石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ天然ガス篇 (10)

2020-08-06 | BP統計
BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

3.世界の天然ガス消費量(続き)
(輸出余力が増すロシアとオーストラリア!)
(4)各国の生産量と消費量のギャップ
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G04.pdf 参照)
 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(1)および3-(1)参照)。カナダは生産国としては世界6位、消費国としては世界5位であり、また中国も生産量世界5位、消費量世界3位であり、インドは生産量は世界27位と低いが、消費量は世界13位である。また近年天然ガス輸出国として頭角を現しているオーストラリアは生産量世界7位、消費量は世界16位である。ここではこれら5カ国について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)の推移を見る。

6カ国のうちで2019年の生産量が消費量を上回っているのはロシア、オーストラリア、米国およびカナダの4カ国であり、中国及びインドは消費量が生産量を上回っている。つまり4カ国は天然ガスの輸出余力があり、2カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。

6カ国の過去10年間(2010~2019年)の需給ギャップを見ると、2010年のロシアは生産量5,984億㎥に対し消費量は4,239億㎥であり、差し引き1,745億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの生産超過量はその後拡大し2019年の需給ギャップは過去10年で最大の2,347億㎥に達している。新たな国内ガス田の開発及びLNG設備の新設により輸出余力が向上していることを示している。

カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っており2010年の生産量は1,496億㎥、消費量は883億㎥で差し引き613億㎥の余剰生産であったが、その後余剰生産量はいったん縮小した後2017年には過去10年で最大の663億㎥に達している。しかし2018年及び19年は再びギャップが縮小、2019年は生産量1,731億㎥に対し消費量は1,203億㎥であり余剰生産量は528億㎥である。同国の場合、消費量は毎年増加しているが、近年生産量が下落しているのは、同国の唯一の輸出相手国である米国でシェールガスの開発が進み、カナダからのガス輸出を圧迫しているためと考えられる。

2010年に米国は730億㎥の消費超過であった(生産5,752億㎥、消費6,482億㎥)。2011年以降はギャップが急速に小さくなり、2017年にはついに生産が消費を上回る逆転現象が起こった。2018年、19年はこの傾向がさらに顕著となり、2019年は生産9,209億㎥、消費8,466億㎥、差引742億㎥の生産超過となり、天然ガスの純輸出国に変貌している。これは言うまでもなくシェールガスの開発によるものである。

中国の場合、2010年は生産量965億㎥、消費量1,089億㎥で需給はほぼバランスしていた。しかしその後消費量の増加が顕著で需給ギャップが年々大きくなっている。2019年は生産量1,776億㎥に対し消費量は3,073億㎥に達し、正味1,298億㎥が輸入されたことになる。この傾向が今後も続くことは間違いないであろう。

オーストラリアは新規ガス田の開発により2019年の生産量は2010年の2.8倍に増加している。これに対して同じ期間の消費の伸びは1.6倍であり余剰生産量は202億㎥から997億㎥に拡大、LNGとして輸出に回されている。

インドの場合2010年は生産量474億㎥に対し消費量は590億㎥で差し引き115億㎥の不足であった。この後不足量は徐々に拡大し、2019年の需給不足量は328億㎥(生産269億㎥、消費597億㎥)に達している。インドは中国ほどではないにしろ、今後も需給ギャップは拡大し続けるものと予測される。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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