報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「未知の花、魅知の旅」

2019-06-22 19:01:51 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日13:22.天候:晴 福島県福島市栄町 JR福島駅・新幹線ホーム]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、福島です。山形線、阿武隈急行線、福島交通飯坂線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。福島を出ますと“やまびこ”号は白石蔵王、“つばさ”号は米沢に止まります〕

 列車が山形新幹線との分割駅に接近する。
 線路配置の都合上、分割・併合を行う列車は、必ず福島駅14番線に到着することになっている。
 この下り列車はそれでいいのだが、上り列車も同じホームで行わなくてはならない為、実質的にこの駅が単線になってしまっている。
 また、上り列車においては下り副線ホームに停車する為、発車後は上り本線に入る為にポイントを渡らなくてはならない。
 これがダイヤ設定上のネックとなっているらしく、今後改善していく予定であるという。
 つまり、今は回送列車やダイヤ乱れなどの異常時を除いて使用されていない11番線が使用される可能性が出て来るということだ。
 尚、分割・併合を行わない列車は本線ホームに停車し、そもそも通過列車はホームすら無い通過線を高速で通過していくこととなる。
 2面2線のホームがあって、上りと下りのホームの間に通過線が2本あるのが福島駅なのである。
 大宮駅で言えば、臨時ホームの15番線と16番線ホームが無くて、そこが通過線みたいな感じだろうか。
 “やまびこ”“つばさ”137号は分割を行うので、ポイントを渡り、副線ホームの14番線に停車する。

〔ふくしま〜、福島です。ご乗車、ありがとうございました。……〕
〔「当駅で山形新幹線との切り離し作業を行います。6分停車致します。発車は13時38分です。発車までしばらくお待ちください」〕

 稲生:「連結を外す作業と、あとはこの間に後続の“はやぶさ”と“こまち”が高速で通過します」
 ルーシー:「見てみたい!」
 稲生:「連結外す方?通過する方?」
 ルーシー:「通過する方!」
 稲生:「さすがは分かってますねぇ。マリアさんも降りてみます?」
 マリア:「そうする。荷物見てて」
 ミク人形:「ラジャ!」
 ハク人形:「ラジャ!」

 3人の魔道師は列車を降りて、列車のいない13番線に向かった。
 とはいえ、稲生は切り離し作業の方も気になるようで……。

 稲生:(なるほど。ああやって外すのか……。今は自動解結装置があるからな……)

 などとのんびりよそ見していると……。

 ゴォッ!

 稲生:「おっ!」

 後続の“はやぶさ”と“こまち”が高速で通過していった。

 稲生:(この辺りも時速320キロか?いや、そこまでは出てないか?)

 それでもかなり速い速度で通過したことから……。

 ルーシー:「Amazing!!」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「ちょっ……ルーシー!はしゃぎ過ぎ……!(私も昔びっくりしたけどさ……)」

 ルーシーは2人の仲間をハグした。
 今や外国人観光客の目当ての中に、新幹線への乗車も含まれていることが多々あるという。
 そんなことをしているうちに、山形新幹線が発車していった。
 タイミングによっては、“はやぶさ”や“こまち”が通過すると同時に発車することがある。
 線形上、この2つの列車が線路を被ることは無いので、安全性は何も問題はない。
 因みに山形新幹線と東北新幹線、どちらが先に発車するかがネタになっていたのは“サザエさん”である。
 普通に考えれば、前にいる列車が先に発車すると分かりそうなものだが……。
 山形新幹線が発車すれば、今度は東北新幹線が発車する。
 3人は車内に戻った。

 稲生:「ルーシー、結構テンション高い人だったんだね」
 マリア:「他の魔女も基本そうだよ。ただ、他人を信用できないだけ」

 ということは、稲生も信用されるようになったということだろうか。

〔「お待たせ致しました。13時38分発、東北新幹線“やまびこ”137号、仙台行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時間になると、ホームには発車メロディが流れ出した。
 “栄冠は君に輝く”である。
 作曲者が福島市出身とのことで、その縁で発車メロディに使われているという。
 因みに在来線ホームは“高原列車は行く”である。
 高原列車のモデルとなった私鉄、磐梯急行電鉄は、今や既に廃止になっている。
 非電化鉄道なのに、社名が電鉄……w
 いや、機関車に発電機が搭載されていて、それで自家発電を行って走行しているので電気鉄道なんだと当時の会社幹部は言い張ったらしいけどw
 普通は架線か第3軌条に電気が流れているから、電気鉄道なのである。
 正に、顕正会並みの苦しい言い逃れと言えよう。

 ルーシー:「勇太!帰りは“はやぶさ”に乗りたい!」
 稲生:「えっ、マジっスか……?」
 マリア:「ちょっと、ルーシー。帰りのプランはほぼ決定しているんだから、無理言うなっての。勇太が困ってるじゃない」
 稲生:(E5系を使用した“やまびこ”じゃ誤魔化せなかったか……)

[同日14:04.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅→地下鉄仙台駅]

 再び田んぼだらけの風景に、ようやく建物が見え始めてくる。
 町並みが見えて来ると比例して、列車は速度を落として行く。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。東北新幹線、盛岡、新青森方面、仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市営地下鉄南北線と仙台市営地下鉄東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 稲生:「無事に着きましたね」

 列車は市街地の中を時速70キロほどで走行している。

 ルーシー:「この町にも拠点としている魔女はいる?」
 稲生:「いや、いないんじゃないですか。何度もこの町には来ていますが、影も形も見たこと無いですから」
 マリア:「ルーシー、大戦前のイギリスじゃないんだからいないよ」
 ルーシー:「そう。何だかいそうな感じなんだけどねぇ……」
 稲生:「もしも僕の家族が埼玉に引っ越さなければ、僕達がここを拠点にしていたかもしれませんね」
 ルーシー:「そうなの?」
 稲生:「中学まで僕、仙台に住んでいましたから。父が本社の役員に抜擢されたんで、それで埼玉に引っ越したんです」

 最初は埼玉支社の支社長に。
 それで、さいたま市に家を建てた。
 宗一郎の会社では、支社長から常務執行役員になれるらしい。
 で、今現在は東京本社の専取締役。

 ルーシー:「ふーん……。確か、商社マンか。大変だね」
 稲生:「いえいえ。それじゃ、新幹線を降りたら地下鉄に乗り換えます」
 ルーシー:「え……?」

 それまでハイテンションだったルーシーの顔が、見る見るうちに青ざめていった。
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“大魔道師の弟子” 「やまびこ137号」

2019-06-22 13:57:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日11:55.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東北新幹線ホーム]

〔23番線に停車中の電車は、12時ちょうど発、“やまびこ”137号、仙台行きと“つばさ”137号、山形・新庄行きです。グリーン車は9号車と11号車、自由席は1号車から5号車と16号車、17号車です。……〕

 東北新幹線ホームに上がると、既に23番線にはこれから乗車する列車が停車していた。
 しかしドアは閉まっており、まだ乗車できない。

〔「23番線に停車中の電車は只今、車内整備清掃を行っております。終了までしばらくお待ちください」〕

 この間、売店に行って駅弁などを購入する。

 稲生:「因みに車内販売のアイスもここで買える」
 ミク人形:「♪」
 ハク人形:「♪」
 ルーシー:「勇太、いつになったら乗れるの?」
 稲生:「あの信号が白に変わったら乗れますよ」
 ルーシー:「?」

 ホームに吊り下げられている白と赤の2灯式信号。
 確かに今は赤だ。
 で、それが白に変わる。

〔「23番線、お待たせ致しました。まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。……」〕

 旧国鉄時代から使用している信号なのか、同じものが東海道新幹線ホームにもあり、使用法は同じである。
 ドアが開いて、ホームで列を作っていた乗客達がぞろぞろと乗り込む。
 自由席は熾烈な席取り合戦だろうが、指定席の方は淡々としており、グリーン車に至っては【お察しください】。

〔「ご案内致します。この電車は12時ちょうど発車の東北新幹線“やまびこ”137号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”137号、山形・新庄行きです。停車駅は上野、大宮、宇都宮、郡山、福島です。“やまびこ”号は福島を出ますと、白石蔵王、終点仙台の順に止まります。“つばさ”号は福島を出ますと、米沢、赤湯、かみのやま温泉、山形、天童、さくらんぼ東根、村山、大石田、終点新庄の順に止まります。……」〕

 指定された3人席に座る。

 稲生:「お腹空きましたねー」

 通路側に座った稲生はテーブルを出して、その上に買った駅弁とお茶を置いた。
 マリアの人形達は荷棚の上に乗せられると、買ってもらったアイスを口にする。
 因みにメーカーは東京めいらくのスジャータである。
 新幹線で買えるアイスと言えばこれ。
 釈尊が悟りを開く前に乳粥を御供養した少女の名前から取ったのは明白である。
 概ね仏教界では好意的に捉えられており、日蓮正宗でも釈尊のことを説明される時、たまに登場したりする。
 多分、それと合わせて御供養の大事さを伝える時に登場させていたと思う(主に“妙教”辺り)。

 ルーシー:「“こだま”が止まってる」
 稲生:「ああ。すぐ隣は東海道新幹線ホームです。元々、14番線・15番線ホームも東北新幹線ホームとして使われるところだったんですが、東海道新幹線の本数が逼迫したので、そちらに転用したとか……」

 旧国鉄時代の話である。
 今の分割されたJRでは、絶対にそんなことはない。
 もちろん、旧国鉄時代の話なので、民営化後に14番線と15番線が東北新幹線に戻されるということも無かった。
 そうこうしているうちに北陸新幹線の建設が進み、今度はJR東日本側のホームが足りなくなった為、増設したというわけだ。
 しわ寄せを食らったのは、1番丸の内側にいた中央線だったりする。

 稲生:「じゃあ、いただきまーす」

 稲生は主に牛肉の詰まった駅弁を購入していた。
 それはマリアも同じ。
 ルーシーはどちらかというと魚の方が多く入ったものを買っていた。

〔「お待たせ致しました。12時ちょうど発、東北新幹線“やまびこ”137号、仙台行きと山形新幹線“つばさ”137号、山形・新庄行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 発車の時刻が迫る。
 東海道新幹線では発車メロディが流れるが、東北新幹線では未だにベルである。

〔23番線から、“やまびこ”137号、仙台行きと“つばさ”137号、山形・新庄行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色いブロックまで、お下がりください〕
〔「23番線、まもなくドアが閉まります。お見送りのお客様、お下がりください。ドアが閉まります」〕

 東海道新幹線では重低音響くブザーだが、東北新幹線では甲高い客終合図のブザーが響く。
 旧型のE2系のドアはガラガラ、ガッチャン!と随分賑やかな閉まり方をする。
 そして車内に在来線のものとはまた違うインバータの音を響かせて、列車は定刻通りに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は1号車から10号車が東北新幹線“やまびこ”号、仙台行き。11号車から17号車が山形新幹線“つばさ”号、山形・新庄行きです。途中、福島で切り離しを致しますので、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。次は、上野です。……〕

 稲生:「大宮駅までは徐行運転ですけど、そこを過ぎたら最高速度で走りますから」
 ルーシー:「何キロ?」
 稲生:「“やまびこ”だと時速275キロです」

 だいぶ速くなった。
 まだE1系やE4系が現役だった頃は時速240キロの世界だったのだが。
 鈍重な2階建て車両を排除したら、“やまびこ”でさえ、かつての“はやて”の最高速度と同じになった。

 ルーシー:「275……。うっ……頭が……!JRA……メインレース……3連単2-7-5……」
 稲生:「! ちょっと藤谷班長に電話して来ます!」
 マリア:「なに?!ルーシーも競馬の予想するの!?」

 藤谷は全く予想だにしていなかった番号だったらしいが、後でしっかり取れたとホクホク顔で電話してきたことから、ルーシーの予知能力も大したものだったのだろう。
 もちろん、分け前はしっかり頂いた稲生であった。
 尚、折伏中のケンショーレンジャー、ケンショーブルーは再び大ハズレして石化していたという。

 マリア:「ユーロスターには乗ったの?」
 ルーシー:「まだ。というか、まだ高速列車にすら乗ってない」
 マリア:「ルーシーのダディ、鉄道員だったのに?」
 ルーシー:「鉄道員は鉄道員でも、地下鉄職員だったから……」
 マリア:「そうなの!」
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