報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ルーシーの退院」

2019-06-12 19:07:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月16日10:00.天候:雨 東京都台東区 とある総合病院]

 稲生とマリアはルーシーの退院の時間に合わせて、件の病院にやってきた。

 稲生:「あいにくの雨でしたねぇ……」
 マリア:「これも“魔の者”の嫌がらせじゃないだろうな」
 稲生:「まさか……」

 そんなことを話しながら、入院病棟に向かう。

 イリーナ:「やあやあ、よく来てくれたねぇ」

 イリーナは目を細めて2人の弟子をハグした。

 稲生:「せ、先生……!」

 イリーナの巨乳に挟まれる稲生。

 マリア:「師匠、勇太にはそれやめてください」

 ハグは欧米人にとっては当たり前の行為だが、それが稲生の下半身には毒だということをマリアは知っていた。

 イリーナ:「お〜、ゴメンね。ちょっとテンション上がっちゃってねぇ!」
 稲生:「先生、それよりルーシーは?」
 イリーナ:「ちょっと今、着替え中。見る?」
 稲生:「いえ、結構です!後が色々怖いんで
 イリーナ:「あらそう。見たら結構面白いのに」
 マリア:「師匠、不謹慎ですよ」
 イリーナ:「ゴメンゴメン」
 稲生:(面白いって何だろう???)

 しばらくしてルーシーが病室から出て来た。

 マリア:「ルーシー、治って良かったね」
 ルーシー:「マリア、心配掛けてゴメンね」

 こちらの魔道士2人のハグは、特にエロさは無い。

 イリーナ:「さてと、私は入院代を払って来ようかね」
 稲生:「大丈夫なんですか?」
 イリーナ:「こっちにはプラチナカードがあるでよ〜、なんてね」
 稲生:「さすがです」

 マリアでも、渡されているのはアメリカンエキスプレスの一般カード(グリーンカード)なのに。

 イリーナ:「早くブラックカードをもらって、戦車でも買いたいね〜」
 稲生:「どことどこの国を戦争させるつもりですか!」
 イリーナ:「勇太君には新幹線1台買ってあげねからねー」
 稲生:「E5系の変形ロボットタイプをお願いします」
 イリーナ:「シンカリオンはさすがに買えないなぁ……」
 マリア:(何の話してるんだろう……?)

[同日10:50.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 その後稲生達は病院前からタクシーに乗り、一先ずはワンスターホテルに行くことにした。
 フロントガラスの上をワイパーが規則正しく動く中、タクシーはホテル前に到着した。
 ここでもタクシー代はイリーナがカードで払う。

 ルーシー:「先生!」
 ベイカー:「ルーシー、無事で良かったわね」

 ホテルのロビーに入ると、ソファには1人の魔道師が座っており、ルーシーを見つけると立ち上がってハグをしてきた。

 ルーシー:「先生、ごめんなさい!私、ゼルダとロザリーを助けられなかった……!」
 ベイカー:「しょうがないわよ。あなた1人だけでも無事で良かったわ」
 マリア:「ベイカー先生、お久しぶりです。イリーナ組のマリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットです」

 マリアは片膝をついて上席者たる大魔道師に挨拶した。
 相手はイリーナやアナスタシアと同等なのである。

 稲生:「同じくイリーナ組の稲生勇太です」

 稲生も挨拶をした。
 が、またもや日本式の御辞儀をしてしまっている。
 本来は片膝をついて挨拶をするのが、ダンテ門内では常識。
 だが、ベイカーはさほど気にする様子は無い。

 ベイカー:「ベイカー組のアネット・ベイカーです。よろしくね」

 イリーナが長身のモデルスタイルなのに対し、ベイカーに関してはふっくらとして眼鏡を掛けている。
 どちらかというと、ベイカーの方が家庭的な雰囲気を感じる。

 ベイカー:「ああ、因みにダンテ門内にはもう1人アネットという者が弟子持ちをしているから、名前被りする場合は名字の方を組名にするのね」

 という補足説明を忘れない。

 イリーナ:「やあ、ゴメンゴメン。あの運転手、英語通じなくてさぁ……。ロシア語はさすがに分からないだろうけど」

 やっとイリーナがタクシーから降りて来て、ホテルに入って来た。

 マリア:「自動通訳魔法具は?」
 イリーナ:「ルーシーの荷物の中に入れちゃった」
 ルーシー:「えっ、私の?!」
 オーナー:「皆さん、もしよろしければ会議室が空いていますから、そちらをお使いになっては如何でしょうか?」
 イリーナ:「それもそうね。そっちに移動してお話ししましょう」
 稲生:「はい」

 魔道師達はホテル1階奥の会議室に移動した。

 ベイカー:「あのレストランがキャシーが経営しているお店なの?」
 イリーナ:「そうよ。結構、繁盛しているみたい」
 ベイカー:「魔法薬を料理の材料に転用するなんて、さすがキャシーね」

 貸会議室はそのレストランの手前にある。

[同日12:00.天候:雨 同ホテル1Fレストラン“マジックスター”]

 店員:「いらっしゃいませー。何名様でございますか?」
 稲生:「5名です」
 店員:「かしこまりました。それではあちらのテーブル席へご案内致します」

 店員には褐色肌の女性店員が多い。
 それもそのはず。
 その正体はキャシーの使役する使い魔のカラスだからだ。
 “ベタな魔女の使い魔の法則”にはいくつかあるが、黒猫の他にカラスもその1つである。

 稲生:「この時間はランチタイムですね」
 ベイカー:「遠慮しないで好きな物食べてね。ここは私が御馳走するから」
 稲生:「あ、ハイ。ありがとうございます」
 マリア:「ありがとうございます」

 そしてその売り上げで同門の者が潤う。
 正に相互扶助の精神である。
 創価学会もそのようにして結束力を高めていったのだろう。

 稲生:(それにしても……)

 稲生はサービスランチのセットを注文してから、会議室内でのことを思い返していた。
 サービスランチは客寄せのサービス商品という位置づけであることから、普段のグランドメニューのものより安くなっていたり、そもそもそこには載っていない限定商品であったりする。
 会議室に入ると、イリーナとベイカーが魔法陣を描き、そして稲生も含めて全員でその魔法陣を取り囲んで儀式を執り行った。
 言葉はラテン語を喋っていた為、稲生には何のことが分からなかったが、恐らく死んだゼルダやロザリーに対する魔道師達の追善供養だったのだろうと思われる。
 稲生は稲生で日蓮正宗信徒として2人の追善供養、つまり塔婆供養を行ったが、イリーナ達は同門の者としてそれに則った追善供養の儀式を行ったというわけだ。
 まあ、魔道師達が立場上、神に祈るわけがないので、謗法にはならないだろうが……。
 あと強い口調で何か言っていたが、それは恐らく、この事態を引き起こした“魔の者”に対する呪詛か何かだったのかもしれない。
 ま、稲生達としては仲間を2人も無残に殺されたわけだから、呪いの言葉の1つや2つ吐きたいものであるが。

 マリア:「ルーシーはいつ帰国するんですか?」
 ベイカー:「そうねぇ。私がせっかく日本に来たわけだから、ここにいる仲間達に挨拶してから帰りたいわ。幸い、ナスターシャもこっちにいるみたいだしね」
 イリーナ:「ナスっちは神出鬼没だからねぇ……」

 アナスタシアのことである。

 イリーナ:「アタシからベイカーが来てるから、ちょっと日本から出るのは待っててって言っておこうか?」
 ベイカー:「そうね。そうしてくれると助かるわ。だから、あと2〜3日ってところね。それまでの間、ルーシーはマリアンナ達と楽しくやってなさい」
 ルーシー:「はい、分かりました」
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“魔女エレーナの日常” 「先行」

2019-06-12 15:03:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月16日08:15.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「ちっ、今日は雨か。ツイてないぜ。これじゃホウキで飛べないぜ」

 エレーナはホテル屋上に出て、天候を確認した。
 そして再びフロントに戻る。

 エレーナ:「それじゃオーナー、ちょっと出掛けて来ますので」
 オーナー:「ああ。今日の夜勤のシフトには入れるんでしょ?」
 エレーナ:「それは大丈夫です」
 オーナー:「それならいいよ。行っといで」
 エレーナ:「それじゃリリィ、行くよ」
 リリィ:「フヒッ!……」

 何故か怯える様子を見せるリリィ。

 エレーナ:「何だ?どうした?」
 リリィ:「ど、ドアの外……」
 エレーナ:「ん?」

 ガーッとエントラスの自動ドアが開く。
 するとフロントに向かってチリンチリンとベルが鳴る。
 そんなに広いロビーでもないので別に必要無いのだが、あくまでも演出の為だ。

 鈴木:「話は聞かせてもらった!」
 リリィ:「フヒーッ!」

 リリィ、慌ててエレーナの後ろに隠れる。

 エレーナ:「(魔女……の卵を怖がらせるとは、大したヤツだぜ)今日は忙しいんだ。悪いけどデートの誘いならまた今度……」
 鈴木:「いや!話は聞かせてもらった!俺も同行させてもらう!」
 エレーナ:「どこに行くか分かってるのか?」
 鈴木:「マリアさんの友達にしてエレーナと同門でもあるルーシー・ロックウェルさんの入院先へ行くこと!」
 エレーナ:「……どこで聞きつけたんだぜ」
 鈴木:「俺も魔に狙われた以上、乗り掛かったバスだ!毒食わば丼までだ!」
 エレーナ:「『乗り掛かった舟』だし、『毒食わば皿』までだし。日本人なら、ちゃんと諺知っておくんだぜ。何故かウクライナ人の私の方が知ってるんだぜ」
 リリィ:「せ、先輩……」
 鈴木:「交通費なら出すよ?」
 エレーナ:「それならいいんだぜ。リリィ、お前もいい加減、男性恐怖症を治すんだぜ」
 リリィ:「フヒーッ!?せせ、殺生な……!」
 鈴木:「時には荒療治も必要だな」

 精神疾患の場合、荒療治は却って【お察しください】。
 確かにそれで治る可能性もあるが、素人がやった場合、成功率は作者のパチンコの確変が止まらない……ゲフンゲフン。

 鈴木:「それじゃ行こう」

 鈴木は傘を差すと、ホテルの外に出た。

[同日08:36.天候:晴 東京都台東区寿 都営地下鉄蔵前駅]

 さすがにこの時間、都心へ向かう地下鉄は混んでいた。
 但し、既存の路線と比べて混雑率はまだ低い。
 都営大江戸線は開業からしばらくの間、閑散路線ということで知る人ぞ知る存在になっていたが、そこは東京。
 年々利用者数を伸ばして来ている。

〔蔵前、蔵前。日蓮正宗妙縁寺、本行寺と法華講連合会富士会館へおいでの方は都営浅草線にお乗り換えください。本所吾妻橋が下車駅です〕

 車内に到着自動放送が流れてから、電車がホームに到着する。
 都営大江戸線にはホームドアがある為、ドアが開くまで数秒のブランクがある。

〔蔵前、蔵前。都営浅草線は、お乗り換えです〕

 鈴木:「さ、降りよう降りよう」

 鈴木達は電車を降りた。
 こうしている間にも、すぐ発車メロディが鳴っている。

 エレーナ:「車で行くんじゃなかったのか。いい加減、車の修理はまだなのか?」
 鈴木:「オカンが新車買うって言ってたから、納車がまだ先なんだ」
 エレーナ:「どんだけリッチなんだぜ、オマエの家は?」
 リリィ:「フヒヒ……。地下空間こそ、パラダイス……」

 地下空間を嫌うルーシーに対し、逆に暗い所という意味で地下空間を好むリリィ。
 魔界でポーリンに師事している関係で魔王城に居候しているが、そこでもあえて地下室に住んでいる。
 エレーナも人間界ではホテルの地下室を寮代わりにしていることもあり、どうやらポーリン組の弟子達は地下空間を好むようである(奇しくもホテルのある森下地区を通る鉄道は都営地下鉄しか無い)。

 鈴木:「この前の登山で、今月の小遣いがピンチになっちゃってね。タクシー代は片道だけだ」
 エレーナ:「片道分は出せるのかよ……」

 コンコースから改札口を通って、駅の外に出る。
 当然ながらまだ雨。
 3人は傘を差してバス停に向かう。

 エレーナ:「ん?そう言えば今日は平日だろ。鈴木、学校はどうするんだぜ?」
 鈴木:「今日の授業は午後からなんだ」
 エレーナ:「学校の都合か?」
 鈴木:「そうだな。午前中の担当講師が今日は休講だって。だから午後から」
 リリィ:「フヒヒ……express……」
 鈴木&エレーナ:「それは『急行』」
 リリィ:「フヒーッ!?」

[同日09:15.天候:雨 東京都台東区内 とある総合病院]

 エレーナ:「イリーナ先生、おはようございます」
 リリィ:「お、おは、おはようございます」
 鈴木:「おはようございます」
 イリーナ:「おや?うちのコ達より早く来てくれるとはねぇ……」

 イリーナは細目を少し見開いて応えた。

 エレーナ:「宿泊代の取り立てに来ました」
 リリィ:「フフフ……」
 鈴木:「えっ、そうなの!?」(;゚Д゚)
 イリーナ:「おやおや。さすがは商魂逞しいわねぇ。後でルーシーの先生が来るから、直接取り立ててみれば?」
 エレーナ:「おーっ、やっとお出ましですか。それなら話が早い」
 鈴木:(何か、偉い人が来るのかな?えーと……名刺名刺……)
 エレーナ:「ルーシーはもう治りましたか?」
 イリーナ:「ええ。あまりの現象に、お医者さんの方が倒れそうよ」
 鈴木:(本当に魔女ってのは災厄をもたらすって所は本当みたいだな)

 一緒にいると何故か不運が降り掛かって来る者がいる。
 恐らく鈴木が言いたいのはこのことだろう。
 如実にそのような現象が出ないのは、恐らく稲生も鈴木も正法の信仰をしているからだろう。
 “魔の者”の眷属から銃撃を受けた時、稲生のすぐ横にいたおかげで助かったくらいだ。

 鈴木:(本当に毒食わば何とやらってことになりそうだ)

 と、一瞬震えるが、同時に、

 鈴木:(でも、だからこそ面白い)

 とも思うのであった。
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