報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東北鉄道紀行」 2

2023-04-03 11:51:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月5日10時34分 天候:晴 宮城県遠田郡美里町 東北本線2531M列車最後尾車内→JR小牛田駅]

 窓開けをして走っているものだから、トンネル進入時の風が強い。
 これでは確かに蒸気機関車時代、機関車からの煤煙が客車に入ってきて大変だったという話はあながちウソではなかったのだろう。
 今は無煙の電車になったので、入って来るのはただの風だが。

〔まもなく終点、小牛田、小牛田。お出口は、右側です。東北本線、石越、一ノ関方面、“奥の細道湯けむりライン”陸羽東線と石巻線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔「お乗り換えのご案内です。今度の東北本線下り、普通列車の一ノ関行きは、降りたホーム3番線から、10時56分の発車です。……」〕

 愛原「この駅にも、何回も来たっけな」
 高橋「ぶっ飛んだ先生の伯父さんが住んでましたね」
 リサ「『6番』も。あの出来損ない」
 愛原「ま、今日のところは通過するだけだ」

 列車は速度を落として、ポイントを通過し、東北本線上り本線ホームに到着した。
 すぐに上り列車として折り返す為だろう。
 ホームの有効長が長いのは、かつてこのホームを長編成の急行列車も発着していた名残である。
 今ではどんなに長くても、8両編成が最長である。
 運転室から、ATSの警報音が鳴る。
 ジリジリとベルが鳴って、キンコンキンコンと鳴るあのチャイム。
 当然ながら場内信号機は黄色で、その先の出発信号機は赤だから、そういう警報が流れる。
 ドアが開いて、私達は他の乗客達と共に列車を降りた。
 多くの乗客達が跨線橋の階段を登って行く。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、小牛田、終点、小牛田です。車内にお忘れ物など無いよう、ご注意ください。陸羽東線下り、鳴子温泉行きは1番線、東北本線下り、一ノ関行きは3番線、石巻線・気仙沼線下り、柳津行きは4番線です。3番線に到着の列車は、10時44分発、普通列車の仙台行きとなります」〕

 同じホームに到着するというので、私達は降りて待つことになる。
 試しに、全部の車両を確認してみた。
 一応、全部の車両が仙台行きになっていた。
 たまに地方の路線あるあるで、前2両だけを切り離して、これを更に下り列車に使うなんてこともあったりするので。
 すると、新たに下り列車が別に来るということになる。
 発車標を見ると、2両編成ワンマンということなので、停止位置を確認しておくことにした。
 これだけ長い有効長のホームに、たったの2両というのも面白いものだ。
 2両編成の停止目標から、乗車位置を割り出す。

 高橋「先生、俺一服してきていいっスか?」
 愛原「いいよ」

 地方に行けば、まだ駅構内でも喫煙所は存在する。

[同日10時56分 天候:晴 同駅→東北本線545M列車先頭車内]

 やってきた電車は、今度はロングシートしかない701系であった。
 最近では、ボックスシート付きのE721系も運用に入っていることから、旅情的には後者の方が好ましいが、仕事で来ているので、ぶっちゃけどちらでも良い。
 高橋とリサ的には、私に密着して並んで座れる、こちらの電車でもメリットはあるようだ。

〔ピンポーン♪ この電車は東北本線下り、瀬峰、石越方面、各駅停車の一ノ関行き、ワンマンカーです。田尻、瀬峰、梅ヶ沢、新田、石越の順に、各駅に止まります。まもなく、発車致します〕

 座席は全部が埋まることはなく、昼間の電車といった感じの乗車率だった。
 ワンマン運転ということもあり、運転士が直接ホームに顔を出して、乗降確認をしている。
 そして、ピイッと笛を吹くと、車掌スイッチでドアを閉めた。
 ドアが完全に閉まったことを確認すると、運転席に移動する。
 そして、ガチャッとハンドルを操作する音がすると、電車はゆっくりと小牛田駅を発車した。

〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北本線下り、瀬峰、石越方面、各駅停車の一ノ関行き、ワンマンカーです。これから先、田尻、瀬峰、梅ヶ沢、新田、石越の順に、各駅に止まります。途中の無人駅では、後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。【中略】次は、田尻です〕

 東北本線の上り本線ホームを逆走する形で出発した為、駅構内を出ると、ポイントを通過して下り本線に移る。
 それから電車は更に加速した。

 愛原「こんなに時間が掛かるんだから、斉藤玲子も、平泉から通うわけがない」
 高橋「ですよねー」

 当時は乗り換えの無い長距離普通列車や、平泉駅にも停車する急行列車とかも運転されていたのかもれないが、それでもさすがに通学圏内だとはとても思えなかった。
 やはり在学中は、仙台に実家があって、そこから通っていたのだろう。
 それが、どこかだ。

 リサ「先生、お昼はどこで食べるの?」
 高橋「もう昼飯の心配かよ?」
 リサ「だって、あと1時間でお昼だよ?」
 愛原「心配するな、俺に考えがある」
 リサ「考え?」
 愛原「俺達は今、どこに向かっている?」
 リサ「斉藤玲子……もしかしたら、わたしのお母さんかもしれない人の実家」
 愛原「そうだ」

 そこで、ふと気づく。
 リサの人間だった頃の苗字が上野だったのだから、やはり斉藤玲子は当時中学生でありながら、上野医師と結婚していたのだろうなと。
 入籍したのは、もちろん16歳以降だっただろうが。

 リサ「先生?」」
 愛原「あ、いや。その家は、何をやっている家だ?」
 リサ「えーと……」
 高橋「食堂っスね?」
 愛原「そうだ。もしも聞き込みをする相手が、何か店をやっていた場合、まずは客としてそこに入るのが鉄則だぞ」
 高橋「! 一流の名探偵の心得っスね!メモっておきます!」
 愛原「そこで昼飯を食いがてら、聞き込みだ」
 高橋「了解っス!」
 リサ「おー!」

 私達を乗せた2両編成ワンマン電車は、私達を更に北へと誘って行く。

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