石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

コロナ禍で大幅な減収・減益:五大国際石油企業2020年4-6月期決算速報 (4)

2020-08-12 | 海外・国内石油企業の業績
1. 五社の4-6月期業績比較 (続き)
(上流部門は対前年同期比で全社減益!)
(4)上流部門の利益
(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-56.pdf参照)
利益を上流部門(石油・天然ガスの開発生産分野)と下流部門(石油精製および製品販売分野)に分けて比較すると、まず上流部門は5社いずれもが赤字である。前期はShell1社を除く4社が黒字であり、また前年同期は5社すべてが黒字であったことと比較すると、今期の業績悪化は極めて顕著である。しかもBPの▲85億ドルを筆頭に、Shell, Chevron両社も60億ドル台の赤字である。ExxonMobilは▲17億ドルであり、もっとも赤字が少なかったのはTotalの▲2億ドルである。Shellはポストコロナを見据えて石油・天然ガス鉱区の売却など上流部門の資産圧縮による減損損失を計上しており、BPも今後数年間で石油・天然ガスを大幅に減産し、再生可能エネルギー開発に傾注することを表明している。

(3社が利益計上するも上流部門の損失カバーできず!)
(5)下流部門の利益
(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-57.pdf参照)
一方下流部門の利益が最も多かったのはBP(14億ドル)で前年同期比とほぼ同じである。これに次ぐExxonMobilは10億ドルの利益を計上している。Totalも6億ドルの利益であったが、Chevron及びShellの2社の下流部門は損失を計上、Shellの赤字は5社で最も多い▲30億ドルである。Shellは上流部門でも多額の赤字を計上している。

これまで国際石油企業は原油価格が安く上流部門の利益が出ないときは、安い原油を精製する下流部門が利益を計上、逆に原油価格が高い時は、下流(精製)部門が低収益、上流部門は高収益となり、相互に損益を補い合う構図であった。しかしコロナ禍の今期は原油価格が低迷し消費国の需要も落ち込んだため、上流部門が大幅な赤字となり、さらに下流部門も製品価格が低迷し操業率も低下したため利幅の薄い低収益(または赤字)を強いられた。

なお上記(2)総合損益は各社によって石油化学品部門あるいはその他の損益を含むため上・下流部門の利益の合計額とは一致しないケースがある。

(4社が30億ドル前後、前年同期比では最高▲37%減!)
(6)設備投資
(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-54.pdf 参照)
2020年4-6月期の設備投資額が最も多いのはExxonMobilの53億ドルであり、その他の4社はいずれも30億ドル前後である。全社で前年同期の水準を下回っており、Chevron▲37%、ExxonMobil▲34%、Shell▲33%と各社とも大きく減少している。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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