報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「GW最後の行楽」

2022-06-22 13:44:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日10:35.天候:曇 栃木県那須郡那須町 那須ハイランドパーク]

 那須塩原駅からバスで1時間15分。
 一般の路線バス車両でこの所要時間だから……。

 愛原:「腰が痛ェ……」

 1番後ろの広い席に座っていたとしても、さすがに腰が疲れた。
 尚、このバスは板室温泉経由であり、ホテル天長園の前も通るのだが……。

 高橋:「先生、さっきのホテル見ました?でっけェ看板で、『歓迎!愛原先生御一行様』って書いてありましたよ?」
 愛原:「いや、見てなかった。おい、ウソだろ?」
 凛:「いえ。『最も危険な12人の巫女』様の1人が来られるという話をしたら、何だか歓迎ムードになりまして……」
 リサ:「わたし、神!?ゴッド!?」
 凛:「いえ、巫女です。白い仮面は持って来ましたか?」
 リサ:「いつも持ってる」

 尚、毎年、東京中央学園の七不思議は更新されているという。
 バスを降りると、私達は早速パークに向かった。

 愛原:「さて……」

 私が手に取るのはデジカメ。

 愛原:「俺は撮影係だ。あとは適当に楽しんでくれ」
 リサ:「えー、先生も楽しもうよ」
 愛原:「リサ達の行動をレポして、デイライトさんに提出しないといけないんだ」
 リサ:「そうなの?」
 愛原:「俺にとっては、これも仕事さ。というわけで、どのアトラクションにも乗れるパスポートを買ってあげるから、適当に楽しんでくれ」

 私はデジカメの電源をONにした。

[同日12:00.天候:曇 那須ハイランドパーク・スマイルサニーレストラン]

 えー、まずBOW達をホラーアトラクションに連れて行ってはいけないことを知った。
 半分は人間であるはずの上野姉妹は、キャーキャー言っていたが、肝心のホラーを提供する側が、リサ達を見てそれ以上にビックリしていたことは【お察しください】。

 リサ:「お客さんがBOWになって、獲物を追いかけ回すアトラクションとかはどう?」
 愛原:「そんなものあるか!」

 東京中央学園高等部の文化祭において、リサが『ホラーハウス』でオリジナル版リサ・トレヴァーの役をやった際、会場が阿鼻叫喚の地獄と化した。

 高橋:「センセ、やっぱりこういう所は絶叫系っスよ。絶叫系なら盛り上がったでしょ?」
 愛原:「これがか!?」

 私が写真を撮り出すと、リサが絶叫を上げながら背中から触手を出したものだから、後ろの客が別の理由で絶叫を上げているシーンが写し出されていた。

 高橋:「後ろでこんなことが……!?」

 私と高橋が隣り合って座り、その後ろにリサ達が座っていたのだが……。
 上野姉妹も微妙に変化しているように見えるが、リサみたいに触手を出すわけじゃないからな……。

 愛原:「そうだよ」
 リサ:「とにかく、お昼にしよ!」

 リサはビーフカレープレートを食べ始めた。

 愛原:「全く……」

 私は醤油ラーメン。
 たまに昼間、ラーメンを食べたくなる。

 愛原:「午後は気を取り直して、あまりリサ達が興奮して変化しない所に行こう」
 リサ:「えー、それじゃつまんないよ」
 高橋:「オマエらが変化するから、先生に気を使わせてんだろうが」
 リサ:「ゴメンナサイ」

[同日15:30.天候:曇 同パーク・ウーピーズキングダム]

 午後は大観覧車やミニトレインなど、絶叫系やホラー系を避けたアトラクションに終始した。
 最後はウーピーズキングダムと言う、土産やグッズを取り揃えたショップに立ち寄った。

 愛原:「御用邸チーズケーキ、斉藤社長へのお土産に買って行ったっけなぁ……」
 高橋:「善場の姉ちゃんに買って行ってあげたらどうっスか?」
 愛原:「『国家公務員として、民間からそのような物は受け取れません。贈収賄罪に問われかねませんので』と言って断られた」
 高橋:「相変わらず頭の固ェ姉ちゃんだ」
 凛:「それなら、一緒に食べるのはどうですか?」
 愛原:「なるほど。それはいいかもしれない」

 たまに、善場主任の方から事務所に来ることがある。
 その時にお出しすればいいのかも。

 リサ:「もしムリなら、『自分への御褒美』で先生が食べる」
 愛原:「いいのかな……。そういうリサは、友達に何か買って行かないのか?」
 リサ:「もちろん買う。これが鬼斬り先輩用」
 愛原:「蓮華さんに買って行ってあげるのか」
 リサ:「うん。『これで、わたしを斬るのはカンベンしてください』って」
 高橋:「女桃太郎には弱ェな!」

 いや、一応ケンカはリサの方が強いのだが。
 だが、本当に鬼の首が斬れる刀というのは、リサにとってはロケットランチャーより怖い武器らしい。

 リサ:「リンも買って行った方がいいかもしれない」
 凛:「そ、そうですか。先輩がそう仰るのなら……」
 理子:「私も買って行った方がいいですか?」
 リサ:「リコは中等部だから、多分大丈夫。校舎も違うし」
 理子:「そうですか」

 まあ、BSAAやブルーアンブレラ以外にも、抑止力があるのはいいことだ。

[同日16:00.天候:曇 同パーク『那須ハイランドパーク』バス停→関東自動車バス車内]

 1日2本しか無いバスの終便に乗り込む。

 愛原:「すいません。ホテル天長園の前で降ろしてもらえますか?」
 運転手:「ホテル天長園の前ですね。分かりました」

 ホテルのある辺りはフリー乗降区間なので、バス停ではないホテルの前でも運転手に言えば降ろしてもらえる。
 途中で降りるので、前の方の席に座った。

〔「板室温泉、黒磯駅西口経由、那須塩原駅西口行き、発車致します」〕

 バスは、だいたい席が埋まる程度の乗客を乗せて発車した。

 愛原:「いやあ……疲れた……」
 高橋:「先生、あとはホテルでゆっくり休んでください」
 愛原:「そうさせてもらう」

 ぐったり疲れているのは私だけではない。
 バスには他にも家族連れが乗っているのだが、やっぱり親は疲れているようだ。
 彼らがどこまで乗って行くのかは知らぬが、多分彼らがバスを降りる頃には【お察しください】。

 凛:「今日はありがとうございました。ホテルの御案内は任せてください!」
 愛原:「ふふ……若いっていいねぇ……。よろしく頼むよ」

 今日は温泉にし、明日を遊園地にするという手もあったのだが、先に行っておいた方が後で疲れなくていいと思ったのだ。

 高橋:「先生、何か降りそうですよ?」

 空はどんよりと曇っている。
 もうだいぶ日が長くなったはずだが、真冬の日の長さかと思うくらい、薄暗くなっている。

 愛原:「ああ。遊園地で降られなくて良かったな」

 ホテルにいる分には、まあ雨が降っても良い。
 私はそう思った。
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“私立探偵 愛原学” 「那須紀行」

2022-06-22 11:03:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日07:44.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線355B列車8号車内]

〔22番線から、“やまびこ”355号、仙台行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 ホームから発車ベルの音が聞こえてくる。
 東海道新幹線では発車メロディを導入しているが、それ以外の新幹線ホームではベルである。
 発車ベルが鳴り終わると、甲高い客扱い終了合図のブザーが流れてくる。
 これは駅員が車掌に対して、『乗客の乗りが終わったので、ドアを閉めても良い』という合図である。
 英語で言えば、『All aboard』である。
 これを直訳すると、『皆さん、ご乗車ください』ということらしいが、実際にアムトラック(全米旅客鉄道公社)の車掌が『発車オーライ』的な感じで歓呼しているのを見ると、『全員乗車完了』という意味のような気がしてしょうがない。
 新幹線では駆け込み乗車が無かったか、スムーズに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“やまびこ”号、仙台行きです。次は、上野に止まります。……〕

 私を含めて、朝食の駅弁に箸を付ける。
 いつもより朝食時間が遅かったせいか、リサは一心不乱に弁当の中身をかき込んでいた。

〔「皆様、おはようございます。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。7時44分発、各駅に停車致します“やまびこ”355号、仙台行きです。東北新幹線では3月16日に起きました地震の影響で、現在暫定ダイヤでの運転となっております。……」〕

 東海道新幹線で言えば、“こだま”号のような列車である為、車内の混雑はそれほどでもない。
 多分、編成が長いからというのもあるだろう。
 元々この列車は、“やまびこ”205号であったそうだ。
 それが暫定ダイヤで、列車番号が変わっている。
 いずれにせよ、各駅停車タイプであることに変わりは無い。
 暫定ダイヤで郡山駅以北で徐行運転を行う為に、所要時間が長くなっていることを放送で言っていた。
 徐行運転を行うのはそうであったとしても、通常ダイヤよりも遅くなるのは栃木県からである。
 なので、私達が下車する那須塩原の時点で、既に影響が出ているというわけだ。
 東京駅を出発すると、私はすぐに善場主任にメールで報告。
 主任からはすぐに返信メールが来た。
 土曜日でも出勤されるのだろうか。

 愛原:「善場主任、今日も出勤なのかね。報告メール送ったら、すぐに返信が来たよ」
 高橋:「あの姉ちゃんも働き者ですね。あれも化け物ですから、案外体力はガッツリあるのかも」
 愛原:「おいおい、失礼なこと言うんじゃないよ」
 高橋:「ここだけの話っス。霧生市に行った時、その化け物ぶりを俺は直に見たんスから」
 愛原:「ああ、聞いたよ」

 人間なら致命傷とも言うべき傷を負った善場主任だったが、刺さった物を高橋に抜いてもらっただけで、傷は見る見るうちに塞がって行き、ついには何の痕も無く消えてしまったそうだ。
 これはGウィルスの効力の1つである。
 同じ現象をアメリカのシェリー・バーキン氏も起こすことができるそうだ。
 いくらBOW化が防げたとしても、感染者の遺伝子に深く侵蝕する為に、例えワクチンを投与しても、後遺症は長期に亘り(或いは一生)残り続けるという。
 ただ、後遺症というのは苦しむべき病状のことを言うのだが、Gウィルスの場合はちょっと違う。
 はっきり言って、特異菌よりも危険なウィルスなのである。
 傷をたちどころに癒やしたり、超人的な身体能力を手に入れられたり、老化が止まるなんて後遺症とは言えないだろう。

 愛原:「俺はGウィルスなんてカンベン願いたいね」
 高橋:「全くです」
 リサ:「…………」

[同日09:03.天候:曇 栃木県那須塩原市大原間 JR那須塩原駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、那須塩原です。東北本線、黒磯方面はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。那須塩原の次は、新白河に止まります〕
〔「まもなく那須塩原、那須塩原です。お出口は、左側です。停車の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、電車の揺れにご注意ください。お乗り換えの御案内を致します。宇都宮線下り……」〕

 愛原:「新幹線だとあっという間だな」

 私はそう言うと、席を立って荷棚に乗せた荷物を降ろした。
 電車が揺れるというのは、那須塩原駅のホームは本線から外れた副線にある為、そこへのポイント通過で揺れるという意味である。
 新幹線では、よくある構造だ(東海道新幹線では、新富士駅もそうだね)。
 そして、ホームの無い本線を通過列車が轟音を立てて通過して行くのが醍醐味だ。

 愛原:「忘れ物に気をつけろよ」
 高橋:「大丈夫っス」

〔「ご乗車ありがとうございました。那須塩原、那須塩原です。お忘れ物の無いように、お降りください。……」〕

 ドアが開くと私達はホームに降り立った。
 ここでの下車客も、意外と多い。
 特に、自由席から降りてくる客が目立った。
 東京駅出発の時点では賑わう自由席車も、こういう所で空いてくるのだろうか。

 愛原:「次はバスに乗るけど、所要時間結構掛かるから、先にトイレとか行っておいた方がいいな」
 高橋:「そうですね。そうしましょう。俺は一服してきますんで」
 愛原:「行ってらっしゃい」
 リサ:「じゃあ、わたしもトイレ行って来る」
 愛原:「ああ。バスの時間は9時20分だ。遅れるなよ」

 もっとも、そのバスはホテル天長園の前を通ることもあってか、上野姉妹はよく知っているようだ。

 高橋:「バスで行くと、遊園地までどれくらい掛かるんスか?」
 愛原:「時間にして、1時間ちょっとだね」
 高橋:「マジっスか!」
 愛原:「マジです。だから、先にトイレは済ませた方がいい」
 高橋:「タバコもですね?」
 愛原:「……そだね」

 こいつはどうやら禁煙する気が無いらしい。
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“私立探偵 愛原学” 「GW中、東北新幹線は暫定ダイヤだった」

2022-06-21 21:04:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日07:00.天候:晴 東京都千代田区鍛冶町 JR神田駅]

 岩本町駅で電車を降りた私達は、徒歩でJR神田駅に向かった。
 神田駅の入口に行くと、既に上野姉妹が待っていた。

 上野凛:「おはようございます!」
 上野理子:「おはようございます」

 上野姉妹も私服だった。
 スポーツ系の凛はショートパンツ姿だったが、それほどでもない理子はスカート姿だ。
 リサと比べれば、その丈は長い。

 凛:「今日はよろしくお願いします!」

 さすが体育会系なのか、凛はハッキリとした挨拶をしてくる。

 愛原:「ああ、おはよう。今日はよろしくな。じゃあ、キップは1人ずつ持とう」

 私はキップの束を取り出した。
 新幹線は普通車指定席である。
 先頭車や最後尾ではない為、予め善場主任を通してBSAAには連絡してある。

 リサ:「わたし、先生の隣ね!」
 高橋:「俺もお願いします!」
 愛原:「ハイハイ」

 というわけで必然的に、私は3人席の真ん中になるわけである。

 愛原:「2人は2人席で隣同士でいいかな?」
 凛:「あ、はい。ありがとうございます」
 愛原:「じゃあ、まずは東京駅まで行こう。乗車券だけを改札口に入れてね」

 私は『東京山手線内→那須塩原』と書かれた乗車券を手にした。
 これは片道の距離が101km以上200km以下の乗車券に適用される制度で、名前の通り、東京の山手線各駅とその内側を走る中央・総武線の各駅ならどこからでも乗り降りして良いというものである。
 私達は東京駅から新幹線に乗るわけだが、神田駅から東京駅まで他の電車に乗った場合、その分の運賃を新たに払う必要があるのかというと、それは無い。
 東京山手線内の各駅であればどこからでも良いので、これが例え新宿駅から中央線に乗って東京駅まで行っても、その区間分の運賃は新たに請求されない。
 尚、片道201キロ以上の長距離になると『東京都区内』となり、更に乗降可能駅の範囲が広がる。
 ホームの駅名看板に、□に『山』と書かれた表示を見ることができるが、これは『東京山手線内』の駅であるという意味である。
 私達は山手線に一駅だけ乗り、東京駅に向かった。

[同日07:30.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・新幹線ホーム]

 東京駅に着いて、私達は東北新幹線乗り場に向かった。
 さすがに新幹線改札口では、乗車券・特急券2枚重ねで行くことは皆知っていた。

 リサ:「先生、駅弁はー?朝ごはん!」
 愛原:「ホームに駅弁売り場があるから、そこで好きなの買っていいぞ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「先生、俺はタバコ吸って来ます」
 愛原:「あいよ。8号車な。間違えるなよ?多分、E6系も連結されてるから、そっちに間違えて乗るなよ?」
 高橋:「分かってますって。要は赤い新幹線じゃなく、緑の新幹線に乗れってことですね」
 愛原:「そういうことだ。オマエの駅弁は買っといてやるよ」
 高橋:「先生と同じのでオナシャス!」
 愛原:「分かった」

 これから乗る列車が出るホームにエスカレーターで上がると、高橋はホームの喫煙所に行き、私達は駅弁売り場に行った。

 リサ:「これがいい!」

 やはりというか、リサは牛肉弁当を所望した。
 私はやっぱり幕の内弁当。
 高橋も同じ物でいいというので、これを2つ買う。
 上野姉妹、凛は意外と“深川めし”を所望した。

 愛原:「意外だね?意外なヤツ、チョイスしたね?」
 凛:「山育ちなもので、こういう海鮮系は珍しいんです」
 愛原:「そうなのか」

 意外と日本の鬼って、山育ちが多いよな。
 まあ、鬼ヶ島とかは海の上に位置しているが、それ以外は確かに山に住んでいるというイメージが近い(それにしても、鬼ヶ島の鬼達は、どうやって海を渡って人間の村を襲っていたのだろう)。
 上野姉妹の栃木県も内陸県だし、リサが長いこと暮らしていた霧生市も内陸部にある。

 愛原:「うーむ……」
 リサ:「どうしたの、先生?」
 愛原:「いや、基本的に日本の鬼は山に住んでいることが多いが、鬼ヶ島は海にあるなと思って……」
 凛:「それが、どうかしましたか?」
 愛原:「いや、孤島とも言える鬼ヶ島の鬼達は、どうやって海を渡って人間の村を襲っていたのかなって……」
 凛:「村を襲っていたのではなく、いわゆる海賊行為を行っていたようですよ」
 愛原:「そうなのか。……よく知ってるな」
 凛:「天長会で、そういう話があったもので」
 愛原:「ふーん……」
 凛:「あとは干潮の時に海が浅くなるので、その時に徒歩で渡っていたとも言われています」
 愛原:「そんな簡単にできるものかね?」
 凛:「リサ先輩が使役されるタイラントとかも、かなり身長が高いじゃないですか」

 タイラントは安土桃山時代からいたのか?

 愛原:「そしたら、桃太郎達がわざわざ舟を調達する意味が無くなる」
 凛:「兵器や手勢も乗せる為、帰りは宝物を乗せる為に舟を調達したらしいですよ」
 愛原:「そうなのか。何か、まるでキミ達が本物の鬼のように見えてくるよ」
 凛:「……母が投与された特異菌って、どうもアメリカとかヨーロッパの事件の元となったヤツとは違うみたいです」
 愛原:「違う!?」
 凛:「はい。白井博士がどこからか手に入れた、鬼のDNAと混合したとか……。だから、私の母は鬼のような姿になりますよね」
 愛原:「おいおい、変なタイミングで新たな真相が出て来たな」

 白井は鬼を復活させようとしでもしていたのか?

 凛:「白井博士は永遠の命に拘っていました。鬼の寿命も長いですから、関心があったそうです。『最も危険な12人の巫女たち』が、どうして危険なのかと言いますと、『鬼の化身だから』だそうです」
 愛原:「……せっかくだから、天長会に行って詳しい話を聞いた方がいいか?」

 白井は死んだが、どこかで別の人間に生まれ変わっている。
 天長会は、それを知っているかもしれない。
 私は駅弁と飲み物を買うと、8号車へと急いだ。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポン♪ 22番線に、7時44分、“やまびこ”355号、仙台行きが17両編成で参ります。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車、自由席は1号車から3号車と、12号車から17号車です。まもなく22番線に、“やまびこ”355号、仙台行きが参ります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 ホームを歩いていると、接近放送が鳴り響いた。
 ホームに清掃員が整列していないので、どうやら折り返し列車ではないようだ。
 すぐに乗れそうなので、私達はすぐに列に並んだ。
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“私立探偵 愛原学” 「幾度目かの北関東紀行」

2022-06-21 16:03:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月7日02:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ここ最近、リサの奇行が著しい。
 私への想いの強さによるものなのだろうが、私の部屋に夜這いに行こうとする。
 しかし、私の部屋のドアには、リサ対策でドアに鍵を3つほど付けているので、簡単には開けられない。
 もちろんリサが本気を出せばそれでもドアを破ることはできるし、もっと乱暴なやり方だと、隣の壁をブチ破ってもいい。
 アメリカの本家リサ・トレヴァーはそこまではしなかったが、タイラントやネメシスはそれをやっていた(“バイオハザードRE:2”“バイオハザードRE:3”)。
 今夜もまた、ドアの向こうでドアを引っ掻く音がする。
 第1形態に戻り、鋭く長い爪でカリカリと引っ掻いているのだ。

 リサ:「先生……先生……。ここを開けて……。ねえ……お願い……。先生……」

 ドアをムリに破ろうとしたり、壁をブチ破ろうものなら、即座にBSAAが出動することになっている。
 私に迷惑が掛かり、それで嫌われることを警戒しているリサができる精一杯のラブコールらしい。

 カリカリ……カリカリカリ……。

 愛原:「リサ、今何時だと思ってるんだ?早く部屋に戻って寝なさい」
 リサ:「眠れないの。ここを開けて?」

 リサは甘えた声で、ドアの向こうから囁いてくる。

 愛原:「俺は眠いんだ。またな」
 リサ:「そんなぁ……先生……」

 開扉を拒絶すると……。

 リサ:「シクシク……グスン……グスン……」

 ドアの向こうからすすり泣く声が聞こえてくる。
 しかし、それで仏心を出し、ドアを開けてはならない。
 もうこの辺はジャパニーズホラーの定番ですな。
 開けた途端、鬼と化した女が飛び込んで襲って来る。
 そして、あとは【お察しください】。
 というわけで私は、急いでベッドに戻った。
 言うべきことは言ったのだから、これで後は朝まで待つ。
 これがここ最近の夜中のルーティンであった。

[同日06:00.天候:晴 愛原のマンション]

 で、朝になると……。

 リサ:「先生、おはよう!」

 夜中の奇行がウソのように、ケロッとして部屋から出てくるリサなのだった。

 愛原:「おはよう。……って、オマエまた下着だけで寝て……」

 リサは上は黒いスポブラ、下は同じ色のボクサーショーツを穿いていた。

 リサ:「だってぇ……。ここ最近暑いんだもん」
 愛原:「いや、それはオマエの体温が高いだけだ」

 ゴールデンウィークに入り、確かに昼は暖かくなったか、夜はまだガチ涼しいぞ。
 日によっては、上着を羽織らないと寒いくらいだ。

 愛原:「早く着替えて来い。今日は朝から出発なんだから」
 リサ:「はーい」

[同日06:45.天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅→661K電車先頭車内]

 私達は朝食は取らずに、地下鉄の菊川駅に向かった。

 リサ:「温泉だけ行くのもつまんないなぁ……」
 愛原:「そうだろ?」

 私はそれだけで十分な旅行なのだが、リサ達には味気ないことだろう。
 そこで……。

 愛原:「どうして温泉だけでこんな朝早く出るのかというと、その前に遊園地に行こうと思うからだ」
 リサ:「遊園地!?」
 愛原:「リサ、前に絵恋さんと行った時、遊園地にも行っただろ?」
 リサ:「時間が短くて回り切れなかった」
 愛原:「そうだろう?そこで今日は、その回れなかった所を回ればいいと思ってね」
 リサ:「おー!」
 高橋:「これも先生の御計らいだ。感謝の気持ちを忘れるなYo?」
 愛原:「何で最後、ラッパー風に?」
 高橋:「ノリっスよ、ノリ」

 週末の早朝でまだ人けも疎らな地下鉄の駅に行き、そこで電車を待っていると、トンネルの向こうから強い風が吹いて来た。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 風が一層強くなり、電車が接近する轟音が響いてくる。
 リサのショートボブヘアーが風で揺れた。
 今日は私服姿であり、黒いミニ丈のプリーツスカートと白いTシャツ、その上にはグレーのパーカーを羽織っていた。
 御嬢様の服装をしていた斉藤絵恋さんと比べると、随分とラフな格好だが、BOWで服装に気を使う者はあまりいないようである。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 乗り入れて来た京王電車がやってきた。
 笹塚行きということは、これから京王線に帰る所なのだろう。
 やってきたのは“京王ライナー”にも使用される新型車両(5000系)ではなく、従来からの車両(9000系)。
 平日よりも空いているローズピンクの座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが流れる。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 こんな空いている時間でも駆け込み乗車があったのか、JR東海の在来線車両(313系など)と同じドアチャイムを何度か鳴らして再開閉した。
 少なくとも駆け込みは、階段から離れた先頭車では起こっていない。
 階段に程近い中間車両のどこでか行われたのだろう。
 そして、ようやく運転室から発車合図のブザーが聞こえて来て、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「先生、この電車でどこまで行くの?」
 愛原:「岩本町駅だ。そこから神田駅まで歩く。神田駅で上野姉妹と待ち合わせて、東京駅まで行くよ」
 高橋:「何か、あいつらに気を使ってません?東京駅そのまま現地集合にした方がいいんじゃ?」
 愛原:「まだ彼女らは上京したてだからね。東京駅はまだ引率無しでは厳しいだろう」

 幸い彼女らが乗ってくる地下鉄銀座線は、日本で最初に開通した地下鉄ということもあり、基本的にどの駅の構造もシンプルだ。

 愛原:「神田駅の構造はシンプルだからね。それに……」
 高橋:「それに?」
 愛原:「彼女達の力で、宿泊料金が激安になったんだから、それくらいのサービスはしてあげなきゃ」
 高橋:「そういうことですか」
 リサ:「どのくらい安くなったの?」
 愛原:「安いチェーンホテル並み」
 高橋:「東横イン並みっスか!そりゃ安くなりましたね!……素泊まりで?」
 愛原:「いや、もちろん2食込みで」
 高橋:「なるほど。それで、一応オレ達が歩く側にしたわけですか」
 愛原:「オマエ達は若いんだからいいだろう?」
 高橋:「まあ、そうッスね」

 今頃、半鬼姉妹も銀座線に乗っているだろう。
 そういえば、荒俣宏先生の“帝都物語”では、地下鉄銀座線の工事現場に鬼が出るということで、ロボットを使って鬼退治するシーンが無かったっけ。
 その銀座線に半分だけとはいえ、鬼の血が流れている姉妹が乗り、それから凡そ50年後に開通した都営新宿線に鬼娘が乗車している……と。
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“私立探偵 愛原学” 「次なる計画」

2022-06-18 21:16:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月30日20:00.天候:曇 東京都千代田区鍛冶町 某焼肉居酒屋]

 店長:「22000円になります!」
 愛原:「あ、一応消費税は入るのね」
 店長:「サーセン。あれは税抜き価格なんスよ~」

 さすがは高橋の知り合いだ。
 もっとも、10%の上乗せならまだマシな方だ。
 都内には10%どころか、1000%くらい上乗せしてくる悪質店が存在するからなw

 愛原:「カードで」
 店長:「はい、お預かりします!」

 で、付いたポイントは後でまた使う……と。
 私の知り合いの中には、クレカで付いたポイントで毎年タダで旅行に行ってるツワモノもいたりする。
 さて、私はどうするか……。

 店長:「あのJKやJCとヤらないの?」
 高橋:「あんな化け物達とヤったら、いくつ命があっても足りないっスよ」
 店長:「ええっ?」
 愛原:「……そういう会話は、私がいない時にLINEでやってね」
 店長:「はっ!?」
 高橋:「さ、サーセン」

 会計を済ませ、エレベーターホールで待ってるJK・JCと合流する。

 凛:「先生、御馳走さまでした!」
 理子:「御馳走さまでした」
 リサ:「御馳走さま」
 愛原:「ああ」

 リサもそうだが、人食い鬼の血が半分入った上野姉妹もよく食べる。
 食べ放題にして良かった。
 エレベーターに乗って、1階に向かう。

 愛原:「まだ、ゴールデンウィークは続くな」
 高橋:「そうっスね」
 愛原:「今回は高橋の知り合いの店で安く(?)食べれたわけだ……」
 高橋:「お役に立てて何よりです」
 リサ:「……」(←狭いエレベーターで、愛原に密着するリサ)
 愛原:「今度はキミ達の世話になろうかな」
 凛:「と、言いますと?」

 エレベーターは途中階に止まることなく、1階に着いた。
 降りてから、私は言った。

 愛原:「ゴールデンウィークの最後は、また天長園に温泉旅行だ!」
 高橋:「マジっスか!?」
 愛原:「キミ達の力で、一般料金とは割引価格で利用させてもらえないかな?」
 凛:「た、多分可能だと思います」
 理子:「『巫女』のお姉ちゃんが司祭様に頼んだら、司祭様から支配人に圧力……じゃなかった。頼んでくれるよ」
 高橋:「先生、大丈夫っスか?これ、後で『代わりに入信しろ』ってパティーンじゃ?」
 愛原:「それは大丈夫だろう。もしそうなら、とっくに勧誘されてるさ」
 高橋:「それもそうっスね……」
 凛:「まあ、一応支配人に、私から話してみます」
 愛原:「悪いね。もちろん、キミ達も一緒に来てもらうからね」
 凛:「ありがとうございます」

 私達は一応、地下鉄の神田駅まで上野姉妹を送った。
 それから、私達は岩本町駅まで歩いて行った。

[同日20:18.天候:曇 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→新宿線1900T電車最後尾車内]

 神田地区内にあるといっても、案外神田駅からは歩くものだ。
 まあ、この時期、外は涼しく、歩いても別に暑くも寒くもない。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 エスカレーターでホームに向かっていると、ホームから接近放送が聞こえて来た。
 どうやら、ちょうどすぐに電車に乗れるようである。
 トンネルから強い風が吹いてくると、電車が接近して来るのだとすぐに分かる。
 エスカレーターを降りると、電車が巻き起こした風で、リサの制服のスカートが少し捲くれ上がる。
 パンチラはほんの一瞬だけだったが、少なくとも黒いショーツを穿いているのが分かるほどだった。
 恐らく、上のスポブラと合わせて、下もスポーツメーカー製造のスポーツショーツを穿いているのだろう。

〔4番線は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町。秋葉原〕

 京王電車も乗り入れて来る都営新宿線だが、やってきたのは東京都交通局の車両だった。
 最後尾の車両に乗り込み、空いている席に腰かけた。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 京王電車のドアチャイムはJR東海の在来線電車と同じだが、都営の車両はJR東日本の通勤電車と同じ。
 駆け込み乗車は無かったようで、ホームドアが閉まると、乗務員室から発車合図のブザーが微かに聞こえて来た。
 それからエアの抜ける音がして、電車が動き出す。
 この時、都営地下鉄の車掌はホーム半ばくらいまでは、乗務員室のドアを開けた状態でホーム監視をしている。
 それから、バタンとドアを閉めるのである。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.S09.Please change here for the Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 愛原:「あ、そういえば……」
 リサ:「なに?」
 愛原:「さっき焼肉とかしたから、リサの制服、少し臭っちゃったなぁ……」
 リサ:「あー……兄ちゃんのタバコの臭いもする」
 愛原:「明日、その制服、クリーニングに出そう。5月からブレザー無しで良くなるだろ?スカートはもう一着あるし、5月からそれで行こう」
 リサ:「分かった。先生の言う旅行は?」
 愛原:「いや、それは別に私服でいいだろう。というか、どうして今回、制服で来たんだ?」

 検査があるから、それがしやすいように体操服やジャージ、そして下着はスポーツタイプというのは分かる。

 リサ:「だってぇ、国家機関に行くんだから、ちゃんとした格好でって先生言ってたじゃない」
 愛原:「それはデイライトの事務所の事だよ。あとは、斉藤社長の会社とか……」

 上野姉妹は、母親に制服姿を見せてあげたいというのがあっただろうが……。

 愛原:「今度の旅行は、別に私服でいいからな?」
 リサ:「分かったよ。……で、先生のお仕事は……」
 愛原:「明後日の平日、バイオハザードサバイバル講演会がある。『私は如何にして生き残ったか』というサブタイトル付きで」
 高橋:「先生も有名人ですねぇ……」
 愛原:「俺の仕事、探偵なんだが……」

 新型コロナウィルスが、中国のバイオテロ兵器の漏洩によるものという噂が流れてからというもの、何だか講演の依頼が多くなったような気がする。
 こんなんでいいのか、私。
コメント (1)
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