egypt, Mesopotamia, Yellow River and Indus. Yellow River civilization in China was the mother of Confucian civilization. And Indus civilization in India was the mother of Hindu civilization. But Egyptian and Mesopotamian civilization had no successors. They only remained their names as an archaeological civilization.

 

Latin American civilization and Japanese civilization were related to ethnicity. For Japanese, however, the name of civilization sounds somewhat different, and “Japanese culture” sounds more popular.

 

In general, "civilization" and "culture" are used in almost the same meaning. According to Oxford English Dictionary, the definition of civilization in English is: ‘The stage of human social development and organization which is considered most advanced.’ And that of culture is: ‘The arts and other manifestations of human intellectual achievement regarded collectively’ or ‘The ideas, customs, and social behavior of a particular people or society.’ It seems that culture has more wide meaning than civilization.

 

Prof. Fukushima's "The End of History and the Last Man" was written in the age when the Berlin Wall was fell down in 1987 and the dissolution of Soviet Union in 1991, and The United States became the super power in the world. Socialism and communism were driven out and liberalism and capitalism became the de facto standard. His book was a child of the age. Meanwhile, it was sure that Huntington wrote "The clash of Civilization and the Remaking of World Order" under strong influence by the drastically changing history of the Middle East. They were the Iranian Revolution in 1979, the invasion and withdrawal of the Soviet Union in Afghanistan during 1990 to 1989, and the Gulf War in 1991.

 

These two philosophic books were born in the paradigm shift of dramatically changing history. Just around that time, neoconservatism was emerged in the United States. The roots of neoconservatism dated back to the 1930's. And it grew up as a theoretical pillar of the political party which opposed to the Detent (Release from tension) with the Soviet Union during the Cold War. The Jewish lobby in the United States supported the neoconservatism.

 

The speech by Barry Goldwater who was the Republican presidential candidate in 1964 was enthusiastically supported by conservatives. Senator Goldwater told that; "The radicalism for defending freedom was not a vice in any way, and the moderatism in search of justice was not a virtue in any way". The conservatism became the mainstream of the Republican Party;

 

During the Republican governments from President Ronald Reagan in 1981 to President George H. W. Bush in 1993, people of the United States confirmed the correctness of his country and was convinced that they were chosen by God and given the mission for world peace. The United States made the Soviet Union to withdraw from Afghanistan and promoted reunification of the East and West Germany. The United States supported Iraq of the secular regime in the Iran-Iraq war. In the field of economy, they forced the others the globalization through free trade. The power of the United States became unbeaten in the world.

 

This scenario was exactly same as Prof. Fukuyama's "The End of History and the Last Man". Prof. Fukuyama never said that history would end. He said that the world after the Cold War was the beginning of the final chapter of history where democracy and market economy might be unified to the one ideology. Having claimed such a kind of eschatological argument at the end of the 20th century has made his book the best-seller.

 

The United States overthrew the Hussein dictatorship in Iraq in the Gulf War. Rulers of the Arab and Muslim countries trembled. The United States intended to materialize Prof. Fukuyama's idea in the Middle East in the coming 21st century. However, it was Prof. Huntington's "The Clash of Civilization and the Remaking of World Order" that challenged Prof. Fukuyama's idea. It was unfortunate that the 21st century started from the 9/11 terrorist attacks that support Prof. Huntington's prediction.

 

(To be continued ----)

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月24日)

2018-08-24 | 今日のニュース

サウジアラムコのIPOは継続案件。エネルギー相、IPO断念説否定の声明発表

・クウェイトとイラク、国境またぐ油田開発で近くコンサルタントと契約予定。

 

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (16)

2018-08-24 | BP統計

 

(3) LNG貿易

(後続に追い上げられる輸入1位の日本、輸出1位のカタール!)

(3-1) 2017年のLNG貿易

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G02.pdf 参照)

 2017年の全世界のLNG輸出入量は3,934億㎥であった。輸入を国別でみると最も多いのは日本の1,139億㎥であり輸入全体の29%を占めており、第2位中国526億㎥、第3位韓国513億㎥(共にシェア13%)の2倍強である。中国のLNG輸入量は年々増加しており、2017年には韓国を追い越して世界2位の輸入大国になっている。一方日本のLNG輸入量は減少或はほぼ横ばい状態にあるため中国との差は年々縮まっている。因みに日中韓3か国だけで世界のLNG輸入量の55%を占めている。第4位はインドでその輸入量は257億㎥、第5位は台湾(225億㎥)とアジア、特に極東の国々が上位を占めており5カ国のシェアを合計すると7割弱である。これらアジアの国々に次ぐのはスペイン(166億㎥)、トルコ(109億㎥)である。

 

 一方国別輸出量ではカタールが最も多い1,034億㎥であり、世界の総輸出量の26%を占めている。カタールに次いで輸出量が多いのはオーストラリア(759億㎥)である。両国の順位は前年と変わりないが、カタールは前年より10億㎥減った一方、オーストラリアは前年の生産量に対して191億㎥、34%の大幅増加であり、輸出国についても輸入と同様1位と2位の差は縮まっている。第3位以下はマレーシア(341億㎥)、ナイジェリア(278億㎥)、インドネシア(217億㎥)、アルジェリア(166億㎥)、ロシア(155億㎥)、米国(152㎥)と続いている。

 

(注)ここに掲げた数値は純輸出入量であり、LNGの輸入と輸出双方がある場合は両者を相殺した数値とした。例えば米国の場合2017年のLNG輸入量は22億㎥に対して輸出量は174億㎥であり、差し引き152億㎥の輸出となる。因みに2016年の米国のLNG輸出入は輸入25億㎥、輸出44億㎥であり輸出量ベースでは2017年は130億㎥の増加であった。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (15)

2018-08-23 | BP統計

 

(2000年以降の天然ガス貿易の年平均伸び率は4.7%!)

(2)天然ガスの貿易量(2000年~2017年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G01.pdf 参照)

 2017年の世界の天然ガス貿易の総量は1兆1,340億立法メートル(以下㎥)であり、内訳はパイプラインによるものが7,410億㎥、LNGとして取引されたものは3,930億㎥であった。パイプライン貿易が全体の65%を占めており、LNG貿易は35%である。天然ガス貿易に関与している国の数はパイプライン及びLNGを合わせ60か国以上にのぼる。これらの国の中には日本のようにパイプラインによる輸入がなく全てLNG輸入に依存している国がある一方、カザフスタンのようにパイプラインによるガス輸出のみを行っている国、更には米国とカナダのようにパイプラインで相互に輸出と輸入を行っている国、あるいはカタールのようにLNG輸出から始まり今や近隣国にパイプラインによるガス輸出も行っているなど様々な形態があり、天然ガス貿易は多様化している。

 

 2000年以降の天然ガスの貿易量を見ると、2000年に5千億㎥を突破した後ほぼ2年毎に1,000億㎥ずつと言う高い伸びを示し、2011年には1兆㎥を突破している。同年以降は伸びが鈍化し、2014年には一旦1兆㎥を割ったが、その後は再び毎年4%台後半の伸びを示している。2000年から2017年までの年平均増加率は4.7%である。貿易に占めるパイプラインとLNGの比率は2000年にはパイプライン74%、LNG26%であったが、その後LNGの比率が徐々に増加、2010年には30%を超え、2017年はパイプライン65%に対しLNG35%となっている。

 

2000年と2017年を比較するとパイプラインによる貿易量の伸びが1.9倍であったのに対してLNGの伸び率は2.9倍である。LNGは最近の伸びが特に著しく2010年には対前年比24%という高い増加率を示している。天然ガス貿易はパイプライン或いはLNG設備が完成すれば貿易量が飛躍的に伸びるという特性があるが、LNG貿易は近年ロシア、豪州の設備新設或は米国のシェールガス液化等により供給力が増加したことが貿易量の増大につながっている。

 

(続く)

 

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