報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「突入作戦」

2021-04-25 20:13:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日20:30.天候:曇 秋田県大館市某所 スーパーラーメンショップ]

 昼間に行ったラーメン屋のある場所に行くと、そこは完全に封鎖されていた。
 まるでこれからビルでも建つのかと思うような工事用のバリケードがされていたからだ。
 見た目には工事用のバリケードをすることで、一般市民からの目を反らすというわけだ。
 だが、どういうわけだろう?
 突入したBSAAの分隊だか小隊は全滅したと聞いているのに、バリケードの向こうからはまだマシンガンやマシンピストルの音がする。

 リサ:「いる!この奥に!」
 愛原:「よし、行くぞ!」

 私はもらった鍵でバリケードの入口を開け、中に入った。

 BSAA隊員ゾンビA:「アァア……!」
 同隊員ゾンビB:「ウゥウ……!」

 中に入ると、ゾンビ化したBSAAの隊員が闇雲に手持ちの銃を発砲しまくっている。
 照準を定められないが、取りあえず一応銃は撃てることから、Tウィルスではなく、Cウィルスとか、もう少し改良されたウィルスに感染したようである。

 愛原:「流れ弾に当たるなよ!」
 高橋:「はい!」

 私は完全に死亡してしまった、或いは仮死状態でまだゾンビ化していない他のBSAA隊員から銃器を拝借した。

 高橋:「死にらせ!この死にぞこない野郎!!」

 高橋がマシンガンを手に、ゾンビ化したBSAA隊員達に発砲する。

 隊員ゾンビA:「ゥアアアッ!!」
 隊員ゾンビB:「ギャアアアッ!!」
 愛原:「リサ!ゾンビ達はオレ達に任せて、オマエはBOWを倒せ!」
 リサ:「分かった!」

 因みにラーメン屋は火災を起こしていた。
 BSAAが突入した際に出火したのか、それとも戦闘の最中に出火したのかは分からない。
 しかし、その炎の中からそいつは現れた。

 愛原:「でけぇな!?」
 高橋:「仙台で見たリサ・トレヴァーの成れの果ても、あんな感じじゃなかったでした!?」

 身の丈は10メートルほどあり、辛うじて2足歩行ではあるが、動きはぎこちない。
 あれがリサの怪しんだBOWと思しき女性店員の成れの果てなのかは分からない。

 リサ:「人間を食い過ぎたんだね」

 リサは右手の爪を長く鋭く伸ばした。
 そして、化け物に向かって行く。

 隊員ゾンビC:「ウァアア……!」
 隊員ゾンビD:「ウゥゥ……!」
 愛原:「また来るぞ!」
 高橋:「全員、ゾンビ化してやがりますね、これ!?」

 霧生市にばら撒かれたTウィルスと違い、Cウィルス或いはそれよりもっと新しいゾンビウィルスは、感染者の知能を完全に殺しはしない。
 道具を使ったりするくらいの知能は残っている。
 また、肉体の腐敗もそこまでではない為か、走って来たり、フェンスなどをよじ登ることができる。

 愛原:「どうせワクチンなんかすぐに手に入らないだろ!楽にしてやろう!」
 高橋:「はい!」

 尚、WHOによると、ゾンビウィルスによりゾンビ化した者は『活性死者』と呼ばれ、医学的には死んでいるのと同じと定義づけられている。
 なので私達がここで生きたままゾンビ化した者達を殺しても、殺人罪に問われることはない。
 但し、死体損壊罪には問われる恐れがあるが、それは動かない死体を故意に損壊させるから問われる罪であり、動く死体に対しては緊急避難が認められる。
 生きている人間ではないので正当防衛ではなく、緊急避難になる。
 正当防衛は完全にそれを立証しないとなかなか裁判でも認められないが、緊急避難は案外あっさり認められる。

 リサ:「でやぁーっ!!」

 リサは上着を脱いで、スポブラだけの姿になると、背中や左手から触手を出してBOWと戦った。

 愛原:「ぅおっと!?」

 私達はゾンビだけ相手にしていればいい。
 しかし、そんなのは私達の勝手な都合であった。
 BOWとしては、せっかくこうしてわざわざやってきた生きている人間(食料)を見逃すはずがなかった。
 上空からリサの触手のようなものが落ちて来た。
 リサの触手も長さや硬さを自由に変えられる特徴を持つが、それはあのBOWも同じようだ。

 高橋:「さっさと死ねや、ゴルァッ!!」
 隊員ゾンビE:「ギャワァ……ッ!」

 隊員ゾンビEのヘルメットが脱げて、剥き出しになった頭部に高橋がショットガンを撃ち込む。
 この隊員は背中にグレネードランチャーを背負っていた。
 頭を撃ち抜かれた隊員Eは血しぶきを噴き出しながら地面に倒れ、そのまま動かなくなった。

 愛原:「これでゾンビは片付いたか!?」
 高橋:「はい!」
 愛原:「グレネードランチャーだ!これでリサの援護射撃をするぞ!」

 私はグレネードランチャーを構えた。

 高橋:「先生、足元!」
 愛原:「えっ!?」

 すると私の右足を這いつくばっていたBSAA隊員が掴んだ。
 一瞬ゾンビかと思ったが、まだゾンビ化していなかった。
 さすがにゾンビ化していない者を殺すと、本当に殺人罪になってしまう。

 愛原:「大丈夫ですか!?」
 隊員F:「そ……そ……」
 愛原:「えっ、何ですか!?」

 隊員Fは血を吐きながら、震える手で倉庫を指さした。
 店舗は火に包まれているが、倉庫は無事だ。

 隊員F:「対象……が……そ、こ……に……」
 愛原:「倉庫に何かあるんですね!?」
 隊員ゾンビF:「ゥアアアアッ!!!」
 高橋:「先生、危ない!!」

 高橋がゾンビ化した隊員Fに体当たりし、私から引き離したところで、マシンガンを集中的に浴びせた。

 隊員ゾンビF:「ギャアアアアッ!!」

 ゾンビ化した隊員Fは断末魔を上げ、その場に血だまりを作って絶命した。

 愛原:「高橋!倉庫だ!倉庫に行くぞ!」
 高橋:「はいっ!」

 私達は倉庫に走った。
 だが、私達の動きに気づいたBOWが触手を私達に向けて来る。

 高橋:「うぜぇっ!!」

 高橋はBOWに向けてマシンガンを放った。
 だが、当たってはいるのだが、効いているのかまでは分からない。

 高橋:「リサ!さっさとそいつをブッ殺せ!!」
 リサ:「分かってるよ!」

 私も倉庫に向かう前に、グレネードを一発お見舞いしてやった。
 どうやらグレネードランチャーの中に入っていたのは、焼夷弾だったらしい。
 被弾した所から火が出た。
 ……まさか、店舗焼いたのこれじゃないだろうな?

 愛原:「ん!?」

 すると上空にヘリコプターの音が聞こえた。
 そのヘリコプターには、BSAAの文字がはっきり書いてあった。

 愛原:「おおっ!やっと援軍が来たぞ!」

 カプコン製のヘリはすぐに撃墜されるというジンクスがあるが、BSAAもバカじゃないから、BOWの攻撃範囲には入らなかった。
 遠くから機銃掃射をし、BOWにダメージを与えてから降下するという作戦のようだ。
 おかげでBOWの注意がそっちに向いた。
 私達は急いで倉庫に向かった。

 高橋:「先生!倉庫に鍵が掛かってます!」
 愛原:「鍵を壊せ!」

 私はショットガンで鍵を壊した。
 そして、倉庫に飛び込んだ先にあったものとは……。

 A:店長
 B:白井伝三郎
 C:地下への階段
 D:人間の死体
 E:ヴェルトロ関係者
 F:ジャック・シュラ・カッパー
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“私立探偵 愛原学” 「作戦決行」

2021-04-25 16:08:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日18:00.天候:曇 秋田県大館市 大館矢立ハイツ1Fレストラン]

 先に温泉を堪能した私達。
 今度は夕食を取ることにした。
 あいにく飛び込みでチェックインした私達は、夕食付プランを選択することはできず、建物内のレストランで普通のメニューを注文することになった。

 リサ:「馬肉煮込み定食!」
 愛原:「最初からそれを狙ってたか。いいよ」
 リサ:「やった!」

 もしかすると、これからリサには活躍してもらうことになるかもしれない。
 人肉は当たり前に無理だが、馬肉で力を付けて戦ってもらおう。

 高橋:「先生はどうします?」
 愛原:「そりゃ秋田といったら、きりたんぽだべ~」
 高橋:「じゃあ、俺も」

 比内地鶏きりたんぽ鍋を注文した。
 アルコールは、これから仕事に行くので控えることにした。
 仕方ないので、ノンアルビールで我慢する。
 リサにはウーロン茶。

 愛原:「夕食付プランではないけど、朝食付きプランではあるから、明日はちゃんと朝食が付いてるからな?」
 リサ:「分かったー」

 いずれにせよ、夕食は全員が鍋物というわけだな。

 高橋:「新潟の三条にも、“ひこぜん”っていう、このきりたんぽに似た料理があるんですよ」
 愛原:「そうなのか」

 米どころならではの郷土料理なのかもしれないな。

 愛原:「しかし、三条市は下越地方ではないだろう?中越か?『下越のヤンキー』が、それ以外の地域の情報も持ってるんだな」
 高橋:「一応、同じ県スから……。下越を制覇した後、調子乗って中越にも手ェ出したんです。そしたら、そこのアタマがなかなか強くて、思うようには……ヘヘ……」

 上には上がいて、さすがの高橋でも勝てなかった暴走族がいたのか。
 そりゃ怖いな。

 高橋:「そうこうしているうちに、俺もサツにパクられちゃって、今度は中越を制覇ってわけにはいかなくなりましたね」
 愛原:「なるほどな。その中越に進出しようとした時に、ひこぜんのことを知ったのか」
 高橋:「前々から知ってはいたんですが、実際に食べたのはその時が初めてですね」
 愛原:「ふーん……」

 中越のヤンキーとケンカする前に、中越の郷土料理を楽しむ下越のヤンキーw

 愛原:「そういえば高橋は俺の田舎には何度か行ったが、俺はオマエの田舎にはまだ行ってなかったなー?」
 高橋:「あー……と……。ご案内したいのは山々なんですが、色々と事情が……」
 愛原:「そうか。だが、もしも日本アンブレラと関係があるようなら行かないといけないから、その時は案内頼むな?」
 高橋:「あ、はい……」

[同日20:00.天候:曇 同市内 JR陣馬駅前]

 夕食を終えた私達は浴衣から私服を着替えると、車に乗って、まずはJR陣馬駅に向かった。
 駅前の舗装されていない広場に車を止めようとすると、奥羽本線を貨物列車が通過していった。
 この辺りは電車の本数よりも、貨物列車の方が本数が多いという。
 電車も2両とか3両編成が良い所で、貨物列車が首都圏の中距離電車よりも長い編成で走っているのとは対照的だ。

 愛原:「ん?何だあれは?」

 駅前の広場に車を入れると、大型トラックが3台ほど停車していた。
 それもJR関係者の車ではない。
 幌付きのトラックは自衛隊のそれをイメージさせた。

 愛原:「まさか、BSAAか?」

 私は咄嗟に自分のスマホを見た。
 しかし、善場主任からは何の連絡も無い。
 また、トラックにはBSAAという表示が全く無かった。
 自衛隊のトラックと言えばそんな感じもするが、しかしどうしてここに自衛隊のトラックが3台も止まっているのかという理由も思い付かない。

 高橋:「どうしますか?」
 愛原:「取りあえず近くに止めよう。ちょっと話を聞いてみることにする。俺はBSAAだと思うんだがな」
 高橋:「はい」

 高橋は駅舎に近い所に車を止めた。
 陣馬駅は終日無人駅で、自販機やトイレすら無い駅だ。
 またもや反対方向から貨物列車が通過していった。
 私達が車を降りてトラックに近づくと、運転席から武装した兵士らしき男が降りて来た。

 愛原:「お疲れさまです。私はNPO法人デイライト様から業務委託を受けております探偵事務所の愛原と申します」
 兵士:「デイライト?」
 愛原:「【とある政府機関】の出先機関ですよ。そこから我々は業務委託を受けているのです」

 本当は斉藤社長の依頼なのだがな。
 公的機関相手には、同じ公的機関の名前を出した方がいいだろう。

 兵士:「申し訳無いですが、今は民間人の出る幕ではないので」
 愛原:「あのラーメン屋ですね。関係者に成り済ましたBOWが潜んでいるという情報を得たのは我々です」
 兵士:「そういうことでしたか。ご協力ありがとうございます」

 どうやら善場主任からBSAAに話が行き、掃討作戦が行われているようだな。

〔「αチームからHQ!至急、応援願う!対象は最終形態に変化した!当隊の装備では太刀打ちできない!」〕

 という無線が運転席から聞こえた。

 兵士:「まずいな……」
 愛原:「あの……。もし良かったら、お手伝いさせて頂けませんか?」
 兵士:「いや、だから、民間人は危険……」
 愛原:「ここに同じBOWがいるんですが……」

 リサはわざと第1形態に変化してみせた。

 兵士:「うわっ!?」

 兵士はびっくりして、腰の拳銃を抜く所であった。

 愛原:「大丈夫です。こいつは私達の味方ですよ。もしもBSAAで苦戦しているのなら、うちのリサに対応させますよ」
 兵士:「し、しかし……」

〔「至急!至急!αチームは全滅した!生き残りは自分ただ1人……ぎゃああああああっ!!」〕

 高橋:「αチーム、弱ェな!?」
 兵士:「情報では、リサ・トレヴァーより弱いBOWが一匹だけだと聞いていたのに……」
 愛原:「ここにそのリサ・トレヴァーがいます!早くしないと、そのBOWが外に出てしまいますよ!?」
 兵士:「わ、分かった。そこまで言うのなら……」

 私達はこの兵士に、リサのことをHQに報告してもらうと、すぐに現場となっているラーメン屋に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「作戦決行前の過ごし方」

2021-04-22 20:00:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日15:00.天候:曇 秋田県大館市 大館矢立ハイツ]

 チェックインの時間になり、私達は臨時の宿泊先にチェックインした。
 鍵をもらってエレベーターに乗り込む。

 愛原:「飛び込みの宿泊だから、夕食は付かないそうだ」
 リサ:「えーっ!?夕食抜きぃーっ!?」
 愛原:「違う違う。あくまで夕食の付かないプランというだけで、レストランで食べればいいってことだよ。レストランの営業時間、何時までだった?」
 高橋:「確か、20時までっスね」
 愛原:「20時か。あのラーメン屋と同じだな。だったら18時ぐらいに食べに行けばいい。『腹が減っては戦はできぬ』、夕食を食べてから作戦決行だ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「はいっ!」

 4階でエレベーターを降り、客室フロアへと向かう。
 そして渡された鍵番号と部屋番号を確認して、確保した部屋へと入った。

 愛原:「うん、イメージ通りの和室だな。取りあえず、荷物置こう」
 高橋:「温泉行きますか?」
 愛原:「行こう行こう。浴衣ある?」
 高橋:「そっちに入ってるみたいですね」
 愛原:「そうか」

 私は浴衣を受け取った。

 愛原:「ストーップ!リサ、ここで着替えない!」
 リサ:「ん?」
 愛原:「仮にも15歳の女の子なんだから、大の男達の前で着替えない!」
 リサ:「研究所にいた頃は、マジックミラーやカメラで盗撮のオンパレードだったよ?」

 あのロリコンどもめ!

 愛原:「悪いがリサは、そっちの洗面所で着替えてくれ」
 リサ:「んー、分かったよ」

 リサは面倒臭そうに、浴衣を持って洗面所に行った。
 この部屋、洗面所とトイレは付いているようだ。
 浴衣に着替えた私達は、バスタオルとフェイスタオルを手に部屋を出た。
 部屋の近くに温泉があるのは良い。

 愛原:「それじゃリサ、またな」
 リサ:「えー?一緒に入りたい~」
 愛原:「ダメダメ。それじゃ、またな」
 リサ:「はーい」

 私と高橋は男湯に入る。

 愛原:「入口にマッサージチェアがあったな。さすがに、機械以外のマッサージは無いか」
 高橋:「俺がしましょうか?」
 愛原:「いや、いいよ。オマエも長旅で疲れただろうし」
 高橋:「俺は大丈夫っスよ」
 愛原:「若いっていいねぇ……」

 私は感心しながら脱衣所で浴衣を脱いだ。

 愛原:「結構いい旅だ。またボスや斉藤社長にお土産買って行かないとなー」
 高橋:「仕事なのに、いいんスかね?」
 愛原:「いいのいいの」

 営業中のラーメン屋が逃げるとは思えないからな。
 むしろリサの見立てでは同じBOWではないかと思われる女性店員が追ってきやしないかと心配したが、杞憂のようである。

 高橋:「先生!不肖この高橋が、先生のお背中を、お、お流しして差し上げたいと思いつかまつり候~也~!」
 愛原:「オマエ、日本語おかしいぞ。てか、何で歌舞伎調?市川海老蔵か」
 高橋:「先生!お背中を!お背中を!」

 まるでワンコが飼い主におやつをねだるかのようである。

 愛原:「分かった分かった。そう、せっつくなよ。よろしく頼む」
 高橋:「はいっ!」

 いつも大浴場に一緒に入るとこんな感じだな。
 以前、ユニットバスのビジネスホテルに止まった時も迫られたことがあったが、さすがに狭いので断った。
 マンションの風呂はセパレートタイプだが、さすがに家では三助を断っている。
 で、その分の不満がこういう所で爆発するのだ。

 高橋:「ハッとして~♪グッとして~♪Hey♪」
 愛原:「何だその歌……」

 因みにこいつ、家事能力は高めだし、車の運転もまあまあ上手い。
 だが、歌唱力に関しては壊滅的なのである。

 地元のオヤジ:「おい、兄ちゃんよ。歌がうるせーから静かにしてくれ」
 高橋:「あぁッ!?」
 愛原:「すいませんすいません!静かにさせますんで!高橋、歌は歌うな!」
 高橋:「は、はい」

 このように、近隣の方々から苦情が来るほど。
 高橋が暴走族時代、元仲間に言わせると、高橋の車の中では歌のCDは掛けないという暗黙のルールがあったそうである。
 『下越のヤンキー』と呼ばれた高橋は、『下越のジャイアン』とも呼ばれたそうな。

 愛原:「新潟でも歌いまくってたのか?」
 高橋:「いや何か、俺が車に乗ろうとすると、皆して歌のCDを切るんスよ。何なんスかね?」
 愛原:「そういうことだよ」
 高橋:「え?」
 愛原:「もういいから、さっさと流してくれ」
 高橋:「あ、はい」

 高橋に背中を流してもらった後、他の部分は自分で洗う。
 その後で、やっと入浴できる。

 愛原:「うーむ……。本物の温泉は素晴らしい」
 高橋:「全くです」
 愛原:「露天風呂もあるんだよな。後でちょっと出てみよう」
 高橋:「夜とかだと、もっと雰囲気あるんじゃないスか?」
 愛原:「そうかもな。作戦が上手く行けば、帰って夜にまた入ることもできるだろう」
 高橋:「さっさと店長のヤツ、ぶっ殺しましょーや」
 愛原:「おい、作戦内容勝手に変えるな。店長は普通の人間っぽいから、倒さなくていいの。それより、店長からあの店の土地とかについて聞くんだよ」
 高橋:「は、はい」

 内湯に入った後は露天風呂に移動する。

 愛原:「“天空の湯”っていうの。いいねぇ」
 高橋:「女湯は“かぐやの湯”って言うらしいですよ」
 愛原:「ほおほお。“東方永夜抄”だな」
 高橋:「空をぉ~鳳凰が往くぅ~♪昇るゥ~不死の煙ィ~♪」

 うわ、またこいつ歌い出しやがった。
 確かにヘタクソ!

 オヤジ:「うるせって言ってんだろぉ!!」
 愛原:「すいませんすいません!」

 ところが、だ。
 女湯の露天風呂はここから凄く反対側にあるはずなのに、後で合流したリサが言うには、『お兄ちゃんの歌声がしたと思ったら、周りの女の人達が「イケボ、イケボ♡」「歌ってる人、絶対イケメン💛」って騒いでた』という。
 何だそりゃ。
 男が聴けばジャイアン並みのヒドい歌声なのに、女性が聴けばイケボなのか。
 何ちゅう異能だ。
 イケメン最強だな。
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“私立探偵 愛原学” 「道の駅やたて峠」

2021-04-22 14:45:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日13:30.天候:曇 秋田県大館市 道の駅“やたて峠”]

 国道7号線を更に北上し、そろそろ青森県との県境に辿り着こうとした時、その道の駅は見えて来た。

 愛原:「ここだ、ここ」
 高橋:「ここですね」

 車は道の駅“やたて峠”の駐車場に入った。
 道の駅に温泉施設が併設されている所は存在するが、ここはそれだけでなく、宿泊することもできる。
 いっそのこと、泊まってしまおうかとも考えた。

 高橋:「着きました」

 高橋は車を建物近くの駐車場に止めた。

 愛原:「善場主任から返信だ」
 高橋:「何て?」
 愛原:「『情報ありがとうございます。所長方はなるべく現場から離れてください』とのことだ」
 高橋:「姉ちゃん達、動くってことですかね?」
 愛原:「かもしれんな」
 高橋:「現場からなるべく離れろって、どういうことっスかね?」
 愛原:「分からんが、なるべく俺達も巻き込みたくないってことなんじゃないのかな?」
 高橋:「どうします?もっと離れますか?」
 愛原:「そうだな……。いや、ここでいいだろう。ここもここで、それなりに離れてるからな」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「いざとなったら、青森県まで逃げればいい」
 高橋:「はい」
 愛原:「一応、待避場所はここでいいか聞いてみよう」

 私は再びメールで、道の駅“やたて峠”にいることを伝えた。

 愛原:「これでいい。行こう」
 高橋:「はい」

 私達は道の駅の建物“大館矢立ハイツ”の中に入った。

 愛原:「まずは作戦会議兼食後のお茶だ」

 館内にあるレストランに行く。
 リサはまたもや食欲が湧いたのか、食事のメニューの方を見ていた。

 愛原:「こらこら。さっきラーメン食べたばっかりだろ」
 リサ:「はーい……」
 愛原:「デザートだったら食べていいから」
 リサ:「ほんと!?じゃあ、馬肉煮込み定食!」
 高橋:「それはデザートじゃねぇ!」

 私達はレストランに入ると、空いているテーブル席に座り、そこでコーヒーなどを注文した。
 因みにリサは、『森のミニパフェ』の中のラズベリーパフェを所望した。

 愛原:「善場主任がどう動くのかは置いといて、俺達の作戦はこうだ。あのラーメン屋の閉店直後を狙って行く。あの店長や店員達も住み込みってわけでは無さそうだから、どこからか通勤しているはずだ。店長が出て来たら、店長の後をつける。そして店長が家に着いたら、話を聞くんだ」
 高橋:「姉ちゃん達の作戦に鉢合わせしたら?」
 愛原:「協力を求められれば協力するし、足手まといになるようなら退くさ」
 高橋:「分かりました。あのラーメン屋は20時閉店のようです」
 愛原:「分かった。20時きっかりに店長が帰るとは思えないから、その20時に行こう。但し、駐車場に車は入れない。怪しまれるだろうし、そもそも駐車場から閉めるだろうからな」

 ラストオーダー後に客が入って来ないようにする為の常套手段だ。
 私も警備員時代、とあるショッピングセンターの駐車場で働いていた時、そのようにしたものだ。

 高橋:「歩いて行くんスか?それだと少し遠いですけど……」
 愛原:「いや、途中まで車で行くさ。途中に陣馬駅ってあっただろ?あそこは無人駅みたいだが、一応駅前広場もある。駅前に車……それも、どこかの業者の車っぽいライトバンが止まっている分には怪しくないだろう。もしかしたら、JR関係者に見えるかもよ」
 高橋:「なるほど。あの駅からだったら、何とか歩いて行けそうっスね」
 愛原:「だろ?それで行こう」
 高橋:「分かりました。で、どうします?まだ時間ありますけど……」
 愛原:「取りあえず温泉入るか?」
 高橋:「いいっスね。泊まりは……どうします?」
 愛原:「それな。どうしようかな……。ここに泊まってもいいんだが……或いは飛行機で帰ることを考えれば、大館市内とか北秋田市内に泊まった方がいいし……」
 高橋:「ま、そもそも部屋が空いてるかどうかって感じっスけどね」
 愛原:「まあな」

 私達はおおかた今後の行動について確認すると、レストランを出た。
 試しにフロントに行ってみて、部屋が空いているかどうかを聞いてみた。
 コロナ禍とはいえ、週末だから空いていないのではないかと思った。
 すると、部屋は空いているという。
 和室が1部屋に洋室ツインが1部屋。
 シングルは無いので、私達が和室に泊まって、リサがツインって感じか?
 それとも、やはり市街地に宿泊先を求めるべきか?
 どうしたものか……。
 まあ、いざとなったらここに逃げ込めばいいからな。
 私は一応、ここの宿泊施設に泊まることを決めた。

 リサ:「私、先生と一緒の部屋でいいよ?」
 愛原:「さすがにJKになったオマエと一緒の部屋っていうのはなぁ……」
 リサ:「私は気にしないよ?家族だし」
 愛原:「うーん……しかし……」
 リサ:「私が暴走しないように監視するのも、先生の仕事なんじゃないの?」
 愛原:「オマエ、暴走する気か?」
 リサ:「しないよ。しないけど……分からない。私、たまに寝ぼけるから」
 愛原:「ああ、そうだな」

 確かに1度、寝込みを襲われたことがある。
 本人はBOWとして人間を襲う夢を見ていたらしいのだが。
 襲われる直前にリサが目を覚ましたことで、事無きを得た。

 愛原:「分かった、分かった。じゃあ、一緒の部屋だ」
 リサ:「やった!」

 私は和室の部屋を1つ確保した。
 まだチェックインの時間ではないので、道の駅そのものを探索することにした。
 一旦、建物の外に出る。

 高橋:「追って来ているという感じはしないっスね?」
 愛原:「そうだな。ここまで来れば安全なのかもしれない」

 地方とはいえ、一桁番号の国道ということもあり、交通量は多い。
 オレンジ色のセンターラインが引かれた2車線の道路を長距離トラックなどが多く行き交っている。
 平日はそんなトラック野郎達の休憩所となるのだろう。
 今でも大型駐車場には、大型トラックが何台か止まっている。
 車の中で休んでいるのか、彼らしき姿を館内で見ることはなかった。
 それでも誰かが私達を付けていると危険なので、周りを確認することにした。
 そういう時、リサがいると役に立つ。
 彼女によると、今のところ私達を追って来ている者はいないようである。
 私達を怪しみはしたが、速やかに店の外に出たことで、警戒を解除したのだろうか。
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“私立探偵 愛原学” 「国道7号線のラーメン屋さん」 2

2021-04-20 20:10:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日12:30.天候:晴 秋田県大館市某所 スーパーラーメンショップ]

 見た限り、厨房にいる店長は30代半ばに見える。
 特に変なところは無い。
 ラーメン作りに情熱を燃やしている店長といった感じ。

 店長:「はい、チャーシュー麺のお客様」

 店長が厨房カウンターから直にラーメンを出してくる。

 愛原:「はい」
 店長:「こちらが味玉トッピングの方です」
 リサ:「はい!」
 店長:「こちらが辛味噌タンメンですね。お待ちどう様でした」
 愛原:「大館の街から大分離れてるのに、大繁盛だね」
 店長:「おかげさまで」
 愛原:「あえて町中に店を作らず、そこから随分離れた場所に店を構えたこだわりってあるの?」
 店長:「いえっ、ちょうど資金面と条件が合ってたんで、たまたまここです。ちょっと不安はありましたけどね、でもお陰様で好評です」
 愛原:「そりゃ良かった。じゃあ頂くよ」

 私は早速ラーメンに箸をつけた。
 確かに味は素晴らしい。
 だが、どことなく不思議な味だ。
 何か隠し味でも使っていると見た。

 愛原:「美味いな。この味なら流行って当然だね」
 店長:「ありがとうございます」
 愛原:「何か隠し味を使ってそうな感じだけど、何か秘密が?」
 店長:「ああ……っと、それは企業秘密です」
 愛原:「やっぱりか。スープの味がどことなく独特だよね?」
 店長:「さすがですね。ラーメン通の方ですか?」
 愛原:「通ではないけど、ラーメンは好きだから。でも、惜しいね。このラーメン食べる為に、わざわざ町から出て来ないとダメなんでしょ?町中に造ったら、行列できるんじゃない?」
 店長:「まあ、町中にオープンできれば良かったんですけどねぇ……」
 愛原:「この土地や建物も店長がオーナーなの?」
 店長:「いえ、違いますけど、どうしてですか?」
 愛原:「いや、なかなかこういう所の土地って売ってないだろうなぁと思って」
 店長:「まあ、確かに私はオーナーから土地を借りて営業してるんですけども……」
 愛原:「あ、やっぱりそうなの。そのオーナーは……」

 その時、厨房にいる女性店員がやってきた。
 20代半ばくらいで、リサみたいに肩の所で切ったボブヘアだったが、毛先の部分だけ茶色に染まっていた。

 女性店員:「お客様、すいません!ちょっと店長は、調理の方に回らないといけなくて……」
 愛原:「あ、ああ!そうだったね。ごめん。忙しい時に」
 リサ:「……!?」
 店長:「申し訳ないです。どうぞごゆっくり」

 店長は申し訳無さそうに言うと、厨房の奥に引っ込んでしまった。

 高橋:「! リサ、おい!?」

 リサはパーカーのフードを被ると、右耳だけ第1形態に戻った。
 どうやら、聞き耳を立てているようだ。
 リサの耳には、店長達の声が聞こえたらしい。

 女性店員:「ちょっとあんた!ベラベラ喋るんじゃないよ!」
 店長:「しょうがないだろう。お客さんに話し掛けられちゃ……」
 女性店員:「サツのイヌかもしれないんだから、気を付けなよ!」
 店長:「分かってるって……」

 そして、リサは気づいた。

 リサ:「先生、あのね……。あの女の人から、BOWの臭いがする。体臭は誤魔化してるみたいだけど、人食いの臭いがした」
 愛原:「何だって!?」
 高橋:「リサ・トレヴァーなのか!?」
 リサ:「分かんないけど、多分そう」

 恐らくはリサの亜種か何かだろう。
 しかし、どういうことだ?
 他のリサ・トレヴァーは今まで、私達に襲って来る前提でやってきていた。
 それがここにいるそいつは、一応はラーメン屋の店員として働いている。
 しかも、どうやら裏では店長よりも立場が上のようだ。
 やはりこのラーメン屋、何かある。

 愛原:「さっさと食べて出よう。後で作戦会議だ」
 高橋:「はい」

 私達はラーメンを食べ終わると、店を出た。
 会計は最初に現れたバイト店員で、あとは店長達が現れることはなかった。

 愛原:「やはり秘密が隠されていたラーメン屋だったか」

 車に戻る。

 高橋:「どうしますか?」
 愛原:「多分この土地の名義は、未だ白井兄弟の誰かで間違い無いんだろう。それを店長がラーメン屋を始めるに当たって、この土地を借りたということだ。多分、店舗の建物とかは自分の資金で建てたんだろう。問題は、どうしてこの土地だったのかだ。確かに国道沿いのラーメン屋も流行る時は流行るが、ここまで町から離れた場所というのはリスクが大きいだろう。だったらまだドライブインとしての営業の方がいいわけだ」

 もっとも、そのドライブインも廃れて行き、何とか営業している所でもコンビニに商売替えしたりしている。

 愛原:「あの店の閉店時間は20時だな。閉店後にもう1度行ってみよう。営業中はラーメン屋の顔をしているだろうが、閉店後は分からんぞ」
 高橋:「なるほど」
 愛原:「取りあえず、善場主任に報告しておこう」

 私は携帯電話を取り出すと、善場主任にメールした。

 愛原:「よし。移動しよう。いつまでもここにいたら怪しまれる」
 高橋:「分かりました。どこに移動します?」
 愛原:「この先に道の駅がある。そこに移動しよう」
 高橋:「分かりました」

 高橋はエンジンを掛けると、車を走らせた。
 そして、駐車場から出た。

 リサ:「! 怪しまれてる……」

 車が駐車場から出る時、リサは店の方を見た。
 プライバシーガラスとなっているリアウィンドウ越しだったから、向こうから見えたかは分からない。
 だが、リサは気づいた。
 店の方からこちらを見据えている女性店員の姿を。

 愛原:「因みにリサ、他の店員達はどうだった?」

 車が国道7号線の下り線に出てから私はリサに聞いた。

 リサ:「それは多分、普通の人間。先生が話してた店長も」
 愛原:「一体、何が目的だ?いくら大繁盛とはいえ、金儲けが目的じゃないだろ、ラーメン屋で」
 リサ:「ラーメン屋さんを隠れ蓑にして、白井伝三郎が何かやってる?」
 愛原:「なるほど。いい推理だ。実際、俺があの土地のオーナーについて聞こうとしたら邪魔されたわけだしな」

 私達は青森県との県境付近にある道の駅“やたて峠”に向かった。
 道の駅なら、長時間休憩していても特に怪しまれないからな。
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