石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ天然ガス篇 (15)

2020-08-17 | BP統計
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0511BpGas2020.pdf


BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

(3) LNG貿易(続き)
(急成長する米国とオーストラリアのLNG輸出シェア!)
(3-2) 2010年~2019年の国別輸出量の推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G03.pdf 参照)
2010年に3,024億㎥であったLNGの輸出量は2012年から2015年までは停滞したが、2017年及び2018年は9%台の高い増加率を示した。2019年はさらに13%の増加率を示し、同年のLNG輸出総量は4,851億㎥に達した。これは2010年の1.6倍であり、この間の年平均成長率は5.5%を記録している。

国別で見ると2010年当時はカタールの輸出量は778億㎥で全世界に占める割合は26%であり、これに次いでインドネシア324億㎥(11%)、マレーシア310億㎥(10%)、オーストラリア258億㎥(9%)であった。その後カタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが 、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況となった。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し2013年の1,058億㎥、シェア32%をピークにカタールの輸出量は足踏み状態となり、その結果市場シェアは下降気味であり、2017年には30%を割り、更に2019年のシェアは2010年を下回るまでに逆戻りしている。

一方でロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でも輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。オーストラリアの2019年の輸出量は2010年の4倍弱の1,047億㎥に達し、世界シェアもカタールの22.1%に次ぐ21.6%であり、カタールの地位を脅かしつつある。

近年急速に輸出を伸ばしているのが米国である。同国は2015年まで数億㎥の輸出にとどまっていたが、シェールガスの開発により国内需要を上回る天然ガスが生産されるようになり、LNGの輸出基地建設に着手した。この結果輸出量は2016年に40億㎥、2017年は171億㎥に急増、2019年にはついに475億㎥を輸出し、カタール、オーストラリアに次ぐ世界第3位のLNG輸出大国になっている。

 インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量は減少に歯止めがかからず2010年の324億㎥をピークに減少、2019年の輸出量は10年前に比べ半減している。同国は大きな人口を抱えているため今後さらに輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性が高い。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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石油と中東のニュース(8月17日)

2020-08-17 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
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