石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ22(価格篇2)(完)

2022-08-11 | BP統計

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0563BpWorldEnergy2022.pdf

 

6.石油と天然ガスの価格(続き)

(原油価格連動型の日本とスポット調達のEUの明暗!)

(2)2000年~2021年の天然ガス価格の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/6-G01b.pdf 参照)

 天然ガスの取引価格には通常US$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略であり、およそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する[1]

 

 市場の自由取引にゆだねられた商品は一般的には価格が一本化されるが(一物一価の法則)、天然ガスについては歴史的経緯により現在大きく分けて三つの価格帯がある。LNGを輸入する日本では原油価格にスライドして決定されている。巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格も両者間で決定されるが、その指標として原油価格が使われているのである。

 

 これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は独立した多数の供給者と需要家が市場を介して取引をしており需給バランスにより変動する市況価格として形成される。

 

 ここでは日本向けLNG価格(以下日本価格)、英国Heren NBP index価格(以下英国価格)、ドイツ平均輸入価格(以下ドイツ価格)及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2000年から2021年までの推移を比較することとする。なお参考までに百万BTU当たりに換算した原油価格も合わせて比較の対象とした。

 

 2000年の日本価格は4.72ドル、英国価格2.71ドル、ドイツ価格2.91ドル、米国価格4.23ドルであり、当時の原油価格は4.83ドルであった。英国価格が最も低く、ドイツ価格がそれに次いで低く、日本、米国及び原油価格は4ドル台で原油が最も高かった。2003年には米国価格が一時的に他の価格のいずれをも上回った。

 

 2004年以降原油価格の上昇に伴い天然ガス価格もアップし、2005年の価格は米国価格8.79ドル、原油価格8.74ドル、英国価格7.38ドル、日本価格6.05ドル、ドイツ価格5.83ドルとなり、日本向け価格はドイツ価格に次いで安くなった。2009年から原油価格は再び急上昇したが、この時3地域の天然ガス価格は明暗を分けた。日本価格は原油価格に連動して上昇の一途をたどったのに比べヨーロッパ価格は緩やかな上昇にとどまった。そして米国価格は逆に下落した。この結果2012年は日本価格16.75ドルに対し米国価格は2.76ドルとなり、日本価格は実に米国価格の6倍を超えたのである。

 

 2014年から2016年にかけては原油価格が暴落したため、2016年のガス価格は3地域とも大幅に下落した。中でも原油価格にリンクした日本向け価格は大きく下がり、2016年は6.93ドルと対前年の3分の2になった。2017年、18年と原油価格は連続して上昇、日本向け価格は10.07ドル、英国価格及びドイツ価格もそれぞれ8.06ドル、6.64ドルに上昇したが、米国価格は3.12ドルにとどまった。この結果、米国と日本の価格差は3.2倍になった。

 

 コロナ禍による経済停滞により2019、2020年は原油価格が下落した(2020年は百万BTU換算で7.27ドル)。この時英国価格及びドイツ価格も大幅に下落したが、原油価格を後追いする日本価格はほぼ横ばいに推移している(9.94ドル)。

 

2021年に入り景気回復の兆しが見え、同時にCO2排出量の少ない天然ガスの需要が急増した。その影響を最も受けたのはスポット調達が中心の英国価格あるいはドイツ価格である。特に英国価格は前年の3.42ドルから一挙に5倍近い15.80ドルに急騰している。またドイツ価格も2倍強の8.94ドルとなった。これに対して2021年の日本価格は原油価格上昇の影響はあったものの、前年の1.3倍(10.07ドル)のアップにとどまっている。一方、米国価格は3.84ドルであり、日本及びヨーロッパとの価格差は拡大している。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[1] 東京ガスHPhttp://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/investor/ig1000.pdfより。 

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ21(価格篇1)

2022-08-10 | BP統計

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0563BpWorldEnergy2022.pdf

 

6.石油と天然ガスの価格

(OPEC+協調減産とCOVID-19で変動激しい最近の原油価格!)

1.指標2原油の2000~2021年年間平均価格の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/6-G01a.pdf 参照)

 ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油及び英国北海Brent原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。

 

 2021年の年間平均価格はBrent原油が70.91ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油68.10ドルであった。Brent価格を100とした場合WTI原油は96である。

 

 2000年以降の価格の推移をBrent原油の動きで見ると、2000年の28.50ドルから2003年までは大きな変動はなかったが、その後は上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。

 

 同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。

 

 しかしその数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が高まり、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは2014年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2015年前半は一時60ドルまで値を戻したが、後半はさらに値下がりし、年末には40ドルを切った。2016年に入っても値下がり傾向は止まらず、この結果2016年のBrent原油の年間平均価格は43.73ドルとなりわずか3年間で半値以下に暴落した。

 

そこでOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んだ(いわゆるOPEC+)協調減産体制を構築した。この減産効果により2017年々央40ドル台に沈んでいた原油価格は高値に転じ、2018年9月にはBrent原油は80ドル台まで高騰した。しかし2018年10月以降、原油価格は再び50ドル前半まで下落、OPEC+は2019年1月以降更なる減産体制に入った結果、同年のBrent原油年間平均価格は64.21ドルに上昇した。

 

ところが2020年に入ると世界にCOVID-19(新型コロナ禍)が蔓延、経済活動が麻痺し、原油需要も急落して同年のBrent年間平均価格は41.84ドルに下落した。その後2021年に入りコロナ禍が多少収まり原油需要が回復しており、OPEC+は需要の動向を慎重に見極めつつ小刻みな増産を続けており、その結果2021年の年間平均Brent価格は70.91ドルとなり、コロナ禍前の2018年の水準に戻っている。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ20(貿易篇6)

2022-08-09 | BP統計

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0563BpWorldEnergy2022.pdf

 

(2) LNG貿易(続き)

(ついにトップに躍り出たオーストラリア、急成長する米国!)

(5-4) 2010年~2021年の国別輸出量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G02bLngExport2010-21.pdf 参照)

2010年に3,024億㎥であったLNGの輸出量は2012年から2015年までは停滞したが、2017年及び2018年は前年比9%強、2019年は12%の高い増加率を示した。この結果、2021年のLNG輸出総量は5,162億㎥に達しており、これは2010年の1.7倍であり、この間の年平均成長率は5.5%を記録している。

 

国別で見ると2010年当時はカタールの輸出量が778億㎥で全世界に占める割合は26%であり、これに次いでインドネシア324億㎥(11%)、マレーシア310億㎥(10%)、オーストラリア258億㎥(9%)であった。その後カタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。一方。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展し、福島原発事故によるLNGの突発的需要増もあり設備はフル稼働の状況となった。世界的な供給過剰を恐れたカタールは設備の増設をストップしたため、2013年のシェア32%をピークに毎年シェアは下降気味であり、2017年には30%を割り、2021年は21%まで低下している。

 

この間、ロシアがサハリン及び北極海でLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でもLNG輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。オーストラリアの2021年の輸出量は2010年の4倍強の1,081億㎥に達し、ついにカタールをしのいでLNG輸出世界一になった。

 

特筆すべきは近年急速に輸出を伸ばしている米国である。同国は2015年まで日本向けアラスカ産LNG数億㎥の輸出にとどまっていたが、シェールガスの開発により国内需要を上回る天然ガスが生産されるようになり、LNGの輸出基地建設に着手した。この結果輸出量は2016年の40億㎥が2017年には171億㎥に急増、2021年はついに950億㎥を輸出し、オーストラリア、カタールに次ぐ世界第3位のLNG輸出大国になっている。

 

 インドネシアはかつてカタールに次ぐLNG輸出大国であったが、ここ数年減少に歯止めがかからず2010年の輸出量324億㎥が、2021年には半分以下の146億㎥に減少している。同国は大きな人口を抱えているため今後さらに輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性が高い。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ19(貿易篇5)

2022-08-08 | BP統計

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http://mylibrary.maeda1.jp/0563BpWorldEnergy2022.pdf

 

(2) LNG貿易(続き)

(2017年以降急成長するLNG貿易!)

(5-3) 2010年~2021年の国別輸入量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G02aLngImport2010-21.pdf 参照)

 世界全体のLNG輸入量は2010年の3,024億㎥から2021年には1.7倍の5,162億㎥に増加している。2010年から2020年までは日本が輸入量世界一であり、2010年は964億㎥、2020年は1,017億㎥であった。この間特に2011年、12年両年の対前年伸び率は二桁となり、2014年にはこれまでで最高の1,218億㎥のLNGが輸入されている。これは原発の運転停止のため火力発電用LNGの輸入が急増したことが主な要因である。しかし2015年以降は2017年を除くすべての年で前年を下回っている。

 

この間、中国は毎年大きく増加しており、2010年の130億㎥が2021年には8.4倍の1,095億㎥に増加、ついに日本を抜いて世界一のLNG輸入国になっている。日本の同期間の増加率は1.1倍にとどまっており、世界のLNG輸入に占めるシェアも2010年は日本が32%であったのに対し中国は4%にとどまっていたものが、2021年の輸入シェアは中国が21%、日本は20%である。

 

日本、中国に次いで輸入量が多いのは韓国、インド及び台湾の3カ国であり、2013年以来その順位は変わっていない。但し2021年の各国の輸入量は中国あるいは日本が1千億㎥を超えているのに対して、韓国は640億㎥にとどまり、さらにインド及び台湾は300億㎥前後であり、格差は大きい。

 

上位5カ国はすべてアジアであり、しかもその内4カ国(中国、日本、韓国、台湾)は極東の国々である。5カ国の輸入シェアは65%に達しており、極東4カ国のシェアは59%である。LNG輸入は現在も一部の国に限定されている。但し最近では地球温暖化問題が重視され、石油より二酸化炭素排出量が少ない天然ガスの需要が増加、さらに今春のロシアのウクライナ侵攻によりLNG輸入を始めるヨーロッパ諸国が増えている。この結果、世界的にLNG争奪戦の様相を見せている。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ18(貿易篇4)

2022-08-04 | BP統計

(2) LNG貿易

(5-2) 2021年の天然ガス貿易(続き)

(5-2-3) パイプライン貿易(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G01b2GasPipeline.pdf 参照)

2021年のパイプラインによる天然ガスの国別輸出入量は概略以下のとおりである。なおパイプライン貿易では米国とカナダのように相互に輸出入を行っている国がある。例えば2021年に米国はカナダから759億㎥の天然ガスを輸入する一方、カナダとメキシコへ合わせて843億㎥を輸出している。国境をまたぐ多数の天然ガスパイプラインがあるためである。またオランダのようにかつてヨーロッパ一円に天然ガスを輸出していたが、現在ではむしろパイプライン網の中継点としてロシアから輸入した天然ガスを周辺国に再輸出しているケースもある。

 

(世界のパイプライン貿易の3割を占めるロシア!)

(i)国別輸出量

 パイプラインによる天然ガス輸出が最も多い国はロシアでありその輸出量は2,017億㎥、世界の総輸出量の29%を占めている。ロシアの輸出先はほとんどがヨーロッパ向けで、一部中国にも輸出されている。第2位のノルウェーの輸出量は1,129億㎥(シェア16%)であり、年間輸出量が1千億㎥を超えているのはこの2カ国だけである。両国に次いで輸出量が多いのは3位米国(843億㎥)、4位カナダ(759億㎥)、5位トルクメニスタン(421億㎥)、6位アルジェリア(389億㎥)であり、冒頭に述べたように米国とカナダは相互に輸出入を行っている。これら上位6カ国による輸出量は全世界の8割を占めている。

 

世界第7位から9位まではカタール(211億㎥)、アゼルバイジャン(196億㎥)、イラン(173億㎥)である。カタールはLNGの輸出で世界2位であるが(前項参照)、ドルフィン・パイプラインと呼ばれるパイプラインにより、天然ガス資源の乏しいUAEに発電及び海水淡水化用の燃料として輸出している。

 

(パイプライン輸入総量の4割を占めるEU!)

(ii)国別輸入量

 2021年にパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多かったのはEUの2,698億㎥で、全体の4割を占めている。これに次ぐのが米国(759億㎥)であるが、上記に述べた通り米国はカナダ、メキシコに自国産天然ガスを輸出する世界第3位の輸出国でもある。輸出入の差は84億㎥の輸出超過であり、LNG貿易(上記)に加えパイプライン貿易の面でも米国は純輸出国となっている。第3位以下はメキシコ(587億㎥)、中国(532億㎥)、カナダ(255億㎥)、UAE(195億㎥)である。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ17(貿易篇3)

2022-08-03 | BP統計

(5-2) 2021年の天然ガス貿易(続き)

(日本を抜いてLNG輸入トップになった中国!)

(5-2-2) LNG貿易(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G01b1GasLng.pdf 参照)

 2021年の全世界のLNG輸出入量は5,162億㎥であった。輸入を国別でみると最も多いのは中国の1,095億㎥であり、輸入量全体の21%を占めている。第2位は日本(1,013億㎥、同20%)である。2020年までは日本が世界一のLNG輸入国であったが、今回は両者の地位が逆転した。両国の経済力、エネルギー需要を考えると今後は中国が世界最大のLNG輸入大国になるのは間違いなく、日本との輸入量の格差も拡大するものと思われる。

 

 第3位は韓国641億㎥(同11%)であり、日中韓3か国だけで世界のLNG輸入量の53%を占めている。第4位はインドでその輸入量は336億㎥、第5位は台湾(268億㎥)であり、アジアの経済大国が上位を独占している。これらの国々に次ぐのはスペイン(208億㎥)、フランス(181億㎥)、英国(149億㎥)、トルコ(139億㎥)である。

 

 一方国別輸出量ではオーストラリアが最も多い1,081億㎥であり、第2位には僅差でカタール(1,068億㎥)が並んでいる。この2か国だけで世界の42%を占めている。輸出国の第3位は米国(950億㎥)である。第4位は及びロシア(396億㎥)であるが上位3カ国とは大きな差がある。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ16(貿易篇2)

2022-08-02 | BP統計

5.世界の石油と天然ガス貿易(続き)

(5-2) 2021年の天然ガス貿易

(天然ガス貿易にはパイプラインとLNGの二つのタイプがある!)

(5-2-1)天然ガス貿易の二つのタイプ

天然ガスは石油と異なり大気中に拡散することを防ぐため密閉状態で搬送しなければならない。この場合輸送方法によりパイプラインで気体状のまま搬送する方法若しくは液化して特殊な船(LNGタンカー)や運搬車で搬送する二種類がある。パイプライン方式は常温で気体状のガスを生産地と消費地をパイプで直結して搬送するものであり、LNG方式は生産地で極低温で液化したガスを密閉容器で消費地に搬送するタイプである。

 

パイプラインによる貿易は古くから行われている。但しパイプラインを敷設するためには生産地と消費地が陸続きであるか比較的浅い海底(又は湖底)であることが条件である。パイプラインによる天然ガス貿易が広く普及しているのが北米大陸の米国・カナダ間の貿易である。ヨーロッパ大陸でもオランダ産の天然ガスを各国に輸出するための天然ガスパイプライン網が発達し、同国の生産が衰退するに従い新たな供給地としてロシア及び中央アジア諸国とのパイプラインが敷設され、或いは地中海を隔てた北アフリカとの間で海底パイプラインが敷設され、現在ではこれらのパイプラインが欧州における天然ガス貿易の中心を成している。

 

これに対して天然ガスの生産地と消費地が離れており、しかもその間に深海の大洋がある場合は両者を結ぶパイプラインを敷設することは不可能である。そのために開発されたのが天然ガスを極低温で液化し容量を圧縮し効率よく輸出するLNG貿易である。LNGは生産現地における液化・積出設備、LNG運搬専用タンカー並びに消費地における積卸・再ガス化設備のための高度な技術と多額の設備投資が必要である。そのためにも顧客との長期的かつ安定的な販売契約が事業の成立と継続のための重要条件である。

 

このような制約のためLNG貿易の歴史は比較的新しく本格化したのは中東のカタールと日本の間で1997年に始まった事業からである。なお最近ではLNGのスポット取引が普及しつつあるが、三国間貿易を行う国ではLNGタンカーの確保あるいは中間貯蔵・入出荷設備の建設等に原油の場合とは比較にならない多額の初期費用がかかることに変わりはない。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ15(貿易篇1)

2022-08-01 | BP統計

5.世界の石油と天然ガス貿易

(輸入トップは中国、輸出トップはサウジアラビア!)

(5-1) 2021年の原油貿易

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G01aOil.pdf 参照)

 2021年の全世界の原油輸出入量は20.6億トンであった。輸入を国別でみると最も多いのは中国の5.3億トンであり輸入全体の4分の1を占めている。これに続くのはヨーロッパ諸国の4.7億トン(シェア23%)であり、第3位は米国の3.1億トン(同15%)である。因みに米国は次に触れる通り輸出量が1.4億トンある。米国は輸出入の両面で世界の原油貿易のキープレーヤとなっている。日本の輸入量は1.2億トンでインド(2.1億トン)に次いで多い。

 

一方輸出量が最も多いのはサウジアラビアの3.2億トンであり、ロシアが2.6億トンでこれに続いている。両国が世界の輸出量に占める割合は約3割に達しており、OPECとその協調国、いわゆるOPEC+の双璧をなす両国の存在感は際立っている。両国に次いで輸出量が多いのはカナダ(2億トン)、西アフリカ諸国(1.9億トン)であり、さらにイラク、UAEのアラブ産油国である。これら各国に続いて輸出量が多いのは米国(1.4億トン)である。上記の通り米国は3.1億トンの原油を輸入しており両者を差し引きすると、米国は1.7億トンの輸入超過となる。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ14(自給率2)

2022-07-30 | BP統計

4.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率 (続き)

(4-2) 天然ガスの生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2010~2021年)

(4-2-1)天然ガス

(年々輸出余力が増すロシア、オーストラリア及び米国!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01b.pdf参照)

 2010年におけるロシアの天然ガス生産量は5,980億㎥、消費量は4,240億㎥で、生産が消費を1,750億㎥万B/D上回っていた。カナダ、オーストラリアはロシアほど多くはないがやはり生産量が消費量を580億㎥及び210億㎥上回っていた。

 

 これに対して米国は生産量5,750億㎥、消費量6,480億㎥で、差引▲730億㎥を隣国カナダから輸入していた。中国及びインドも天然ガスの純輸入国であり、共に▲120億㎥前後消費が生産を上回っていた。

 

 その後2021年までロシア、カナダ、オーストラリアは引き続き生産が消費を上回った。このうちオーストラリアは生産が急拡大し、2021年の生産量は2010年の2.8倍、1,470億㎥に達した。オーストラリアの生産余力は2010年の5.2倍に拡大しており伸びが著しい。

 

2010年当時純輸入国であった米国、中国及びインドのその後の推移は対照的である。米国の改善が顕著であるのに対して、中国とインドは11年間で生産・消費ギャップが拡大している。米国は2010年に▲730億㎥であったギャップが年々縮小し2012年には中国、2014年にはインドをしのいだ。そして2017年にはついに生産が消費を上回り純輸出国に変わっている。さらに2019年にはカナダを上回る生産余力のある国になり、2021年の生産・消費ギャップはプラス1,080億㎥に達している。一方の中国とインドは逆にギャップが年々拡大し、2021年は中国が▲1,700億㎥(生産2,090億㎥、消費3,790億㎥)、インドが▲340億㎥(生産290億㎥、消費620億㎥)であり、中国の生産・消費ギャップ拡大のスピードが速い。

 

(2010年に自給率89%だった米国と中国が2021年には113%と53%に二極化!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02b.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2010年以降の推移を見ると、まず2010年の自給率は中国と米国が89%で並んでおり、インドは80%であった。即ち米国と中国は1割を、インドは2割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2021年には中国は55%、インドは46%に下がり、両国とも必要量の半分前後を輸入に頼っている。

 

これに対して米国は劇的に改善し、2017年には自給率100%を達成した。その後も生産の増加が消費の増加ペースを上回り、2021年には113%となり、天然ガスの輸出国に変身している。前項の石油で触れた通り、米国の2020年の石油自給率は89%である。かつて米国は不足する石油と天然ガスを中東産油国とカナダ、ベネズエラに依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(2005年の自給率50%が2021年は99%に!)

(iii)米国の石油と天然ガスの自給率(1970~2021年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G03.pdf参照)

 1970年以降2021年までの半世紀にわたる米国の石油・天然ガス自給率の推移を見ると、50年前の自給率は石油が77%、天然ガスは99%であり、石油と天然ガスを併せた自給率は86%であった。この当時米国では天然ガスはほぼ自給体制であり、石油の2割強を輸入に依存していた。

 

 天然ガスについては1980年代後半まで自給率100%であったが、1990年以降消費の拡大に生産が追い付かず自給率は徐々に低下し、2005年には82%まで下がった。しかしその後はシェールガス開発が急発展して生産量が劇的に増加、2015年には自給率が100%を超え、2021年には113%に達している。天然ガスについて米国はすでに輸出国の仲間入りを果たしているのである。

 

 同様に石油の自給率の推移を見ると1970年代後半には50%台後半に落ちている。その後1980年代半ばに67%まで回復したが、その後再び自給率は年々低下し、1994年に50%を割り2005年にはついに34%まで落ち込んでいる。即ち国内需要の3分の1しか賄えなかったことになる。しかし2010年以降はシェールガスと並びシェールオイルの生産が本格化し、自給率は急回復し、2010年は89%になっている。

 

石油と天然ガスを併せた自給率で見ると、1970年は86%であった。最近まで消費の主流は石油であったため自給率は石油に近く、例えば2005年の自給率は石油34%、天然ガス82%、合計ベースの自給率は50%であった。しかし、最近では石油と天然ガスの自給率の差が無くなり2021年の自給率は石油89%、天然ガス113%、合計ベースでは99%となっている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ13(自給率1)

2022-07-28 | BP統計

4.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率

(1) 石油の生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2010~2021年)

(4-1-1)石油

 世界の石油生産国と消費国を並べると(生産篇2-1-1、表2-T01a及び消費篇3-1-1、表3-T01a参照)、米国が生産、消費量で共に世界一であり、中国(生産6位、消費2位)、サウジアラビア(生産2位、消費4位)、ロシア(生産3位、消費5位)など生産・消費の両面で世界のトップクラスの国が少なくない(日本やドイツのように消費が多く、生産がゼロの国はむしろ例外)。

 

 このような国について生産量と消費量のギャップを比較すると、生産量が消費量を上回る国とその逆のケースがある。生産量が消費量を上回る場合はその差が輸出され、逆に消費量が生産量を上回る場合はその差が輸入で埋め合わされることになる。また、生産量を消費量で割った数値をパーセントで表すと、100%を境にその国の石油自給率を示すことになる。

 

 ここではサウジアラビア、ロシア、米国、中国など7カ国について2010年から2021年までの各国の生産量と消費量のギャップを点検し、また米国、中国及びインド3か国について同期間中の自給率の推移を見てみる。

 

(ギャップが急速に改善する米国、輸出余力を維持する露・サウジ!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01a.pdf参照)

 2010年における米国の石油生産量は760万B/D、消費量は1,830万B/Dで両者の差は▲1,080万B/Dであった。同様に中国は▲520万B/D(生産410万B/D、消費930万B/D、以下同じ)、インドは▲240万B/D(90万B/D、330万B/D)で共に石油の純輸入国であった。

 

 これに対してロシアは生産量1,040万B/D、消費量290万B/Dで差引750万B/Dの輸出余力があった。サウジアラビアの生産量と消費量はほぼロシアに並び、差引670万B/Dの輸出余力を有していた。イランはこれら2国よりは低いものの生産量が消費量を270万B/D上回り、ブラジルは生産と消費がほぼバランスしていた。

 

 その後、中国とインドは消費が生産を大きく上回り、2021年には生産と消費のギャップは中国が▲1,150万B/D(生産400万B/D、消費1,540万B/D)、インドが▲410万B/D(同70万B/D、490万B/D)に拡大している。これに対して米国は生産が消費の伸びを上回り、2021年には▲210万B/Dに縮小、10年前より870万B/D改善されている。

 

 ロシアとサウジアラビアの輸出余力は2011年以降も大きな変化は無く、2021年はロシアが750万B/D、サウジアラビアは740万B/Dである。イランも引き続き生産量が消費量を上回っているが、そのギャップは小さくなる傾向にあり、2021年の輸出余力は190万B/Dと、2010年に比べ80万B/D減少している。ブラジルは2010年代の消費の増加を深海油田の開発等による生産量の増強で補い需給バランスが平衡状態を維持している。

 

(10年間で大きく明暗を分けた米中の石油自給率!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02a.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2010年以降の推移を見ると、まず2010年の自給率は中国と米国がそれぞれ44%と41%で中国が若干高く、インドのそれは27%にとどまっていた。即ち米国と中国は6割弱を、インドは7割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2021年には中国は26%、インドは15%に下がり、両国とも石油の輸入大国になっている。

 

これに対して米国は過去10年間で急激に自給率が改善し、2021年には89%に達し、米国は石油の完全自給まであと一歩に迫っている。かつて米国は不足する石油を主として不安定な中東産油国に依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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