石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

コロナ禍で大幅な減収・減益:五大国際石油企業2020年4-6月期決算速報 (12完)

2020-08-28 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポートはマイ・ライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0512OilMajor2020-2ndQtr.pdf

 

(付) 国際石油企業3社のキャッシュ・フロー(続き)

3-2 投資キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-73.pdf参照)
 2019年1-3月の投資C/FはBPが50億ドル、Shell46億ドル、Totalは31億ドルであった。BPは同年4-6月の55億ドルをピークに毎期減少し、今年4-6月期は18億ドルに下がっている。Shellの投資C/Fは第3四半期に21億ドルまで減少した後、第4四半期には49億ドルに回復したが、続く2020年第1及び第2四半期は連続して減少し今期は23億ドルであった。Totalの投資C/Fは昨年10-12月期に68億ドルに達したが、その後は連続して減少している。3社に共通しているのは昨年10-12月期以降、投資を抑制していることである。

3-3 財務キャッシュ・フロー
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-74.pdf参照)
 3社の財務C/Fは昨年1-3月期から今年1-3月期までほぼ横ばいであったが、今期(4-6月期)にそれまでのマイナスから一挙大幅なプラスに転じたことが大きな特徴である。即ち各社とも今期に多額の新規借入を行ったことである。

 Shellの財務C/Fは昨年1-3月期は▲93億ドルであり、その後多少の増減はあったものの、今年1-3月期は▲78億ドルであった。しかし今季は一挙に57億ドルのプラスに転じ前期との差は135億ドルに達している。BPもShellと同様昨年1―3月期から今年1-3月期までは▲20~40億ドルの水準であったが、今期は3社中最も多いプラス147億ドルであり前期との差は170億ドル弱である。Totalも今年1-3月期までBPとほぼ同じ軌跡をたどり、今期はShellを若干上回る75億ドルのプラスであった。

3-3 キャッシュ・フロー期末残高の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-75.pdf参照)
 各四半期の営業C/F、投資C/F及び財務C/Fを差引した期末残高の推移を見ると、昨年3月末の残高が最も多かったのはTotalの254億ドルで、Shell及びBPはそれぞれ215億ドル、213億ドルで並んでいた。その後の各社の期末残高はいずれも大きな変動はなく、今年の3月末残高はShell218億ドル、Total216億ドル、BP181億ドルであった。しかし今年6月末は各社とも大幅に増加しており、BPの残高は2倍近い347億ドルである。Total、Shellの残高もそれぞれ297億ドル、279億ドルと前期末に比べ大きく膨らんでいる。各社ともコロナウィルにより業績が急落しており、手許現金の不足に備えたものとみられる。

以上

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ天然ガス篇 (20完)

2020-08-28 | BP統計

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0511BpGas2020.pdf

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

7.天然ガスの価格(続き)
(再び拡大した日本と米国・EUの価格差!)
(2)日本のLNG価格を1とした場合のヨーロッパ、米国の天然ガス価格
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-5-G02.pdf 参照)
 ここで取り上げた日本とEUと米国の天然ガスの価格は日本がCIF価格であり、米国はパイプラインの受け渡しポイントHenry Hubにおける価格である。従って米国と日本を単純比較することはできないが、その点を含んだ上で日本のLNG価格を1とした場合の2000年から2019年までのヨーロッパ及び米国との格差を比較すると、2000年のヨーロッパ価格は日本の0.57倍、米国は0.89倍であった。つまりヨーロッパ価格は日本より4割安く米国価格は1割程度安かったのである。

その後2002年までは3者の価格差に大きな変化はなかったが、2003年には米国Henry Hub価格が上昇、日本との相対価格は1.18倍に逆転した。原油価格が安定したため原油にリンクした日本のLNG価格が低く抑えられたのである。その後も米国の価格は上昇、2005年には米国価格は日本の1.45倍まで格差が広がった。つまり2003年から2005年までの3年間は米国の天然ガス価格の方が日本のLNG価格より高かったのである。一方この間にヨーロッパの相対価格も徐々に上昇し2005年には日本価格を上回り1.2倍になり、翌年も1.1倍となった。即ち2005年は日本価格が米国価格及びヨーロッパ価格のいずれよりも安かったのである。

しかし2007年には再び日本価格がヨーロッパ及び米国価格を上回るようになり、特に2009年以降は原油価格の急騰に伴い日本の価格が急上昇したのに対しヨーロッパ価格はさほど大きな変動が見られず、米国はシェールガスの開発が本格化し日本とは逆に価格が急速に下落した。その結果、3地域の価格格差は拡大し、2012年には日本の価格は米国の6倍強になっている。2019年は原油価格が下落しているが、日本のLNG価格は原油後追い型であり2016~18年の上昇基調を受けて下げ幅は小幅にとどまった。一方ヨーロッパの天然ガス価格は大きく下がり、米国でも2割程度下落したため、日本、EU、米国の価格差は大きく開き、日本価格=1に対し、EU価格は0.45、米国価格は0.25となっている。即ちEU価格は日本の2分の1、米国価格は日本の4分の1の水準である。

 今後この格差がどうなるか予断を許さないが、豪州、東アフリカ等世界各地で天然ガスの開発が進み、また米国のLNG輸出が開始されるとLNGのスポット価格は下がる可能性がある。またパプアニューギニア、豪州、モザンビーク、米国シェールガスなどのLNGプロジェクトに日本企業が資本参加することで安定的な価格と量の確保が可能となる。

最近ではLNG市場が拡大し、スポット取引が増加している。また日本のLNG長期契約が近く更改時期を迎える。日本のユーザーはこれまでの原油価格にリンクした硬直的な値決め方式から転売条項を含めたより柔軟な契約を目指している。天然ガス貿易の重点がパイプライン方式からLNG方式に移りつつあることも考慮すると今後天然ガスが石油と同じ市況商品の性格を強めるものと考えられる。

(天然ガス篇完)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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