石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(1)

2009-07-29 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)本シリーズはHP「中東と石油」で一括全文をご覧いただけます。

はじめに

 BPが6月に公表したエネルギー統計資料「BP Statistical Review of World Energy 2009」については、既に「石油篇」、「天然ガス篇」及び「石油+天然ガス篇」としてその概要をお知らせしましたが(*1)、7月にOPEC(石油輸出国機構)から「Annual Statistical Bulletin」(ASB)がインターネットで公開されました(http://www.opec.org/library/Annual%20Statistical%20Bulletin/ASB2008.htm)。

   ASBはOPEC加盟国(*2)の経済エネルギー統計を中心にとりまとめたものである。マクロ的な数値については両者の統計に大きな差は無いが、国別に比較するといくつかの差異が見られる。これは民間企業のBPと石油生産国のOPECという両者の性格の違いによるものと考えられる。

  OPECとBPの石油統計を比べて両者の違いを示すことが本稿の目的であるが、同時にOPEC加盟国の将来の石油輸出可能量を検証することがもう一つの目的である。これまではOPEC総会決議としての生産枠の変更、即ち生産量の増減に焦点が当てられているが、現実にはOPEC加盟国自身の石油消費量が増えており、その結果各国の生産量から消費量を差し引いた輸出可能量が減少しつつあることが懸念される。OPEC即ち「石油輸出国機構」とは生産量で世界の石油需給に影響力を及ぼしているわけではなく、その影響力は輸出可能量にあるはずだからである。

  なお本稿はOPECとBPの統計の誤差の理由を探るものではない。それは筆者の力の及ばないことであり、筆者が本稿で強調したいのは一つの統計だけを鵜呑みにすることの危険性である。

  統計数値は得てして客観的で絶対的なものと考えがちである。しかしエネルギーという戦略的な商品の場合、公表される統計数値にはしばしば編纂者(BPの場合は同社自身、OPECの場合はデータを提供する各加盟国)の意図が介在していることは否定できないであろう。二つの統計を比較することにより、編纂者の意図を読者自身であぶり出していただくことが本稿の本当の目的である。

(*1)BP資料のレポートはHP「中東と石油」の下記URLでご覧いただけます。

・BPエネルギー統計2009年版:石油+天然ガス篇

・BPエネルギー統計2009年版天然ガス篇

・BPエネルギー統計2009年版石油篇

(*2)OPEC加盟国について

 2007年にアンゴラとエクアドルがOPECに加盟した結果(エクアドルは再加盟)、2008年のOPEC加盟国の数は、それまでの11カ国(アルジェリア、インドネシア、イラン、イラク、クウェイト、リビア、ナイジェリア、カタール、サウジアラビア、UAEおよびベネズエラ)に加えて13カ国となった。従って以下に言及するASB(OPEC)およびBPの埋蔵量、生産量等の数値はこれら13カ国の合計値である。また過去に遡るデータについてもこの13カ国の合計値であり、必ずしもその時々のOPEC加盟国の合計値ではない。 なおインドネシアは昨年末でOPECを一時脱退したため、現在のOPEC加盟国数は12カ国である。

1. 石油埋蔵量の比較

(表「石油埋蔵量」(http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-93OilReserveOPECvsBP.htm)参照)

  OPEC統計による全世界の石油埋蔵量は1兆2,951億バレルであり、これに対してBP統計では1兆2,580億バレルとされており、両者の差は2.9%(371億バレル)とさほど大きくない。しかしこれをOPECと非OPECそれぞれで見ると、OPEC統計ではOPEC13カ国の埋蔵量合計は1兆274億バレルに対し、BP統計では9,558億バレルであり、OPEC統計の方が716億バレル多い。

  一方、非OPECの埋蔵量合計はOPEC統計では2,667億バレルに対し、BP統計は3,022億バレルであり、逆にBP統計のほうが非OPEC諸国の埋蔵量は多い。これを比率で見ると、OPEC統計では全世界の埋蔵量に占める割合は、OPEC79.3%、非OPEC20.7%であるが、BP統計ではOPEC76.0%、非OPEC24%である。つまりOPECは加盟国の埋蔵量シェアが全世界の5分の4を占めているとするのに対し、BP統計ではOPECのシェアはそれより低いと見ていることになる。

  上図はOPEC、BPの両統計について1980年以降のOPEC埋蔵量のシェアをプロットしたものであるが、いずれの年もOPEC統計の方がシェアは1~3ポイント高い。そして1986年から2005年までは両統計のOPECシェアには殆ど差が無かったが、2006年以降、BP統計のOPECシェアが変化していないのに対して、OPEC統計では世界の埋蔵量に占めるOPECのシェアが年々上昇している。そして2008年のシェア79.3%は、統計値としては過去最大となっている。

  これらのことはOPECが埋蔵量に関して自分たちの重要性を主張しているという見方もできるであろう。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月25日)

2009-07-25 | 今日のニュース

・北海原油、70ドル目前に。

 

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(特別寄稿)中国の新しい油田「ジ東・南堡油田」(馬波氏)

2009-07-25 | 海外・国内石油企業の業績

 知人の馬波(マハ)氏から中国の新油田に関するレポートをいただきました。興味深い内容ですので紹介させていただきます。なおレポートはご本人が日本語で書かれたものをそのまま掲載してありますが、ブログの制約のため一部図表は割愛しましたのでご了承ください。

(馬波氏略歴)中国ムスリムの家庭に生まれ、1998年留学生として来日。2005年上智大学理工学部化学科を卒業後、日本の化学会社に勤務中。日本国籍取得済。

中国の新しい油田「ジ東・南堡油田」について

(前書き)

 ジ東・南堡油田は大慶油田に次ぐ規模である

1. 渤海湾の絶好のロケーションに位置している

2. 石油鉱床構造は効率的な生産を容易にするものと思われる

3. 同社株のビジネス・リスクは軽減される

4. ペトロチャイナの今後の投資計画は「内向き」になる

背景

 5月3日にペトロチャイナ(中国石油天然気:0857、ADRティッカーはPTR)が新油田を発見したと発表しました。同社のニュース・リリースの内容から判断するとこの新油田の規模はかなり大きいです。この油田の発見はペトロチャイナの将来の生産計画(プロダクション・プロフィール)やコスト構造、さらに今後の投資計画などに大きな影響を与えそうです。従って今日はこの新油田について考えてみたいと思います。

 会社側の発表

 ペトロチャイナの発表によると今回発見された南堡(Jidong/Nanpu)油田は唐山に近い渤海湾の沿岸地域に位置し(地図参照)、油田は内陸、浅瀬、沖合にまたがっています。

埋蔵量に関しては:確認埋蔵量 4.05億トン、推定埋蔵量 2.98億トン、予想埋蔵量 2.02億トン、天然ガス確認埋蔵量 1.12億トン(換算値)、合計10.2億トン(注、一部四捨五入のため合計数字は合わない)と発表されています。

石油鉱床は4箇所の油層を含み同油田は高品質で採取効率の高い油田になるだろうと主張しています。油層の平均の厚みは80~100メートル、油層の深度は1.8~2.8キロメートルで鉱床構造は採掘に適しているとのことです。

ペトロチャイナの油田ポートフォリオの中での新油田の位置づけ

 さて、それではこの新油田はペトロチャイナにとってどれだけ重要な発見なのでしょうか?今回発見されたジ東・南堡油田の確認埋蔵量は上記のとおり4.05億トンです。ジ東・南堡油田は「高品質である」という記述があることからAPIグラビティー(原油の等級のことを指します。ペトロチャイナの全社平均は34です)が38だと仮定するとトン→バレルの換算率は7.55ですので: 405 (million ton) ×7.55 =3,057.75 (million barrel) となります。つまり30.58億バレルということになるわけです。

 ペトロチャイナ全体の確認埋蔵量(Proved, developed & undeveloped reserve、但し原油のみ)は2005年の時点で115.36億バレルでした。新油田の確認埋蔵量を合算した新しい総確認埋蔵量をベースに計算するとジ東・南堡油田は全体の20.95%を占めることになります。これは大慶油田(ペトロチャイナの新総確認埋蔵量に占めるシェア=30.13%)に次いで2番目に大きな油田ということになります。(なお、なるべく現実的、且つコンサーバティブな試算をするために推定埋蔵量、予想埋蔵量、天然ガス確認埋蔵量は計算から除外しました。ウォール・ストリートのアナリストが同様の計算をする場合でも慣例から考えて、多分、それらの数字は全て無視すると思います。)

  次にジ東・南堡油田の確認埋蔵量(30.58億バレル)を加えて世界の主要石油会社の石油ならびに天然ガスの総確認埋蔵量を比較してみると下のグラフのようにペトロチャイナ(226.13億BOE)がエクソン(220億BOE)、ルクオイル(201億BOE)を抜いて世界第1位となります。(但し天然ガス主体の企業であるガスプロムは石油会社ではないという判断から比較の対象から除いてあります。)

ペトロチャイナのストーリーがどう変わるか?

 次に今回の発見でペトロチャイナ株の銘柄としてのストーリーがどう変わるかについて考えてみたいと思います。ペトロチャイナ株は今回の新油田発見のニュースが出るまでじり安を辿る展開でした。これは主力の大慶油田の生産が徐々に落ち込み始めている事が原因であることは「第七十九回 中国の石油業界 (2007年3月22日)」のレポートで紹介しました。ペトロチャイナは現在、原油生産の約4割を大慶油田に依存しているのですが含水量(water cut)が89.78%と極めて高く、生産量が今後つるべ落としに減り始めることが懸念されています。直近の決算でコストがオーバーランした理由のひとつは汲み出しても汲み出しても水ばかり出るので生産コストが嵩んでしまったことによります。従って「早く代わりになる油田を発見しないと大変なことになる」と投資家の不安は高まっていました。その点、今回発見されたジ東・南堡油田はただ単に規模が大きいだけでなく操業条件や品質の面でも期待が持てます。

  ジ東・南堡油田が本格的に生産に入るのは未だ数年先のことだと思いますので当面はペトロチャイナの株主は同社の不安定なコスト構造を我慢する必要があるでしょう。しかし会社側の「採取効率が高い」という発表を額面通り受け止めれば、今後同油田の全社生産量に占める比率が高まるとともにペトロチャイナの収益は安定度を増すと考えられます。つまりジ東・南堡油田の発見は単にペトロチャイナの埋蔵量が伸びたということだけではなく、同社のビジネス・リスクを軽減し、収益力を引き上げる可能性があるということです。 さらに国内でこのように有利な巨大油田が発見されたことで、今後の油田開発費用の割り振りとしては政治的リスクの高いアフリカなどを徐々に後回しにし、比較的リスクの低いジ東・南堡油田を本格的に立ち上げることに向けられると予想されます。

 また、別の記事によりますと:

  2008年4月17日、17日付香港・経済通によると、国土資源部はこのほど、07年に中国で新たに確認された資源の埋蔵量は石油が12億1100万トン、天然ガスが6974億立方メートル、原炭が406億2500万トンに上ったことを明らかにした。

 同部がまとめた「07年国土資源公報」によると、07年は5月に渤海湾で発見した冀東南堡油田など埋蔵量億トンクラスの油田が3カ所、300億立方メートルクラスのガス田が5カ所それぞれ見つかった。新たに発見した大・中規模の鉱区の合計は208カ所だった。 07年に投じた地質探査費用は前年比25.2%増の620億900万元。うち政府からの財政支出は同47.2%増の55億6300万元だった。(翻訳・編集/KS)

モンゴルは石油資源の宝庫!埋蔵量1億トンの新油田発見―内モンゴル自治区

  2009年2月、内モンゴル自治区四子王旗の草原で新たな油田が発見された。2年間の調査により埋蔵量は約1億トン、採掘可能量は3500~4000万トンに達すると見られる。2月28日、新華社が伝えた。

 四子王旗の草原は有人宇宙船・神舟7号の着陸地として知られている。この地で新たな大型油田が発見された。その規模は華北の二連油田に匹敵するもようだ。内モンゴル自治区の経済及び中国の資源安全保障に大きな役割を果たすことが期待されている。発表では2009年上半期に5つの油井を設け、石油及び天然ガスが集中している地点を探索するなど調査を進めることになる。目標では2010年までに日産500トン、年産15万トンの油田開発を進めることになっている。

 内モンゴル自治区は「21世紀中国の鉱物資源戦略基地」とも呼ばれており、これまでに発見された石油埋蔵量は7億トン、潜在的には40億トンが埋蔵されていると見られる。

(以上) 

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今週の各社プレスリリースから(7/19-7/25)

2009-07-25 | 今週のエネルギー関連新聞発表
7/22 全国石油協会     石油業界 今月の動きのページに、6月分を追加いたしました。 http://www.sekiyu.or.jp/topics/index.html
7/24 出光興産     ノルウェー領北海 PL318鉱区で天然ガスの埋蔵量を確認 http://www.idemitsu.co.jp/company/information/news/2009/090724.html
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月22日)

2009-07-22 | 今日のニュース

・原油価格65ドルに

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月18日)

2009-07-18 | 今日のニュース

・原油価格63ドルに急騰

 

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今週の各社プレスリリースから(7/12-7/18)

2009-07-18 | 今週のエネルギー関連新聞発表
7/14 三菱商事    世界最大の総合新エネルギー事業会社との戦略的提携について http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2009/html/0000008111.html
7/16 ExxonMobil     ExxonMobil Commences Drilling Libya's First Deepwater Well http://www.businesswire.com/portal/site/exxonmobil/index.jsp?ndmViewId=news_view&ndmConfigId=1001106&newsId=20090716005556&newsLang=en
7/17 全国石油協会     石油製品と品質管理のページをアップいたしました。 http://www.sekiyu.or.jp/whats/index.html
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BPエネルギー統計レポート2009年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇(3)

2009-07-16 | その他

HP「中東と石油」に(1)~(3)が一括掲載されています。

BPの「BP Statistical Report of World Energy 2009」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。

石油+天然ガス篇(3):世界の石油と天然ガスの消費量

1.2008年の石油と天然ガスの地域別合計国別消費量

   2008年の世界の石油消費量は日量8,446万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの消費量は年間3兆187億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの消費量を石油に換算すると5,202万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの消費量は1億3,648万B/Dとなる。両者の比率は石油62%、天然ガス38%でほぼ3:2の割合である。

  消費量を地域別に見ると(上図参照、拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-92Oil+GasConsumptionB.gif)、欧州・ユーラシアが最も多く石油換算で3,987万B/Dであり、これに次ぐのが北米の3,796万B/Dである。但し両地域を比較すると、欧州・ユーラシアは石油の消費量が2,016万B/Dに対して天然ガスの消費量は1,971万B/D(石油換算)であり、石油と天然ガスがほぼ同じであるが、北米は石油2,375万B/D、天然ガス1,421万B/D(石油換算)と石油の消費量が天然ガスの1.7倍に達している。

   欧州・ユーラシア、北米に続いて多いのはアジア・大洋州である。同地域の消費量は石油が2,534万B/D、天然ガスが836万B/D(石油換算)の合計3,370万B/Dであり、天然ガスは石油の3分の1に満たない。これら3地域の世界全体に占める割合は、欧州・ユーラシア29.2%、北米27.8%、アジア・大洋州24.7%であり、3地域を合わせると世界全体の81.7%に達する。残る3地域(中南米、中東、アフリカ)を併せても18.3%に過ぎず、石油及び天然ガスの消費が先進国及びアジアの新興工業地帯に集中していることがわかる。

2.国別消費量(上位20カ国)

   生産量を国別に見ると(詳細は表「石油と天然ガスの国別消費量上位20カ国(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-1-92Oil+GasConsumptionByCountries2008.htm参照)、世界で石油と天然ガスの合計消費量が最も多いのは米国である。同国の消費量は石油換算で3,074万B/D、実に世界の4分の1弱の石油と天然ガスを消費しているのである。2位のロシアですらその消費量は米国の3分の1以下であることに比べると、米国が如何にエネルギーを浪費しているかが解る。

   米国に次いで消費量が多いのはロシアの1,004万B/D(石油換算)である。同国は石油の消費量は世界5位であるが、天然ガスを石油の2.6倍消費している。第3位、第4位はそれぞれ中国(939万B/D)、日本(646万B/D)である。両国を比較すると、石油の消費量は中国が日本を上回っているのに対して天然ガスの消費量は日本の方が多い。

   5位のカナダ(石油換算402万B/D)以下はドイツ(392万B/D)、イラン(376万B/D)、インド(359万B/D)、サウジアラビア(357万B/D)、英国(332万B/D)と続いている。

3.1965年~2008年の消費量の推移

 1965年から2008年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると(詳細は図「石油+天然ガス消費量(1965-2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-95Oil+GasConsumption1.gif参照)、1965年(第一次オイルショック前)の石油と天然ガスの合計消費量は42百万B/D(石油換算、以下同じ)であったが、10年後の1975年には1.8倍の75百万B/Dに急増している。第二次オイルショック後の1980年代前半は消費が一時停滞したが、1985年(88百万B/D)以降は再び消費は一貫して増加しており、1990年には1億B/Dの大台を突破した(内訳:石油67百万B/D、天然ガス34百万B/D)。

   そして2000年には1.18億B/D(内訳:石油76百万B/D、天然ガス42百万B/D)、2008年には上記のとおり1.36億B/D(内訳:石油84百万B/D、天然ガス52百万B/D)に達している。2008年の消費量は1965年に比べて3.2倍であるが、石油と天然ガスそれぞれについては石油の伸び率が2.7倍に対し、天然ガスは4.6倍である。過去40年強の間に天然ガスの消費が石油を大きく上回っていることがわかる。

(石油+天然ガス篇第3回完)

(これまでの内容)

石油+天然ガス篇(2):世界の石油と天然ガスの生産量

石油+天然ガス篇(1):世界の石油と天然ガスの埋蔵量

(*)今回でBP統計解説シリーズは完結しました。各シリーズはHP「中東と石油」で一括してご覧いただけます。

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027

東京都府中市本町2-31-13-601

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BPエネルギー統計レポート2009年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇(2)

2009-07-15 | その他

HP「中東と石油」に(1)~(3)が一括掲載されています。

BPの「BP Statistical Report of World Energy 2009」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。

石油+天然ガス篇(2):世界の石油と天然ガスの生産量

1. 2008年の石油と天然ガスの地域別合計生産量

  2008年の世界の石油生産量は日量8,182万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの生産量は年間3兆656億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの生産量を石油に換算すると5,283万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの生産量は1億3,465万B/Dとなる。両者の比率は石油61%、天然ガス39%でほぼ3:2の割合である。

  生産量を地域別に見ると(上図参照、拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-91Oil+GasProductionBy.gif)、欧州・ユーラシア地域が3,633万B/Dと最も多く、中東がこれに次ぐ3,277万B/Dである。但し両地域を比較すると、欧州・ユーラシアは石油の生産量が1,759万B/Dに対して天然ガスの生産量は1兆873億㎥(石油換算:1,874万B/D)であり、天然ガスが石油を上回っている。一方、中東は石油2,620万B/D、天然ガス3,811億㎥(石油換算:657万B/D)と、石油の生産量が圧倒的に多い。

  欧州・ユーラシア、中東に続いて生産量の多いのは北米である。北米は石油と天然ガスの比率がほぼ同じであり(石油生産量1,313万B/D、石油換算の天然ガス生産量1,400万B/D)、石油換算で合計2,713万B/Dに達している。

  残るアジア・大洋州、アフリカ及び中南米の3地域の生産量はいずれも上記3地域の半分以下である。このうちアジア・大洋州は石油と天然ガスの比率はほぼおなじであるが、アフリカと中南米は中東と同じく石油生産が大半を占めており、天然ガスの割合が小さい。前回の埋蔵量で触れたとおり世界の石油と天然ガスの埋蔵量はほぼ等しく、石油埋蔵量は1兆2,580億バレル、天然ガスの埋蔵量は石油換算で1兆1,638億バレルである。このことから欧州・ユーラシア、北米及びアジア・大洋州では埋蔵量に見合った石油と天然ガスが生産されているのに対し、その他の3地域(中東、アフリカ及び中南米)では今後さらに天然ガスの生産に拍車がかかることが考えられる。

2. 国別生産量(上位20カ国)

 生産量を国別に見ると(詳細は表「石油・天然ガスの合計生産量上位20カ国(2008)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-1-91Oil+GasProductionByCountries2008.htm参照)、世界で石油と天然ガスの合計生産量が最も多い国はロシアである。石油換算では2,025万B/Dで、同国だけで世界全体の15%を占めている。ロシアの場合、石油生産量はサウジアラビアに次いで世界第2位であるが、天然ガスの生産量がサウジアラビアの約8倍あるため、石油と天然ガスの合計生産量では世界一となっている。

 ロシアに次ぐ世界第二位の生産量を誇るのは米国であり、同国は石油生産量が674万B/D(世界第3位)、天然ガス生産量が1,003万B/D(石油換算、世界2位)であり、石油よりも天然ガスの生産量が多い。なお埋蔵量と比較すると(前回参照)、ロシアは埋蔵量ベースでも世界一であるが、米国は9位である。このことからロシアは当面の生産余力がある一方、米国の場合は国内の石油・天然ガス資源が急速に枯渇に向かっていると言えよう。

 3位はサウジアラビアの1,219万B/Dであり(石油1,085万B/D、天然ガス135万B/D:石油換算)、上位3カ国の生産量は石油換算で1千万B/Dを超えている。4位から10位までの生産国は、4位イラン(石油換算633万B/D、以下同じ)、5位カナダ(626万B/D)、6位中国(511万B/D)、7位ノルウェー(417万B/D)、8位メキシコ(410万B/D)、9位UAE(385万B/D)、10位アルジェリア(348万B/D)となっている。このうちアルジェリアは石油の生産量だけでは世界14位であるが、天然ガスが世界6位であるためベスト・テンに入っている。一方、メキシコ及びUAEは天然ガスの生産量は10位以下であるが、石油の生産量が多いため石油と天然ガスの合計生産量で上位10傑に入っている。

3.1970年~2008年の生産量の推移

 1970年から2008年までの石油と天然ガスの合計生産量の推移を追ってみると(詳細は 図「石油+天然ガス生産量(1970-2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-94Oil+GasProduction19.gif参照)、1970年(第一次オイルショック前)の石油と天然ガスの合計生産量は65百万万B/D(石油換算、以下同じ)であり、生産量はその後1980年までは5年ごとに1,100万B/Dずつ増加し、1980年の合計生産量は88百万B/D(石油:63百万B/D、天然ガス:25百万B/D)に達している。5年毎の増加の内訳はほぼ石油が700万B/D、天然ガスが400万B/Dであった。第二次オイルショック(1979年)を契機に1980年代前半は石油の生産が減退し、1985年の石油生産量は57百万B/Dにとどまった。しかし天然ガスの生産は着実に増加し1985年には28百万B/D(石油換算)に増加、その結果合計生産量は86百万B/Dとなっている。その後は石油および天然ガスともに生産は増加し、1990年には合計生産量が1億B/Dに達した。

  その後も石油と天然ガスの生産はともに一貫して増加し、2000年には1億16百万B/D(内訳:石油75百万B/D、天然ガス41百万B/D)、そして2008年には1億35百万B/D(内訳:石油82百万B/D、天然ガス53百万B/D)に達している。1970年と2008年の生産量の伸びを比較すると、合計生産量では2.1倍、石油と天然ガスのそれぞれの増加率は石油1.7倍、天然ガス3.1倍であり、天然ガスの生産が急速に伸びていることがわかる。これを比率で見ると1970年には石油と天然ガスの比率が石油74%、天然ガス26%であったものが、その後天然ガスの比率が徐々に拡大し、2008年には石油61%、天然ガス39%となっている。現在天然ガス田の開発が活発に行われている他、パイプライン及びLNGのサプライチェーンも急速に整備拡充されている。従って生産に占める天然ガスの比率は今後更に高まるものと思われる。

(石油+天然ガス篇第2回完)

(これまでの内容)

石油+天然ガス篇(1):世界の石油と天然ガスの埋蔵量

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(7月14日)

2009-07-14 | 今日のニュース

・原油、59ドルを割る。

・トルコのアンカラでNabbucoガス・パイプライン計画調印。ガスの確保が問題。

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