[7月9日11:42.JR東京駅八重洲南口]
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございました。次は東京駅八重洲口、東京駅八重洲口。終点でございます。……〕
私はそれまで記憶障害で入院していたという病院に向かい、そこで色々やってきた。
検査などもしてみたが、相変わらずの記憶喪失というだけで、それ以外は特に障害も出ていない。
その為、正式に退院しても大丈夫ということになった。
但し、ボスが本当に何か申し入れをしてきたらしいが、そこはあえて【お察しください】。
高橋:「すいません、先生。車、用意できなくて……」
愛原:「いや、いいよ、別に。あとは、このまま事務所に帰るだけだから」
高橋:「あいつらもまた、現地に向かいやがりまして……」
愛原:「一体、何だって言うんだ?」
私達はバスを降りた。
都営バスは本当に駅の入口のすぐ近くにバスが止まるので、上手く乗りこなすと便利だ。
高橋:「事務所でお話しましょう。その前に、寄る所がありますので」
愛原:「寄る所だと?」
私と高橋は駅構内を通り抜け、丸の内側へと出た。
高橋:「大した所ではありません。コンビニですよ、コンビニ」
愛原:「NEWDAYSなら、そこにあるだろう」
高橋:「あ、いえ、そこじゃないです。ま、とにかく事務所へ」
愛原:「?」
私は首を傾げた。
都営バスは反対側の丸の内側からも出ている。
もっとも、運行担当営業所は違うだろうが。
愛原:「だいぶ暑くなったな。俺の記憶が途切れる頃は、逆にクソが付くほど寒かったのに」
高橋:「携帯型の扇風機で良ければ!」
高橋はポケットの中から乾電池式の扇風機を取り出した。
愛原:「ありがとう。……いや、うん……。熱風が来るだけだから、やっぱいいや」
高橋:「そうですか。でもきっと、俺の話を聞いたら逆に寒くなりますよ」
愛原:「何だ?納涼怪談大会でもする気か?」
高橋:「近いかもしれません」
愛原:「確かにバイオハザードのゾンビ祭りも文句無しのホラーだが、あれは寒くなるホラーじゃなくて、むしろ熱くなるホラーだからなぁ……」
高橋:「でも、今度のはきっと寒くなります」
愛原:「寒くなるホラーというと……幽霊の話とかか?」
高橋:「……かもしれません」
[同日11:55.天候:晴 東京駅丸の内北口バス停→都営バス東20系統車内]
バスの中はクーラーが効いて涼しかった。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは定刻通りに発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださまいして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕
私と高橋君は1番後ろの座席に座っている。
真っ昼間のバス車内は空いていた。
というか、お腹も空いて来たな。
バスを降りたら、何か食べよう。
高橋:「少しだけ、お話しましょうか」
高橋が唐突に言った。
高橋:「先生が行方不明の間も、俺はあの仮面のクソガキを捜してました。それで、そいつをようやく見つけたんです。今、俺のチームの者が見張っててくれています」
愛原:「いいのか?相手はあのタイラントも従えていたコだぞ?何の武器も持たない状態で……」
高橋:「分かってます。あくまで見張っているだけで、手を出さないように言ってあります」
愛原:「向こうから襲って来たら?」
高橋:「全力で逃げるように言ってあります」
愛原:「それならいいか……いいのか?……まあ、いいや。で、そのリサはどこにいる?」
本名は知らない。
アメリカの『リサ・トレヴァー』という名前の少女が実験体にさせられたという話は日本にも伝わっており、コンセプトが似ていたことから、私もそう呼んでいる。
マスコミなどは、『仮面の少女』とか、ネットでは『仮面子ちゃん』と呼ばれていたが。
但し、こっちには日本人の少女なので、くれぐれも誤解の無いように。
高橋:「ここです」
高橋はスマホの画面を私に見せた。
そこに写っていたのは……。
愛原:「学校!?」
それも、随分古い。
今時、田舎に行ってもなかなか無いのではないかと思われる木造校舎の外観だった。
高橋:「はい」
愛原:「東京に、まだこんな木造校舎の学校があるなんて……」
高橋:「あ、いえ。都内ではありません」
愛原:「何だ?……はっ、まさか……霧生市!?」
高橋:「……だったら、面白かったんですがね。あいにくとあそこは『滅菌中』とかで、完全に立入禁止区域となっています。東北ですよ」
愛原:「東北?」
高橋:「ええ」
愛原:「何で?」
高橋:「今はもうとっくに潰れましたが、アンブレラには日本法人があったんです」
愛原:「それは知ってる。一応、アメリカの本体から独立して、善良な製薬会社を目指そうとはしたものの、霧生市のバイオハザードを引き起こして、結局潰れたんじゃないか」
高橋:「ええ。もしかしたら、学校を装った研究施設があるかもしれませんよ?」
愛原:「アメリカじゃないんだから、そんなことないだろう」
高橋:「とにかく、いると分かった以上、俺はそこに行くつもりです。そしてそれは、先生も行くべきなんです」
愛原:「何だか知らんが、リサがいるなら行くべきだろうな」
私は霧生市のバイオハザードから脱出する時に、リサを連れ出した。
彼女自身はタイラントと違って、どちらかというと被害者サイドではないかと思ったからだ。
だから私は連れ出した。
きっと、その方が幸せになれるだろうからと。
もし彼女が何か困っているのなら、力にならなければならない義務がある。
しかし、高橋は違う考えのようだった。
高橋:「ええ。是非、先生の手で仕留めてください」
愛原:「リサはそんなに悪い事をしたのか?」
高橋:「先生は覚えていないでしょうけどね、あの船でバイオハザードを引き起こしたのはあのクソガキです」
ちょっと何言ってるか分かんないです。
何で政府に保護されているリサが、あの船に乗ってきて、しかもバイオハザードを引き起こしたんだ???
全く、私にはワケが分からなかった。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございました。次は東京駅八重洲口、東京駅八重洲口。終点でございます。……〕
私はそれまで記憶障害で入院していたという病院に向かい、そこで色々やってきた。
検査などもしてみたが、相変わらずの記憶喪失というだけで、それ以外は特に障害も出ていない。
その為、正式に退院しても大丈夫ということになった。
但し、ボスが本当に何か申し入れをしてきたらしいが、そこはあえて【お察しください】。
高橋:「すいません、先生。車、用意できなくて……」
愛原:「いや、いいよ、別に。あとは、このまま事務所に帰るだけだから」
高橋:「あいつらもまた、現地に向かいやがりまして……」
愛原:「一体、何だって言うんだ?」
私達はバスを降りた。
都営バスは本当に駅の入口のすぐ近くにバスが止まるので、上手く乗りこなすと便利だ。
高橋:「事務所でお話しましょう。その前に、寄る所がありますので」
愛原:「寄る所だと?」
私と高橋は駅構内を通り抜け、丸の内側へと出た。
高橋:「大した所ではありません。コンビニですよ、コンビニ」
愛原:「NEWDAYSなら、そこにあるだろう」
高橋:「あ、いえ、そこじゃないです。ま、とにかく事務所へ」
愛原:「?」
私は首を傾げた。
都営バスは反対側の丸の内側からも出ている。
もっとも、運行担当営業所は違うだろうが。
愛原:「だいぶ暑くなったな。俺の記憶が途切れる頃は、逆にクソが付くほど寒かったのに」
高橋:「携帯型の扇風機で良ければ!」
高橋はポケットの中から乾電池式の扇風機を取り出した。
愛原:「ありがとう。……いや、うん……。熱風が来るだけだから、やっぱいいや」
高橋:「そうですか。でもきっと、俺の話を聞いたら逆に寒くなりますよ」
愛原:「何だ?納涼怪談大会でもする気か?」
高橋:「近いかもしれません」
愛原:「確かにバイオハザードのゾンビ祭りも文句無しのホラーだが、あれは寒くなるホラーじゃなくて、むしろ熱くなるホラーだからなぁ……」
高橋:「でも、今度のはきっと寒くなります」
愛原:「寒くなるホラーというと……幽霊の話とかか?」
高橋:「……かもしれません」
[同日11:55.天候:晴 東京駅丸の内北口バス停→都営バス東20系統車内]
バスの中はクーラーが効いて涼しかった。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは定刻通りに発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださまいして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前経由、錦糸町駅前行きでございます。次は呉服橋、呉服橋。……〕
私と高橋君は1番後ろの座席に座っている。
真っ昼間のバス車内は空いていた。
というか、お腹も空いて来たな。
バスを降りたら、何か食べよう。
高橋:「少しだけ、お話しましょうか」
高橋が唐突に言った。
高橋:「先生が行方不明の間も、俺はあの仮面のクソガキを捜してました。それで、そいつをようやく見つけたんです。今、俺のチームの者が見張っててくれています」
愛原:「いいのか?相手はあのタイラントも従えていたコだぞ?何の武器も持たない状態で……」
高橋:「分かってます。あくまで見張っているだけで、手を出さないように言ってあります」
愛原:「向こうから襲って来たら?」
高橋:「全力で逃げるように言ってあります」
愛原:「それならいいか……いいのか?……まあ、いいや。で、そのリサはどこにいる?」
本名は知らない。
アメリカの『リサ・トレヴァー』という名前の少女が実験体にさせられたという話は日本にも伝わっており、コンセプトが似ていたことから、私もそう呼んでいる。
マスコミなどは、『仮面の少女』とか、ネットでは『仮面子ちゃん』と呼ばれていたが。
但し、こっちには日本人の少女なので、くれぐれも誤解の無いように。
高橋:「ここです」
高橋はスマホの画面を私に見せた。
そこに写っていたのは……。
愛原:「学校!?」
それも、随分古い。
今時、田舎に行ってもなかなか無いのではないかと思われる木造校舎の外観だった。
高橋:「はい」
愛原:「東京に、まだこんな木造校舎の学校があるなんて……」
高橋:「あ、いえ。都内ではありません」
愛原:「何だ?……はっ、まさか……霧生市!?」
高橋:「……だったら、面白かったんですがね。あいにくとあそこは『滅菌中』とかで、完全に立入禁止区域となっています。東北ですよ」
愛原:「東北?」
高橋:「ええ」
愛原:「何で?」
高橋:「今はもうとっくに潰れましたが、アンブレラには日本法人があったんです」
愛原:「それは知ってる。一応、アメリカの本体から独立して、善良な製薬会社を目指そうとはしたものの、霧生市のバイオハザードを引き起こして、結局潰れたんじゃないか」
高橋:「ええ。もしかしたら、学校を装った研究施設があるかもしれませんよ?」
愛原:「アメリカじゃないんだから、そんなことないだろう」
高橋:「とにかく、いると分かった以上、俺はそこに行くつもりです。そしてそれは、先生も行くべきなんです」
愛原:「何だか知らんが、リサがいるなら行くべきだろうな」
私は霧生市のバイオハザードから脱出する時に、リサを連れ出した。
彼女自身はタイラントと違って、どちらかというと被害者サイドではないかと思ったからだ。
だから私は連れ出した。
きっと、その方が幸せになれるだろうからと。
もし彼女が何か困っているのなら、力にならなければならない義務がある。
しかし、高橋は違う考えのようだった。
高橋:「ええ。是非、先生の手で仕留めてください」
愛原:「リサはそんなに悪い事をしたのか?」
高橋:「先生は覚えていないでしょうけどね、あの船でバイオハザードを引き起こしたのはあのクソガキです」
ちょっと何言ってるか分かんないです。
何で政府に保護されているリサが、あの船に乗ってきて、しかもバイオハザードを引き起こしたんだ???
全く、私にはワケが分からなかった。