報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の到着そして早朝の出発」

2021-01-14 15:35:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月13日23:57.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR大宮駅]

〔まもなく終点、大宮、大宮。お出口は、右側です。川越線、高崎線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が空いている所がありますので、足元にご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私達を乗せた宇都宮線最終電車は無事に大宮駅に接近した。

 愛原:「皆、そろそろ降りるぞ」

 夜の上り電車はガラガラである。
 その中において、狭いボックスシートに向かい合って座る私達。
 あいにくと、宇都宮駅で食べ物を手に入れることはできなかった。
 私達は自販機で売っていたコーンスープなどで誤魔化したが、リサは誤魔化せなかった。

 高橋:「はい」
 リサ:「お腹空いた……」
 愛原:「今度は何か食べ物持ってこないとな。頑張れるか?」
 リサ:「サイトーが夜食作って待ってくれてるらしいから、それまで頑張る」
 愛原:「そうか。偉いぞ」
 リサ:「夜食が無かったら暴れる」

 斉藤家でバイオハザードを引き起こす気か!

 高橋:「先生、駅からタクシーですか?」
 愛原:「いや、新庄さんが迎えに来てくれているらしい」
 高橋:「さすが先生!VIPっスね!」
 愛原:「いや、そうでもないと思うけど……」

 電車が宇都宮線上りホームに到着する。
 ここからもう、今日は上野方面に行く電車は無い。
 電車から降りると、駅の放送は終電の案内で忙しかった。
 この時点でもう終電の終わっている路線もあるので、その旨の案内と、まだ終電の残っている路線の案内だろう。
 私達が電車を降りてすぐに、東京都心まで行く京浜東北線の最終電車が発車していった。
 この後は、もう赤羽止まりしかない。
 その為、今日はもう私達は帰れないのである。
 斉藤社長もそれを理解してくれて、今夜は泊まらせて頂くことになったのだ。
 コンコースに上がって、改札口を出る。

 リサ:「どっち!?」
 愛原:「西口だ。あんまり先に行くなよ」

 リサのヤツ、ようやく食事に在りつけると分かったら元気になって……。

 新庄:「お疲れ様です。お迎えに上がりました」

 西口の車寄せに行くと、運転手の新庄氏が迎えに来ていた。

 新庄:「さあ、どうぞ。お乗りください」

 そう言って、助手席後ろのドアを開ける。
 見た目はロールスロイスに似ているが、実際は光岡・ガリューである。
 人数が多いと、エルグランドで迎えに来ることもある。
 私達は後ろに乗った。

 新庄:「それでは出発致します」

 新庄氏は運転席に乗り込むと、深夜の大宮駅を出発した。

[12月14日01:00.天候:晴 同市中央区 斉藤家3F斉藤絵恋の部屋]
(この項だけリサの視点です)

 斉藤絵恋:「り……リサさぁん……デヘヘヘヘ……、萌えへへへへへへ……」

 夜食と入浴を済ませたリサが絵恋の部屋に行くと、既に絵恋はダブルベッドで寝落ちしていて、リサと(恐らく違う意味で)仲良くしている夢を見ているようだった。

 リサ:(気持ち悪い……。やっぱり私、先生の部屋で寝ようかな……)

[同日06:00.天候:晴 斉藤家]
(ここから愛原視点に戻ります)

 私は朝起きて、洗面所で顔を洗っていた。
 寝巻の浴衣を借りられて、本当に至れり尽くせりだ。
 今日はリサ達の学校があるので、早めに家を出なければならない。

 斉藤秀樹:「愛原さん、おはようございます」
 愛原:「あ、斉藤社長、おはようございます」

 まだ寝間着姿の斉藤社長が来た。

 愛原:「どうもお世話になりました」
 秀樹:「いえいえ。ただの調査だったはずが、想定外のことに巻き込まれてしまったようで、大変ご苦労様でした」
 愛原:「報告書は後程……」
 秀樹:「ええ。後でメールで送って頂ければ結構です。どうでしたか?」
 愛原:「アンブレラの地下施設、生きてましたよ。後半、変なガスマスクを被ったアンブレラ関係者に襲われましたし……」
 秀樹:「ガスマスクを被ったアンブレラ?誰ですか、それは?」
 愛原:「名前は名乗っていませんでした。ただ、“赤いアンブレラ”の者だと言っていましたが……」
 秀樹:「フム……。五十嵐元社長らが逮捕されても、まだ残党は生き残っているのか……」

 “赤いアンブレラ”に未だ残っている者は贖罪意識など無く、胡散臭いものの、一応の贖罪意識を持って活動している“青いアンブレラ”の関係者達よりもタチ悪なのは言うまでもない。
 尚、日本アンブレラの元社長親子はケガが回復したので、警察に逮捕された。
 カルロス・ゴーンがやらかしてくれたおかげで、保釈請求も却下された。
 いやまあ、ゴーンは関係無いだろうが、海外に目を向けて見れば、元アンブレラ幹部で逮捕された者の大半はその後、逃亡劇を繰り広げているので、こういった前例を見れば、五十嵐元社長の保釈など認められなくて当然だろう。
 日本の司法が前例主義で良かったと思える面である。

 新庄:「おはようございます。愛原様、まもなく出発のお時間ですので……」
 愛原:「あ、分かりました」
 秀樹:「帰りの交通手段につきましては、娘にキップなどを渡しておりますので、愛原さん達は何も心配なさらなくて結構です」
 愛原:「ありがとうございます」

 恐らくは、新幹線とタクシーといったところか。
 1度家に帰って、それから学校へ向かうという感じになりそうだ。

 私達は出発の準備を整えた。
 新庄氏は今度はエルグランドを用意している。

 愛原:「それでは社長、ありがとうございました」
 秀樹:「お気をつけて。絵恋も気をつけて」
 絵恋:「行って来ます」

 出発直前、私の言った言葉に斉藤社長は絶句した。

 愛原:「あ、社長。日光の合宿所の管理人さん、白井伝三郎さんと言いましたか。よろしくお伝えください」
 秀樹:「白井……?伝三郎!?」

 何故か社長は驚いた顔をした。
 が……。

 絵恋:「新庄、新幹線に乗り遅れちゃうわ。急いで出して」
 新庄:「かしこまりました。出発します」
 秀樹:「ちょっと愛原さん、その白井って者は……!」
 絵恋:「お父さん!後にして!遅れるでしょ!」

 絵恋さんの強い主張により、車は強制的に出発した。

 愛原:「どうして社長はあんなに驚いたんだろう?」
 絵恋:「知りませんよ。お仕事の話なら、また後にしてください」
 高橋:「てか、中学生の癖に新幹線通学かよ。贅沢だな~」
 絵恋:「今日だけ特別よ。いつもなら、もうとっくに東京のマンションに帰ってるんだから」

[同日06:20.天候:晴 斉藤家]
(ここだけ三人称です)

 愛原達の車を見送った秀樹は呆然とした様子になっていた。

 秀樹:(バカな……。白井伝三郎だと?その名前……愛原さんは忘れているのか?……私が高校生の時、科学教師として学校に派遣されていた日本アンブレラの研究員だぞ?忘れもしない……)

 斉藤秀樹も東京中央学園のOB。
 当時、高等部にて科学の教師をしていた白井には黒い噂が絶えなかった。
 実際、秀樹も現役生だった時、当時の先輩から、白井に捕まって非人道的な人体実験を受けた友人の話を聞いたことがある。
 確か、その話を愛原にもしたはずだが、恐らく忘れているのだろう。

 秀樹:(調査は……続行だな)

 秀樹は家に戻りがてら、自分のスマホでどこかに連絡を始めた。

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