報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「後ろ髪 引かれてあとに てっぱくを 夕日に映える ニューシャトル線」

2019-06-21 10:10:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月18日16:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区大成 新館(南館)1F]

 稲生:「SL運転面白かったですねぇ」
 マリア:「私はキツかったけどな」
 ルーシー:「あなた達の仲が普段どんなだったのかが分かったよ」

 仕事ステーションと呼ばれる企画展の1つ、鉄道マンの仕事について紹介されているエリアがある。
 そこには踏切もあって、ちゃんと警報器も鳴るし、遮断機も下りる。
 何か異常があった場合、非常ボタンを押すとどうなるかを実践してみるものらしいが……。

 雲羽:「嗚呼……踏切の音がするぅ……。先立つ不孝をお許し下さい」
 多摩:「遺書は誤字・脱字に気をつけて氏ねよ」
 雲羽:「ちょっと多摩先生、冗談っスよ、冗談!見捨てちゃイヤ〜ン!」

 稲生:(本当にあのカントクの言ったこと、実現した試し無いな……)
 マリア:(何やってんだ、あのオッサン達……)
 ルーシー:(多摩準急名誉監督は、本当に作者とは別人ね……)

 もしも“クレヨンしんちゃん”の野原しんのすけが鉄道博物館に行ったら絶対にやりそうなネタだと思う。
 『踏切で電車に轢かれた死体ごっこ』的な。
 埼玉つながりでやらんかね?

[同日17:00.天候:晴 鉄道博物館本館1F ミュージアムショップ・トレニアート]

 稲生:「シンカリオン大人気みたいですね」
 マリア:「よく分かんなかった」

 シアターホールでPVを観て来た稲生達。

 ルーシー:「日本のアニメが世界中で大人気な理由が分かったよ」
 稲生:「イギリスでシンカリオン流したら面白いんじゃない?」
 ルーシー:「今はネットで観れる時代だからね。観たい人はそうして観てるんじゃない?」
 稲生:「それもそうか。あと1時間ですが、最後にお土産でも見て行きますか」

 というわけでそこに行く。

 稲生:「さすがに超進化研究所職員のコスプレはできないなぁ……」
 マリア:「ローブ代わりに来たら?」
 稲生:「一気に魔力と防御力が下がると思うので遠慮しておきます」

 稲生が購入したのは新幹線のネクタイピンと缶入りビスケットだった。

 稲生:「ビスケットは後で皆で分けましょう」
 マリア:「紅茶に合いそうだ」

 そういうマリアが買ったのは、意外にも時計。
 イリーナのジャンルは“時を掛ける魔道士”(クロック・ワーカー)ということだが、その繋がりだろうか。
 で、ルーシーが買ったのはロルバーンノートとマスキングテープ、そしてやはり菓子の詰め合わせだった。

 ルーシー:「私も色々書き込むものが欲しいからね」
 マリア:「要所要所で色々とメモってるけど、一体何なの?」
 ルーシー:「内緒」
 稲生:「マスキングテープも?」
 ルーシー:「工作とかもしてるからね」

 そもそも稲生はルーシーの所属するベイカー組がどのジャンルなのか聞いていない。
 工作と言っていたから、何かを作り出す魔法機工のジャンルではないかと思った。

 マリア:「お菓子は自分用ね」
 ルーシー:「え?何言ってんの?」
 マリア:「え?」
 ルーシー:「先生がお迎えに来られるんだから、先生用に決まってるじゃない。あなた達はイリーナ先生に買ってあげないの?」
 稲生:「! 僕買って来ます!」
 マリア:「わ、私も!」

 師匠の存在を忘れる弟子2人がここに。

[同日18:04.天候:晴 ニューシャトル鉄道博物館駅]

〔まもなく2番線に、電車が参ります。危ないですから、下がってお待ちください〕

 帰宅客で混雑するニューシャトルのホーム。
 簡易的な接近放送が流れると、大宮駅のホームと同様、沿線の高校の吹奏楽部が演奏した“銀河鉄道999”の接近メロディが流れた。
 ヘッドライトを輝かせてやってきたのは新型の2020系。
 これも編成ごとに様々な塗装があるが、往路の時と同じように緑色(グリーンクリスタル)が基調の21号車だった。
 ニューシャトルはどの車両においても、ロングシートが基本。
 電車に乗り込むと、今度は3人とも吊り革に掴まる。

〔「ドアが閉まります。ご注意ください。ドアが閉まります」〕

 ドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
 そして、普通の鉄輪の電車とは違う加速力で走り出した。

〔次は終点、大宮、大宮でございます。大宮駅に入る際、急カーブの為、揺れますのでご注意ください。また、連結部分には立ち止まらないようお願い致します〕

 3人は進行方向右側に立っている。
 つまり、新幹線が見える位置だ。
 天気が良いので、夕日も車内に差し込んでいる。

 稲生:「夕日に映える新幹線もいいものですね」
 ルーシー:「明日には乗れるのね?」
 稲生:「ええ。もう指定席は取りましたから。問題は帰りですね。向こうに泊まって、どのタイミングで上り列車に乗るかです」
 ルーシー:「E5系に乗りたい」

 下り列車は山形新幹線を併結している時点でE2系であることが確定している。

 稲生:「E5系なら何でもいいですか?」
 ルーシー:「え、ええ……」
 稲生:「分かりました。問題の根本が、先生方がとの時点で僕達と合流してくれるかなんですよ」
 マリア:「後で私から師匠に聞いてみよう」
 稲生:「お願いします。危うくロシア空軍機に便乗してくる勢いでしたもんね」
 マリア:「素直にルゥ・ラ(瞬間移動魔法)使えっての」

[同日18:07.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 ニューシャトル大宮駅→大宮駅西口]

〔本日もニューシャトルをご利用くださいまして、ありがとうございました。どうぞ、お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
〔The next station is Omiya,and final stop.Thank you for ridding the New Shuttle...〕

 乗車時間僅か3分ほどであるが、ルーシー達にとってはゴムタイヤ式の新交通システム乗車体験も初であっただろう。
 電車は無事に1面1線のホームに滑り込んだ。

〔終点、大宮、大宮でございます〕
〔This is the final stop,Omiya.〕

 ぞろぞろと乗客達が降りて行き、すぐ目の前の改札口に吸い込まれて行く。
 JR線と違い、ホームに降りたらすぐに改札口という点は便利であろう。
 ルーシーは有人改札口に行くと、乗車券を記念にもらった。
 それは往路でもしている。
 恐らく、鉄道博物館と書かれたキップなので記念にしたいのだろう。
 そういう利用者は意外と多いのか、駅員は2つ返事で無効印を押してくれた。

 稲生:「さすがに次に乗り換えるバスは、乗車券は無いですよ」
 マリア:「長距離バスじゃないからね」

 ニューシャトルの乗り場は駅の北西側にあるので、西口の方が出やすい。
 稲生の家の近くまで行くバスが出る停留所へと向かう。

 稲生:「さっき家からメールがあったんですが、今夜は外食だそうです」
 マリア:「師匠がいないのに恐縮だね」
 稲生:「近所の焼き肉屋らしいので、このままバスで現地入りできそうです」
 マリア:「ああ、あそこか」
 稲生:「そうです」

 ノンステップタイプの小型バスが停車していて、それに乗り込む。
 1番後ろの席に横並びに座った。

 稲生:「どうでしたか、鉄道博物館は?」
 ルーシー:「夢が一気に叶ったよ。ありがとう」
 稲生:「いえいえ」
 ルーシー:「薄暗い森の中から出してもらえたマリアンナは幸せだと思う」
 マリア:「今は私もそう思う」
 ルーシー:「私も、もっと地下の暗闇から出してくれる人に会えたら……」
 稲生:「?」

 バスは発車時間になると、エンジンを掛けて出発した。
 さすがにビルの谷間にまで夕日は差して来ず、車内の明かりは蛍光灯が主となっていた。
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“大魔道師の弟子” 「鉄道博物館」 3

2019-06-20 19:12:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月18日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区大成 鉄道博物館]

 館内で主に新幹線の展示について楽しんだ稲生達は、昼時を外して昼食を取ることにした。

 稲生:「ここにしますか」

 それは本館2階にある“トレインレストラン日本食堂”。
 実際に食堂車で売り出されていたメニューが特徴である。
 窓際で通過する在来線列車を見ながら食事をするか、或いは食堂車を模した中央の席かを選べる。
 混雑時は空いている席から案内されるので、基本的には選べない。
 稲生達が案内されたのは、後者の席。
 4人席と2人席があって、さすがにそれは前者を案内された。
 で、そのテーブルの上にスタンドライトが置いてある。
 これは実際に“北斗星”で使われていたものを持って来たらしい。

 稲生:「何にします?」
 マリア:「そうねぇ……えーと……」
 ルーシー:「ビーフシチュー」
 稲生:「おっ、いいですねぇ」
 マリア:「私はデミグラスソースのハンバーグステーキで」
 稲生:「なるほど。多分これ、どちらも“北斗星”のパブタイムで出されてたヤツですね」

 しかし、さすがにディナータイムで出されていたメニューは無いようだ。

 稲生:「じゃあ僕もマリアさんと同じヤツで。すいませーん!」

 稲生は早速注文した。

 ルーシー:(“ベタな日本人の法則”、他人と同じ物を注文する……)
 マリア:(いや、多分勇太はビーフシチュー食べたかったんだろうなぁ……)

 但し、ここでも上下関係が発生していることに留意。
 後輩は先輩より高い物を食べるべからず。
 では、後輩は先輩と同じ物を食べるのはOKなのかというと、それはケースバイケース。
 上下関係の緩いイリーナ組ではOKである。
 ここではルーシーが1番高い物を注文している。
 ルーシーとマリアは同期生でどちらが先輩というわけでもないのだが、実年齢はマリアの方が若干年上で、入門のタイミングとしてはルーシーの方が若干早いという程度。
 相殺してフラットということだ。

 稲生:「食事の後はどうします?」
 マリア:「まだ屋上とかを見ていない。そこからの眺めを見てからだな」
 ルーシー:「あと、15時15分からSLの運転体験でしょ。おおかた勇太が機関士役でマリアンナが助士役だろうから、かま焚き頑張ってね」
 マリア:「え゛……?」
 稲生:「ここでしか体験できないことですからね、頑張りましょう」
 ルーシー:「頑張ってね〜」
 マリア:「ルーシーもやって!」
 ルーシー:「私は新幹線に興味があるだけだから」

 ルーシーがうそぶくと、稲生が言った。

 稲生:「都内には地下鉄博物館もあるんですよ。そっちには興味無いですか?」
 ルーシー:「わ、私は……」

 ルーシーの手が震える。

 マリア:「勇太、余計なこと言わない!」
 稲生:「す、すいません」

 ポーリン組のエレーナとリリアンヌは地下の暗闇を好むのに、全くルーシーは正反対のようだ。
 マリアが教えてくれたが、ルーシーは幼少の頃から持ち前の強い魔力を制御することができず、暴走させてポルターガイスト現象を引き起こすのは当たり前であったという。
 教会からは何度も悪魔祓いの勧告を受けたらしい。
 ついには地下室に幽閉されることもあり、その時の恐怖体験がトラウマになっているのではないかとマリアは言った。
 だが、マリアとて全て真実を語っているわけではないようだ。
 ルーシーには、もっと別の秘密がある。

 稲生:「は、話を変えましょう。イギリスにはこういった鉄道博物館は無いんですか?」
 ルーシー:「あるよ」
 マリア:「うん、あるな。私は行ったことないけど」
 ルーシー:「私はヨークの鉄道博物館とロンドン交通博物館に行ったことがある」
 稲生:「へえ!イギリス国立鉄道博物館と、この鉄道博物館は姉妹提携を結んでいるそうですよ」
 ルーシー:「らしいね」
 マリア:「それはルーシーのダディに連れられて?」
 ルーシー:「そうね。特にヨークの鉄道博物館にはあの0系も展示されていて、だから私はあれを初めて見たのはヨークなの」
 稲生:「そうか!確かに0系がイギリスで展示されているという話は聞いたことがあります!」
 マリア:「ロンドン交通博物館はロンドンの地下鉄とかも展示品だろう?そういうのは大丈夫なの?」
 ルーシー:「……多分、今はムリ……」
 稲生:(地下鉄で何かあったのかな???)

 稲生は鉄ヲタの知識から、日本人でも聞いたことのあるロンドン地下鉄に関するニュースを思い出した。

 稲生:(まさかな……)

[同日15:15.天候:晴 鉄道博物館1F SL運転シミュレーター]

 稲生:「第2閉塞、進行!……ほら、マリアさんも歓呼!」
 マリア:「ええっ!?」
 ルーシー:「Second section,clear!」

 ルーシーが代わりに英語で歓呼する。
 てか、イギリスの鉄道はそのような歓呼なのだろうか?
 日本の鉄道はイギリスから取り入れた為、閉塞とかもイギリス式なのだろうが……。

 稲生:「マリアさん、石炭くべて!」
 マリア:「は、はい!」

 魔道士の世界では先輩と後輩だが、ここでは逆転する。
 機関士の方が立場が上で、助士は下なのである。
 航空機でも機長が上で副操縦士が下なのと同じ。
 因みに機関士の席は進行方向左側で助士は右側だが、航空機もそうである。

 スタッフ:「それではこれを使ってください」

 にこやかな女性スタッフに、スコップを渡されるマリア。

 マリア:「石炭が重い!」
 ルーシー:「ガチの石炭、これ?マリアンナ、あんまりスコップ一杯に盛っても重くてやりにくいだけよー?」
 マリア:「じゃあ、アンタやってよ!」
 稲生:「第1閉塞、進行!」

 ほとんどスタッフの指導無しに運転している稲生。

 ルーシー:「何であなたの後輩は普通に運転できるの?」
 マリア:「知らないよ!」
 スタッフ:「運転お上手ですね」

 女性スタッフに褒められた稲生。

 稲生:「そ、そうですか?えへへ……」(∀`*ゞ)
 マリア:「

 ゴッ!(マリアのスコップが稲生の足に直撃)

 稲生:「いでっ!」
 マリア:「ちゃんと前見て運転して!」
 稲生:「は、はい……」

 良い子の皆は石炭投入用スコップで機関士役の人を叩かないでね。
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“大魔道師の弟子” 「鉄道博物館」 2

2019-06-20 13:56:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月18日10:15.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区大成 鉄道博物館]

 週末土曜日ということもあってか、館内は多くの家族連れで賑わっていた。

 稲生:「開館ダッシュというものがあるんですよ」
 マリア:「何それ?」
 稲生:「開館の10時にオープンすると同時にダッシュして入館する人達のことですね」
 マリア:「何をそんなに急ぐの?」
 稲生:「新幹線のシミュレーターと車掌体験シミュレーターが大人気なんですって。多分今頃、とっくに受付終了ですよ」
 マリア:「そんなに!?」
 ルーシー:「確かに体験しにくいもんね」
 稲生:「そういった意味では、SL運転のシミュレーターは穴場だったりするのです」

 稲生はその場所に行ってみた。

 スタッフ:「今からですと、15時15分からになります」
 稲生:「おー、空いてた空いてた。じゃ、その時間でお願いします」
 スタッフ:「かしこまりました」
 マリア:(それでももう午前中は埋まってるんだ……)

 目を丸くするマリア。
 キョロキョロするルーシー。

 マリア:「何を探してるの?」
 ルーシー:「新幹線」
 マリア:「後で勇太に連れて行ってもらおう」
 ルーシー:「勇太なら知ってるの?」
 マリア:「開業当時、イブキ……勇太の使い魔のシルバーフォックス(妖狐)と一緒に来たことがあるとか言ってたよ」
 ルーシー:「ガイドがいると楽ね」

 2人の魔女が話していると、稲生が戻って来た。

 稲生:「お待たせしました。機関士と機関助士の体験で申し込みました」
 ルーシー:「私は見ているから勇太とマリアンナでやってきたら?」
 マリア:「わ、私はライセンス持ってないよ?」
 稲生:「いや、僕も持ってませんよ」
 ルーシー:「それより、新幹線を見たいんだけど?」
 稲生:「分かりました。早速行きましょう」

 本館内のヒストリーゾーンを行く。
 途中にモハ40系などの旧型電車も展示されているが……。

 稲生:「前に乗ったことのある車両ばっかりですね。確か前、威吹の家に行く時に乗った魔界高速電鉄、モハ40系だったような気がする」
 マリア:「あのディーゼルカーやブラウンの客車も、冥界鉄道公社で乗ったことがあるような気がする」
 稲生:「座席の硬い3等車ですから、寝られなかったですね」
 マリア:「師匠は『貨車よりマシ』なんて言ってグースカ寝てたどな」
 ルーシー:(さり気なく『ghost train』乗車体験を披露するイリーナ組……)

 但し、ガチの暴走幽霊電車(埼京線205系)に乗ってしまった時の体験はあまり語らない稲生だった。

 稲生:「あそこにあるのが0系のカットボディと200系まるまる先頭車展示です」
 ルーシー:「あれよ!私が実家で聞いたの!」

 しかし稲生は……。

 稲生:「おっ、485系のボンネット!しかも特急“ひばり”、仙台行き!」

 
(“天国と地獄”では、この方向幕の下の小窓から金を投げ落としていましたな)

 稲生はしっかり写真を撮った。

 稲生:(これも何気に魔界高速電鉄……は、せいぜい近郊型までしか持ってないからダメか。冥界鉄道公社辺りが走らせてくれないかなぁ……)

 リバイバル運転ではなく、幽霊列車での運転を望む辺り、稲生もそろそろ普通の人間の感覚を失いつつある。

 マリア:「勇太!早く来て!」
 稲生:「はいはい!今行きますよ!」

 稲生は側面方向幕の写真だけ収めると、急いで0系のカットボディに向かった。
 秋葉原の交通博物館から持って来た展示品で、向こうでは車内に入ることができなかったが、こっちでは入ることができる。

 ルーシー:
 マリア:「随分、運転台が高い位置にある」
 稲生:「そうですね。今の新幹線はここまで高くないです。ステップが小さいから気をつけて」

 運転台に上がって写真を撮るルーシー。

 稲生:「そのマスコンも実際に引っ張れるらしいですよ」
 ルーシー:「マジ!?」

 ルーシーはマスコンを掴んで引こうとしたが……。

 ルーシー:「重い!」
 稲生:「重いですか?……あ、ホントだ。重い」

 展示品だからかもしれないが、205系のマスコンより重かった。
 因みにブレーキハンドルは取り外されていて無い。

 ルーシー:「父は高速鉄道への乗務を夢見ていたの。まさか娘が日本で、日本の新幹線の運転台に上がるとは思っていなかったでしょうね」
 マリア:「でしょうね」
 稲生:「車掌スイッチがここにある。……ああ、乗務員室窓が手前に開くタイプは0系からだったのか」

 満足して0系の運転台をあとにする。

 稲生:「次は200系を見てみましょう。もっとも、こちらは客室には入れますが、運転台には入れません」
 マリア:「……だって。残念だね」
 ルーシー:「見た目が同じだから多分、運転台の構造も同じでしょう」

 側窓の大きさや寒冷地対策の有無などでディテールに違いはある。
 3人席に座ってみると……意外にフカフカであることが分かる。
 但し、厚ぼったいクッションである為、ただでさえE5系よりも狭いシートピッチ(E5系普通車が107cm、200系は98cm)である為に圧迫感は少々ある。

 稲生:「あのー、ルーシーさん」
 ルーシー:「なに?」
 稲生:「さっきからお父さんのことを過去形で喋ってますけど、もしかして……」
 ルーシー:「ああ……うん。殉職して今はこの世にはいない」
 稲生:「……ですよね。失礼しました」
 マリア:「ていうか多分、両親共に健在な魔道士って勇太くらいのもんだよ?」
 稲生:「えっ!?」
 ルーシー:「私もあまり聞いたことないなぁ……」
 稲生:「そうだったんですか」

 これまた稲生が『新卒採用』と揶揄される所以なのかもしれない。

 稲生:「じ、じゃあ、次に行きましょう。また、新幹線の別の車両が展示されている場所がありますので」
 ルーシー:「是非よろしく」
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“大魔道師の弟子” 「鉄道博物館」

2019-06-20 09:49:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月18日09:50.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 ニューシャトル大宮駅]

 大宮駅の北端には埼玉新都市交通伊奈線、通称『ニューシャトル』の乗り場がある。
 ゴムタイヤ式の新交通システムであるが、ATCによるワンマン運転が行われており、ATOは導入されていない。
 よって、暴走事故が起こる心配はまず無い。

〔まもなく、電車が参ります。危ないですから、下がってお待ちください〕

 因みに大宮駅は1面1線。
 ここで上り電車は下りに変わり、列車番号も変わるものの、U字形路線の為、乗客が全員降りるとは限らない。
 簡易的な接近放送が流れると、今度は接近メロディが流れる。
 沿線にある伊奈学園総合高校の吹奏楽部演奏による“銀河鉄道999”を録音したものの一部が流れる。
 鉄道博物館に行く電車であることをイメージしての接近メロディであることは想像に難くないが、実際に走る電車はゴムタイヤ式の新交通システム。
 まあ、鉄輪や鉄路でなくても法律上は鉄道営業法の範疇に入るのだが。

〔「9時50分発、鉄道博物館、加茂宮、丸山方面、内宿行きの到着です。お下がりください。降りるお客様の為に、ドアの前を広く空けてお待ちください」〕

 向かって右側から小さな電車がやってくる。
 編成は6両編成だが、恐らくJR在来線や東武線の車両だと2〜3両編成分くらいしかないだろう。
 停車してドアが開くと、ここまでの乗客がぞろぞろと降りて来た。
 その後で電車に乗り込む。

 稲生:「取りあえず、ここに座ってください」
 マリア:「ありがとう」
 ルーシー:「ありがとう」

 ドア横の座席にマリアとルーシーを座らせた稲生は、その前に立って吊り革を掴んだ。
 土曜日の開業時間直前に合わせた電車なだけに、明らかに稲生達と目的地が同じであろう乗客達で車内は混雑した。
 意外なのはマニアックな施設で、さすがに日本人しか行かないであろうと思われる場所なのに、外国人の姿もそれなりに見かけたということ。
 それも中国人などは置いといて、欧米人などもいたということである。
 マリアとルーシーが目立つだろうと思ったのだが、目立つのはローブだけで、人種的には思ったほど目立っていないのが意外だ。

〔「お待たせ致しました。内宿行き、まもなく発車致します」〕

 運転士のマイクの放送の後で、ホーム側でも駅員が同じような放送を行う。
 英語放送もあるのだが、こちらは自動放送だった。
 接近メロディは賑やかなものであったが、発車に関してはベルも無く、ただ放送だけである。
 構造上、駆け込み乗車されやすいので、あえてベルを鳴らさないのかもしれない。
 というわけで、駆け込み乗車によるドア再開閉は無く、電車はスーッと走り出した。
 やはりゴムタイヤ式のせいか、少し電車の動きと揺れ方が違う。
 因みに今、稲生達が乗っているのは2000系という中堅車両。
 編成番号によって塗装が違っており、こちらは緑色に塗られた第3編成である。
 ちょうどマリアの契約悪魔ベルフェゴールのシンボルカラーということもあってか、

 ベルフェゴール:「♪」

 正体を曝け出し、電車の屋根の上に寝そべって文字通り、コウモリ形の羽を伸ばしているのだった(普通の人間には見えない)。
 架線に引っ掛からないかの心配は御無用。
 ニューシャトルは第三軌条方式なので、架線は無い。

〔この電車は内宿行きです。次は鉄道博物館、鉄道博物館でございます。お出口は、左側です。……〕

 新幹線の高架下にあるホームを出発した電車は、高架下を出ると右に大きく曲がり、上越・北陸新幹線の高架横に上がる。
 大宮駅を出た新幹線下り電車は、それまでの徐行制限を振り払うかのように最高速度まで加速するわけだが、ニューシャトルの方は時速60キロほどの速度でノンビリと走るのである。

 ルーシー:「……何て書いてあるのか分からない」
 マリア:「日本語は難しいね」
 稲生:「多分現地に行けば、英語のパンフレットも置いてあるんじゃないですかね」

 2人の魔女は稲生が既に持っていた日本語のパンフレットに目を通していたが、理解できたのは写真と英数字の部分だけらしい。
 マリアは何とか、ひらがなやカタカナまでは分かるようだが。

[同日09:53.天候:晴 ニューシャトル鉄道博物館駅→鉄道博物館]

〔鉄道博物館、鉄道博物館でございます〕

 電車がホームに入線する。
 一見して一面一線に見えるが、実は二面二線。
 上りホームは、新幹線の高架線を挟んだ反対側にある。
 予想通り、ここで降りる乗客は多い。
 ここからもうガラガラの状態になるのだろう。
 今でこそ鉄道博物館という駅名だが、それがオープンする前は大成(おおなり)という名前だった。
 ただ、副駅名として今でもその名は残っている。

 稲生:「10時オープンだから、そろそろですね」

 稲生は銀時計を見ながら言った。
 ローブの中に懐中時計を仕込んでおけば、実は腕時計より便利だと気づいた。

 ルーシー:「ちょっとトイレ」
 マリア:「今のうちに行っとく?」
 稲生:「どうぞ、行ってらっしゃい」

 まあ博物館のトイレはそんなに混まないだろうが、今のうちに行っておくのは悪くはないだろう。
 稲生は待っている間、駅構内にあるガチャを見ていた。

 稲生:(“シンカリオン”大人気だな〜……)

 雲羽:「私は100系が変形する方のアニメ世代」
 多摩:「歳がバレっぺ!w」

 しばらくして魔女2人がトイレから出て来た。
 この頃には博物館もオープンしている。

 稲生:「それじゃ、行きましょうか」

 3人は鉄道博物館へと歩を進めた。

 稲生:「えーと……Suicaを持っている僕とマリアさんは、これで入館料金を払うことができます。持っていないルーシーさんは……」

 これだけは不慣れな稲生。
 SuicaやPasmoを持っていると楽なのだが、持っていないと少し不便である。

 ルーシー:「後で記念にSuica買っておくわ」
 マリア:「日本では持っていた方が便利だよ。一部では使えない所もあるけど」

 大宮駅まで乗って来た“けんちゃんバス”とか。
 コミュニティバスあるあるネタ。
 何とか入館料を払い、早速3人は館内へ……。
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祈りとして叶わざるはなし

2019-06-19 20:40:22 | 日記
 タイトルはよく日蓮正宗で聞く言葉だ。
 布教講演とかでも聞くことが多い。
 意味は、そのままだ。
 これについては、私はあると思う。
 実際、この前の御講の際、御開扉にも参加したわけだが、この時に大御本尊様に仕事での悩み解決を必死に御祈念してみたら、ものの見事に叶ったからね。
 もちろんこれについてはトチロ〜さんや御住職の後押しもあったのだろうが、叶えて下さったからには御礼申し上げに行かざるを得まいと思ったわけである。
 普段の勤行でその気持ちをお伝えすれば良いということだが、かなり早めに叶えて下さったことから、これは直接申し上げに行くべきではないかと思った。
 といっても御開扉に参加できる休みは今月にはもう無い為、来月にはなってしまうのだが。

 今の会社に入ってから15年目になるのだが、あまりにも肌に合わなくて自らギブアップ宣言する現場に送られたのは初めてだった。
 キツい所でもポジティブに考えて、自らのスキルアップの為と頑張り、実際にそうしたつもりであったが、ある程度スキルが身に付いてくると、自分の得意分野や不得意分野がハッキリしてくる。
 で、今の現場は不得意分野だらけの所だったわけだ。
 見た目は私がアップしたスキルに見合う得意分野のように見えたのだが、いざフタを開けてみたら【お察しください】。
 これがまだ入社したてで、どれが不得意分野かも分からない状態ならチャレンジさせるところだろうが、私のような15年選手が、『いや、ここムリ』となったらそれはもう無理なのである。
 で、その悩みについてトチロ〜さんに相談し、御住職にも話をし、その後で参加した御開扉で大御本尊様にもすがってみた。
 後日、会社に直接相談したところ、上司達はかなり早めに動いてくれたというわけである。
 おかげ様で来月に異動確定。
 新天地についての概要を聞く限りでは、今度こそ私の得意分野を生かせる現場であるようだ。

 ギブアップしたから人事考課には響くだろうと思ったのだが、今の現場での評価はやっぱり低いらしい。
 まあ、不得意分野の目立つ所だったから、さしたる活躍もできなかったし、これからもそういう活躍ができる自信が無かったからそれはしょうがない。
 ところが会社側としては、何か大きなミスをして処分されるわけではないから、その点でマイナス評価にはしないという。
 むしろ、『自分の力量を見極め、早めに申し出てくれたおかげでこちらも早く動けた』とのことだった。

 ある程度長く所属して、しかも見た目にスキルアップしたと分かる資格を取り揃えておけば、多少の融通も会社は利かせてくれるようである。
 先月は往復高速バス、今月はカイドウさんの車で往復したから、来月は往路だけでも新幹線に乗ってみようと思った。
 既に復路の高速バスのチケットはゲットしてある。
 順番逆ではないかと思われるだろうが、東京から新富士駅までなんて自由席で十分だし(とある信徒さんは例外であるようだが)、しかし高速バスは全席指定なのだから、押さえる順番としてはやはり高速バスが先ってことになるだろう。

 いずれにせよ、来月までは月一登山の誓願は守られることとなる。
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