報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「病院へ向かう」

2018-07-13 10:35:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 しかしながら、ここ7ヶ月ほどの記憶が無い。
 目覚まし時計が鳴って、私は起床した。
 ……うん、ちゃんと昨日の記憶はある。
 昨日は飲んだくれているところを、私の弟子を自負する高橋君に保護されたんだったけな。
 私は起き上がって、寝室から出た。
 因みに、住んでいる所まで変わってしまった。
 それもそのはず。
 私は爆弾テロされた旧・事務所の一角を、そのまま居住区にしていたのだから。

 高橋:「おはようございます、先生」
 愛原:「あ、ああ。おはよう」

 高橋は私の家に住み込みで働いている。
 何でも、私を一流の探偵ということで、その一挙手一投足から勉強したいのだそうだ。
 その代わり、私の身の周りのことは何でもしてくれるとのこと。

 高橋:「もうすぐ朝飯できますんで、もう少しお待ちください」
 愛原:「分かった。ちょっと、顔洗って来る」
 高橋:「はい!」

 10代の頃は暴走族だか半グレ集団だか知らないが、そういう荒れた生活していた割には、やたら生活能力は強い。
 本人曰く、『少年院や少年刑務所で習いました』とのことだが、本当だろうか。
 今だって、手際良く朝食を作ってくれている。

〔「……次のニュースです。今年元日に太平洋沖に沈んだ豪華客船“顕正号”沈没事故ですが、その後の調査で特異ウィルスによるバイオハザードが船内で発生していたと国連組織BSAAが明らかにしました。BSAA極東支部の会見では……」〕

 高橋:「チッ!」

 高橋は舌打ちをすると、テレビのチャンネルを替えた。

 愛原:「どうした?」
 高橋:「あ、いえ。何でもありません」

 私は顔を洗って来ると、ダイニングに戻った。
 それにしても、このマンションも広いな。
 これも探偵協会が用意してくれたということだが、何だか出来過ぎている。
 どういうつもりなのか、協会に行って聞いて来る必要があるかもしれないな。
 だがその前に事務所に寄って……あ、病院に行かなきゃいけないんだっけ。
 昨夜、高野君に強く言われたしなぁ……。

[同日08:00.天候:晴 同地区 愛原の事務所]

 私達の住むマンションと事務所は、徒歩数分の御近所さんだ。

 高橋:「先生、病院に行かれるんじゃないんですか?」
 愛原:「ああ。だけどその前に、少しでもこの半年間のブランクを埋めておきたい。まずはメールからだ」

 私は事務所に入った。
 まだ、高野君は来ていなかった。
 高野君は事務員であり、基本的に私や高橋君と行動することはない。

 愛原:「ん!?」

 その時、事務所の電話が鳴った。

 高橋:「はい、愛原学探偵事務所です。……ボス!」

 ん?ボスだと?

 高橋:「……あ、はい。何の御用でしょうか?……分かりました。少々お待ちください」

 高橋は電話の受話器を私に渡した。

 愛原:「もしもし。お電話代わりました。愛原です」
 ボス:「私だ。高野君から聞いたよ。ようやく、事務所に戻ってきてくれたみたいだね?」
 愛原:「あ、こりゃどうも……。何ともはや……」

 ボスの正体については、未だに分からない。
 私が事務所を開設した時に『探偵協会の者だ』と名乗り、ボスの指示に従って動けば、事務所経営を安泰にしてくれるという。
 実際にクライアントを紹介してくれたりして、確かにその通りであったのだが……。
 探偵の仕事ってこんなんだったっけ?と、未だに疑問符を取り払えないのだ。

 ボス:「まあいい。記憶障害は残っているようだが、それ以外は特に問題は無さそうだね」
 愛原:「は、はい。今のところは……」
 ボス:「ところで、今日のニュースを見たかね?」
 愛原:「いえ、それはまだ……」
 ボス:「探偵たるもの、常に周囲の情報には敏感でなければならんぞ。今朝の朝刊でも買って読みたまえ。それと病院の方には協会の方からも話しておくから、ちゃんと行くのだぞ?」
 愛原:「り、了解しました!」

 私は電話を切った。

 愛原:「高橋君。俺は病院に行ってくる」
 高橋:「お供します!」

 言うと思った。

 愛原:「……俺の病院どこだっけ?」
 高橋:「俺がチームの者に言って、車回させますよ」
 愛原:「いや、いいよ!キミの仲間をタクシー代わりに使うな!」
 高橋:「大丈夫です。皆、先生に心酔してますんで」
 愛原:「俺、何かした?」
 高橋:「バイオハザードを2回も生き抜いたってことで、先生はちょっとした有名人ですよ」
 愛原:「1回目……霧生市のバイオハザードはもちろん記憶にあるが、2回目の沈没船については全く記憶が無いんだって」

 高橋は私が止める間も無く、チームメイト(?)にLINEを送っていた。
 そして……。

 手下A:「高橋さん、おはざーっス!」
 手下B:「お迎えに参上っス!」
 高橋:「遅ェぞ!5分以内に来いっつったろ!45秒遅刻だ……!」

 ギロリと高橋は年下の2人を睨みつけた。

 愛原:「高橋君、いいから!やめなさい!」
 高橋:「先生がそう仰るのでしたら……」

 私は再び走り屋仕様のチェイサーに乗ることとなった。

[同日08:20.天候:晴 都内の道路]

 渋滞する都内の道路をすり抜けたり、時には空いている逆方向の道を走ったりしている。
 車内にはヘビメタのロックが掛かっている。

 手下B:「高橋さん、やりましたよ。山口のヤツ、ついに見つけたらしいっス!」
 高橋:「マジか!?」
 愛原:「何が?」
 高橋:「あ……えーと……!先生の前だ。黙ってろ」
 手下B:「さ、サーセン」
 手下A:「でも高橋さん、どうせ先生にも後で話すんでしょう?ざっくりとだけでも言ってみたらどうっスか?」
 愛原:「まあ、確かに気になるね」
 高橋:「アレですよ。昨夜話した、白い仮面のクソガキのことです」
 愛原:「あれでしょ?リサ・トレヴァーのことでしょ?」

 もちろん、昔アメリカに現れたというアレとはまた違う。
 ただ、日本でも似たような実験は行われていて、その実験体たる彼女のことだ。
 霧生市のバイオハザードの後、政府に保護されたということだが……。

 高橋:「ええ。霧生市のアイツです」
 愛原:「それがどうして、俺達の敵なんだ?」
 高橋:「話せば長くなります。後でお話します」
 愛原:「……分かった」

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