報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「再び市街地へ」

2019-06-26 18:54:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日16:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 大江戸温泉物語・女湯

 ルーシー:「こういうのがあったとは……。ネットの情報だけじゃ分からないもんだねぇ……」

 露天風呂に入るマリアとルーシー。

 マリア:「私の体の傷痕を勇太が気遣ってくれて、『それなら温泉です!』と、こういう所に連れて行ってくれたのが始まりなんだ」
 ルーシー:「なるほど。これなら傷痕も治りそうなものだ」

 その温泉の成分にもよる。

 マリア:「師匠がね、『それだけじゃなく、精神の傷も治さないとダメ』と言ってたんだ。逆に、精神の傷を治してからでないといくら温泉に浸かっても意味が無いみたい」
 ルーシー:「ゼルダもロザリーも死んじゃって、一体どうすれば……」
 マリア:「(師匠が言うには、『女の悦びを知ること』なんて言ってたけど、多分今のルーシーじゃ……)大丈夫、きっと何とかなるって。また新しい後輩が入ってくればいいのよ」
 ルーシー:「それがいつになるか分からないから……」
 マリア:「まあまあ。それじゃ、そろそろ上がろうかな」
 ルーシー:「待って。まだ100まで数えてない」
 マリア:「えー?うるさいなー」

 100まで数えた2人。
 白い肌が温浴効果によって赤くなっている。

 ルーシー:「せっかくゆっくりしたと思うのに、パジャマじゃなく、また普通の服を着ないとダメって面倒くさいね」
 マリア:「しょうがない。師匠達を迎えに行かなきゃいけないんだから。ていうか、またあの地下鉄に乗ることになると思うけど大丈夫?」
 ルーシー:「えっと……。先生をお迎えに行く為だから、負けていられない」
 マリア:「そう。せめて帰りは別のルートを使えないか、勇太に聞いてみるよ」

 雲羽百三:「はい、OK!」
 多摩準急:「次は『稲生勇太と合流し、鶴巻バス停から宮城交通に乗るシーン』行こう!」
 ケンショーグリーン:「ハァハァ……!か、カントク……!わ、私の登場シーンは無いのですか!?」
 雲羽:「あぁ?」
 グリーン:「私のエロカッコ良さは、きっとこの作品に華を……嗚呼」
 多摩:「女湯のシーンに出てぇだけだろが」
 雲羽:「トチロ〜さんから出演禁止令出たんだからしょうがないだろ」
 多摩:「オマエはブルーと同じく、あそこのパチ屋にでも行ってろ」
 AD:「それじゃあ、次のシーン行きまーす!」
 グリーン:「嗚呼!そんな御無体な……!」
 雲羽:「どっか行け早く!“慧妙”のアポ無し折伏隊呼ぶぞ」
 多摩:「そこは報恩坊じゃねーのかよw」

[同日17:13.天候:晴 同地区 ミヤコーバス鶴巻バス停]

 雲羽:「それじゃ行こう」
 AD:「本番いきまーす!5、4、3、2……」

 🎬カチン!

 稲生:「そろそろバスが来ます。また地下鉄に乗る予定ですけど、大丈夫ですか?」
 ルーシー:「トラウマに立ち向かうのもまた修行……」
 マリア:「もう魔道士なんだから、テロくらいじゃ死なないよ。今は師匠の庇護下にあるしね」

 その代わり、受けた傷は体に残ってしまう。
 エレーナがマフィアと戦った時に受けた銃弾の痕とか。
 その為、マリアが人間時代に受けた暴行の痕が消えたことに対し、門内各所から注目を受けたというわけだ。
 それで実際来日したのが、ルーシー達だった。
 実質的には、ほとんど日本観光になってしまっているが。

 稲生:「あのバスだ」

 往路とは違い、別のバス会社のバスがやってきた。
 もっとも、オレンジ色のLED表示機には『荒井駅』と書いてある。
 仙台市営バスは大型車であるが、ミヤコーバスは中型のワンステップバスがやってきた。

〔「荒井駅行きです」〕

 バスに乗り込むと車内には5〜6人ほどの乗客が乗っていた。
 1番後ろの席に並んで座る。
 このミヤコーバス荒井多賀城線は土休日しか運転しない路線バスで、アウトレット仙台港や松島水族館から移転したうみの杜水族館を経由して来た為、その辺りの乗客だろう。
 鶴巻バス停から乗ったのは稲生達だけであった。

〔「発車します。ご注意ください」〕

 バスが走り出す。
 冬ならもう真っ暗という時間帯だが、この時期は6月の夏至に向けてまだまだ外は明るい。

〔次は岡田西町、岡田西町でございます〕

 稲生:「先生が仰るには直接ホテルに行くのではなく、仙台駅周辺で夕食を取りたいということでした」
 マリア:「師匠の奢りか。日本のセレブから相当せしめたかな?」
 ルーシー:「そういうこと言わないの」
 マリア:「店選びは勇太の仕事だよ?」
 稲生:「分かってますよ。日本食レストランをメインに選びました」
 マリア:「まあ、そうなるかな」
 ルーシー:「日本に来てまでローストビーフを食べたいとは思わないでしょ?」
 マリア:「そりゃそうよ。勇太だって、イギリスに行って寿司を食べたいとは思わないでしょ?」
 稲生:「あー、確かに。むしろローストビーフ食べたいです」
 マリア:「そういうものよ」
 稲生:「てか、ロンドンに寿司屋あるんですか?」
 マリア:「あるよ」
 ルーシー:「あるよ」

 探せばあるだろう、そりゃあ……。

[同日17:30.天候:晴 仙台市若林区荒井 仙台市地下鉄荒井駅]

〔本日もミヤコーバスをご利用くださいまして、ありがとうございました。次は終点、荒井駅、荒井駅でございます。……〕

 西日が車内に差し込む頃、バスは荒井駅前に到着した。

 

 稲生:「日曜日だから夕方のラッシュは無いですね。だからバスも地下鉄も空いてる」
 マリア:「混んでるよりはマシだね」

 バスを降りた乗客達は殆どが荒井駅の構内に入って行った。
 もちろん、稲生達もそうする。

 マリア:「大丈夫、ルーシー?」
 ルーシー:「ええ。何とか」

 既に出発ホームに停車している電車。
 まだ各車両には数えるほどの乗客しか乗っていない。

 

 

〔お知らせ致します。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
〔「17時37分発、仙台方面、八木山動物公園行きです。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 始発駅で空いていたので、青い座席に並んで座る。
 ルーシーは片手でマリアの手を掴み、もう片手は座席脇の手すりを掴んでいた。
 因みに最後尾に乗っているのだが、それは1番テロに遭いにくい車両だからだ。
 2005年に起きたロンドンの地下鉄テロでも、爆破されたのは先頭車やそこから2両目である。
 日本の地下鉄サリン事件でも、最後尾は直接やられることはなかった。
 もっとも、この東西線はたったの4両編成なので、あまり変わらないかもしれない。
 え?東京メトロの支線は3両編成だって?
 支線はそもそもテロの対象にはならない(利用者が少なく、被害が大きくならない為。オウムやイスラム過激派でさえ、支線は眼中に無かった)。

〔2番線から、八木山動物公園行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 発車サイン音が鳴り、車両のドアとホームドアが閉まる。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 利用者の少ない駅で駆け込み乗車は無く、電車はすぐに走り出した。

〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前でございます〕
〔The next stop is Rokuchonome station.〕
〔本日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様にお願い致します。……〕

 稲生:「先生達、新幹線で来るみたいですね」
 マリア:「そりゃそうでしょ」
 稲生:「それも“はやぶさ”だ。さすが狙い所が違いますね」
 マリア:「勇太の影響かもな」
 稲生:「ええっ?」
 ルーシー:(“はやぶさ”……?)
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“大魔道師の弟子” 「ルーシーの過去」

2019-06-26 14:00:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日15:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台]

 マリア:「ちょっ……!ルーシー!?何してんの!?」

 ルーシーが稲生に背中を向けてTシャツを脱ぎ捨てたのと、マリアがトイレから出て来たのは同時だった。
 しかしお構いなしに、今度はブラジャーも取る。
 だが、その時点で普通の女性とは大きな違和感があった。
 それは全身にタトゥーが入っていること。
 最初は変わったタトゥーだなと思った稲生だが、実はそうではないことに気づいた。
 それは火傷の痕。
 それも、全てが十字架の形をしていた。

 ルーシー:「これが私のトラウマ。前はさすがに見せられないけど、前にも同じようにある」
 稲生:( ゚д゚)
 マリア:「いいの?勇太に見せちゃって……」
 ルーシー:「ここまで来たら、もういいでしょ」
 稲生:「な……何ですか、それは?」
 マリア:「ほら、早く服着て」

 マリアはルーシーにブラジャーとTシャツを渡した。
 ルーシーをそれを着けながら話す。

 ルーシー:「私が小さい時から強い魔力を持っていて、それが制御できずに暴走させていたという話はしたでしょ?」
 稲生:「ええ、まあ……」

 稲生の場合は霊力。
 暴走させることはなかったが、常人には見えない幽霊や妖怪の類が見えたせいでそれらから襲撃されることは多々あった。
 極めつけは威吹の封印を解いたことだ。
 江戸時代の巫女が掛けた封印を、ただの中学生だった稲生が触っただけで解けるほどに霊力が強かったのである。
 ルーシーと明暗が分かれたのはその辺り。
 威吹も最初は稲生の霊力を目当てに近づいたものの、結果的には他の妖怪からの攻撃をブロックする役割をしてくれた。
 しかし、ルーシーの前にはそのような者は現れなかった。

 ルーシー:「何度も教会からは悪魔祓いの勧告を受けて、それを何度もやったんだけど結局ダメで……」
 稲生:「ま、そりゃそうでしょうね。あんな外道で何ができますか」

 日蓮大聖人の仏法のみ、力を制限することができる。
 しかし間違ったものは却って暴走を引き起こす。
 顕正会の仏法が正にそうだった。
 妖怪側(威吹を含む)から見れば、株価の急上昇並みに美味しい現象であったが、上げられる方はたまったものじゃないと。
 日蓮正宗に入ってからは安定化したが、威吹にとっては『(´・ω・`)ショボーン』であった。

 ルーシー:「ついには過激な教会に魔女として捕まって、『お前は悪魔の子だ!』と言われて、焼けた十字架を何度も押し付けられたの」
 稲生:「うわ……!これだから外道って怖いんですよね」
 マリア:「正に教会の方が悪魔の所業だ」

 稲生はあくまで『伝統仏教以外の宗教』という意味で外道と言っていたのだが、マリアとしては世間一般的な意味合いの外道(人の道を外れた)という意味で言っている。

 ルーシー:「その神父からは、『必ずや周囲に呪いをもたらすこととなるだろう。一生、地下室から出てはならぬ!』と言われた。けど、私は出た」
 稲生:「ああ、出ていいですよ。何の権限があってそんなこと言ってるんですかね!」
 マリア:「日本人には分からないと思うけど、地域によっては教会の力は絶対的な所があるよ。勇太の所だって、寺の住職の言葉は絶対だろ?」
 稲生:「ま、まあそうですね。(でもそれを過信した結果が、正信会……)」
 ルーシー:「でも出たら、大変なことになったの」
 稲生:「それは、いつの話ですか?」
 ルーシー:「2005年頃……」
 稲生:「ロンドンの地下鉄とバスがいくつも爆弾テロを受けた年ですね。ルーシーさんは、それに巻き込まれたんですね」
 マリア:「何だって!?」

 ルーシーは小さく頷いた。

 ルーシー:「地下鉄で働いていた父を頼って、そこへ向かったの。そしたら……」
 マリア:「テロに巻き込まれたか……」
 ルーシー:「あの神父の言う通りになってしまった……。私が我慢して地下室にいれば、あんなことには……」
 稲生:「いやいや、あれはイスラム過激派のテロでしょう?これだから外道はダメなんですよ」
 マリア:「“魔の者”が神に成り済まして、カルトに陥ったヤツを唆してテロをさせることもある。多分それだろう」
 稲生:「僕、仏教で良かった。仏様は夢に現れることはないからなぁ……」
 マリア:「ルーシーのダディはそれで?」

 ルーシーは小さく頷いた。
 しかしルーシー自身も瀕死の重傷を負い、生死の境をさ迷ったのだが、気がついたら同じロンドンの西、イングランドの片田舎にいた。
 ルーシーを拾ったのが、今の師匠ベイカーだった。

 稲生:「マリアさんと言い、この門流は新弟子入門として死を潜り抜けさせるんですね」
 マリア:「そうすることで、『人間としての人生を終え、魔道士としての人生を始める』という儀式の代わりなんだ。私の時もそうだった」

 もちろん、本当に死を体験するわけではない。
 マリアの場合は飛び降り自殺を図るわけだが、地面に激突する寸前、イリーナに魔法で阻止された。
 当然そこでイリーナが魔法を使わなければ間違いなく死んでいただろう。
 そうすることで、『人間としての人生を終えた』ということにしたわけである。
 ルーシーの場合、病院に運ばれる前にベイカーが魔法で召喚したらしい。
 つまり、病院で治療を受けなければ『人間としての人生を終えた』ということにしたわけだ。

 稲生:「ルーシーさんが地下室や地下鉄にトラウマがあるのはそれだったんですね」

 エレーナやリリィにはそれが無いし、特に後者は暗くてジメジメした所が好きなのでむしろパラダイスなのだが、ルーシーはそれではパラダイスとは絶対に言えないだろう。

 稲生:「僕の場合はそれが無かったですね。それで『新卒採用』なんて言われるんだ」
 マリア:「いや、勇太だってあったよ」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「魔王城決戦の直前、勇太、地獄界に行って戻って来れなかったじゃない!最後はバァルの爺さんが特別に戻してくれたけどさ」
 稲生:「あっ……!」
 マリア:「師匠的にはあれだよ、きっと」

 魔王城決戦では、日本やイギリスのような立憲君主制を掲げる新政府軍と、北朝鮮のような絶対王制(え?北朝鮮は違う?いやいや、実質的にそうだろ)を掲げる旧政府軍の最後の決戦の場になった(大統領制を求める声は無かった)。
 最終的には新政府軍が勝利するわけだが、旧政府(魔界帝国アルカディア)側のリーダーだった大魔王バァルが稲生を地獄界から戻し、自身は大師匠ダンテと共に冥界へと向かった。

 稲生:「あー、なるほど!」
 ルーシー:「実際に地獄まで逝った勇太が1番凄いんじゃないの!?」
 マリア:「今度、勇太に『新卒採用』なんて言いやがったヤツにはそう言ってやる」
 ルーシー:「う、うん。その方がいいよ」

 実は最初、ルーシーも稲生にそう言おうとしていたらしい。
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“大魔道師の弟子” 「目的地に到着」

2019-06-26 10:25:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月19日15:04.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 鶴巻バス停→ホテルキャッスルイン仙台]

〔「鶴巻です」〕

 稲生達を乗せた市営バスが県道23号線沿いにあるバス停に停車する。
 片側3車線で、頭上には仙台東部道路という高速道路も通っているような幹線道路である。
 地元では『産業道路』と呼ばれ、日曜日であっても大型トラックの姿が見えないことはない。
 埼玉県さいたま市にも同じ名前の県道が通っているが、規模は【お察しください】。
 恐らく、意味合いが仙台とは違うのだろう。
 ここまで来ると、もう乗客は稲生達しかいない。

 稲生:「あそこですよ、目的地」

 バスを降りた稲生は、目的地を指さして言った。

 マリア:「前来た時と同じだな」
 ルーシー:「もう少し派手に飾ればカジノみたいね」
 稲生:「ま、実際似たようなものなんですが」

 稲生は咳払いして答えた。

 稲生:「それじゃあ行きましょう」

 バス停から歩いて5分くらい歩くと、コロナワールド仙台の敷地内に入る。
 日曜日なので駐車場は満車に近い。

 ルーシー:「ショッピングモールがこの中にある?」
 稲生:「いや、無いですね。あるのは目的の温泉とレストラン、ゲームセンターにパチンコ……あ、作者がパチンコ屋に入ってった。あとはボウリング場があるくらいです」
 ルーシー:「なるほど……」
 稲生:「ホテルは向こうです。先にチェックインして荷物置いて行きましょうよ」
 ルーシー:「そうする」
 マリア:「どうした、ルーシー?」
 ルーシー:「いや……。ヨハネスブルグのショッピングモールみたいなものかなと思ったんだけど、違うみたいね」
 マリア:「南アフリカは行ったんだ」
 ルーシー:「うん」

 イギリス人魔道士の中に、歴史の勉強と称して大英帝国時代の植民地巡りが行われているらしい。
 なので、アフリカにはよく行く。
 香港やインドなどは敵対組織(東アジア魔道団など)が押さえており、危険なので行かない。

 ルーシー:「次はケニアに連れて行ってもらう予定」
 マリア:「……うちの師匠はロシア人だから行かないだろうなぁ」
 ルーシー:「サハリンとかエトロフ島とか……あっ」
 稲生:「あ?何だって!?」(日本語でツッコむ)
 マリア:「マズいことに、新弟子が日本人だから尚更行けないの」
 ルーシー:「……了解」

 ホテルに入る。

 ルーシー:「おっ、エレーナのホテルより広くてきれい」
 マリア:「そりゃそうでしょw」
 稲生:「じゃあ、チェックインしてきます」
 マリア:「あっ、ちょっと待って。師匠からだ」

 マリアはローブの中から水晶球を出した。

 稲生:(あのローブのポケットは魔法的な意味で『四次元ポケット』なんだろうなぁ……)
 マリア:「……えっ、夕方ですか?……分かりました。じゃあ、勇太に伝えておきます。……はい」

 マリアは水晶球の通信を切った。

 マリア:「師匠とベイカー先生、今夕合流したいって」
 稲生:「えっ、東京で?」
 マリア:「いや、この町で。だから、迎えに来て欲しいらしい」
 稲生:「分かりました。じゃあ、そうしましょう。まだ、温泉に入れる時間はありそうですね」
 マリア:「それは大丈夫。で、師匠とベイカー先生の部屋も確保して欲しいらしいんだけど、部屋空いてるかな?」
 稲生:「ツインでいいんですよね?ちょっと聞いてみましょう」
 マリア:「よろしく。上手く行けば、勇太の宿泊代も出してくれるかもよ?」
 稲生:「既に父親から出してもらってるんですけど……」

 そう言いつつ、稲生はフロントに向かった。
 チェックインの前にツインが1つ空いているかどうかだが、さすがに日曜日に宿泊して月曜日に出発する客はあまりいないせいか、それはいとも簡単に確保できた。
 あまりの呆気無さに拍子抜けしたほどだ。
 気を取り直して、今度は自分達のチェックインの手続きをする。

 稲生:「それじゃ、これが鍵です。行きましょう」

 エレベーターで客室フロアに向かう。

 稲生:「温泉は部屋にあるタオルを持って行くだけでいいみたいです。フロントに立ち寄れば、宿泊者専用出入口のカードキーがもらえるようですね」
 マリア:「なるほど。分かった」

 客室フロアで一旦別れ。
 稲生はシングルルームのエリアへ……。

 ルーシー:「ん?勇太とマリアンナが一緒の部屋じゃなかったの?」
 稲生:「え?」
 マリア:「えっ!?……いや、違うよ」
 稲生:「もちろん、ルーシーさんとマリアさんでツインですけど……」
 ルーシー:「あ、そう。もうセ【ぴー】したんだったら、遠慮しなくていいのに……」
 マリア:「さすがに師匠も後で来るのに、それは無いだろう」
 ルーシー:「ふーん……」
 稲生:「まだ先生には報告してないんです」
 ルーシー:「いや、大魔道師相手なら、もうとっくにバレてると思うよ?イリーナ先生のことだから、恐らく目を細めておられるだろうけど、今の今まで何のお咎めも無いんでしょ?だったら大丈夫だと思うな」
 稲生:「ベイカー先生も来られますから……」
 ルーシー:「まあ、それもそうか」
 マリア:「ルーシーの所も厳しいのかい?」
 ルーシー:「真面目にやっていれば何も問題無いよ。マリアンナの所がユル過ぎるだけ」
 マリア:「いや、それは分かるけどさ……」

 取りあえず当初の予定通り、稲生がシングルに泊まることにした。

 稲生:(あー、ビックリした。多分、マリアさんがルーシーさんに喋ったな。ガールズトークはこれだから怖い)

 部屋に入って荷物を置く。

 稲生:「えーと……バスタオルとフェイスタオル。これだけ持って行けばいいのか」

 さすがに寝巻で向かうのは反則か。
 準備をすると、今度はマリア達の部屋に向かった。

 稲生:「稲生です。準備はどうですか?」

 ドアを開けたのはルーシーだった。

 ルーシー:「私は大丈夫。入って」
 稲生:「はい」

 ルーシーは白いTシャツにナイロンの黒いショートパンツに着替えていた。

 ルーシー:「マリアンナは今、トイレに行ってる。その間にちょっと見て欲しいものがあるんだけど?」
 稲生:「あ、はい。何ですか?」

 するとルーシーは稲生に背中を向けると、いきなりTシャツを脱ぎ始めた。

 稲生:「ちょちょっ……!?」
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